俺たち転生者 蟹魚復権活動中   作:キューマル式

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年初の投稿はA‘S編のラストです。
『世界』の状況と、聖闘士たちの目指す最終目標が発表されます。



第39話 聖夜に祝福を/絶望へ反逆を(後編)

 

 

「あん?」

 

快人が気が付けば、そこは就寝したはずの自分の部屋ではなかった。

ただただ広い、真っ白な空間に快人はいる。

大晦日、確かに自分はベッドに入ったはずだが…。

 

「これが初夢だったら、味気ねぇ初夢だな…」

 

そんな風に呟いて辺りを見渡すと…。

 

「兄さん!」

 

「お、シュウト。 それに大悟に総司もいるのか…」

 

見れば、シュウト・大悟・総司の3人が快人へと近付いてくる。

 

「お前らもいたのか…シュウト、お前確かに自室に戻ったよな?」

 

「そうなんだけど…気が付いたらここに…」

 

シュウトの言葉に、大悟と総司も相槌を打つ。

 

「俺もだ。

 はやての作った年越しそばを喰って横になったのまでは覚えているんだが…」

 

「俺も同じようなものだ…。

 それに…俺にはこの空間、見覚えがある」

 

「そりゃ奇遇だな。

 俺も似たような空間には覚えがあるんだよ」

 

周囲を隙無く警戒する総司と同じく、快人も周囲へと気を配る。

この空間は快人たちにとっては転生の時に女神と会話した空間にそっくりなのだ。

 

(総司を転生させた、ヘラのやつが邪魔になった俺たちを殺しに来たか?)

 

ヘラの企みから総司を解放した快人は、これはその報復の一環ではないかと勘繰る。

その時、4人は同時に気配を感じ取り、バッと振り向いた。

そこには…。

 

「イモジャーアテナ!」

 

「イモジャーアフロ!」

 

「い、イモジャーアルテミスっす!」

 

「イモジャぁ、ガイアですぅ!」

 

「い、イモジャーアストライア!」

 

「五人合わせて女神戦隊ゴッデスファイブ!!」

 

…そこには間違いなく、今世紀最大のドウシヨウモナイ光景が広がっていた。

絶世の美女5人が、特撮ヒーローよろしくなポーズを取っていた。

そのポーズは一糸乱れぬ見事なものだが、そのことごとくが着込んだイモジャーが何もかもを台無しにしている。

 

「「「「「……」」」」」

 

「「「「……」」」」

 

双方に、これ以上ないくらい痛い沈黙が降りた。

しばしの沈黙の後、快人はクルリと後ろを向き、手を振って何事も無かったかのように立ち去ろうとする。

 

「悪ぃ、俺寝なおすわ」

 

「ちょっと待ちなさい、蟹名快人!

 あんた、この女神アテナが緊張がほぐれるようにこんなことまでやってあげたっていうのに、なんなのその冷めた反応は!?」

 

「やかましい、これ以外にどんな反応ができるかぁ!!

 何が戦隊か!

 全員同じイモジャー装着って、その時点ですでに戦隊として成立してねぇだろーが!!」

 

「そこは各々、同じイモジャーでも個性を見てもらいたいから」

 

「ちびっこは見た目第一なんだよぉ!!

 第一、イモジャー装備の意味が分からん!!

 女神がそんなもん着て出てくるなぁ!!」

 

「えー、これ動きやすくていいわよ。

 だって気を使うような相手じゃないし、かしこまった格好なんて必要ないでしょ?

 それに、女ってこんなもんよ。

 あんたたちの女神ちゃんたちだって、あんたらが知らないだけで実は休日はジャージ姿で髪もとかさずベッドでゴロゴロしてるだけなんだし…」

 

「初夢で男の夢を完全粉砕するようなことを、他でもない女神が言うんじゃねぇぇぇぇ!!!」

 

快人の魂からの叫びが、その白い空間に響いたのだった…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「まぁ積もる話もあるし、とりあえず座んなさい」

 

アテナ様はどこから出したのか数畳の畳を敷き詰めると座るように促した。

イモジャー女神軍団も畳に胡坐をかき、アテナ様はちゃぶ台に頬杖をつく。

 

「ふぅ…あ、なんか飲む? はい、眼兎龍茶」

 

「…お前はどこの幻覚宇宙人だよ」

 

快人たちは頭を抱えながらも、促されるままに畳に座った。

 

「さて…初めての相手もいるし、まずは自己紹介するけど、私は女神アテナ。

 それでこっちがアフロディーテにアルテミス、それにガイアにアストライアよ」

 

初見の女神様もいるため、とりあえずアテナ様は全員を紹介していく。

 

「こりゃ、そうそうたる女神様たちで。

 でも、俺としてはこういうことされてると、あんたらが女神様だってのがいまいち信じられないんだがよぉ…」

 

「えー、私らどう見ても女神じゃない?

