聖闘士星矢の神はマジヤバい。
邪悪なる神、エリスの強大な
その暴風の中に立つのは黄金の闘士。
その右腕は出血とともに力無く垂れ、頭から血を流し、纏う
どう贔屓目に見ても、満身創痍という言葉しか出てこない状態だ。
だが、迷いのない瞳で快人は左拳を構える。
「いくぞ、邪神!」
吠えて、快人は駆けだす。
その視線の先は当然、邪神エリス…ではなく、なのは。
石造りの十字架に磔にされたなのはは、今邪神エリスの本体とも言える『黄金のリンゴ』に命を吸われている。
気丈にも、何かに必死に耐えるようにして目を逸らすこと無く快人の戦いを見ているが、早急に助け出さなければならない。
それに今、邪神エリスが好き勝手に使っているのは大切な友人であるアリサの身体だ。
万が一にも傷つける訳にはいかない。
(なのはやすずか、アリサが心配だ。
とっとと『黄金のリンゴ』をぶっ壊して、それでジ・エンドだ!)
構えはしたが、最初から快人には邪神エリスと戦う気は無かったのだ。
快人は左拳を握りながら、『黄金のリンゴ』へと接近する。
しかし、その動きは読まれていた。
「小賢しい!!」
エリスがその言葉と同時に矛を振るうと、それにそって大地が裂ける。
「うぉ!?」
快人はそれを大きく後ろに飛んで避ける。
なのはとの距離が再び開いてしまった。
大きく亀裂の走った地面に、快人は呆れたように肩を竦める。
「まるで
「喰らってみるがいい。 その
「美人のお誘いでもそりゃ勘弁だ。 俺、どっちかって言うとSだからよ。
痛いの喰ったらムカつくだけだし」
「そうか、奇遇だな。 私も攻める方が好きだ」
エリスの周りに
「踊れ、虫ケラ。 愉快な死のダンスを」
その声と共にエリスが矛を突き出すと、周囲の
「あはは…俺ダンスは苦手なんだけど、な!」
無数に飛び交う
それも当然、本来ならジャガー戦だけで快人は倒れているレベルのダメージなのだ。
(くっ…こりゃ、やべぇぞ…)
内心での焦りを悟られぬようにしながら、快人は突破口を探す。
「ちょこざいなハエが!!」
その瞬間、エリスからの攻撃的な
それは広範囲に広がっていく
「!?」
攻撃力は大したことは無かったが、その広範囲に広がる攻撃を避ける事が出来なかった快人は、吹き飛ばされ体勢を立て直し着地する。
だが、そんな着地を狙ったエリスの
「しまっ…!?」
自分のミスに気付いたところでもう遅い。
体勢が悪く避ける事は出来ない。
快人は
しかし、
「こいつは!?」
「!? 黄薔薇だと!?」
快人の目の前に黄色の薔薇が集まり、盾となってその
快人の隣に降り立つ影。
「守りの黄薔薇、プロテクトローズ…
「…ああ、こりゃ役に立つわな。
俺が悪かったよ、シュウト!」
それはもう1人の黄金の闘士。
それを追うようにフェイトも快人の後ろに降り立った。
「快人、大丈夫?」
「フェイト、これが大丈夫に見えるなら眼医者に行っとけ」
「それだけ言えるんなら、兄さんに回復魔法は必要なさそうだよ、フェイト」
「あ、すんません。調子乗りました! 回復して下さい、マジお願い!」
いつも通りの快人に若干の呆れと安心を抱いて、フェイトは回復魔法を快人へと施した。
正直に言えば、フェイトは回復魔法は得意ではないため気休め程度なのだがそれでも右手の痛みが少し和らいだことは快人にとっては大きな回復だ。
「ありがとよ、助かったぜ」
「それで兄さん、どんな状況?」
「亡霊は全員地獄へ帰ってもらった。
あとは、あのクソ神がヒスの真っ最中ってとこだ」
「分かりやすい説明をどうも、兄さん」
快人が立ち上がると、シュウトも並んでエリスに渦巻く
そんな3人をエリスは鼻で笑った。
「ふん、誰かと思えば
今さら死に損ないの虫ケラが2匹増えたところで変わりはしない。
丁度いい、まとめて
エリスの言葉は正しい。
シュウトは大きな怪我こそないものの、失った
フェイトに至っては魔力・体力・
だが3人の誰にも諦めは無い。
油断なく左手を構えながら快人がシュウトに囁くように言う。
「シュウト、お前、薔薇の命中率に自信は?」
「邪魔さえなければ、百発百中を自負してるよ」
「OK、それじゃあの『黄金のリンゴ』の狙撃を頼む。
俺の炎じゃ、なのはごと焼いちまうからな」
