というわけで2週間ぶりの投稿になります。
誰かこの世から異動を消して下さい…。
今回は最近焦点の当たらなかったなのはたち3人娘の任務のお話です。
この3人には今後のことも兼ねて、強くなって貰わないといけませんから。
そして聖戦までの10年の序盤、『聖域始動編』のラストとなる『あの事件』へ続きます。
ここはとある管理世界。
地表の約60%以上を砂漠が占めるこの世界において、砂漠とは砂で出来た第二の海。
その砂の大海原に今、悲鳴と怒号が響き渡っていた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
断末魔の悲鳴と、肉の焦げる嫌な臭いがあたりに漂う。それを感じながら、この世界に駐留する管理局部隊長は吐き捨てるように言った。
「くっ! やつらめ、もうここまできたか!!」
「隊長、左翼に展開した部隊は敵の熱線によって壊滅状態!
右翼ももう長くは保ちません!
撤退しましょう!」
「バカを言うな!
ここは首都目前の最終防衛ライン、ここを抜ければ首都まで一直線だ!
退く場所などどこにある!? 首都へ退け、とでもいうのか!?
市街地戦となれば避難の完了していない市民への被害も甚大だ。
それは許可できん!」
「しかし隊長、現実を見てください!
あんな化け物どもを相手にどうすれば良いと言うんですか!!」
撤退を推奨する副官の言葉に、隊長は歯噛みをする。そして隊長は今までのことを思い出していた。
事の始まりは1か月ほど前のこと、この世界に大規模な地震が起こった。その直接的な被害は大きかったが、それ以上に奇妙なものが砂漠の真ん中に現れたのだ。それは地震の変動によってか砂漠に頭だけ現れた。地元では伝説にある『災いの地』だと言われる漆黒のピラミッドである。
すぐに調査隊を向かわせようとしたが、地震による救助と復興のためすぐには動けなかった管理局駐留部隊。だがそれがいけなかった。
地震の混乱で立ち入りを制限することができず、墓荒らしがその漆黒のピラミッドへと盗掘に向かってしまったのである。
そこで何が起きたのかは分からない。だが結果として、その漆黒のピラミッドは完全に地表へと姿を現し、そこから現れた数え切れないほどの怪物がすべてを破壊しながら人々の生活圏へと迫っているということだ。
「隊長! 奴らの一団が前線を突破、ここに向かってきています!!」
その言葉と共に熱線がすぐ傍を薙いだ。
「うおぉぉ!?」
「全員迎撃準備! 来るぞ!!」
隊長のその言葉と共に、黒い人影が飛び込んできた。
それは犬のような頭をした人型だ。その手には剣を一振り持っている。その剣を掲げるとその剣から凄まじい熱量の熱線が放射された。
「ま、まただ!? 魔力反応も何もないのに何であんなことが!?」
「考えるのは後だ! 攻撃開始!!」
途端に、その人影に向かって魔力弾の集中砲火が降り注ぎ、蜂の巣になったその人影は崩れ落ちるが……。
「!? また再生した!?」
そう、その人影は一端は崩れ落ちるがすぐに再生する。それもそのはず、その人影は砂でできていたのだから。バラバラの砂に崩れても、すぐに砂から再生し襲い掛かってくる。
「何なんだこいつらは!? 魔力反応もないのにどうしてこんなことが!?」
「やはり何かのロストロギアか!?」
「怯むな! 攻撃を続けろ!!
一分一秒でもいい、時間を稼ぐんだ!!」
常識外れの怪物たちに混乱しかかる隊員たちを隊長は叱咤し攻撃を続けるが、その胸中では不安と絶望感が漂う。この常識外れの怪物たちに対して、当然本局へと援軍の要請はしている。しかし、どんな援軍が来ればこの理解不能な敵を撃退できるのかが分からない。
勝利の全く見えない絶望的な状況、だが逃げることは許されない。ここを突破された後にあるのは戦う力を持たぬ一般市民たちだ。戦う力のある自分たちが逃げ、戦う力を持たぬ市民が蹂躙されるなど、どうあってもやらせてはならない。
「全員、化け物どもを街に近づけるな!! 守り抜け!!」
隊長の叱咤の元、士気旺盛に戦う隊員たちだがその戦力差という現実は残酷だ。
「た、隊長!? 前方の一団が!?」
副官の言葉に見れば、複数の怪物たちが剣を掲げている。圧倒的な熱線を放つその剣からの熱量が集中し、巨大な火球を形成していった。
「奴らここを一気に吹き飛ばすつもりか!?