 英語で言うとゴッデス」

 

「俺の知ってる女神アテナはイモジャーなんぞ着ないんだが…」

 

そのジト目の快人の言葉に、アテナ様はカラカラ笑いながら答えた。

 

「そりゃ、しょうがないわよ。

 私もみんなもそうだけど…私は『アテナであってアテナじゃない』もの」

 

「? そりゃどういう…」

 

「あんたのイメージのアテナ様って、親の頭かち割って出てきた神話のアテナ様とか、聖闘士星矢のアテナ様とかでしょ?」

 

「まぁ、その通りだな」

 

「まずはそれが誤解の元なんだけど…『アテナ』とか『アフロディーテ』っていうのは『個人名じゃない』の。

 言ってみれば『種族名』みたいなものなのよ。

 私のことを『アテナ』って呼ぶのは、あんたのことを『日本人』って呼んでるのに等しいのよ。

 まぁもっとも、人間には発音できないだろうから『個体名』は名乗らないんだけどね」

 

「ああ、だからか。

 あんたら、神話じゃお互いにあんま仲良くないからおかしいとは思ったんだよ」

 

快人はどうにも自分たちを転生させた女神たちが、自分の知っているイメージの女神とは違うことにやっと納得がいった。

彼女は『アテナ』という種族の中の1人でしかない。

『神話に出てきたアテナ』とか『聖闘士星矢のアテナ』とかは別にいて、彼女は『自分たちを転生させたアテナ』という人物なんだろう。

他の女神も同じなのだ。

少なくても『聖闘士星矢のアテナ』と『聖闘士星矢のアルテミス』はこんなにフランクな関係ではなかった。

そして、もしこの『世界』に『アテナ』が現れたとしても、それは目の前の女神とは違うのだろうと思う。

 

「まぁ、あんたら女神様のことはよくわかったよ。

 で、アテナ様よぉ。

 俺としては、あまりに俺たちを舐め腐ってて、ちょっくらブッ飛ばして差し上げてぇ神様がいるんだけどよぉ…」

 

「ヘラのことね。見てたからわかってるわよ。

 実はね、今日あんた達をここに呼んだのはそのヘラのことについてなのよ…」

 

そこまでアテナ様が言うと、それを引き継いだようにアフロディーテが話を始めた。

 

「あなたたちが生きる『世界』…あそこはどんな『世界』だと思う?」

 

「確か、アニメか何かに近い『世界』でしたっけ?」

 

「俺もそう記憶してるが…なんというアニメに近い『世界』かはわからんな」

 

シュウトと大悟が首を捻りながら答えると、横から総司の声が入る。

 

「この『世界』は、『魔法少女リリカルなのは』に近い『世界』なのだろ?」

 

「「「リリカルなのは?」」」

 

快人たち3人が首を捻る中、アフロディーテ様は頷く。

 

「そうよ。

 この『世界』は『魔法少女リリカルなのは』に近い『世界』よ」

 

「俺もヘラから渡された本で読んだだけだから、そこに書かれた概要程度しか知らないが…。

 大まかに言えば、高町なのは達を中心とした魔法少女が様々な事件を解決していくという話だ」

 

「ふぅん…」

 

総司の言葉に、快人はどうでもよさげに答える。

その様子が、アテナ様は意外そうだ。

 

「あら、意外な反応ね。

 なのはちゃんのことだから喰いついてくるかと思ったのに…」

 

「そりゃ『なのは』って名前のどこかの他人だ。 そんなのに興味ねぇよ。

 俺の知ってる、あのおとぼけ幼馴染のなのはは、この『世界』のたった1人だ。

 そんな見たことも聞いたこともない、どこかの誰かとイコールじゃない。

 ほかのやつだってそう答えるだろうぜ」

 

そう言って快人が顎で3人を指すと、肯定するかのように首を縦に振る。

 

「そうね、この『世界』はあなたたちにとっての現実。

 アニメに近い『世界』じゃないものね…。

 話を戻すけど、この『世界』は『魔法少女リリカルなのは』によく似た、『魔法文化の世界』よ」

 

時空管理局という魔法の力で次元世界で幅を利かせる組織がある辺り、その通りなのだろう。

 

「魔法文化という歴史を積み重ねた上で、今の『魔法文化の世界』はある」

 

アフロディーテ様は『世界』を表すのに分かりやすいのは樹木だという。

『魔法文化の世界』という長い年月をかけて成長した幹から伸びる、『魔法文化の世界の住人』という枝…これが『世界』と『個人』の関係だそうだ。

そして、快人たち転生者は、いわば『接ぎ木』だ。

『魔法文化の世界』という幹から伸びる枝に、他の法則の異なる別の枝を付ける行為…みかんの木の先に、リンゴの木を接ぎ木するようなものだとアフロディーテ様は言う。

 

「さて、ここまでが基礎知識。それじゃ次に質問。

 この『世界』に出てきたデスマスクしかりアフロディーテしかり邪神エリスしかり夢神ボペトールしかり…全員『復活』しているわ。

 何かおかしいことに気付かない?」

 

「あん? 一体何がおかしいんだよ?」

 

快人は頭を捻るが、隣の総司がゆっくり頷く。

 

「…確かにおかしい。

 『復活』というのは、『昔存在したものが蘇る』ことだ。

 ということは、この『魔法文化の世界』の過去に邪神たちが存在したことになるぞ」

 

「そういえば…」

 

「でもおかしいよ。 だってこの『世界』は『魔法文化の世界』なんでしょ?

