……捕鯨が上手くいかず、一ヶ月以上も更新にかかってしまいましたキューマル式です。
映画『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』が放映していたり、今は聖闘士星矢が熱い!
そんな訳で今回はパライストラ生徒たちによる『銀河戦争』の予選編です。
その知らせは、即座にパライストラ生徒すべてに通達された。
「この6年、君たちはよく学び、そして力を付けた」
朝礼の時間、いつもは多忙なため滅多なことでは視察にこない教皇セージがやってきたことで、パライストラ生徒たちは何事かと話に耳を傾ける。そんな真剣な様子のパライストラ生徒たちの姿を満足そうに眺めながら、セージは話を切り出した。
「君たちが入校したころは、頼りない面影の君たちに私は正直不安を感じていた。
果たしてどれだけのものがこのパライストラに最後まで残るだろうかと……。
しかし、私のその不安は杞憂に終わった。
総勢101名……これだけの人数が6年の修行に耐え抜いたことは永い
そして……そんな君たちの力を試すための催しを開催する!」
その言葉にパライストラ生徒たちがザワザワとざわめく。それを手で制し静かにさせると、セージは続けた。
「『
まずは全員が予選に参加し、予選を残った者だけが私や管理局の前でトーナメント形式での戦いを披露するのだ。
予選は2週間後、『
もちろん、この中には
各自この6年間の最後を最高の状態で飾れるよう、一層の研鑽を私は期待する!」
そう言って退出するセージに代わり、今度はパライストラ学園長であるアルバフィカが壇上に立つ。
「諸君、聞いての通りだ。
詳しい予選内容に関しては追って指示を行う。
それまでの間は各員、最後の調整としていつも以上に研鑽に励んでほしい」
その言葉でその日の朝礼は締めくくられるが、その日パライストラ生徒たちの興奮が醒めることは無かった。
~~~~~~~~~~~~~~~
教皇の間に併設された書斎でセージとハクレイが各種資料に目を通している。それはパライストラ生徒たちの、各種教官たちからの評価である。
その内容に、セージもハクレイも感心したように頷く。
「本当に……此度のパライストラ生徒たちは、
「うむ、そうだな……」
現在、パライストラに残っている生徒は男77名、女24名、計101名だ。入校時が123名であることを考えると、たった22名の脱落である。それも死亡した訳ではなく、辛い修行に耐えかね退学を申し出るという、こう言ってはなんだが非常に平和的な脱落である。
ちなみに脱落者に関してもみだりに
話を元に戻すが、パライストラには現在101名が在学中だ。この全員が十分戦力となる、いわゆる『雑兵クラス』以上には育っている。さらにこの中の約20人近くには十分に
約100人中20人……あの星矢たち100人の兄弟ですら
「……もしかすれば、これも『女神の加護』なのかもしれませんな」
迫るハーデスの危機に対するための、『女神たちの加護』……そのお陰なのかもしれないとセージは一瞬考えるが、それが生徒たちにとって失礼極まりないことであることに気付き、セージは考えを改める。この6年の修行に耐え抜き、その心身を鍛え抜いたのは紛れもなく生徒たち1人1人の努力なのだ。
「ともかく、聖戦まで差し迫った現状で優秀な人材が多いことは良いことです。
しかし……」
「どうも
ハクレイは顎をさすりながらため息をつく。
ことの起こりは、管理局との研究のためにパライストラ生徒と管理局の魔導士との間で模擬戦を行ったことだった。
何故パライストラの生徒となのかと言うとその答えは簡単、快人たち
かといってなのはたちならどうかというと、なのはたち
そのためパライストラ生徒が模擬戦を行うことになったのだが……。
「あれは、のぅ……」
「まぁ、彼らの気持ちもわかりますが」
それを思い出しセージとハクレイは揃って苦笑いをする。
この時、模擬戦に選ばれたのはカルマ・レスティレットとルーク・ブランシュの2人であった。この2人はともに実力も高く、互いにシオンとエルシドからの推薦もあったくらいである。実力的にはセージたちとしても何の問題もなく送り出したのであるが、問題は模擬戦の相手側だった。
カルマとルークはともに『魔法を使えず、
「なんだ、魔導士にもなれなかった雑魚が相手かよ」
「こりゃ、楽勝だな。
この人物たちは、典型的な『魔法至上主義者』であった。そのため魔法の才能が無いものが最後の希望として入学したパライストラを平然と『魔法の才能のなかった負け犬どもの巣窟』などと称したのである。
カルマの過去の『力』が無かったころを基準にしての挑発だったのだろうが、『魔法を使えず、
そして……そんな相手をカルマとルークの2名は徹底的に、一方的に叩き潰したのである。