総員退避!!」
「ダメです、間に合いません!?」
隊長の退避の指示より早く、その巨大な火球は放たれた。圧倒的なまでの熱量はどんな防御魔法すら貫き、その身体を蒸発させるだろう。その場にいた誰もが、死を覚悟した。
しかし……。
「パーフェクト・スクエア!!」
声が響き、巨大な火球の前に光の盾が展開された。すべてを焼き尽くすはずの獰猛な熱を、しかしその盾は防ぎ切る。
「これは……」
舞い降りる白銀の鎧に身を包んだ3人の少女に、その場にいた隊員たちは目を奪われた。そして続いて現れる騎士たち。
待ち望んだ増援と、その纏う鎧の鮮烈な美しさ。戦場に舞い降りた彼女たちに、天使の姿を見る。
だが、この隊員たちのどれほどの人間が正確に予想しただろう?
この可憐な少女たちこそ、敵にとって最大の死神であることに。
「き、君たちは……」
隊長のその呟きと共に、通信ウィンドウが開く。
『こちらアースラ、増援に到着しました!
大丈夫ですか!?』
「あ、ああ。 おかげで助かった」
『よかった。
こちらの部隊が攻撃は受け持ちます。 皆さんはその隙に退避してください!』
「しかし、奴らは普通ではない!
いかな戦力であろうと奴らには……」
エイミィの言葉に隊長が言うのと同時に、人影の一体が襲い掛かってくる。
だが……。
「やぁぁぁぁ!!」
金の髪の少女の魔力刃が人影を切り裂いた。普通ならばすぐに砂から再生するはずのそれが、今は再生する様子がない。
「……やっぱり、この子たち
同じ
「それなら私たちの出番!」
「ほな行こか、なのはちゃん、フェイトちゃん!
シグナム、ヴィータは私らと一緒に敵を減らすんや!
シャマルは情報支援、ザフィーラは撤退する味方の援護!」
「「「「了解!!」」」」
3人の少女たちを筆頭に飛び出していく彼ら。
今まで手も足も出なかったのがウソのように、あの怪物たちが蹴散らされていく。
「彼らは一体……」
「そう言えば……本局で聞いた覚えがあります」
茫然と呟く隊長に副官が聞いた話をし始めた。
「管理局と、協力組織である『
そこは『
「何! あの『
『
そんな隊長に、副官は頷く。
「そう、アースラを本部とした部隊。
正式名称『第13機動独立特殊事件対応班』……通称『Gフォース』です!」
~~~~~~~~~~~~~~~
「相手、犬の頭やし見たところやと『アヌビス』とかエジプトの神様っぽいなぁ」
「何だか、この間快人くんと見た映画思い出しちゃったの」
「ああ、あの映画な。
せやったら黒幕はスコーピオンキングやから、ムキムキマッチョなシャウラくんやな」
「さすがにそんなシャウラは想像できないなぁ」
3人娘ことなのは、フェイト、はやての3人はとてもここが戦場とは思えないような会話を交わして微笑みあう。だが、敵たちを視界に収めた瞬間、彼女たちの顔は真剣なものへと変化した。
「ディバイン・バスター!!」
なのはから放たれた桃色の光線が薙ぐように放たれる。その一撃は敵の一角をなぎ倒していた。
「行けるな、ヴィータ、テスタロッサ!」
「おう!」
「はい!」
シグナムの言葉と共に、なのはのディバイン・バスターで開けた傷口を広げるように3人が飛び込んでいく。
「やぁぁぁ!!」
「レヴァンティン、G型カートリッジ、ロード!!」
「アイゼン、G型カートリッジ、ロード!!」
魔力と共に
「はぁぁぁぁ!!」
シグナムの連結刃が次々に敵を切り裂いていく。一方のヴィータが魔力と
「ギガントシュラーク!!」
そんな3人へとその剣を掲げ熱線を放とうとしていた敵を正確になのはのアクセルシューターが撃ち抜いた。
『なのはちゃん、ヴィータちゃんの11時方向、射撃体勢に入った敵がいるわ!』
「OK、シャマルさん!!」
シャマルの情報支援によって邪魔者を的確に撃ち抜いていくなのはの射撃。
そんな彼女たちの猛攻に敵わぬと思ったのか、敵集団が一か所に集まっていくとその剣を掲げる。するとその剣からの熱線が収束して巨大な火球を形成していく。再び強力な一撃を見舞おうというのだ。それに気付いたはやてが一気に上空に上昇する。