 こう言うのも何だけど魔法じゃ、あの邪神たちをどうこうするのは無理だよ。

 そもそも、なんで『魔法文化の世界』にあの邪神たちがいるのさ?」

 

快人たちは今の『世界』の状況に頭を捻る。

そして…アフロディーテ様は今の『世界』の正体を語った。

 

「そう、さっきこの『世界』は『魔法文化の世界』だって言ったけど正確には違う。

 この『世界』は…『聖闘士(セイント)の神話の後に成り立った魔法文化の世界』よ!」

 

「「「「はぁ?」」」」

 

「分かりやすく説明すると…」

 

そしてアフロディーテ様の語るこの『世界』の歴史は、驚くべきものだった。

 

快人たちの知る聖闘士星矢の物語…それはこの『世界』で気の遠くなるほどの昔に実際に起こった出来事だったそうだ。

その後も聖闘士(セイント)たちは戦い続け、いつしかアテナの考えに賛同してくれた女神であるアフロディーテ・アルテミス・ガイア・アストライアの4人の女神たちと同盟を結び、聖闘士(セイント)は『女神たちの戦士』となったようだ。

そして聖闘士(セイント)たちの奮戦によってすべての邪悪な神は討たれたそうだが、その時に発生したビックバンにも匹敵するエネルギーは次元並行世界を作り、邪悪の神たちも次元の彼方へと消えていったそうだ。

気の遠くなるような永い戦いの果てに勝利した聖闘士(セイント)だが、もはや全滅の状態となりその技と存在は完全に失われてしまう。

そんな聖闘士(セイント)たちの小宇宙(コスモ)の技を見ていた過去の数少ない生き残りの人々は、何とかその力を自分たちにも使えないかと試行錯誤を繰り返した。

そしてその人々がたどり着いたのが『魔法』という力だった。

この世界の『魔法』は、太古に見た『聖闘士(セイント)の技』を疑似的に再現しようとした試みの結果だったのだ。

そして気の遠くなるほどの時が過ぎ、誰もが小宇宙(コスモ)の力の存在を忘れて、変わりに『魔法』が発達した世界…それがこの『世界』の正体だという。

 

「つまり『聖闘士星矢』の後、一巡しちゃった『世界』ってところかしら。

 さっきの木の例えで言うと…『聖闘士星矢の常識』という土壌に、『魔法文化の世界』という樹木が立っている状態よ。

 この土壌のことを『世界基盤』っていうんだけど…まぁ、これがこの『世界』の状態よ」

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

話を聞くと同時に、あまりにもな内容に快人が叫ぶ。

 

「なンなンですかい、その超神話は!?

 そんなもん超神話どころか『超☆神話』だ!!

 下僕神輿だ! 週一世界の危機だ! フォートレスアタックだ!

 美少女魔王はどこだ! なのはが冥魔王だ!

 しまいにゃカニアーマー着こんで、全力で蟹光線(イブセマスジー)ぶっ放すぞコラァァァ!!」

 

「落ち着いて兄さん!

 あと、カニアーマーと蟹光線(イブセマスジー)は兄さん普通にできるでしょ」

 

「あ、そうだった」

 

快人を必死でなだめるシュウト。

だが、その内容はあまりにもすさまじく、シュウトも動揺は隠せない。

 

「待ってくれ!

 聖闘士星矢の戦いがこの『世界』の過去に実際にあったことだと言うなら…あのボペトールだけではない、他の神々も次元世界単位で現れる可能性があるというのか!?」

 

「その通りッス。

 この『世界』にはこれから、次元世界規模ですべての神々の復活の危機が起こり得るッス」

 

動揺しながらの大悟の言葉に、アルテミス様が答えた。

あまりの内容に一同言葉を失うが、そんな中総司が待ったをかける。

 

「待て。

 さっきの説明だと『世界基盤』は土壌、『世界』は樹木のような関係なのだろう?

 なら、こんな土壌から性質の違いすぎる『魔法文化の世界』という木が育つのはおかしいと思うんだが?」

 

現実での植物もそうだが、植物はそれの成長に適した土壌でしか育つはずがない。

塩分を多く含む土壌で、塩分に弱い植物など成長するわけがないのだ。

その言葉に、メガネの位置を直しながらアストライア様が言った。

 

「いいところに気付いたわね。

 そう、その通り。

 普通なら『魔法文化の世界』は、『魔法の常識』という土壌でしか育たないはずなのよ」

 

「だったら何故…?」

 

その言葉に、アテナ様は吐き捨てるように答えた。

 

「ヘラのやつの仕業よ!

 あの女…この『魔法文化の世界』を、『聖闘士星矢の常識』という世界基盤に移し替えやがったのよ!!」

 

それは、木を引っこ抜いて他の場所に移し替える行為に等しい。

塩分を多く含む土壌に、塩分に弱い植物を植えればどうなるか…それは『枯れる』というごくごく簡単な結論に行き着く。

それは、この『世界』にも言えるだろう。

小宇宙(コスモ)を使う強大な邪悪の神々が常識として存在し復活するのに、それに抗うすべがない『魔法文化の世界』ではどうなるか…その結末は1つだ。

 

「オイオイオイオイ、愉快すぎんだろ、ヘラの野郎は!!

 何が楽しくて次元世界全部を含めた、この『世界』丸ごと皆殺しにしようってんだ!?

 これが神様流の暇つぶしってやつかい、女神様がたよぉ!!」

 

「私たちをあの女と一緒にすんな!

