そのため、本来今回から『銀河戦争編』に突入するつもりでしたが、今回と次回は予定を変更して少年と少女たちの平和な日常の話を投稿します。
時系列的にはすずかが擬似聖衣を開発中の一年間の間の話です。
「はぁはぁ……」
熱のこもった息を何度となく吐き出す5人の美少女たち。
この美少女たちはなのは・フェイト・はやて・すずか・アリサの
さて、そんな5人はだらしなく口を開いて息をつき続ける。それもそのはず、辺りは相当の熱を持った活火山地帯、そしてそんな場所を5人娘は前進中であった。
何故、彼女たちがこんなところにいるのか……その説明のためには少々時間を遡らなければならない。
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「え、湯治?」
「そう」
なのはの言葉にすずかが頷いた。
ここはいつもの
そんな席で姿の見えない
「なんでも疲れを癒すために5人みんなで湯治に行ったんだって」
「それって、さ……」
「うん、何かズルないか?」
すずかの説明に、フェイトとはやてがいかにも不満そうに顔を見合わせる。彼女たちとて毎日のように忙しく過ごしている身だ。なのに
「しかもよ、シャウラったら私にすら全然そのことを話さなかったの。
男だけで内緒でいくなんてコソコソして嫌な感じ!」
アリサが不満そうに口を尖らせる。
なのはたちも誰一人としてその話は聞いていない。そもそもこの話の出所はハクレイだ。すずかが総司の行方をハクレイに問いただしたところ、教えてもらった話である。そんな自分たちをのけ者にして自分たちだけで湯治に向かった
そんな4人を見渡しながら、すずかはゆっくりと言う。
「ねぇみんな、今からでも私たちも湯治に行かない?
実はハクレイおじいさまから場所聞いてるんだ。
「お、ええなそれ!」
すずかの声に即座にはやてが頷き、他のみんなも頷いて満場一致でなのはたちは
「それで、その保養地ってなんてところなの?」
すでに全員が乗り気な中、なのははその目的地の名前を聞いた。
そしてその答えは……。
「うん、地中海にある『カノン島』ってところなんだって」
そんなトンデモナイ答えだったのである。
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「シュウたち、一体どこにいるんだろう?」
あまりの暑さに水筒の水で喉を鳴らしながら、フェイトは辺りを見渡す。しかしそこにあるのは行けども行けどもゴツゴツとした荒地のみ。
「そもそも、ここ本当に保養地なの?」
アリサもだらしなく犬のように舌を出し、水筒の水で水分を補給しながらそうぼやく。
彼女たちとしては日本の温泉街のようなものを想像してやってきたわけであるが、そんなものは影も形もない。
しかし、そんなアリサの疑問の声をすずかとなのはが打ち消す。
「ハクレイおじいさまが嘘をつくはずないよ」
「私も出る前にセージおじいさんに確認をとったから間違いないの」
ともかく、
5人娘は色々思うところはありながらも、再び進み始める。その時だった。
「ふぃ……効くなぁ、こりゃ」
何処からかそんな声が聞こえる。
「今の声……快人くんだ!」
「恐らくあの岩場の向こう!」
フェイトの言葉に、全員が気力を振り絞ってその岩場をよじ上る。
そしてそこには……。
「ふぃ……いやぁ、こりゃいい」
「本当だよね、兄さん。 さすが
「うむ。 汗と共に日々の疲れが取れて行くのが分かるな」
「やはり疲れを取るならここだな。 俺も仕事の合間にこまめに来ることにしよう」
「いいなぁ、総司くんは。 僕もなるべくは来たいけど、仕事もあってなかなか来れないんだよね」
ゴボゴボと吹きあがるマグマの海の真ん中の岩場で、5人は腰かけていた。その周囲はマグマの熱で地獄のような暑さである。
そんな中で噴煙に身を沈めながら男5人は取り留めもない世間話に花を咲かせている。その光景になのはたちは空いた口が塞がらなかった。
「ん、あれ、なのはたちじゃないか!」
そうしているうちに快人がなのはたちに気付くと、快人はマグマの海に飛び込み、マグマの海を『泳いで』渡る。
そしてプールから上がるかのように軽やかにマグマの海から上がってくると、清々しい顔でなのは達に話しかけた。
「なんだ、お前らも湯治に来たのかよ。
ほら、いい湯だぞ。
遠慮せずに入ってけよ」
見れば他の
それを見て少女たちは声を揃えて言い放つ。