「いくで、リインフォース!」
『はい、マスター!』
リインフォースの返事と共にはやての掲げた杖に集まるもの、それは凍気だ。
元々はやての纏う
「デジェルさん直伝の技や! これで頭冷やし!!」
そして
「フリージング・ブリザード!!」
その冷気は集まっていた巨大な火球もろとも、集まっていた敵を一気に凍結する。
すべてが終わった後、あれほど猛威をふるっていた怪物たちはただの一匹も残ってはいなかった。
「やったね! フェイトちゃん、はやてちゃん!!」
「うん!」
「イェイ!」
互いにハイタッチをする3人娘に、シグナムが苦言する。
「主はやて、まだ終わったという訳ではないのですよ。
敵の本拠たる『黒いピラミッド』の原因を何とかしない限りは、未だ戦闘が終息したとはいえません」
「大丈夫、大丈夫や」
そんなシグナムの忠言を、はやてはヒラヒラと手を振って問題ないと言い放つ。
「あっちはうちらの誇る最大戦力が全員向かったんや。
この事件はもう、終わりや」
ズドォォォォォォォン!!!
はやての言葉に答えるかのように、地響きが伝わる。その音に全員が最大望遠状態で問題の『黒いピラミッド』の方を見やる。同時に、アースラからも現場の映像が送られてきた。
『黒いピラミッド』の上部が吹き飛んでいた。それも普通の壊れ方ではなく、『内側から』衝撃を受けたような壊れ方だ。そしてそのピラミッドの上空には巨大な蛇のような怪物が飛び、その尻尾は『黒いピラミッド』の内部に続いていた。
そしてその尻尾を掴んでいるもの、それははやての信じる
『こちらでも確認した。 邪神アポフィスだ』
そう言って通信ウィンドウに現れたのは、『Gフォース』の
『どうやら
邪神アポフィスの嫌いなものは『太陽の光』、光届かぬ黒いピラミッドから引きずり出したようだ』
「いや、頭を使ったっていうか……」
「完全に力を使ってるような気がするんですけど……」
アスプロスの言葉に、なのはとフェイトは顔を見合わせる。『内側から』吹き飛んだ黒いピラミッドに、上空に吹き飛んだ邪神アポフィス。そしてその尻尾を掴む大悟。何をやらかしたのかは一目瞭然、そう、邪神アポフィスの尻尾を掴んで、黒いピラミッドを突き破る勢いで空中にブン投げたのである。
「流石や、うっしー! カッコえぇ!!」
一方のパチパチ手を叩くはやては大興奮である。
そんな少女たちの見守る中で黄金の光が5つ、空中で太陽の光に悶え苦しむ邪神アポフィスに迫っていく。そして膨れ上がる黄金の
ズドォォォォォン!!!
爆発の轟音が大地と大気を振動させる。そしてすべてが収まった時、あの禍々しい邪神アポフィスの姿はどこにもなかった。
『邪神アポフィスの討伐を確認した』
『状況終了! みんな、お疲れ様!』
アスプロスに続くエイミィの言葉で、その場の緊張が解ける。
こうして管理局と
~~~~~~~~~~~~~~~
『アポフィス事件』を解決させた一同は思い思いに身体を休めていた。その方法はまちまちであるが、快人となのはは……。
「うっ、うぅ……」
「うっ、うぅぅ……」
『巨蟹宮』で、ソファに座りながら二人揃って滝のように涙を流していた。2人の前にはテレビとDVD、二人揃って映画鑑賞の真っ最中だったのである。
やがてエンディングが終わると快人は涙を拭きながらDVDを片づける。
「いやぁ……何度見てもラストは涙が出ちまうな、これ。
背ビレ溶け始めた段階で俺の涙腺もうダメだわ」
「うん。 なのはも『レクイエム』が流れ始めた途端、涙が止まらなかったもん」
なのはも涙を拭いながら同意した。
「んじゃ次はどれ見るか……よし、これとかどうだ?」
「えー、それトラウマになりそうだからヤなの。
明るい口調で『皆殺し』とか歌っちゃうのもどうかと思うし」
「ああ、あれは間違いなく迷曲だよな」
あははと快人は笑う。そんな快人を見て、思い出したかのようになのはは言った。
「ねぇ、あの部隊名考えたの、絶対快人くんでしょ?
