仕事が忙しくずいぶんと更新に時間のかかったキューマル式です。
今回は聖戦までの10年の『聖域始動編』とも言える序盤のラストイベント、『なのは撃墜編』です。
今回はこの物語において各キャラの戦うべきライバルキャラたちとの初邂逅となります。
もう『聖戦開始』といっても過言ではない内容。
さて、誰と誰がかち合うでしょうか?
聖域暦2年、新暦換算では67年……この年は、後の聖域史において必ず取り上げられる事件が起こることになった……。
「……以上だ。 何か質問はあるか?」
「いいや、無いな。 ククッ……これでやっとこのホコリ臭い場所から飛び立てる」
「フン、貴様のためにやっているわけではない。
完成後は精々役立ってもらおう」
「分かっている。
パンドラ様にもよろしく伝えておいてくれ、ラダマンティス」
「……誰が聞いているかわからん。ここではパーラとラースと呼べ」
「はいはい、分かっているよ、ラース」
ポンポンと、真面目そうな男……ラダマンティスの肩を叩いてから、男は去ろうとする。
そんな男の背中に、ラダマンティスが再び声をかけた。
「どうやら
今回はパーラ様のご命令で、俺もあいつも守りに付くことになった」
「ほぅ……これは派手なお披露目会になりそうだ。
精々、祝いの華を期待しよう。
ラダマンティスの言葉に、その男は壮絶な顔で嗤ったのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
その日、
それは管理局からもたらされた情報だった。違法な物資・物品が集められているという違法品密輸の情報……ただそれだけなら、
だがその現場で『黒い鎧』の人物が目撃されたという情報により、その密輸事件に
これを受け
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ああ! シャウラ様、待ってぇぇぇ!!!」
アースラの待機室は大勢の人物で賑わっていた。そこにシャウラの悲鳴とヨハネスの奇声が響く。
今回の派遣の特徴として、パライストラ生徒の随伴というものがある。パライストラ開校から約1年、管理局がパライストラ生徒がどれほど育っているか知りたいと言い出していたのである。本来なら
今回随伴を許されたのはカルマ、サビク、ヨハネスの『55号室』の面々、ルーク、リュウセイ、ハリーの『33号室』の面々、そして女子生徒からロニス、そして彼らを統率する立場として総代であるトム・ウィリアムと副総代であるエイム・ロイドである。
「た、助けてアリサちゃぁん!!?」
「ふふふ、ここにはあのツンツン娘はいませんよシャウラ様。
さぁ、僕にあの恍惚をぉぉぉぉ!!」
「い、いやぁぁぁぁ!!」
半恐慌状態のシャウラが戦慄の表情で逃げ、怪しく身体をくねらせたヨハネスが追う。そんな様子を快人を始めとした
「相変わらずスゲェ奴だな、あれ」
「本当だよ。
アレが戦闘でも出来たら、凄い戦力になるんだろうけどね」
快人の言葉に肩をすくめたシュウトが、薔薇を一本取り出しシュっとヨハネスに投げつける。薔薇の睡眠毒によってヨハネスがコテンと倒れ、やっとアースラの待機室は静かになった。
「う、うぅ……あ、ありがとう、シュウトくん」
「そんなにお礼を言われるようなことはしてないつもりなんだけどな、ボク……」
マジ泣きでお礼を言いながらシュウトの隣の席に座ったシャウラに、シュウトは困ったように頬を掻く。シュウトとシャウラは特に仲がいい。双方ともかなりの美少年のためそれが2人並べばかなり絵になる。
『女装したシャウラくんをお姫様だっこするシュウトくんが見たい!』
そんな風に声高に叫ぶパライストラ女子生徒は実は多かった。
……もしかしたら、この
「しっかし……結構な人数だな、こりゃ」
快人は待機室を見渡してそう呟く。
