今回は天才すずかさんと、聖闘士星矢においてずっと思っていたことの話です。
ここは
「うーむ……」
「むぅ……」
しかし、今日の2人は何とも言えない難しい顔をしながら手元の書類を見ていた。そんな2人の前には1人の少女がセージたちの反応を今か今かと窺っている。
そしてひとしきり書類の内容を読み終えたセージが書類から視線を少女へと移した。
「この計画だが……本気なのかね、すずか嬢?
本気でこの計画を実行に移したいと?」
「はい!」
「うーむ……確かにすごい計画ではあるが……」
セージに問われ少女―――すずかは当然と答えを返す。
そんなすずかセージはどこか困り顔で顎をさすると、兄であるハクレイにチラリと視線を送るが、ハクレイは「ワシに聞くな」とばかりに肩を竦める。
そんな時、すずかの傍らに居たシオンがすずかを後押しするようにセージたちへと語りかける。
「教皇様たちの疑問ももっともでしょう。始めに相談を受けた私も、同じような気分でした。
しかし、このアイディアは本当に素晴らしい!
聖戦まで差し迫った現状です。 ものは試しというだけでも是非やらせていただきたく思います」
「ふーむ……」
シオンらしからぬ、幾分興奮した後押しの言葉を聞きセージは再度顎をさすると、決心したように頷いた。
「……いいだろう、教皇としてこの計画の実行を許可しよう。
資材についても、必要な分は好きに使ってもらって構わない。
ただし自身の学業や生活に決して害を及ぼさぬようにしなさい」
「はい!」
セージからの許可に、すずかは花が開くような笑顔で答えると早速と言った風に教皇の間から出ていく。その後を追いシオンも一礼すると教皇の間から出て行った。2人が退出するのを見届けると、セージは傍に控えるハクレイへと話しかける。
「この発想と行動力……兄上がすずか嬢を可愛がるのがよく分かります」
「そうだろう……と言いたいところだが、今回の『コレ』はさすがにワシでも予想外だ」
そう言って視線を手元の書類に移し、ハクレイはそこに書かれた題名を呟いた。
「簡易
それは雑兵用
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すずかが量産型
その日の夕方近く、すずかは友人でありパライストラ生徒であるロニス=アルキバとのお茶会を楽しんでいた。ロニスはパライストラの訓練服となっている布の服だけの姿である。
「……ん、美味しい」
「お菓子もあるよ。 どんどん食べて」
すずかの勧めに菓子をパクつくロニスに、なんだかリスのような小動物へ餌付けしているみたいだとすずかはクスリと笑みを漏らす。そのときすずかは菓子へと伸ばしたロニスの手を見て、顔をしかめた。
「ねぇ、ロニスちゃん……手、痛くないの?」
ロニスの手はおよそ少女のものとは思えないくらいに傷だらけだ。
「ん……平気」
傷だらけの手にすずかは心配そうに問うが、とうの本人は気にした様子もなく答えると変わらず菓子をパクつく。その様子にすずかはその話題にはそれ以上触れなかった。
この話題が再び出てきたのはその日の夜、総司との会話でだった。
「えっ、雑兵の人たちってあの装備で聖戦の時も戦うの?」
「ああ……」
ベッドの中ですずかが驚きの声を上げ、総司が頷く。
毎回のようにベッドに潜り込んでくるすずかを指摘することもバカらしく、もはやこの状況に完全に慣れてしまった自分に総司は若干呆れながらもすずかの求めるまま、まるで寝物語のように過去の聖戦などの知識を語っていた最中雑兵の装備の話になり、実戦でも雑兵の装備は布の服と革製プロテクターだったと語った反応がこれだ。
「それって凄く危険なんじゃないの?」
「
実際、過去の聖戦でも数えきれないほどの雑兵が散った……」
そして総司は比較するように他の軍……ポセイドン軍やハーデス軍の雑兵の話をする。両軍とも雑兵とも言える兵はいるが全員が簡易的なものながら
「過去の聖戦では余ってた
「冷静に考えてくれ。
『
「それもそうだね。
それに
それに
そんなふうにすずかは考えていたが、意外にもこのことは総司によって否定させられた。
「いや、
「?