だってあれ、快人くんの趣味丸出しだったもん」
「何言ってるんだ、なのは。
確かに考えたのは俺だけど、次元世界を守る『
そう言う快人に、なのははジト目で突っ込んだ。
「全部方便だよね、それ。 絶対、アレから名前とったでしょ?」
快人の趣味を知り尽くしているなのはに言われ、快人も観念したように肩をすくめた。
「……バレたか。
でもまぁいいだろ、俺たちの相手なんて大怪獣と大差ないからな」
「それもそうだね……んっ」
そんな風に納得すると、なのはは気だるげに伸びをしてソファに寝転がる。だが、すぐに跳ね起きるように時計を見た。
「うにゃ!? いけない、セージおじいさんに呼ばれてたんだった!」
「じいさんに? 俺は聞いてないけど……」
なのはの言葉に快人は眉をひそめる。
「うん、何だか私とフェイトちゃんとはやてちゃんに来てくれって」
「修行の予定か何かか?
まぁいい、行ってこいよ」
「うん!」
そう言ってなのはを送り出す快人だが……。
「なのはたちだけをじいさんが呼び出す……何か引っかかるな……」
快人はわずかに首を捻るが、それを振り払うように伸びをすると再び映画観賞へと戻ったのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「お、遅れてごめんなさい!」
呼び出された教皇の間にはすでにフェイトとはやてが揃っていた。慌てて飛び込んできたなのははアワアワと頭を下げるが、教皇の座のセージは笑いながらなのはに言う。
「なぁに、それほど遅れた訳ではないのだ。別段気にすることは無いよ、なのは嬢。
ただ、次からは気を付けるのだよ」
「うん」
セージの言葉に素直に頷くなのは。セージはその様子に笑顔で頷く。それはどう見ても孫を溺愛する老人のそれだ。
「教皇様……」
じじバカここに極まるセージにハクレイがゴホンと咳払いをすると、セージも佇まいを正して
「さて……君たち3人をここに呼んだのは他でもない、ある任務を与えるためだ」
「「「任務?」」」
その言葉に頷くとセージは隣に控えていた少女、猫山霊鳴が話しだす。
「ちょっとね……私の『予知夢』で見えたんだけど……また宜しくないことが見えたのよ。
『暴れまわる怪物』ってのがね」
霊鳴はレアスキルとも言える予知能力、『予知夢』を所持している。そのため不吉な『予知夢』を見た場合には
「こちらの星見でも不吉なるモノの復活の暗示が確認できた。
そして管理局側にその場所を調べてもらったが……どうやら奇妙な事件が起こっているらしい。
しかし、
そこで、君たち3人にこの事件を調査して貰いたい」
そこまで説明すると、セージは教皇としての威厳ある声で言った。
「
3名にこの事件の解決を命ずる。
管理局側はすでに準備をしてくれている。さっそく現地へと向かってくれ。
良いな、くれぐれも気を付けるのだぞ」
「「「はい!!」」」
良い返事と共に3人娘が教皇の間から退出した。その姿を見送ったセージに、ハクレイが口を開く。
「……よくぞ我慢したな」
「兄上……私とて教皇、せねばならぬ事だとは分かっています。
それに、私はなのは嬢たちを信じていますよ。
しかし……」
「不安は消えぬ、か……分からぬでもない。
だが……必要だとは分かっていよう?」
「ええ、だからこそ送り出したのです……」
そして、セージは中空を見ながら呟いた。
「どうか、あの娘らに女神の加護を……!」
~~~~~~~~~~~~~~~
なのはとフェイトとはやての3人娘がやってきたのは、とある管理世界の山の中だった。豊かな自然が生い茂り、この一帯に暮らす者たちの生活の基盤となっているものである。だがここに、奇妙な事件が起こっていた。