実際、
「
「
だが、快人も油断できる相手ではないのは分かっているだろう?」
「まぁな……」
そう言って椅子に背中を預け、大きく伸びをする快人。
「出来ることなら俺たちだけで何とかしたいもんだ……」
「まぁ、そうありたいものだな」
快人の視線の先には、別の席で談笑するなのは・フェイト・はやての姿がある。快人の言葉にシュウトと大悟は頷く。自分たちがフェイトやはやてを案じているのと同じ思いなのだろうと考えるシュウトと大悟。
「……」
しかし、総司だけは快人の言葉がシュウトや大悟とはどこか違うように聞こえ、わずかに眉を潜めるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
その『世界』は雪に覆われていた。見渡す限り一面の銀世界に、申し訳程度の針葉樹の林が点在している。吹雪いてはいないが、空は薄暗く、パラパラと雪が舞い降りて来ている。
「寒々しい風景だな」
快人の呟きに、シュウト、大悟、シャウラはそれぞれ何も言わなかった。ちなみに総司はアースラにてその護衛として数人の魔導士と共に残っている。
『ここはほとんど太陽の届かない極寒の惑星だからね。
今クロノ君が魔導士隊を率いて索敵の真っ最中だけど、まだ時間はかかりそう。
ねぇ、それよりホントにバリアジャケット無しで寒くないの?』
「
エイミィの言葉に何でもないと快人は答える。
実際、LCでは
「まぁ、視覚的には寒ぃから、終わったら熱い風呂にでも入りたいね」
『あはは、それだったら用意してあげるよ。
うんと熱い……』
快人がエイミィとの取り留めない会話をしていたその時だった。アースラとの通信が突如として切れる。同時に、快人たちはいくつもの
「始まったか!」
「いや、でもこれは……!?」
感じ取れる
『こちらクロノ! 複数人の黒い鎧の人物に襲撃を受けている!!
なのはたちが殿を務めてくれているが、マズイ!!
すぐに援護を!!』
その逼迫した声が状況の危険さを物語っているようだ。そして同時に、その映像が送られてくる。
「「「「なぁ!!?」」」」
敵の陣容を見た
「お、おい!!」
同時に、パライストラ生徒たちの方からも声が聞こえる。
「なんだ、どうした!?」
「それがカルマが敵の映像を見た途端、いきなり……」
どうやらパライストラの1人が飛び出して行ったらしい。
「ちぃ!?
おい、トムさん!パライストラの連中はあんたの指揮で前の連中の撤退を支援してくれ!
これから、俺たち
あと、よろしく!」
言うが速いか、4人の
「俺はパライストラの生徒を拾ってから
シュウト! 大悟!
お前らは早くフェイトとはやてたちのところに行ってやれ! あの相手はヤベえ!?
シャウラはもう一つのところ、頼めるか?」
「もちろんだよ!」
「行くぞ、みんな!!」
「「「応ッ!!」」」
~~~~~~~~~~~~~~~
地上でGフォース部隊が交戦状態に入ったころ、アースラにも危機が訪れていた。
「エイミィ、状況報告!?」
「強力なジャミングです! それに……周辺の空間に歪曲現象を確認!!」
「まさか……空間攻撃か!?」
同時に、アースラに向かって黒い光球が襲いかかってくる。
「ちぃ!?」
それに気付いた総司が瞬時に『アナザー・ディメンション』を発動させ、アースラの甲板上に降り立つと、迫りくる光弾を撃ち落としていくが、その一発がアースラの甲板に直撃、炸裂した。すると、まるでコルクで抜いたかのように直径2メートルほどの穴が開く。まるで『そこに最初から無かったかのように』、だ。その光景を見ながら、総司の脳裏に嫌なものがよぎった。
「まさかこの技……!?」
だが迫りくる第二波攻撃に、総司はその考えを一端頭の隅に追いやると迎撃へと専念することにした。
~~~~~~~~~~~~~~~
ギィィィィン!!