 こっちだって、こんなフザけたマネにはハラワタ煮えくり返ってるのよ!!」

 

思わず感情的に叫んだ快人に、こちらも感情的に返すアテナ様。

その2人をなだめるようにして、アフロディーテ様が間に割って入った。

 

「その理由も今から説明するわ。

 この『世界』をこんな風にヘラが変化させたのは…あなたたち『転生者を殺すこと』が目的なの」

 

「はぁ!?

 俺ら殺すためだけに、『世界』全部を一緒に皆殺しにしようってか!?

 一体どういう理屈なんだよ!!」

 

「しっかりとした理由があるのよ」

 

そう言ってアフロディーテ様はガイア様に視線を送ると、ガイア様が頷いて説明を始める。

 

「私たち神のお仕事は『魂の適正管理』ですぅ。

 魂を適正に管理し、世界を維持していくことが役目ですぅ。

 でもすべてが予想通りにいくわけじゃなくて、『予定外の事故』っていうのがあるですぅ。

 あなたたちのあった『あの地下鉄事故』、あれが丁度、その『予定外の事故』でしたぁ」

 

「私たち『神』だって、誰彼かまわず転生なんてさせられないのよ。

 そんなことをすれば、『魂の適正管理』なんて、できるわけないからね。

 その辺りは厳しく規則で決まってるの。

 でも、これの適応範囲は『予定内の管理された魂』に限るわ。

 極々まれに起こる『予定外の事故』の魂はそのまま霧散してしまうもの。

 だから転生とかさせても規則違反にはならないってわけよ。

 ここにいる全員が『あの地下鉄事故』の犠牲者なのはそのためよ。

 でもね…この『地下鉄事故』こそ、すべての始まりだったのよ」

 

「それはどういう…?」

 

「あの事故は、事故じゃなかったのよ!」

 

「「「「な!?」」」」

 

「あれはね…『予定外の事故』に見せかけてヘラの起こしたものだったのよ!

 霧散していく魂を、自分の懐に入れるためのね。

 言ってみれば…あれは『魂の横領事件』だったのよ!!」

 

快人たちは二の句が告げられない。

あの『死』が、事故ではなくヘラによって引き起こされたものだった?

そんな混乱の中、アテナ様は説明を続ける。

 

「あいつの計画通り、『予定外の事故』として地下鉄事故が起こり、そのまま霧散していくはずの魂はヘラの懐に入るはずだったのよ。

 ところが、ヘラにとっては思いがけないイレギュラーが発生した。

 それが私たちよ」

 

「アテナと私は、偶然見つけた『予定外の事故』で見つけたあなたたち2人を転生させた。

 同じようにその様子を見ていたアルテミスとガイアも『予定外の事故』だからと、それぞれ転生者を送った。

 このことを知ったヘラは慌てたわ。

 あなたたち転生者の魂はヘラの行った不正…『予定外の事故』に見せかけ魂を搾取したということの決定的な証拠になる。

 そのために、ヘラは同じく地下鉄事故の魂から転生者を送り、刺客にした。

 転生させた双子を殺し合いさせたのも、証拠になるような魂を一つでも減らしたかったからよ。

 強い方を刺客にして、残りは証拠隠滅ってことね」

 

「…」

 

「…おい。 ムカツクのはよく分かるがここで暴れるなよ、総司」

 

「…分かっている」

 

話を聞いて一気に形相が変わった総司の肩にポンッと手を置き快人が言うと、総司は吐き捨てるように言い放って落ち着きを取り戻す。

 

「ただ、それでも不安のあったヘラは、『聖闘士星矢の常識』という世界基盤に変えて邪神なんかを復活させ転生者への刺客にしようとしたのよ。

 『魔法文化の世界』の戦力じゃ、黄金聖闘士(ゴールドセイント)の力を持つあなたたちをとてもじゃないけど殺せないからね」

 

「不正の証拠隠滅のために転生者を殺そうというのは分かった。

 だが、それなら何故俺の動きにいちいち命令をしてきたんだ?

 正直に言ってヘラの命令で縛られてなければ、俺は奇襲なりで全員を仕留められたと思う。

 それを何故させなかったんだ?」

 

総司のその疑問にはアストライア様が答えた。

 

「それはなるべく目立たないようにするためよ。

 あなたはヘラから、『リリカルなのは』全体の概要を知らされていたから分かるはずだけど、この『世界』では事件の起こるタイミングが決まっていた。

 そこ以外でイレギュラーな事件が起これば、その分アテナたちにこの『世界』の異常を感づかれ探られる可能性が高くなる。

 そこで、本来事件の起こるタイミングを狙っての介入だけに留めさせたのよ」

 

「介入のタイミング合わせをさせられた、ということか…」

 

「まぁ、あの女のことだから自分の星座が目立つタイミングになることも狙ってたのかもね。

 自己顕示欲が強いし、あの女…」

 

アストライア様に次いで、アテナ様が答えて肩を竦める。

そこまでの話が終わると、アテナ様たち女神一同がいきなり佇まいを整えた。

 

「さて…ここから『最悪』な話をするわよ」

 

「今までの話で十分すぎるほどに最悪な気分なんだが…まだあるのかよ?」

 

快人は苦笑して肩を竦めるが、女神たちの顔に一切の笑いはない。

それがことの深刻さを漂わせる。

快人たちも佇まいを整え、真剣に聞く姿勢を取った。

そして、アテナ様は最悪の絶望を語りだす。

 

「ヘラはさっき言った通り、本来この『世界』で事件の起こるタイミングを狙っての介入する、という話はしたわよね?