山に入った者が何人も帰ってこないというのだ。さらにそれと同時期に、巨大な怪物を見たという話が続出しているのである。
「竜、なぁ……」
はやては近くの村の老人から聞いた話を思い出す。この周辺の山には悪い竜と、竜退治の伝説が残っているらしい。
昔この周辺を散々に荒らしまわった竜を勇者が退治したという、オーソドックスな内容の伝説である。この周辺ではかなり有名な話らしく、子供の躾のための怒り方に『悪いことをしていると竜が来ますよ』という脅かしがあるぐらいだ。とはいえ、普通の竜ならば今のなのはたち3人ならば、誰か1人で十分に対処が可能なはずだ。それを3人でということはそれ相応の危険の可能性が高いということだろう。
「
「とにかく気を付けよう。
セージおじいさんからの任務だもん、きっちりやらないとね」
なのはの言葉に、フェイトもはやても頷いた。そして森を進む3人は、その場所へとたどり着いた。
「これは……!?」
そこは巨大な洞窟の入り口だった。いかにも巨大生物が住んでいそうな場所である。だがそれ以上に目を引くものがそこにはあった。
「人の石像!?」
ある者は何かから逃げるように、ある者は驚きの表情のままの石像たちだ。だが、こんなものをこんな山奥に作る人間も居なければ、作れるはずもない。
「「「石化!?」」」
3人娘は同時に同じ結論にたどり着く。
「……ちゅーことは、この中にいるのは竜やあらへん。
中にいるのは……『アレ』や!」
はやての言葉に、なのはとフェイトは重く頷く。3人とも
「どうする、はやて?」
「……とりあえず、中に入るのは却下や。
あんな神話級怪物と相手のホームグラウンドで戦ったらこっちの機動性は生かせず、みんな揃って石像の仲間入りになるのがオチや。
待ち伏せして外に出てきたところを倒すしかない」
「そうだね……」
なのはは頷くと、ぽっかりと空いた洞窟の入り口を見た。その奥に陣取るであろう、神話の怪物を睨むように……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「じじい!!」
「……快人よ、教皇の間では私のことは教皇と呼べと何度言えば分かる?」
「うるせぇ! んなこたぁ、どうでもいいんだよ!!」
セージの言葉にも、快人は苛立たしそうにダンッと足を踏む。それだけでバキリと床にひびが入った。それだけ今の快人がどれほどに苛立っているのか分かる。
「では何用だ、快人?」
「そんなもん、なのはたちのことに決まってるだろうが!!
どういうつもりだよ!!」
「どういうつもり、とは? ただ普通に任務を与えただけだが?」
「それが問題なんだよ!
クロノから聞いたぞ!
となりゃ、ハナっからじいさんたちは今回の相手が『アレ』だってことは分かっていたはずだ!!」
そう、実は管理局からのサーチャーでの映像で、『石化させられた人間』についてのことを知っていた
「だっていうのに、俺たち
セージはなのはたちには
「とにかく、俺は今からでもなのはたちのところに行くぞ!」
「待て、快人!!」
セージ達の反応に苛立つ快人が、宣言と共に出て行こうとする快人をセージが鋭い声で止める。
「快人よ、師として、
お前は、いやすべての
もしこの命を破るというのなら、いかなお前でも逆賊とみなす!」
「なん……だと!?」
その言葉に、さすがの快人も目を見開く。
「おい、じいさん。そりゃどういうことだ!!」
「言葉のままの意味だ。 いいな、お前は
「ふざけんな! なのはたちに何かあったらどうする!