刃を打ち合わせるような甲高い音がその場所には響いていた。目にも止まらぬ速さで、刃を打ち鳴らす音だけが嫌にハッキリと響く。
「クッ……」
数合の打ち合いの末、距離を離したフェイトは滴る汗を拭うことも無く驚愕の表情で目の前の『敵』を見つめる。
黒い鎌を構えるその姿は、
だがフェイトが驚いたのはそこではない、その理由は少女の顔だ。
それはフェイトの良く見知ったもの。それは鏡を見れば必ずそこにあるもの。それは……。
「私……!?」
そう、その少女の顔はフェイトに瓜二つ、相違点など髪の色と鋭い眼差しくらいのものだろう。戦闘においても漆黒の鎌による高速戦闘、フェイトと同じだ。驚愕するフェイトに、少女はコロコロと哂いながら言う。
「驚きました、お姉さま?」
「……お姉さま?」
少女の言葉にフェイトは眉を潜めたが、次に飛び出した言葉で再び驚愕で目を見開く。
「『プロジェクトF』……」
「!? それは!?」
『プロジェクトF』……それはジェイル・スカリエッティが元の理論を構築し、そしてプレシア・テスタロッサによって発展・完成された人造生命体の作成プロジェクトである。
そしてフェイトはその『プロジェクトF』によって生み出されたのだ。そんなフェイトを『姉』と呼び、しかも自分と同じ顔となれば答えは出たも同然である。
「そう、『プロジェクトF』……人造生命体の作成は続いている。
そして私はあなたを元に造られた……」
「あなたは……一体……?」
カラカラに乾く喉でフェイトがその言葉を絞り出すと、少女は纏う
「私はレンカ……レンカ・ヒスイ。
天断星マンティスのレンカ・ヒスイですわ、以後お見知りおきを、フェイトお姉さま!」
言葉と共に掲げる漆黒の鎌は、相手を切り裂くカマキリの怪しい鎌。そんな鎌を、獲物を狙うような爛々と輝く紅い瞳で見つめる。
天断星マンティスの
聖戦においてぶつかり合う、奇妙な運命の姉妹2人はこうして巡り合ったのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「あはは、あははははは!!」
逃げて行く管理局の魔導士部隊を後を追い、狂ったような少女の声が雪の草原に響き渡る。
「ねぇ、あんたたち管理局でしょ! 管理局でしょ!!
だったら頂戴! その首を頂戴!!
あはは、あははははははは!!」
「うわ!?」
少女から伸びた蔓のような触手が逃げる魔導士の足をすくい上げ、バランスを崩す。そして、瞬時にその触手が
「首を落として死んじゃえ、管理局!
ブラッドフラウアシザース!!」
「うわぁぁぁぁ!?」
少女の狂笑と共にその断頭台の刃が振り下ろされる。だが……。
ガギィィィン!!
振り下ろされた断頭台の刃は、十字の形をした杖に受け止められていた。全展開状態の
「ここは私が受け持つから、はよ行って!!」
はやての言葉に放心していた管理局員はコクコク頷くと、再び後退していく。それを見届けてからはやては目の前の少女へと向き直った。
そんなはやてに、面白くなさそうに頬を膨らませた少女は言う。
「何で邪魔するのよ、せっかく管理局のやつの首を置いてかせようとしたのに……」
「アホか自分。 そないなこと、私ら
「まぁいいか。 あいつらの変わりにあなたの首を落とせばいいんだもの」
そして再び狂気の笑いを響かせる少女に、はやてはゆっくりと言う。
「……名乗りぃ。
『妖怪首おいてけ』とか言う名前やないんやろ?
せやったら、名乗りぃ……」
「私の名前が知りたいの?