「「「「「できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」
人間としてどこか間違っている男どもの様子に、少女たちは心の底からの叫びを上げたのだった。
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「ふぅ……」
夜も10時をまわった頃、総司は月を眺めながらゆっくりと湯を楽しんでいた。
ここはカノン島の北部に位置する、シャウラの実家『ルイス・インダストリー』の出資によって造られた温泉リゾート施設の露天風呂である。
昼間の少女たちの叫びからその後のことである。
古くから伝わる
昼間のあの場所は
近くには洞穴のような場所があり、そこはなのはたち3人娘でも使用できるような保養ポイントだった。そこに案内するとなのはたち3人はその身体に入り込んでくる雄大な
そんな時にシャウラが一言。
「じゃあ、宿の方に行こうよ」
聞けば、ここを
案内されたそこは、流石と言うべきか凄い施設であった。巨大な温泉リゾート施設の中は日本風の風呂や、古代ローマ風のテルマエなど世界各国の風呂を体験できる施設になっていた。また、ここカノン島の温泉は非常に身体に良いらしく、温泉治療のための病院なども併設されている。
結局、合流した少年少女10人は身体を癒す温泉旅行を楽しむことになった。
地中海の海の幸に舌鼓をうち夜も更け各々が自由行動をする中、総司は1人露天風呂へと入っていた。
実は、総司は
「ふぅ……」
幸いなことに、今この風呂には自分以外誰もいない。月村家の風呂も広いがさすがにここの大きさには負ける。そんな風呂を占有していることに、総司の気分も緩み切っていた。だから総司は気付かなかったのである。ある意味、敵などよりよっぽどたちの悪い爆弾の接近を……。
ガラリッ
「むっ……」
扉の開く音とペタペタという床を歩く音、どうやら自分1人でこの風呂を占有出来る時間は終わってしまったらしい。そのことに総司は小さくため息をつくと、ゆっくり目を瞑る。そんな総司に、耳を疑う声が入ってきた。
「こんばんは、総司くん」
「!!? す、すずか!?」
慌てて見れば、そこにはバスタオルを纏っただけのすずかの姿が。
「な、なにを考えてるんだ?
ここは男湯だぞ!?」
「あ、大丈夫だよ。
入り口に掃除中の札、出しておいたから」
「そういう問題ではないだろ!?」
日頃冷静なことがウリの総司らしからぬ混乱ぶりである。そんな総司の様子に、すずかはどこか満足そうに微笑むと、上目づかいで拗ねたように口を尖らせながら言った。
「だって……せっかくだから総司くんと一緒にお風呂に入りたくって」
「いやいや、だからと言って男湯に入ってくるのはおかしいですよ、お嬢様!」
「ねぇ、総司くん。
一緒にお風呂入ろ?」
ぶんぶん首を振りながらの大混乱中の総司に、すずかはどこか妖艶な微笑みのまま、風呂の傍までやってくる。
「すずか、待て! いいから待て!」
「えー、お湯に入らないと風邪ひいちゃうよ」
そう言って楽しそうにバスタオルに手を掛けるすずかを前に、最強の
「だぁぁぁぁ!!」
「あ、待って総司くん!!」
全力の逃亡であった。
総司はすずかの脇を通り抜け、一目散に脱衣所へと駆け込んだ。そのまま自分の服を入った籠へと手を伸ばすが……。
「……やられた!」
その手が止まる。見れば自身の服の入っていたはずの籠には、変わりにすずかの衣服が入っていた。しかもご丁寧にも、見せつけるようにすずかの紫のランジェリーが一番上である。
最初から総司が逃げることを想定していたすずかは、脱衣所の時点で総司の服を隠していたのだ。
「総司くん、待って」
すずかが近付いてくる。
今の総司は全裸だ。身を隠すためのタオルも、今しがた逃げる時に風呂の脇に置き忘れている。
すずかの到着まであと2秒といったところ。身体を隠すためのものは……目の前のすずかの衣服か?
(そんなことできるかぁぁぁぁぁぁ!!)
全裸を晒すか、すずかの服で身体を隠すか……過去最大の難題の中、総司が下した結論は……。
「総司く……ん?」
「……何だ?」
ウキウキとした様子で脱衣所に入ってきたすずかは、目の前の光景に一気に呆れ顔になった。
そして総司を指差しながら言う。
「全裸に
「……」
総司は苦肉の策として、
「なんでそんなに嫌がるの、総司くん!