じいさんはなのはが心配じゃないのかよ!?」
「無論、私とてなのは嬢は可愛いし、その身を案じてはおる。
だがな、快人……そうやっていつまでもお前たち
あの子たちは決してお前たち
いわばこれはあの子たちの乗り越えるべき試練なのだよ」
「そりゃ分かるけどよぉ……そうだとしても、なのはがヤバいかもってのに動くななんて命令、やすやすと納得できるかよ。
無理にでも行く、って俺が言ったらどうする?」
「それはやめておけ……」
セージとの会話に第三の声が響き、快人はその方向に視線を向ける。
そこには快人と同じく、
「……なるほど、俺が力づくってときにはそれを防ぐ戦力を用意してたってか。
さすが教皇様、用意のいいこった」
皮肉げな快人の言葉に、総司はため息交じりに言う。
「快人……お前、意外と臆病なのだな。
シュウトと大悟も教皇様のところに来たが、フェイトとはやてを信じる、とそのまま帰っていったぞ。
お前も信じてみたらどうだ?」
「そりゃ……俺だってなのはのことは信じちゃいる。
だが……」
そんな何とも煮え切らない快人に総司は再びため息をつくと言った。
「ともかく、教皇様の命を破るなら俺と一戦交えることを覚悟しろ。
それに……俺に打ち勝ったとしてどうやって3人のところまで行く?
管理局には
それで、どうやって次元を超えてその世界に行くつもりだ?」
「……チィ! わかったよ!」
ぐうの音も出ない正論に、快人は苛立たしげに来た時と同じように乱暴にドアを開け放ち出て行く。その後ろ姿が見えなくなってから、セージとハクレイは深々とため息をついた。
「分かりきったことではあったが……想定よりもいささか快人の反応が過剰だ。
今後問題とならねばいいが……」
「それもなのは嬢への想いなのだろうが……まったく、お前の弟子はいつでも一癖も二癖もあるな」
教皇と教皇補佐がため息をつく中、総司は去って行った快人の背中を思い出していたのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
ズルズル……。
巨大な何かを引きずるような音が洞窟の奥から響く。そして、その音はゆっくりと出口へと近付き、その姿が洞窟の闇から露わになった。
それは巨大な、蛇のごとき体躯の禍物であった。女の巨大な翼のついた女の上半身に、長い蛇の身体の怪物である。
その姿はなるほど、『竜』に見えなくもない。だがそれは神話の時代の凶悪な怪物、堕ちた『神』とも言える存在だ。
その姿を確認したフェイトとはやては呟く。
「間違いない、ゴルゴーンだ」
「せやな。 しかも大きな翼っちゅーと、エウリュアレやな」
ゴルゴーン……『メデューサ』で有名な、神話級怪物である。女の身体に翼、そして蛇の体躯と蛇の髪を持つと言われている。その最大の特徴は『石化能力』だ。その邪視によって見たものを石にするという能力である。
「ほな、作戦通りにいこか?」
「うん」
フェイトとはやてはお互いの相棒たるデバイスと
最大の脅威たる『石化攻撃』、これを避けるためにはその視界に入らないようにしなければならない。そうなればそれが出来るだけのスピードが要求される。
はやての援護によって、3人娘のうち最大の速度を誇るフェイトが連続して攻撃を仕掛けてたたみ込むというのが作戦だった。
『?』
洞窟から外に出たエウリュアレは不可解なものを感じた。
それは気温だ。明らかにいつもよりも気温が低いのである。そして感じる攻撃的な
「いったれ、フリージング・レイ!!」
『!!!??』
その言葉と共にエウリュアレの視界が真っ白に染まった。突然のことに、エウリュアレは混乱と苦悶の悲鳴を上げる。
空中の水分を凍らせることによって光を乱反射する鏡を作りだし、相手の視界を塞ぐはやての魔法である。視界が効かなければ『石化』の邪視は使えない。その魔法がエウリュアレの視界を奪い、『石化攻撃』を防いでいたのだ。
「今や、フェイトちゃん!」
「やぁぁぁぁぁ!!」
同時にフェイトが魔力刃に
ゾブリという確かな手応えとともにエウリュアレの身体が切り裂かれた。だが……。
「!? 再生!?」
斬ったはずのエウリュアレの身体がみるみる再生していく。
『蛇』は脱皮を繰り返すことが『再生』と見なされ『不老不死の象徴』とされたり、その形状から『生命の象徴』とされることが古代宗教などを紐解けば多い。その特性なのか、エウリュアレはとてつもなく高い再生能力を持っていたのだ。