だったら丁度いいから、お兄ちゃんたちと一緒に自己紹介してあげるね!」
その言葉と共に、少女の側に2つの影が降り立つ。一人は背の高い男、そしてもう一人は筋骨隆々の大男だ。
「俺は天捷星バジリスクのカイザー」
「……天牢星ミノタウロスのロード」
「そして私、天魔星アルラウネのエンプレス!
これが私の『家族』よ!!」
そう言ってバッと手を広げる少女、エンプレス。そんなエンプレスの頭をポンと叩くとカイザーは言う。
「行くぞ、管理局は皆殺しだ!」
「……殺す!」
「あははははは、みんなみんな、首をちょん切ってあげようよ!
あはははは、あはははははは!!」
3人からの泡立つような殺気に、はやてはため息交じりに言う。
「なんちゅうか……この妹にしてこの兄ありって感じやな」
『家族とは基本、似た者同士になるのでしょう』
「せやな、リイン。
さて……自己紹介して貰った以上、私も返さなあかんな。
私は
そして……!!」
バッと杖を掲げたはやての元に、影が降り立つ。
「ヴォルケンリッター、烈火の将シグナム!」
「鉄槌の騎士ヴィータ!!」
「湖の騎士シャマル!」
「盾の守護獣、ザフィーラ!!」
「そして
はやては宣言と共に、掲げた杖を振り下ろす。
「八神の『家族』の力、見せたる
「そっちこそ、首ちょん切ってほえずらかかせてやる、
そして、聖戦においてぶつかり合う
~~~~~~~~~~~~~~~
「くぅ!!」
シュウトは目的地に向かって駆け抜けながら歯ぎしりする。いくつもの巨大な
一刻も早くフェイトたちのところへ向かいたいが、どうあっても無視できない
シュウトはその
その時。
「!?」
殺気を感じてシュウトが飛び退いた。同時に、先ほどまでシュウトのいた場所に火球が炸裂する。一瞬にして雪が広範囲に渡って蒸発し、舞い上がる水蒸気が辺りを雪の変わりに白く染め上げた。
シュウトは即座に黒薔薇を取り出し、
「ピラニアンローズ!!」
噛み砕く黒薔薇はその水蒸気を突っ切り、巨大な
「……」
その様を見ながら、シュウトは背筋を嫌な汗が流れるのを感じた。
相手は誰か、よく分かっている。今しがた自分に飛んできた火球は『黒い』火球だった。
黒炎を操る
バサリ……。
シュウトの目の前に、黒い翼が舞い降りる。纏う
「天暴星ベヌウの輝火……」
シュウトは凌駕すべき敵の名を静かに呟いたのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ぐ、うぅ……こいつは……」
撤退していく味方のために部隊の殿を務めていた管理局隊員たちは、目の前の理解不能な存在に畏怖と恐怖を抱きながらも、それでも味方のために、自分の為すべき任務のためにデバイスを構える。そんな管理局隊員たちに、その黒い鎧の男はパチパチと拍手を送る。
「仲間のために、任務のために己の為すべきことを為そうとする。仕事熱心なのは大変結構、良いことです。
だが……弱い!」
「!?」
「ま、またか!?」
その言葉と同時に、隊員たちの身体が勝手に動き出し、隣にいる仲間に攻撃を仕掛けてしまう。そんな同士討ちを先ほどから繰り返していた。
「力なきものは弄ばれるだけの傀儡に過ぎないのですよ。
力を示さぬものはね。
さて、この人形遊びもいささか飽きました。そろそろ閉幕としましょうか」
男のその言葉と同時に、管理局隊員たち身体の引き絞られるような激痛を味わう。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
「さて、背骨はあと何秒もつでしょうね?」
ミシミシと悲鳴を上げる管理局隊員たちの骨の音を聞きながら、男はクスクスと笑う。
その時だ。
「スカーレットニードル!!」