 双子座は知ってると思うけど『リリカルなのは』において、丁度10年後…なのはちゃんたちが19歳のときに大事件が起こるの。

 ヘラはそのタイミングに合わせた形でことが起こるよう…あんたたちを殺す最大の干渉をしてやがったわ。

 それは…冥王ハーデス軍の来襲よ!」

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

その言葉の意味に、快人たち4人は目を見開いた。

冥王ハーデス――聖闘士星矢を知るものなら知らぬ者はいない、聖闘士(セイント)たちアテナ軍の宿敵だ。

聖闘士(セイント)の存在意義は冥王ハーデスの侵攻を阻止することだといってもいいほどの絶大な『神』である。

単純に『神』としての力も強いが、その脇を固める死と眠りの神、そして冥衣(サープリス)を纏い黄金聖闘士(ゴールドセイント)をも上回りかねない実力者もいる闘士、108人の冥闘士(スペクター)、各々が青銅聖闘士(ブロンズセイント)級の力を持つ無数の雑兵(スケルトン)…次元世界を含め、すべての生きとし生けるものを皆殺しにしてもお釣りがくる戦力である。

その軍団が10年後来襲するという。

 

「ば、バカな!?

 この『世界』が聖闘士星矢の物語の超未来だというのなら、冥王ハーデスは完全に倒しているはずだ!

 何故それが…」

 

「だから、それをヘラが無理矢理復活させたんじゃないの!!

 この『世界』ごと、あんた達転生者を皆殺しにする最終兵器としてね!!

 ほかの神や軍団が復活するかどうかは、確かなことは分からない。

 でも、10年後に来襲するハーデス軍だけは、この『世界』に起こる絶対確定の出来事よ!!」

 

キレ気味でアテナ様が語るのは、確定した絶望的な未来だった。

如何に快人たちが強くても、敵戦力は単純計算で冥闘士(スペクター)108人と、最高クラスの神が3体…勝負にも何もなりはしない。

10年後の世界の破滅を、神から宣言されたようなものだ。

そのあまりの内容に、快人たちも沈黙するしかない。

そんな快人たちへと、アフロディーテ様はこんなことを言い出した。

 

「そこであなた達に提案があるの。

 あなたたち…死んでくれないかしら?」

 

驚きに目を見開く快人たちに、アフロディーテ様は話を続ける。

前述したとおり、快人たち転生者の魂はヘラの不正に対する確実な証拠となる。

だから、死んでその証拠を捧げてほしいというのだ。

 

「…本気で言ってやがるのか、女神様?」

 

「本気よ。

 あなた達の魂という証拠が押さえられれば、ヘラを裁くことができる。

 ヘラを裁いた後に、あなた達の魂は今度は確実に安全な世界に転生させてあげるから…どうかしら?」

 

それは死後の安寧という神からの甘い誘惑だった。

 

「…ヘラを裁けたとして、この『世界』はどうなるんだ?」

 

快人の問いに、アフロディーテ様は首を振る。

 

「どうにもできない。

 ヘラは裁けるし、その力をあの『世界』に還元してあげることはできる。

 でも、さっき言ったように捻じ曲がった運命で、ハーデス軍が10年後に復活することだけはどうやっても回避できないわ。

 あの『世界』にある魔法の力で、復活したハーデスを止められるわけがない。

 あの『世界』の滅びは、結局変わらないわ」

 

「…そうかい。

 なぁ、女神様たちよぉ…俺たち転生者一同、恐らく同じ答えだからいっぺんに答えてやるよ…」

 

そして…快人・シュウト・大悟・総司の4人の声が重なった。

 

 

「「「「ふざけんじゃねぇ!!!」」」」

 

 

それは明確なる拒絶の言葉だった。

 

「何故?

 10年後、必ず滅びがやってくる。

 あなた達は安全な『世界』に転生できるのよ?」

 

「そうやって自分だけ生き残ってなんの意味があるんだよ…」

 

アフロディーテ様の言葉に答える快人の脳裏に浮かぶのは、幼馴染の輝くような笑顔。

 

「破滅が迫っているからって、なのは見捨てて自分だけ安全なところに逃げて…そんなものに価値はない!!

 俺にとって今、この時代で、この『世界』で、あいつと一緒に生きていることに意味が、価値があるんだよ!!」

 

そのあとを次ぐシュウトの脳裏に浮かぶのは、幼馴染の愛しき微笑み。

 

「辛い時も、苦しい時も、悲しい時も、楽しい時も…フェイトと一緒に同じ時を歩んでいけることがボクの喜びだ!

 破滅ごときで、それを捨てて逃げる気はない!!」

 

それを次ぐ大悟の脳裏には幼馴染の笑いと、新しいたくさんの家族。

 

「唐突の人生の終わり、両親との死別…俺は運命を呪ったこともある。

 だが、それでも俺は今の運命に感謝している!

 俺のそばにははやてが、シグナムたちが、家族がいる!!