『契約』の話だって受け入れてくれたってお姉ちゃんが……」
「うるさい、それとこれとは話が別だ!!」
総司のもの言いにすずかもムッとしたのか、腕を組んで仁王立ちで総司の前に立つと言い放つ。
「いいよ、総司くんがそんなつもりなら、無理矢理にでも言うこと聞いてもらうから!」
「何をするつもりだ?」
「
その途端、
「な、何ぃぃぃぃ!?」
そんなにドリル装備が嫌だったのか、即座に自分を見捨てた
そんな
「一番外れてほしかったところが残っちゃった」
「お嬢様、その発言は色々な意味でNGです!!」
「こうなったらもう、私が直接脱がすしかないよね?」
「一体! 何を! どうやったらそんな結論に至るのか激しく問い詰めたい!!」
もう色々な意味でいっぱいいっぱいの総司に、すずかはワキワキとその両手を怪しくくねらせる。すずかの目が紅く輝いているのは見間違いであって欲しいと総司は願ったが、その願いは『神』には届かなかったようだ。
じりじりとにじり寄るすずかに、総司は意を決して逃亡を開始する。
「待て、総司くん!!」
「誰が待つかぁぁぁぁ!!」
追うすずかと、追われる総司。バスタオルの美少女と、金ぴか鎧を腰にした少年。
その光景は知る人が見れば、目を覆いたくなるような惨状だった。
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「ふぃー……いいお湯だった」
「こっちもいいお湯だったの」
風呂上がりに落ちあった快人となのはは、土産物を眺めたり連れだって施設の中を見て回る。
すると……。
「お、これ……」
「あ……」
快人たち2人の前の温泉、その入り口には『混浴』という魅惑の2文字が躍っていた。
「なぁ、なのは……」
「やっ!」
快人が下心丸出しの顔でなのはを見やると、なのははプイッとそっぽを向く。
「何だよ、子供のころは一緒に風呂とか入ったじゃん」
「昔は昔、今は今なの!」
ベー、と舌を出すなのはに快人も「そりゃそうか」とあははと笑うと、なのはも苦笑した。快人としても本気でなのはと混浴できるとは思っていないし、なのはだって全力の拒絶をした訳ではない。今の掛けあいだって、2人のじゃれあいの1つだ。そんな風に和やかな雰囲気が2人の中で流れていく。
そんな2人の前で『混浴』と書かれた扉が開いた。
「いいお湯だったね、シュウ」
「うん。 やっぱり家のお風呂とは違うよね」
何やら、見たことのある2人が親しげに会話を交わしながら『混浴』と書かれた扉から出てきたのだ。
「「……」」
快人もなのはも目が点、見間違いであることを祈ったがどうやら見間違いではないらしい。その証拠に、快人となのはの姿を認めた2人が話しかけてきたのだ。
「あ、兄さん」
「あ、なのは」
「ヤ、ヤァ、マイブラザー……」
「フェ、フェイトチャン……」
なにやらぎこちない快人となのは。そんな2人を尻目にいつもと同じ様子で話を続けるシュウトとフェイト。
「良いお湯だったよ。 広くて綺麗で」
「なのはたちもこれから入るの?
だったら2人もゆっくり楽しんでね」
そう言って連れだって去っていくシュウトとフェイトの2人を、快人となのははどこか遠い目で見つめる。
そんな2人の耳に、今度はおかしな声が聞こえてきた。
「待ってよ、総司くん!!」
「誰が待つか、誰が!!」
駆け抜けていくのは金ぴか鎧を腰に巻いた少年と、バスタオル一枚の美少女。その2人が風の如く爆走していく。
「「……」」
快人となのははもう、何も言えなかった。
そんな中、2人が選択したものは……。
「……もう部屋帰って寝るか?」
「……うん」
2人は何も見なかったことにしてベッドに潜り込み、心の平穏を保つことを選択したのだった。
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翌朝、朝食の場に総司とすずかは現れた。
すずかは何処までも清々しい表情でニコニコし、逆に総司は苦虫を噛み潰したような何とも言えない表情だった。どうやら昨日の騒動、すずかの方に軍配が上がったらしい。
「……」
「……」
何とも気まずい雰囲気に、快人も総司も無言で食事を進める。そして食後にコーヒーを啜っていると、総司がポツリと言った。
「……俺は後一日、噴煙に浸かってくる」
「……そうか」
なんだか来た時よりやつれた感じの総司に、快人は心から同情したのだった……。
聖闘士の保養地、カノン島の話でした。
でも、あそこもう少し利用する聖闘士多くてもいい気がするんだけどなぁ。
原作だとニーサン専用のサウナになってるし。
あっ、LCは論外です。
疲れを癒しに来たら鬼にボコボコにされたでござるとか、どんな罰ゲームかと……。
次回は快人たちのドタバタ学園祭の予定。
よろしくお願いします。