紅い閃光が縦横無尽に駆け巡る。すると、管理局隊員たちにかかっていた力が消え去った。激痛から解放されへたり込む管理局隊員たちを守るように、黄金の少年が降り立つ。
「
皆さん、ここは僕に任せて逃げて下さい!」
「あ……ああ!」
やってきた援軍の言葉に従い、解放された管理局隊員たちはそのまま一目散に逃げて行く。それを背中越しに感じながらも、シャウラは目の前の人物から目を離さない。
「これはこれは、
これは噂以上に美しい少年ですね……」
目の前の男は大仰に礼をする。
「始めまして、
私は天貴星グリフォンのミーノス……」
『天貴星グリフォンのミーノス』……
「実は私の方も、君に興味がありましてね。
君は……私の傀儡に相応しい逸材ですよ」
「すみませんが、僕、人形遊びは好きじゃないので遠慮します。
……どうしても戦うんですか?」
「戦い? 違いますね、これは……私の『遊び』です!」
ミーノスの
「コズミックマリオネーション!!」
それは
だが……。
「スカーレットニードル!!」
シャウラの『目』はその糸すべてを捕えていた。絡みつかれる前にシャウラの放った深紅の閃光が糸を切断していく。
「流石ですね。ですが……いつまでもちますか?」
ミーノスは笑いながら、まるで人形師が人形を操るように両手を構える。シャウラの『目』には、その両手に数えきれないほどの糸が見えていた。
シャウラの額を冷たい汗が一筋、伝う……。
~~~~~~~~~~~~~~~
その頃、大悟も遭遇したその敵との戦闘に突入していた。
「グレートホーン!!」
その黄金の猛牛の突進は、あらゆるものをなぎ倒す
だが……。
「なるほど、その掌打から放たれる衝撃波か……。
だが、ただのそよ風よ!!
この翼竜の咆哮の前ではな!!」
大悟のグレートホーンの衝撃が、さらなる衝撃によって相殺される。いや、それは相殺ではない。
「ぐぅ!!?」
その証拠に咆哮によって放たれた衝撃は地面を盛大に抉りながら大悟へと迫り、大悟は腕をクロスしその衝撃をガードする。それは正面から大悟自慢の『グレートホーン』がパワー負けをした、ということに他ならない。
それを為したのは黒い
「貴様ら
冥界三巨頭の1人、天猛星ワイバーンのラダマンティスがな!」
言葉一つ一つがビリビリと大気を振るわせ、そのあらぶる
「冥界三巨頭の1人……相手にとって不足は無い!」
「フン、牛ごときが竜に敵うと思っているのか?」
その言葉に、大悟はゆっくりと腕を組み
「ならば試してみろ。
この俺の、巨星アルデバランの歩みが竜の咆哮ごときで止められるかどうかをな!!」
「牛ごときがよく吠える。
いいだろう、翼竜の轟きを受けろ!!」
そして、2人は高まる
「グレートホーン!!」
「グリーディングロア!!」
ぶつかり合う力と力に空間が悲鳴を上げる。
聖戦においてぶつかり合う
~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁはぁ……」
林を抜け、走る、走る……。
パライストラの
その目指す先は、サーチャーの映像で見たあり得ない光景の場所。
「見間違いだ、見間違いに決まってる!」
そう自分自身に言い聞かせながらも、先ほど見た光景に拭えぬ不安が湧きあがる。
そして、カルマはその場所にたどり着いた。
「!?」
それはとても美しかった。
白い雪の大地に映えるのは
そして……彼、カルマ=レスティレットは彼女の名前を知っている。
「カレン……!?」
その言葉に、その少女は炎を纏いながらゆらりとカルマの方を向いた。
「まさか……カルマ?」
「そうだよ! カルマだ!
お前と一緒にあの場所で、『レスティレット園』で育ったカルマ=レスティレットだよ!!」
孤児院『レスティレット園』……孤児だったカルマにとっては今は無き故郷。
そして、それは彼女……カレンにとっても同じだった。
「何で……何でだよ!?