「く!?」
フェイトは諦めず魔力刃を振るうが、ゾクリと背中に冷たいものが走り、その本能に従ってフェイトが飛び退く。同時に、それまでフェイト居た場所に何かが突き刺さる。一見して矢のように見えるそれは高質化した蛇であった。エウリュアレはその髪の蛇を弾幕として射出してきたのだ。
「くっ!?」
その弾幕にフェイトもたまらず距離を離す。だが、距離が離れるということはエウリュアレの視界に収まる確率を劇的に上げる危険な行為だ。すぐ再接近したいところだが、絶え間ない弾幕がそれを許さない。
同時に、フェイトには決め手が欠けていた。通常の魔力刃のダメージではエウリュアレ再生能力を上回ることができず、攻撃の端から再生されてしまう。そうなれば狙うは急所だが、それも難しい。神話ではメデューサは首を切り落とされて討伐をされたから首を落とせばいいのだろうが、当然首を狙うとなればその視界に入る可能性は高い。神話でメデューサ退治を行ったペルセウスには身を守る盾があったが、それが無いフェイトが首を狙うことは致死攻撃である『石化攻撃』を思えば危険すぎる。
だが今のフェイトとはやてには余裕があった。はやてによってエウリュアレの最大の武器である『石化攻撃』のための視界が塞がれているからだ。何とか隙をつきその首をフェイトは狙うが……。
『!!!???』
エウリュアレがその翼を大きくはためかせる。だが、それは飛翔のためではなかった。
「!?」
「あかん!?」
エウリュアレの翼のはためき、それは強烈な暴風を巻き起こす。はやての『フリージング・レイ』は空気中の水分を凍らせ鏡とし、相手の視界を塞ぐものだ。これは言ってみれば空中に無数の鏡を浮かせているようなものである。その鏡が、暴風によって吹き飛ばされてしまったのだ。それはエウリュアレの最大の攻撃である『石化攻撃』のための視界が復活してしまったことに他ならない。
エウリュアレがその最大攻撃のためにその双眸を開こうとしたその時だった。
「なのは!!」
「今や!!」
「うん!!」
フェイトとはやての声に応えて、身を隠していたなのはがエウリュアレに向かって突貫していた。何処から突貫したのか……それはエウリュアレの背後だった。
3人娘は全員、神話級の怪物であるエウリュアレが通常の方法で簡単に倒せるとは思っていなかった。だが、遠距離からの火力砲撃はあまりに危険だ。エウリュアレの石化攻撃の射程距離が不明だし、遠距離にいてはその視界から逃げるのは難しい。そうなれば取る方法はただ一つ、極至近距離でのインファイトによる急所への攻撃である。
だがなのはでは速度が足りない。フェイトでは威力が足りない。はやてでは精密攻撃が出来ない。3人娘はものの見事に有効打を与えるための適正が抜け落ちていたのだ。
そこで考え出されたのが、フェイトとはやてを囮とし大火力を誇るなのはのゼロ距離砲撃である。
「行くよ、レイジングハート!!」
「イエス、マスター!!」
なのははレイジングハートを槍のように構えて
「せーのっ!
特大の
顔面から大地に叩きつけられるエウリュアレ。『石化攻撃』のために必要な視線は、叩きつけられたことで地面しか見えない。
そしてなのはは『アクベンス・モード』でその首を捕まえながら、ゼロ距離砲撃を敢行した。
「ディバイン・バスター!!!」
膨大な魔力と
吹き飛んだその首は大地に落ちるより早く、ボロボロと黒く変色すると崩れ落ちた。それを追うように残された身体の方も、崩れ落ち風に流されていく。
「「「や、やったぁぁぁ!!」」」
エウリュアレの完全消滅を確認した3人娘から、勝利の歓声が上がる。
そしてそれは、この『世界』において初めて神話級の怪物が快人たち純粋な
そんなある意味では歴史的瞬間を、3人娘はハイタッチで互いに讃え合うのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「すばらしい!」
教皇の間でエウリュアレ討伐の第一報を聞いたセージはその報告に、歓声を上げて立ち上がり手を叩く。普段では見られない教皇の興奮に、管理局からその第一報を持ってきたトム・ウィリアムは若干引き気味だった。
そんなセージにハクレイはゴホンと咳払いをする。それでハタッと自分の状態に気付いたセージは、少々照れ気味に頬を掻きながら教皇の座へと座りなおした。