「…責任重大だね」
そう呟いてシュウトは白薔薇を取り出した。
「なに、隙は俺が作る。
お前はいつも通りにやってくれればいい」
「わかったよ。
フェイトはボクの後ろから出ないで。
ボクの後ろだったら、絶対に守るから」
「うん。
あんまり得意じゃないけど、回復は任せて。
残った魔力は全て、2人の回復にまわすから」
3人はそれぞれにすることを確認して、エリスへと向き直る。
「話し合いは終わったか、虫ケラども」
「ああ、悠長に待っててくれたおかげでな。
んじゃ…行くぞ、神様よぉ!!」
吠えて、快人は走りだした。
その動きはただただ一直線である。
「バカめ! 正面から向かってくるとは愚かな!」
エリスが無数の
それに向かって快人は、なんと正面から突っ込んだ。
「うぉぉぉぉぉ!!」
かすった
そのまま、快人は一気に…エリスへ接近する。
その左手には蒼い炎が渦巻いていた。
それを見て、てっきり『黄金のリンゴ』を破壊するだろうと考えていたエリスが驚いた声を上げる。
「バカな、この娘ごと私を倒そうというのか、
「…」
快人は無言のまま、その手を掲げるとエリスは慌てて防御の体勢を取った。
それを見て快人はニィっと笑う。
「…バァカ、アリサごと倒そうなんて、そんな訳ねぇだろ」
快人は腕の中の蒼い炎を
その瞬間、巻き起こったのは熱でも爆風でも無く、目を焼く閃光だった。
「貴様、これは!?」
エリスは閃光に目を焼かれ、目を押さえた。
間髪いれずに快人が叫ぶ。
「やれ、シュウト!!」
「ブラッディローズ!!」
放たれる白薔薇は狙い違わず、なのはの左胸の前に浮いた『黄金のリンゴ』へと吸い込まれていった。
スコンという音と共に、白薔薇が『黄金のリンゴ』を貫いた。
『黄金のリンゴ』から光が漏れ始め、少しずつその光が強くなっていく。
「ぐ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
同時に、それに比例するようにしてエリスが身悶えながら絶叫を上げた。
「なのは!」
「快人くん!!」
快人はそのままなのはの拘束を破壊すると、なのはを抱え一気に飛び退く。
そして、先程の
~~~~~~~~~~~~~~~
なのはが閃光から回復した目を開けると、そこにあったのは幼馴染の安心したような顔だった。
「よぅ、なのは。 無事でよかったぜ…」
「うん…」
なのははそれだけ頷くと、そのまま快人の胸に顔をうずめた。
所々に傷の入ったボロボロの
その時になって、なのはは快人の怪我を思い出していた。
「快人くん、待ってて。 すぐに魔法で治療するから!」
「ああ、頼む。 それにしても今回はちょっと疲れたぜ…」
快人は地面にへたり込み、なのはは快人の右手を治療しようと右側に回った。
「兄さん!」
「なのは!」
シュウトも、フェイトに身体を支えられながら快人たちの方へと歩いてくる。
アリサは地面にうつ伏せで倒れているが怪我はなさそうだ。
そして、あの禍々しい『黄金のリンゴ』はどこにもない。
「どうにかなったらしいな…」
その光景に快人は息を一つ付く。
他の3人も同じように安堵の表情を浮かべた。
その時…。
サクッ
「…えっ?」
そこにいた誰もが、その小気味のいい音に何が起こったのか思考が付いていかなかった。
シュウトがゆっくりと視線を下げる。
するとそこには…自身に突き刺さる矛が存在していた。
「ぐ…あぁぁぁぁぁ!!?」
「きゃぁぁぁ! シュウ!!?」
一瞬の後やってきた激痛にシュウトが声を上げ、フェイトの悲鳴が響く。
「ぐっ…!」
シュウトは自身の腹に突き刺さった矛を引き抜くと、忌々しそうに握りつぶし、床へと投げつける。
そして、ガクリと膝を付いたところをフェイトが慌てて支え、溢れる血に手を赤く染めながら傷口を押さえ回復魔法を施していた。
「シュウト!? ちぃ、一体…!?」
即座に反応した快人は立ち上がって周囲を見渡すと、ゆっくり立ち上がってくるのは…アリサ。
それを見て、嫌な予感が快人の背中を駆け抜ける。
「…やってくれたな、虫ケラども」
アリサの口から紡がれたその言葉で、快人の予感は確信へと変わる。
「邪神エリス!? バカな、『黄金のリンゴ』は破壊したはずだ!?