あの火事で先生は死んじゃったけど、みんな里親見つかって幸せになったんだろ!?
それが何で……こんなところにいるんだよぉぉぉぉ!!!」
そう叫ぶカルマに、カレンは呆れを通り越して哀れみさえ感じさせる表情で吐き捨てる。
「『幸せ』?
バカね、この世界にそんなものはどこにも存在しないのよ。
そして……私たちの『家族』にもそんなものは存在しなかった……」
「ど、どういうことだよ?」
「私たちの……レスティレットの家族はみんな死んだわ」
「そ、そんなバカな!?」
「それがこの『世界』が私に与えてくれる現実よ。
だから私は……『あの人』の導きで、こんな『世界』を壊してその先にたどり着く!
私は……そのために戦う!」
カレンがバッと
「私は天殺星リントヴルムのカレン!
この『世界』を変える、
その名乗りと共にとてつもなく攻撃的な
だが、同時にカルマには気になるものがあった。それは……。
「『あの人』? 誰かに騙されてるのか!?」
カレンの変貌に驚きを隠せぬカルマは、カレンの言葉からそう推測する。
その時だ。
「伏せろ!!」
その言葉にカルマが身を伏せると、蒼い炎が薙ぎ払われる。それを避けてカレンは後方に大きく飛び退くと、カルマの眼前に黄金が降ってきた。その姿に、カレンはぽつりと呟く。
「
「おう、初めまして
そんじゃ早速……燃え尽きやがれ!」
獰猛に笑う快人の右手に蒼い炎が宿ると、カレンが緊張で身を固くする。それを横目で見ながら快人は背後のカルマに言った。
「早く下がってくれ。 そこに居たら戦いの邪魔になるだけだ」
「ま、待ってくれ! あいつは、カレンはきっと誰かに操られて……!?」
そんなカルマに快人はため息を1つ付くと、自分より身長のあるカルマの胸倉を掴み上げた。
「アンタの方が俺より年上だが、
さっさと下がれ、雑兵! 邪魔だ!!」
快人の怒気とその
だがその時だ。
「確かにその
ここは力ある者だけの踊る舞台、そこに力の無い虫けらが居ても興ざめるだけだからな」
その声に、快人はカルマの胸倉を離すとその声の方にバッと振りむいた。そこから現れたのは1人の男だ。歳は15~16といったところ、スラリとした長身の男だ。口元は皮肉げに歪み、だが切れ長の目からの鋭い視線は男がただ者でないことを雄弁に物語る。
「面白い男と戦っているな、カレン。
その
お前はパンドラ様のところで、『アレ』の準備をしていろ」
そして、そんな男に、カレンは即座に礼を取る。まるで主人を前にした臣下のようにだ。
「わかりました」
その言葉と共に、カレンは最後にチラリとカルマの方を向くと、そのまま一直線に後方へと下がっていく。それを見送ると、男は楽しげに快人を見つめた。
「さて……
丁度花が欲しいと思っていたところでな、ここまで持って来てもらえるとは嬉しい限りだ」
「生憎と俺は弟と違って、花なんざ持ち合わせてないんだがなぁ」
「いいや、花ならこれから咲かすさ。
男のその言葉を、快人は笑いとばす。
「ははは、そりゃ面白い冗談だな。
でだ、花は無いがあんたら
無論材料はてめぇだ、鳥野郎。
天雄星ガルーダのアイアコスさんよぉ!!」
その男の名は冥界三巨頭が1人、天雄星ガルーダのアイアコスである。
快人とアイアコスとの間に一気に緊張が高まる中、カルマはこの男こそカレンの言っていた『あの人』だと悟ると、自分でも気付かぬ間に叫んでいた。
「お前が、お前がカレンを変えたのか!! あの優しかったカレンを!!」
その言葉に、アイアコスはチラリとカルマを見ると、憐れむように快人を見る。
「
心から同情してやろう」
「『虫』だと!?」
「ふん、『虫』だろう?