「大戦果ですな、教皇様」
「うむ! あの娘らなら必ず無事にやり遂げると私は信じていましたぞ、兄上」
なのは嬢が心配で報告が来るまで落ち着きなく教皇の間を歩き回っていたお前のどの口が言うか……喉まで出かかったその言葉をハクレイは呑み込むと、再び詳細報告に視線を落とす。
「しかし……本当に大戦果ですな。
神話級怪物の完全討伐だけではない、まさかこんなものまで見つけてくるとは……」
ハクレイの手元の資料には一枚の写真が添付されていた。
それは粉々に砕けた白銀の箱と、かろうじて形を判別できるレベルの鎧……
エウリュアレ討伐を済ませた3人娘は、そのままエウリュアレの住処であった洞窟を探索、そしてその最深部でこの
神話級怪物の討伐と
「これでなのは嬢たちの風当たりもまともになるだろう……」
セージはやれやれといった感じで力を抜き、椅子に深く背を預ける。
実際、なのはたちの立場は
実際、この一件によりその実力を認められた3人娘は
ごく簡単な例を上げると『オリンピックのような由緒ある大会で大きな結果を残した選手が自分と同じ学校出身だったりすると誇らしい気分になる』という、同族意識からくる優越感の一種である。とにかく、この事件の解決による影響は多岐に渡ったのだった。
「さて……あの娘たちの件はこれで片付いた。
だが……」
今回の事件、なのはたち3人に対する問題は解決できたのだが、どうにも新しい問題が見えてしまった。
「快人め……あ奴のこと、問題にならねば良いが……」
セージは顎を擦りながら、自分の弟子にある不安を覚えるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
黄金十二宮の『巨蟹宮』では、再び快人となのはが並んでDVD観賞の真っ最中だった。
「いやぁ……やっぱ何度見てもいいもんだ。 巨大兵器ってのは男心をくすぐられていい……」
「まぁ、なのはもそれには同感だけど私はこの前のスーパーMGの方が好きかな。
だって『ドリルアタックだ!』って言った瞬間、『何で近付くの!?』って思わず思っちゃったもん。
やっぱり圧倒的火力で押しつぶすのが巨大兵器の魅力だと思うの」
「バカヤロー、ドリルは男のロマンなんだぞ!
それが分からんとは、それでも男か!?」
「私、女の子!」
「よし、そう言うことならドリルの良さをこれで教えてやろう!」
「空飛んじゃう戦艦の艦首にドリルはどうなのかなぁ?」
快人と、その趣味に付き合うなのはの間にゆったりとした時間が流れて行く。そんな中、重厚なオープニングBGMを聞きながら快人はポツリと言った。
「あのさ、なのは。 今回の任務のことだけどよぉ……」
「? どうしたの?」
「……いや、ちょっと変なこと思っただけ。 悪ぃ、忘れてくれ!」
「? 変な快人くん……」
何やら言いかけてやめた快人に、なのはは可愛らしく小首を傾げるがすぐに始まった映画の方に意識を向け、そんな快人の反応など忘れてしまった。
だがこの時、快人もなのはも話を続けるべきだった。
互いに胸の内をすべて吐き出すべきだった。
そうすればもしかしたら……『あの出来事』は起こらなかったかもしれないのだから……。
今回はすずかとアリサがプッシュされ、どうにも最近活躍してない3人娘の活躍のお話。
ちなみに快人は重度の特ヲタ、なのはと何を見てるのか分かる人にはよく分かります。
今回、堕ちたとはいえ元『神』を3人は討伐してみせました。
今後も強くなって貰うための経験値稼ぎです。
快人となのはに微妙な空気が流れる中、次回からは『聖域始動編』のラスト、『なのは撃墜編』を数回に分けてやることになる予定。
次回もよろしくお願いします。
今週のΩ:キキ様、実は小宇宙高めれば聖衣修復師はいらないとかムウ様が泣いちゃうからやめて下さい。
スタエク披露はGOODですよ、キキ様。
普通に鋼鉄聖闘士が小宇宙使っててワラタ。位置づけは単純に雑兵用の聖衣なのかなぁ?
クロストーンの設定が、文字通り木端微塵になった。
オブジェ形態が戻ってきたのは嬉しいけど、また箱を背負うとか進化したのか退化したのか判断に困ります。
そして最後……ヲイ体育座! お前また敵スタートかい!!
色々、画面前でツッコミを入れるカオスな30分でした。