「確かに一般的には
有名なところでは鷲座や鶴座は同じ星座をモチーフにしながら『
一説には
それに……亜種とも呼べる
「
「『
他にはブルーグラードにいたという『
そう言った亜種も『
総司の話に、なるほどとすずかは頷く。ようは『どこからどこまでを
そして、そんな
「亜種の
「『
話には聞いたことがあるけど、黒い
「そうだ」
そう言って総司は頷く。
『
一説によれば
そのせいか通常の
「とにかく『
そう考えたら、今
その隣ですずかも目を瞑る。だがすずかとしては先ほどの話、特に『
~~~~~~~~~~~~~~~
翌日からの、すずかの行動は早かった。
「『
「はい……」
翌日、
過去を知る
「すずか、何故そんなことを?」
「純粋に興味です。
私は
その言葉に、シオンは腕を組んで少し考える。
シオンもその昔、その光景を芝居でも楽しむように陶酔したことがあり、その『歴史』の生々しさはよく知っているし、すずかに見せたこともある。それが『
シオンとしても可愛がっているすずかにそんなものを見せて悪影響を与えたくないため今まで『
確かにすずかの言う様に
「いいだろう。 ただし、気分が悪くなったらすぐに作業をやめるように」
「はい」
そう言ってシオンが持ってきたものは
早速、破損した左アームを手に取り、スターダストサンドとガマニオンを振るうとすずかは金槌を振り下ろした。
「!?」
その途端、強烈なヴィジョンがすずかの脳裏に飛び込んでくる。それは
力のままに暴虐を繰り返す男に、無慈悲に刈り取られていく命の光景が鮮明にすずかへと流れ込んできた。その勢いはすずかが金槌を振るえば振るうほどより強力になる。
それはまるで
だが、苦しそうに顔を歪めながらもすずかは金槌を止めない。
それは何だか
「大丈夫、大丈夫……。
あなたは何も悪くなんかない。 今見せた『歴史』だって、あなたを悪用した昔の人たちの罪、あなたには何の罪もないよ。
だからお願い、私にあなたを直させて」
すずかはそんな風に諭すように囁きながら修理を続ける。
その善悪は使う者の倫理観のみに左右される。
そのため纏いやすく、そのために悪い人間に象徴とされ悪事の原動力となった『
そのすずかの声が聞こえたのか、
「ありがとう、分かってくれたんだね……」
そんな風に微笑みながらすずかは
その光景を見ながらシオンは改めてすずかの才能に震えた。
(まさしくこの子は、すべての
その意味で通常の
~~~~~~~~~~~~~~~
シオンも席をはずし、
「……確かに、神秘金属の量が普通の
すずかが
実際に自分で修理し、その構成素材の神秘金属の含有量が通常の
「これなら……いけるかも!」
すずかの考えは『
聖戦は文字通りの総力戦、雑兵だって
雑兵は一般的に雑魚のように思われているが実は違う。
だからこそ、過去の聖戦の話を聞き、聖戦でも革製プロテクターで戦わざる得ないという話を聞いて、彼らの生存性を高める防具の作成を思いついたのだ。
そこで参考としようとしたのが『
雑兵が扱うなら、何より『纏えること』が重要になる。そこで要求
『
「……よし!」
思い立ったが吉日である。
その日の夜には総司を巻き込んで計画の素案を作成、修正を繰り返し、しばらくの後にはそれをシオンに見せていた。
その計画を見せられたシオンの衝撃は並大抵ではなかった。
「『
「『
そうニコニコと語るすずかに、シオンは唖然とする。
スカリエッティたちの開発した『
シオンがそれらを考えなかった理由はいくつかある。
まず一つは『
しかしすずかはクリスマスを祝い、年末は除夜の鐘を聞き新年には神社に参拝するという、現代的な日本人だ。良いか悪いか、『神』に対する想いはそこまで深くない。そのため『
そしてもう一つ、シオンがそれらを考えなかった理由は単純に材料の問題だ。
元々
しかし、今の
まさにこの『世界』の、すずかだからこその発想であった。
「どうでしょう、シオンさま……?」
「……」
上目づかいに尋ねるすずかに、シオンはしばし無言だ。それも、シオンは心の中で興奮に打ち震えていた。
(この子は……本物の天才だ!
間違いなく、
そんな才気溢れるすずかを指導する立場にいるという今の運命にシオンは感謝すると、その書類を片手に立ちあがった。
「行くぞ、すずか。 これだけのこと、行うには教皇様たちの許可が必要になる」
「え、それじゃ……」
「凄い……このアイディアは本当に凄いぞ、すずか!
すぐにでも教皇様たちからの許可を貰わねば!」
「は、はい!」
シオンも
こうして教皇の認可を受け始まった『
それが雑兵用簡易
ヘルメット・手甲・胸当てという簡素な造りながら、ごく微量の
~~~~~~~~~~~~~~~
「ふむ……」
セージは教皇の間に併設された書斎で各種種類に目を通す。様々な報告を見ながら思案するセージの元に、ハクレイが書類を片手にやってきた。
「兄上、どうですかな? すずか嬢の造った『
「うむ。 あれは凄い。
今までの革製プロテクターなどとは比較にならん防御力の上、攻撃力も問題ない。
さすがはすずか嬢だ、ワシの見込んだだけのことはある。
難を言えば通常金属を多量に混ぜたために、真っ黒になっていることか。
「そこは後で塗装でもいたしましょう」
まるで老人の孫自慢のようにすずかを誇るハクレイに、セージは苦笑する。しかしセージがなのはを語る時と今のハクレイの姿はまるで同じであり、そのあたり兄弟ゆえに血は争えないようだ。
「……
「うむ。 ワシらの聖戦の時とはまるで違う。
より良く未来に進もうとする意思……これが『次代』というものなのだろうな」
ハクレイの言葉に、セージはしみじみと頷いた。
「と、そう言えばまた管理局から例の話が来ておったな。
どうするつもりだ?」
管理局からの話というのは、近々卒業となるパライストラ一期生たちがどれほどの強さを持ったのか見せろという要請だ。
あの『雪上会戦』以後、
今回の話もそう言った『反
セージたちもそう言ったふざけた話は無視していたし、基本的に神秘主義的な
「それですが……快人の案を採用しようかと考えています」
「ほぅ、それでは……」
「管理局を招き……パライストラ一期生による『
その言葉にハクレイが笑う。
『反
「やれやれ……随分と派手な卒業式じゃな」
「派手で無くては。
少なくとも
かくしてパライストラ一期生たちによる格闘大会、『
そんなわけで聖闘士星矢原作でずっと思っていた、アテナ軍の雑兵待遇悪すぎの改善でした。
あと、この物語での聖衣についての見解です。
正直、聖衣と聖闘士が『88』ではΩのパライストラなど開校できないと思いますので、こんな解釈になりました。
あと暗黒聖衣の話題について。暗黒聖衣って使っている人間が悪いだけで不憫だなぁと思います。正直、性能は悪くないのに。
暗黒聖闘士の話題はまた今度。
次回から数度に分けてこの『聖域飛翔編』のキモ、オリジナル聖闘士たちの卒業式とも言える『銀河戦争編』に突入します。
次回もよろしくお願いします。