何も見ず、何も考えず、己の気に入らぬことを他者のせいにしなければ前に進めぬ惰弱な者を『虫』と言わずになんと言う?
勘違いのないよう言うが、カレンは己の往く道を、俺への隷属を己で決めた。
『虫』ごときがそのカレンの選んだものにケチを付けるな」
あまりの威圧感を持つ視線に貫かれ、カルマは心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。
「おいおい、お前の相手は俺だぞ?
俺を無視するなよ、『虫』の話だけに」
快人はくだらないダジャレを織り交ぜながらも、ゆっくりと戦闘のための
「おい、さっさと下がれ! こいつは手加減とかが出来る相手じゃないんだよ!!」
「で、でも……」
「カルマくん!!」
「カルマ君ッ!!」
それでも渋るカルマのところに、後ろから同室であるサビク・アルハゲとヨハネス・スピンドルがやってきた。
「何をやってるんだ! 早く下がるぞ!!」
「ま、待て! 俺はあの男にまだ話が!!」
「何を言ってるんだい! 状況をよく見るんだ!!」
そう言って強引にサビクとヨハネスはカルマを連れて後ろへ下がろうとするが……。
「虫けらを逃がすと思うか?」
アイアコスが掌に炎を生み出す。だが……。
「何?」
突如として森から大量の鳥たちが飛び立ち、後ろに下がっていくカルマたちの姿を覆い隠す。ロニス・アルキバがレアスキル『鳥使役』によってその視界を遮り、撤退の手助けをしたのだ。
「『虫』を潰そうかとも思ったが、『虫』など潰しても汚れるだけか……。
では『花』だけ摘ませてもらうとするか」
「へっ……その前に『焼鳥』にして
その言葉と同時に快人とアイアコスの姿が掻き消え、光速戦闘を開始する。
そして一端距離を離した快人とアイアコスが地面に降り立った。
「冥界三巨頭ってのは伊達じゃねぇんだな」
「ふん、蟹ごときが俺に勝てるか」
「言ってくれるじゃねぇか……でもな、この程度じゃ俺に『血の花』を咲かせるのは無理だぜ」
実際は快人はアイアコスの底知れぬ強さに戦慄を覚えていたが、そんなものはおくびにも出さずにあくまで挑発的に言い放つ。
だが、アイアコスはうっすらと笑いさえ込めて、世間話でもするかのような軽い口調で言葉を発した。
「そう言えば、だ。
俺は『黄金の血の花』だけでは足りなくてな、『白銀の血の花』も見てみたいと思っていたんだが俺は貴様の方を受け持つので『白銀の血の花』は部下に任せることにしたのだ。
俺の『片翼』にな」
「何!?」
アイアコスが『片翼』とまで呼ぶ相手は1人しかいない。
その時、快人は遠くで自分の良く知る
「どうやら始まったらしいな」
「なのはッ!?」
思わず快人の注意がなのはの方へと向く。だがそれは冥界三巨頭を相手にしてあまりに大きすぎる隙だった。
一瞬で快人の懐まで飛び込んでくるアイアコス。
「しまっ……!?」
快人が気付いた時には、アイアコスはその
「ガルーダフラップ!!」
その鮮烈な旋風に舞い上げられた快人は、そのまま頭から地面へと叩きつけられる。
「が……はぁ……!?」
口から血が吐き出され、叩きつけられた時の衝撃により流れでた血が、雪の大地に紅い花を咲かせる。
そんな快人をアイアコスは背中越しに振り返って言う。
「雪の白に紅い血はやはり映えるな、そうは思わないか
「へ、へぇ……だったら今度は俺が観賞させて貰うぜ、クソ鳥」
快人が全身から出血しながら立ち上がり、笑いながら答えるがその胸中は穏やかではない。それと言うのも、先ほどから戦闘状態になっているなのはが気になって仕方が無いからだ。
(こいつの『片翼』と言えば、『あの女』しかいねぇ!?