何でお前がまだ残っているんだよ!?」
その快人の言葉に、エリスは忌々しそうに答えた。
「確かに、私の本体である『黄金のリンゴ』は壊れた。
だがここにいる私は『黄金のリンゴ』から切り離されたエリス、『黄金のリンゴ』が無くても私は消えない!!」
その言葉に快人は自分たちの考えが間違っていたことを悟った。
快人たちは邪神エリスとはあくまで『黄金のリンゴ』が本体であり、遠隔操作のような方法でアリサの身体を動かしていると思ったが違う。
エリスは、本体である『黄金のリンゴ』から何割かの自分の魂を分けて、アリサに移植することで動かしていたのだ。
簡単に言えば植物の接ぎ木のようなものだ。
これでは親の木である『黄金のリンゴ』が壊れても、分かれたアリサの身体に入った邪神エリスには何の影響も無い。
そして…接ぎ木を行った植物は成長すれば親の木と同様、実を付ける。
「もう少しで『黄金のリンゴ』の封印が解け、この身体に私の魂全てを注ぎ完全復活できたものを…!
この身体で人間の生気を吸い続けたとしても、私の完全復活は最低100年は伸びた。
この屈辱…お前らを八つ裂きにしても足りないわ!!」
放射される
そして、エリスの視線が蹲るシュウトへと向けられる。
「まずは
「!? フェイトぉ!?」
エリスから放たれる
「うわぁぁぁぁ!!?」
「きゃぁぁぁぁ!!?」
その衝撃で抱き合ったまま地面を転がるシュウトとフェイトは、倒れ伏したまま起き上がってこない。
「フェイトちゃん!? シュウトくん!!?」
「てめぇ!!」
なのはが悲鳴を、快人が激昂の声を上げるが、平然とエリスは言ってのける。
「ふん、次はお前たちだ!」
「!? やべぇ、なのは!!」
エリスに集中していく
「快人くん!」
床を転がったなのはが見たのは、まるで見えない手に抱え上げられるように空中に浮かされた快人だった。
「ぐぅ!?」
エリスが向けた右の掌からの不可視の
そんな快人に、エリスは邪悪な嗤いと共にその唇を釣り上げる。
「いい気味ね、
そう言うとエリスは開いた掌をゆっくりと閉じていく。
同時に、快人の右足を守っている
尋常ならざる力が快人の右足に集中しているのが分かる。
苦悶の表情の快人に、なのはの背を嫌な予感が駆け巡った。
「や、やめてぇぇぇぇぇ!!」
なのはの声を聞きながら、エリスはその手を握りしめる。
ボギン!!