 その家族を迫り来る破滅の只中に置き去りにして、自分だけ逃げれるものか!!」

 

「…あなたはどうなの? あなたはヘラに恨みがあるんでしょ?

 その命で…一矢報いることができるわよ?」

 

快人、シュウト、大悟の答えを聞いたアフロディーテ様は、未だ答えのない総司へと言葉を投げる。

その言葉に、ゆっくりと総司は答えた。

 

「俺は…ヘラを恨んでいる。

 この命一つであの女を破滅させてやれるなら安いものだ…。

 そう…思っていた…」

 

少しだけ総司は目を瞑る。

その脳裏を横切るのは弟の姿、そして…自分のために涙を流したお嬢様。

 

「弟を殺した俺が、自分だけ安全な世界で平和になど逃げれるものか。

 それに…弟を殺すような馬鹿な俺のために、本気で涙を流した人がいた。

 それだけの借りを受けて、自分1人が逃げるなど俺のプライドが許さない…」

 

「ツンデレが。 はっきり素直に愛しいすずかお嬢様を守るためです、って言えよ」

 

「…殺すぞ、快人。

 そうだな、追加でお前をズタボロにするまで死ねん、というのも入れておくか。

 負けたリベンジをしておきたいからな」

 

「お前と本気でケンカってのは、もう金輪際ゴメンなんだがな」

 

大仰に肩を竦める快人に、総司は苦笑を返す。

そんな4人に、アフロディーテ様は再び確認した。

 

「…それじゃ4人とも、この『世界』で戦うっていうのね?

 勝ち目のない、滅びしかない、絶望的な聖戦を…」

 

そんなアフロディーテ様に快人は返した。

 

「だから、どうした?」

 

その言葉に、アフロディーテ様はもとより、アテナ様もアルテミス様もガイア様もアストライア様も目を点にする。

女神たちのその様子に、快人は笑うと言葉を続けた。

 

「こっちの戦力は黄金聖闘士(ゴールドセイント)4人。

 あっちは冥闘士(スペクター)108人と、最高クラスの神3体。

 アテナの加護はないし、神封印の神具もなければ、冥闘士(スペクター)封じの数珠もない。

 こりゃ絶望的な戦力差だわ。 思わず小便ちびるくらいにな。

 でも…だからどうしたよ?」

 

未来にあるのは圧倒的絶望。

だが、それでも不敵に笑いながら快人は言い放つ。

 

「俺はさ、あんたらに転生させてもらって黄金聖闘士(ゴールドセイント)の力を貰っただけの、偽物の黄金聖闘士(ゴールドセイント)かもしれねぇ。

 だが、それでも俺は黄金聖闘士(ゴールドセイント)として、この『世界』で生きる!

 聖闘士(セイント)は全うして死ぬのが運命。

 俺は聖闘士(セイント)として戦って戦って戦い抜いて、あいつらと一緒に生き抜く!

 あの『世界』で生き抜くことを、全うする!!

 『たかが』絶望的な戦力差、それがどうしたよ!

 その程度の理由で、俺たちが、黄金聖闘士(ゴールドセイント)が全うすることを止められると思うなよ!!」

 

それはただの夢想だったのかもしれない。

光の無い絶望に対する、ただの虚勢だったのかもしれない。

だがそれでも、快人は胸を張り、いつものように不敵に笑って言い放つ。

結局、やることはいつもの通りだ。

儚い夢幻を、小宇宙(コスモ)を燃やして奇跡を起こし、現実にしてやることだけ。

たったそれだけの、シンプルなお仕事だ。

女神さまたちは、その答えを飲み込むように数度頷く。

そして、アフロディーテ様は静かに問うた。

 

「本気、なのね?

 全員、勝ち目のない聖戦をやろう、っていうのね?」

 

「生憎、俺たち転生者全員、分の悪い賭けに張るバカどもでね。

 狂気の沙汰を楽しませてもらうぜ」

 

肩を竦める快人。

その答えを聞いたアテナ様はスクッと立ち上がった。

そして、その恰好がイモジャーから女神としての正装へと変化する。

 

「よく…よく言ったわ蟹名快人!!

 みんな、いいわよね!

 覚悟、決まったわよね!!」

 

アテナ様の問いに、他の女神たちも微笑みながら立ち上がると正装へと姿を変化させる。

 

「当り前よ、アテナ!」

 

「人間にこれだけ熱いこと言われてたら、黙ってられないッス!」

 

「私もぉ、信じますぅ!!」

 

「規則は守るものだけど…たまには破ってみるのも悪くないわ!」

 

何やら気合十分な女神様たちに、今度は快人たちが面食らった。

そんな快人たちに、代表してアテナ様が言う。

 

「あんたたちの決意、確かに聞かせてもらったわ。

 そして…私たちもあんたたちに賭けてみることにするわ!

 もう1つの、ヘラを裁くための証拠に!」

 

「もう1つの証拠?」

 

その言葉に頷いたアフロディーテ様が続ける。

 

「あなた達の魂以外にもう1つ、ヘラの悪行の確実な証拠があるわ。

 それは…ハーデスよ!!」

 

そう、本来完全に滅ぼされたハーデスはヘラによって復活させられている。

いくら『世界基盤』を変えていてもこれは絶対にありえないことなのだ。

だから、ハーデスはヘラの『世界』に関する多大な干渉の、十分な証拠になるのだ。

 

「つまりあなた達が全員殺される前にハーデスを倒せば、その段階でヘラを裁くことができる!