こいつをさっさとどうにかして向かわねぇとなのはがやべぇ!?)
「どうした、こないのか?」
「タレにするか塩にするかで迷ってたんだよ、焼鳥野郎!!」
快人はその言葉と共に加速する。だが、その動きを見たアイアコスはニヤリと嗤うのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「クロノくん、早く皆さんを連れて撤退して!!
殿はなのはが受け持つの!!」
「すまない、頼む!!
全員即時撤退! 転送ポートのあるポイントまで下がれ!!」
魔導士隊を率いるクロノが鋭い指示を出しながら撤退していく中、なのはは険しい顔で吹雪く雪の彼方を見つめる。
「!?」
その瞬間、なのははゾクリと背筋の凍るような感覚を覚えると瞬時にフラッシュムーブを発動させ、全力でバックダッシュを行う。そして降ってきた『何か』が先ほどまでなのはがいた場所で炸裂した。
「くっ!?」
飛び散る衝撃と破片を防ぐために、なのはがシールドを発動させる。そして収まっていく雪煙の向こうをなのはは見た。
なのはに向かって飛び込んできた『何か』……それは人だ。音速を超えるスピードで濃密な
そして……その人影はゆっくり立ち上がった。
それは、
同時にその凛々しい眼差しはまさに武人のそれだ。
(シグナムさんに似てるかも……)
心の中でなのははそんな風に思う。同時に、なのはは小声でその言葉を紡いだ。
「レイジングハート。
『イエスマスター』
言葉と共に、なのはの身体に
時間制限付きのなのはの切り札、だがそれを即座に切らねばならない相手だということをなのはは本能的に感じていた。
ゆっくり立ち上がった彼女は、なのはを見る。
「……お前が
「うん。 あなたは?」
その言葉に、彼女はその長い黒髪をなびかせながら答える。
「天孤星ベヒーモスのバイオレート!
アイアコス様の名の元に、白銀の血華を咲かせる!!」
そして腰を落とし構えを取るバイオレート。
それに答えるようになのはもレイジングハートを強く握りしめる。
「参る!!!」
そしてバイオレートは踏み抜く勢いで大地を蹴った。
それを魔力と
というわけで、冥界三巨頭+最強冥闘士軍団の登場です。
まずは採用しましたオリジナル冥闘士たちのキャラ紹介とお礼から。
天断星マンティスのレンカ
天捷星バジリスクのカイザー
天牢星ミノタウロスのロード
天魔星アルラウネのエンプレス
いずれも永遠という名の悪魔さんから頂きました。どうもありがとうございます。
『天断星マンティスのレンカ』は今後フェイトに『プロジェクトF』を調べてもらわないと『あの子』が登場できない、という必要性と『フェイトコピー』という設定のため採用しました。
他の3人は最初から大悟のライバルキャラに決定していた、ラダマンティス腹心の冥闘士の上、『兄妹家族』ということで八神家との家族対決のために採用です。
今回で各キャラたちの聖戦でのライバルが登場しました。
黄金5人には、とんでもなくつらい戦いが待っているでしょう。
次回はなのはの撃墜と、快人の暴走の予定。
今後もよろしくお願いします。
今週のΩ:ユナさんが相変わらず主人公からヒロインまで何でもこなしています。
しかし……旧作のシャイナさんが箱背負っているのにも違和感を感じましたが、女の子キャラにあの箱はちょっと合わんなぁ……。
次回はドラゴン聖衣!! 昔のドラゴン聖衣にそっくりでビックリ。
そしてついに紫龍がしゃべるぅぅぅぅ!!
これは期待ですが……身体治った紫龍の居る所で、春麗に手を出したら紫龍が本気になると思うんだが……次週はパラサイト初の戦死者が出るのかなぁ。
次回が楽しみです。