鈍い音が快人の右足からした。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
咆哮のような快人の絶叫が響く。
快人の右足はエリスの力によって、骨を折られていた。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫びと共に爆発する
だが折れた右足では身体を支えられず、快人は地面に降り立つと同時にまるで頭を垂れるように地面へと手を付いた。
「ははは、良い様だな
「ぐ…!」
笑うエリスへ、快人は憎々しげに視線を向けた。
(こいつは本気でやべぇ…)
快人の額を冷たい汗が伝う。
エリスの力は強大で、もはや快人もシュウトもボロボロだが、それ以上にアリサを助け出す手段が問題だ。
もちろんながらアリサの身体への直接攻撃はNG。
どうにかしてアリサの身体からエリスを引きずり出し、エリスだけを倒す必要がある。
そんな方法は…『アレ』しかない。
だが、『アレ』の使用は快人にとって、本当の意味での最終手段である。
二度は無い、一発限りの大博打だ。
「今度は左手か、左足か? いっそ頭をもいでやろうか、
エリスは狂気の笑みを浮かべながら、
「けっ…悩む暇すら無さそうだ…」
それを見て、覚悟を決めた快人は左の拳を強く握りしめた。
そして人差し指と中指の2本をビシリと立て、下段へと構える。
快人は意識を集中させるため目を瞑り、大きく息を吐く。
同時に高まった
そして…目を見開くと同時に、快人は最大の
「
「なにっ!?」
途端、アリサの身体から半透明な影が浮き出てくる。
青い髪に、血のように赤い貫頭衣を纏った死人のような病的な白い肌の女…邪神エリスの魂である。
「御対面…てか?」
「
「当たりだ、寄生虫!!」
これがアリサを救う、最後の手段である。
だが、これには大きな問題がある。
「ふん、貴様ごときが私の、神の魂を動かせるものか!」
「ぐっ!?」
エリスのその言葉と共に、快人の振りあげた左手がゆっくりと下りていく。
同時に、足近くまで飛び出していた半透明のエリスがアリサの身体へと少しずつ戻っていっていた。
『神の魂』と言う規格外の超重量が、快人の
そしてもう一つ…。
「う、おぇぇぇぇぇぇ!!?」
快人が床へと血の混じったものを盛大に嘔吐する。
快人は幼少期のトラウマで
無理に発動させた時に起こる反動が快人を襲っていた。
脳裏にフラッシュバックする両親の『死』と、
それでも必死に快人は
何故ならこれが最後のチャンスだからだ。
今のアリサを救うには
1発撃てるだけでも奇跡なのだ、快人には2発目の
「ぐぅぅぅぅ!!」
左手がミシミシと嫌な音をたてる中、快人は自身の
だが…。
(やべぇ…
無理をして発動している
同時に折られた右足では踏ん張りが効かず、エリスの魂を押し戻せない。
勝つための見込みのない圧倒的な絶望がそこにはあった。
だが…。
(諦め…られるかよ!!)
快人の目は死んではいない。
(
その頂点である
そして『セブンセンシズ』とは、あくまで戦い抜く勇気と諦めない希望を持った者のみが掴むことが出来るのだ。
だから快人に諦めはない。己の
そんな勇気と希望を捨てぬ者だからこそ…それは奇跡ではなく、必然だった。
スッ…
崩れかける快人の身体を、右から優しく支える白い影。
「なのは…」
快人の呟きに、なのはは快人の身体を支える。
「…快人くん、なのはに何か言うこと無い?」
なのはは真っ直ぐに柔らかく快人を見つめながら、静かに言う。
それを見てすぐになのはの言わんとすることが分かり、快人はため息まじりに言う。
「俺って格好わりぃな。
全身血まみれ、ゲロまで吐いて…その上なのはに…お前に『力を貸して欲しい』なんて思ってる。
最強の
そんな快人に、ふふふと笑ってなのはは続けた。
「快人くんは格好悪くなんかないよ。
こんなにボロボロになってもみんなを救うために戦ってくれてるんだもの。
だから、なのはにも手伝わせて。
快人くん痛みも辛さも…なのはにも背負わせて」
「バァカ、俺はそこまで甘えないよ。
でも…支えるくらいは頼んでいいか?」
「うん!」
快人の流す血で汚れながらも、笑顔と共になのはが言葉を返す。
その言葉に満足した快人の内側から、何かが燃え上がり、溢れ出す。
燃え上がるのは
少女の不屈の心が、少年の勇気と希望を更なる高みへと導いていく。
そして勝利への道は完成した。
「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「何!? 押し返すだと!?」
首辺りまでアリサの身体へと戻っていたエリスは、快人が発する
同時に、快人の左手がゆっくりと持ちあがっていくと、再びエリスの姿がアリサの身体から出てくる。
エリスの神の魂の超重量は変わっていない。
その証拠に快人の左手からはビキビキと嫌な音が響いており、その指先の爪は今にも砕けそうにひび割れている。
それが押し戻されてきているのは一重に、快人の放つ
快人の
「この
人間が、神である私の
だが…まだ!!」
エリスの
これは快人の
チラリと視線を送ると、快人の右肩にいつのまにか赤い薔薇が刺さっていた。
だが、痛みも毒もない。
変わりに、自分へと温かい
「兄さん…」
「快人…」
まだ立ち上がれないシュウトとフェイト。
この薔薇は2人が自身の
その
「こんな…こんなバカな!?