 そうすればヘラから神の資格を剥奪し、その神の力をあなた達の暮らす『世界』の平和のために還元できるわ!!」

 

「でもハーデスは強大、その軍勢は精強ッス!

 今のままじゃ、どうやっても勝てないッス!!」

 

「そこでぇ、私たちもぉ、あなた達に少しでも有利なように『世界』に干渉してあげますぅ!!」

 

「おい、ちょっと待て! あんたらそれは規則的にヤバいって言ってなかったか?」

 

快人の当然の言葉に、アストライア様が答えた。

 

「無論激ヤバ、バレたら私たち5人ともタダじゃ済まないでしょうね。

 でも、それでもあんた達に賭けてみたくなったのよ」

 

「狂気の沙汰ほど面白いんでしょ?

 あんた達の未来への賭けに、私たちも付き合わせなさい!!」

 

女神様たちの言葉に、4人は胸を打たれるようだった。

『神』でもヘラのような悪神ばかりではない、自分たちに味方する『神』もいることが心強い。

 

「でも…それほど大したことはできないわ。

 私たちがしてあげれることは…可能性を上げることだけよ」

 

そう言ってアテナ様は支援の内容を話す。

その内容は次のようなものだった。

 

 

1、聖域(サンクチュアリ)の実在

2、すべての聖衣(クロス)の実在

3、聖闘士星矢に起こったことが起きる『可能性』の付加

 

 

というものだ。

 

「実はこのほとんどはすでにガイアが用意してくれてたんだけどね…」

 

そう言ってアテナ様は苦笑する。

実はガイア様はヘラの不正を察知するのと同時に、コツコツと転生者支援の用意をしてくれていたのだ。

この『世界』は歪められ、聖闘士星矢の超未来という『世界』になってしまっている。

ならば、聖闘士星矢に則した形での支援ならできるはずだと考えたのだ。

ギリシャに聖域(サンクチュアリ)を作り、すべての聖衣(クロス)を実在するように設定し、聖闘士星矢に起こったことが起きる『可能性』が起こり得るようにしたのだ。

 

「具体的に言えば、この『世界』にも聖域(サンクチュアリ)があり、そこには残りすべての黄金聖衣(ゴールドクロス)を含め、相当数の聖衣(クロス)が納められているわ。

 この聖衣(クロス)には蟹名快人、あんたはもう助けられてるわよ」

 

「もしかして…ハクレイじいさんのことか!」

 

ガイア様によれば現在、聖域(サンクチュアリ)には最後の転生者がおり壊れていた祭壇星座(アルター)聖衣(クロス)を快人たちと同じ方法で修復してくれたそうだ。

その祭壇星座(アルター)聖衣(クロス)を、ガイア様が黄金聖衣(ゴールドクロス)と同じように先代たるハクレイの魂を現出させれるように変えて、最後の転生者が小宇宙(コスモ)を込めてくれたらしい。

だからこそ、総司との戦いの時に快人を助けに黄泉比良坂(よもつひらさか)までやってきてくれたのだ。

知らずのうちに最後の転生者に命を助けられていたことに快人は驚く。

 

黄金聖衣(ゴールドクロス)はすべてあんた達と同じ仕様、クロストーン化に『守護宮』に先代の魂に完全自己修復能力持ちよ。

 現在聖域(サンクチュアリ)に無い聖衣(クロス)も、次元世界のどこかに必ず存在するようになっているわ。

 あと『可能性』…聖闘士星矢で起きたあらゆることは、誰にも、どの聖衣(クロス)にも起こり得る『可能性』があるわ。

 例えば…神聖衣(ゴッドクロス)になる、とかね」

 

その言葉にシュウトと大悟は、以前の出来事に納得がいって頷く。

総司を助けた時、快人の蟹座聖衣(キャンサークロス)が瞬間だけ神聖衣(ゴッドクロス)に変わったが、そういう『可能性』をすべての聖衣(クロス)が潜在的に秘めているようになっているというのだ。

 

「あと、あの『世界』においては私たち5人の女神同盟による聖域(サンクチュアリ)になっているわ。

 通常より強力な結界に加護に神具…さすがに新しい転生者や、纏う聖闘士(セイント)を送り込むことはできないからこの程度しかできないけど、これが私たちからの支援よ」

 

「いいや、十分すぎるぜ。 女神様たち!」

 

聖闘士(セイント)の総本山である聖域(サンクチュアリ)が強力な形での復活。

聖衣(クロス)の実在。

『可能性』の付加。

それにハクレイに最後の転生者の存在。

十分すぎるほどの支援である。

そして、やるべきことも決まった。

 

「聖戦までの10年…俺たちで新しい聖域(サンクチュアリ)を創る!!」

 

「ええ!

 セージたちには私たちからすべて説明しておくわ!

 あの『世界』を、未来を救いなさい!

 私たちの選んだ、黄金聖闘士(ゴールドセイント)たち!

 最強の、女神の戦士たちよ!!」

 

アテナ様がそう言って杖を掲げる。

その杖からの光が、世界を包んでいく。

その光と共に、快人たち4人の意識も光に飲まれていった…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

バッ!