何故、何故神である私の力が、虫ケラどもの力に押されるのだ!?」
訳が分からないと叫ぶエリスに、快人はしたり顔で答えていた。
「へっ。 人間様を舐めんじゃねぇぞ、クソ神!
俺と弟、そしてなのはとフェイト…俺たち4人の
それにな…!」
そこで言葉を切ると、快人は一瞬だけなのはを見た。
自分を絶対の信頼を持って支える、凛とした顔の幼馴染。
いつかの…デスマスクとの戦いの焼き直しのような状況に苦笑して、あの時と同じように神へと宣言した。
「アテナの右手に持つニケには戦いを勝利に導く力があるという。
俺の勝利の女神ニケは…こいつだ!
なのはが俺の隣にいる以上、俺の勝利は絶対確定なんだよ!!」
その言葉と共に、快人の
そして…。
「うぉぉぉぉぉぉぉ、
邪神エリスが完全にアリサの身体から飛び出し、アリサの身体は力無く倒れ込む。
残ったものは中空に漂う、半透明の邪神エリスの魂のみ。
快人は左拳を握りしめ、叫んだ。
「なのは、跳ぶぞぉぉ!!」
「うん!!」
快人が左足で地を蹴って、邪神エリスへと迫る。
その右側をなのはが飛行魔法を使いながら支え続ける。
快人の左拳に渦巻くのは蒼い炎。魂を焼く煉獄の炎だ。
「私は神だ。 人が神を倒すなど…あり得るはずが無い!?」
迫りくる快人となのはに、エリスは驚愕の声を上げる。
それはあたかも、迫りくる避けられる運命を信じられないかのような響きだ。
「神がどうした! そんなもんは関係ねぇ!
シンプルな話だ。 お前は俺の敵。 だから…ぶっ潰す!!
俺の大切なものを傷つける奴は、神だろうが何だろうが…この
そして快人はその左拳を叩きつけた。
「
拳を叩きつけると同時に発動した
いかな神とはいえ、弱体化した状態で、魂を焼く煉獄の炎には抗えない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
響く断末魔を背に、快人となのはは地面に降り立つ。
「火葬完了…てな。
俺たちにケンカを売ったこと、
快人の宣言とともに、欠片も残さず邪神エリスは燃え尽きたのだった…。
~~~~~~~~~~~~~~~
「今度こそ大丈夫だよね…?」
「ああ、間違い無い。 どれだけ調べても、あの不気味な
今度こそあのクソ神は欠片も残さず完全に燃え尽きたよ」
「よかったぁ…」
その言葉に、なのははホッと息を付く。
「兄さん!」
「快人、なのは!」
シュウトもフェイトに支えられながら、快人たちの方へとやってきた。
「派手にやられたな」
「神相手にこれだけできれば御の字だと思うよ」
「まったくだ…これで完全復活前、全力の何割かってところだってのが恐れ入る。
よくもまぁ、先輩がたはこんなもん何体も相手にできたもんだ」
シュウトの言葉に肩を竦めながら快人はそう漏らす。
『神』という存在の力を、快人とシュウトは改めて思い知っていた。
「どう、フェイトちゃん?」
「…うん、大丈夫。 アリサは気絶してるだけ。
別に外傷も何もないよ」
快人たちの横ではなのはとフェイトがアリサの無事を確認し、ホッと息を付いていた。
誰もが全てが終わったと思った、その時である。
ゴゴゴゴゴ…
「な、なに?」
「なんだか…嫌な予感が…」
地の底から響いてくるような不吉な音に、なのはとフェイトが反応する。
「おいおい…」
「あはは…これって…」
快人とシュウトも引きつった顔を見合わせた。
そして、その予感は現実となる。
ゴゴゴゴゴ…!
揺れる音と共に、エリス神殿が崩壊を始めたのだ。
この世界自体が邪神エリスの世界、ならばそのエリスが消えればここも消えるのが道理というものだ。
「おいおいおいおい! 敵が倒れたら基地崩壊って、どんだけお約束なんだよ!!」
「バカ言ってないで逃げるよ、兄さん!」
「んなもん、言われなくても分かってる!」
言うと、アリサの身体がフッと消える。快人がアリサの身体を『巨蟹宮』に送ったのだ。
続けて、快人はシュウトに問う。
「…シュウト、そっちの
「兄さんよりはマシだろうけど…大差ないだろうね」
「そうか…となりゃ、よっぽど分かりやすい空間の歪みじゃなきゃブチ破れないな」
ここから脱出するには来た時同様、空間の歪みを
そんな風に快人が考えていると…。
「ん?」
「あれ?」
4人の目の前に、バチバチと大きく空間の歪みが発生していた。
そしてその向こうから感じるのは元の世界の
「…ワーォ、運がいいな、俺たち」
「…だね」
無論、欠片たりともそんなことは思ってはいない。明らかに怪しすぎる。
だが、このままではこの世界の崩壊になのは達と一緒に巻き込まれてしまう。
ならば、選択肢はなかった。
「やるぞ、シュウト!!」
「OK、兄さん!!」
快人とシュウトが
バリン!
まるでガラスが割れるような音がして、中空にぽっかりと穴が開く。
「なのは、俺から離れるなよ!」
「フェイト、ボクにしっかり捕まって!」
なのはが快人の右を支えるように抱きつき、フェイトがシュウトを左から抱える。
それを確認すると、2人はその穴に飛び込んだ。
すると、すぐに4人は空間から吐き出される。
そこにはあの禍々しいエリス神殿はない。
あるのは静かな山と満天の星空…元の世界へと戻ってきたのだ。
「ここって…?」
「戻って…これた?」
なのはとフェイトがそう言って安堵の息を付く。
「…大丈夫そうだな」
「…そうみたいだね」
快人とシュウトも辺りを警戒していたが、何も感じる事は出来ず、ひとまず息を付いた。
すると、快人とシュウトの
それはアリサとすずかを抱いたセージとアルバフィカだった。
「よくやったな、快人。 それになのは嬢もだ」
「じいさん…2人は?」
その言葉に、セージは微笑んだ。
「無事だ。 邪神エリスの影響も消え、そうかからずに目を覚ますだろう」
「そりゃ…よかった」
「だから後は任せ、少し休むがいい」
「ああ…そうさせてもらうぜ…」
「快人くん!?」
快人はその言葉と共に限界が来たのか、なのはに支えられながら気を失っていた。
「心配はいらんよ、なのは嬢。 この程度でどうにかなる柔な鍛え方はしていないつもりだからな。
だが、多少の休みの時間は必要だろう。
なのは嬢も朝まで『巨蟹宮』で傷を癒すのだ」
セージの言葉になのはは素直に頷くと、セージは今度はアルバフィカに向き直った。
「あとの処理は任せてもいいか、アルバフィカよ?」
「ええ、私たちにお任せ下さい」
「そうか…では頼む」
そう言ってセージたちは『巨蟹宮』へと消えていった。
それを確認してから、今度はアルバフィカがシュウトとフェイトへと向き直る。
「シュウト、よく戦った。 お前の戦いは見事だった。
フェイト、君のこの戦いでの成長…確かに見させてもらった」
アルバフィカの言葉に、シュウトとフェイトの2人は照れたように頬を掻く。
「2人とも、傷が辛かろうがもうしばらく我慢してくれ。
この2人を送り届け朝までの安らかな眠りを保証したら、お前たち2人も『双魚宮』での手当てに移る」
「大丈夫ですよ、お師様。 ボクの傷は兄さんよりはずっと浅いですからね」
「私もです。 その…途中でシュウトが手当てしてくれましたし」
「ならば結構、だが無理はせぬように。
行くぞ、2人とも」
アルバフィカに連れられ、2人も別荘へと移動を始める。
こうして、2人の
というわけでVS邪神エリス戦でした。
子供心にあの映画では『何故エリーの身体からエリスは自分から出て行ったんだろう?』とずっと思っていましたのでこうなります。
ちなみに今回の邪神エリスの力は、全力の数分の一程度。
完全復活して無い上、最後はアリサに移植した魂の欠片だけでしたのでこれで全力ではありません。
星矢たちが如何に化け物じみているかわかる。
…本当に聖闘士星矢の神は化け物揃いです。
次回は『邪神エリス』編のエピローグとなります。
追伸:Ωにて主人公復活について。
『なるほど、ヒロインが叱咤しながら主人公フルボッコにすれば聖闘士は立ち直るのか…』
よし、自分も使おう、とオモタ。
そのうち蟹と魚を泣きながらグーパンして立ち直らせるなのはとフェイトが出るかもしれません。