 

快人は自室でベッドから飛び起きる。

 

「兄さん!」

 

同時に、ノックもなしでシュウトが快人の部屋へと入ってきた。

 

「シュウトか。

 お前も聞いたな、10年後の聖戦…」

 

「もちろんだよ、兄さん」

 

「忙しくなるな、これから…」

 

答えて快人は空を見上げる。

そこにあったのは雲一つない、綺麗な元旦の空だった…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「「「「あけまして、おめでとう!!」」」」

 

振袖を着込んだなのは・フェイト・はやて・すずかが揃っていた。

現在13時過ぎ、昼食後にお参りに行こうと振袖を用意した4人は待ち合わせの月村家に集合していた。

アリサは海外で新年を迎えるということで、今は日本にはいない。

そして、少女たちの傍には黄金聖闘士(ゴールドセイント)の4人の姿がある。

 

「ほな、行こか!」

 

「ちょっと待ちなさい…」

 

はやてがお参りへ行こうと号令をかけるが、それを突然現れたセージに止められる。

 

「どうしたの、セージおじいさん?」

 

「なに、なのは嬢…お参りなのだが、神社ではなく別のところに行くのはどうかと言おうと思ってな」

 

「「「「??」」」」

 

その言葉に、4人娘は小首を傾げる。

 

「我ら聖闘士(セイント)の総本山、聖域(サンクチュアリ)…興味はないか?」

 

「本当なの!?」

 

聖闘士(セイント)の総本山!?」

 

「うわぁ、むっちゃ楽しそう!」

 

「興味あります!」

 

セージのその言葉に、4人ともすぐに乗り気になったようだ。

セージが頷くと、総司が前に出る。

 

「場所はギリシャ、俺の『アナザー・ディメンション』で空間移動をするから全員、聖闘士(セイント)から離れないようにな」

 

「よろしく、ジェミえも~ん!」

 

「…」

 

「ヘイ、ストップ!

 俺の身体が吸い込まれてる不具合がぁぁぁぁぁ!!

 異次元、異次元の扉開いてるから!!

 ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

声を残して、快人が異次元へと消えた。

それを確認してから、総司は皆に振り返り白々しく言い放つ。

 

「このように危険なので、次元移動前はふざけない様に」

 

「って、てめぇは俺を殺す気か!!」

 

これまた突然現れた快人が総司へと食って掛かる。

 

「なんだ、先にギリシャに送ってやろうとしたんだが失敗だったか…。

 いや済まなかったな、快人」

 

「…やっぱてめぇとは殴り合う運命らしいな、総司」

 

「はいはい、そこまでなの」

 

「ほら、総司くんもやめようよ」

 

ピクピクと青筋を立てる快人をなのはが引っ張り、総司の手をすずかが引く。

その様子をシュウトとフェイト、はやてと大悟が笑う。

 

「では、そろそろ頼む」

 

セージの言葉に、総司が小宇宙(コスモ)を燃焼させ『アナザー・ディメンション』で空間に穴をあける。

ぽっかりと空いた空間の穴。

 

「では、参ろうか…」

 

セージがその中に入っていく。

続けて手をつないだシュウトとフェイトが、大悟とはやてが、総司とすずかが入っていく。

そして…。

 

「ほら。 行くぞ、なのは」

 

「うん!」

 

固く手と手を繋ぎ、空間の穴へと歩く2人。

平和な元旦の一風景。

だが、この一歩は迫り来る絶望の未来へと踏み出す一歩。

その一歩を、快人は決してこの手を離さないように願いながら踏み出す。

 

 

次元世界すべての存亡を賭けた『聖戦』への一歩は、こうして踏み出された。

 

 

のちに、聖域歴1年と呼ばれることになる年のことである…。

 

 

 




これにてA‘S編は終了です。 StS編は『聖戦編』に変更となりました。
この後の10年は来るべき聖戦に向けて、戦力増強に駆け回ります。

今後、新聖域の現状保有戦力は劇中で語りますが大まかに言って

黄金聖衣…12体
白銀聖衣…8体
青銅聖衣…22体

計42体+サンクチュアリ+神具多数。
とはいえ、纏う聖闘士がいなければ聖衣も意味はないので、その辺り聖域組の悩みの種になっていくでしょう。
見事なまでに青銅一軍聖衣は無しです。
黄金聖闘士は5人以上には増えない、と明言していますので戦力的には超絶的にツライ…。

次回は最後の黄金聖闘士とアリサのお話の予定。
やったねアリサちゃん、これで仲間に入れるよ!


今週のΩ…天秤座VS水瓶座。天秤座は味方でした。
     紫龍の弟弟子だった玄武さん。龍峰の周辺は本当に恵まれてるなぁ…。
     老師も出たし、若き日の天秤座を纏った紫龍も出てきて満足。
     時間を半分にするなら倍のスピードで動けばいい、とかなんという脳筋理論。
     水瓶座はもう、時間を軽々しく操りすぎ。
     時間逆行させて傷を完全回復とかもう無茶苦茶。
     クロノ・エクスキューションはポーズだけはオーロラエクスキューションだったなぁ。
     
     次はソニアさんが蠍座の黄金聖闘士として登場です。
     2人目の女性黄金聖闘士ですが、はてさて…。
     もともとスズメバチのハイマーシアンなので毒針つながりでしょうか?
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