お陰でまたまともなデータが取れなかったと管理局には愚痴られたのだが、セージたちとしても生徒の成長は喜ばしく、他のパライストラ生徒たちからも自分たちを侮った『魔法至上主義者』を叩きつぶし拍手喝采であった。
……と、ここまでは何の問題もなかったのだが、この一件を契機にパライストラ生徒の中で良くない考えが静かに生徒の中に広まっていってしまったのである。
『今回の模擬戦では、魔導士を魔法の使えないパライストラ生徒代表が完膚なきまでに叩き潰した。
さらに自分たちの頂点とも言うべき
つまり魔法よりも
……このような『
パライストラ生徒には『魔法』に対していい感情を持っていない者が相当数いるため、その『魔法』を使う魔導士を一方的に叩き潰したことで、自分の身に付けた
『いじめられっ子が強くなっていじめっ子に仕返しし、自分は強いんだと偉ぶっている』
あまりにも例えがアレだが、大筋ではそんな感覚で間違いは無いだろう。
侮られて怒り、努力の果てに手に入れた自分の力に自信を持つのはいいが、このような『
すぐさまセージやパライストラ教師陣もそう言った感情を抑止するように座学などで指導したのだが、すべては各個人の心の奥底でのこと、根本的な部分でそんな『
そこでセージは、今回の『
「予選は『コスモデルタの突破』、としようと思います」
「そうかそうか、あそこか……。
自惚れ、
そう言ってハクレイは苦笑したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~
『
一体どんなことを行うのかと、パライストラ生徒たちはザワザワと口々に言い募るが、パライストラ生徒たちの前にアルバフィカが立ったことでその喧騒がピタリと止んだ。
「パライストラ生徒諸君、今までの6年間の成果を示す時だ。
これより先刻の発表の通り、『
そう言ってアルバフィカが指差すのは険しい山々の、特に高い山の頂上だ。
「内容は簡単なことだ。
今から12時間以内にあの山の頂上へとたどり着くこと、それが『
これから全員に腕時計を配る。この時計は残り時間を示すのと同時に魔力封じの効果と、位置情報をこちらに示すビーコンになっている。これを持って各自には今までの6年間で鍛えた己の力で、目的地まで辿りついてもらう。
ただし、これは予選ではあるが今まで互いに切磋琢磨した仲間を蹴落とすものではない。
よって、他者への妨害行為は厳禁とする。
それ以外には特にルールはない。どのようなルートを進むかに関しても、お互いに協力し合うこともお前たちの自由だ。
以上だが……何か質問はあるか?」
その言葉にスッと手を上げたのは彼らの総代であるトム・ウイリアムであった。
「質問を言いたまえ」
「はっ!
こう申し上げるのは恐縮なのですが……この予選内容はいささか容易過ぎると考えます。これでは『
それはまさにパライストラ生徒たち全員の考えの代弁であった。
ここまで残った全員が、大なり小なりで
そんな仲間たちを尻目に、トム・ウイリアムは続ける。
「しかし、そのようなことは教官がたが理解していないとはとても思えません。
加えて、純粋にサバイバル能力と持久力をと言うのであれば、
もしそうであれば、開始前に情報の開示を希望します」
「……トム・ウイリアムくん、君は鋭いな。
そのことを今から話そうと思っていたところだ」
そう言って静かにアルバフィカはそれを語りだした。
「彼の言う様に、普通にただ目的地に到着するだけではここに居る全員が予選突破となるだろう。
君たちは全員、大なり小なり
しかし、この『場所』では『
この場所は
「
「そうだ。
この場所の大地は
そして急速な
つまり……この『コスモデルタ』を通常通り
この『コスモデルタ』を通常通り
無論、
ようは鍛えた自分の肉体と
そこまで言うと、アルバフィカは一端言葉を切ってから続ける。
「『
そして、君たちも今後の戦いの中でそんな事態に遭遇するかもしれない。
そんな時のために君たちが自分の力を正しく把握し使用する感覚を養う訓練もこの試験は兼ねているのだ。
……トム・ウイリアムくん、疑問は解消されたか?」
「は! 生徒一同、理解しました!!」
「結構。 では全員、腕時計を受け取りたまえ。
全員に配り終えた後、スタートとする」
その言葉に、全員が次々と腕時計を受け取っていくがその顔には不安が色濃い。
その場所に、パライストラ生徒たちは不安を隠せなかった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「始まりましたね、校長」
「ああ」
『コスモデルタ』手前に仮設された本部施設に戻ったアルバフィカをリニスが出迎えると、アルバフィカは大型スクリーン前に設置された椅子に腰かける。
そして、その絶妙なタイミングでリニスが淹れていたお茶を差し出した。そして、アルバフィカはそのお茶に口付けながら、大型スクリーンを見つめる。
「状況は?」
「現在のところは順調……と言ったところですね」
そこにはこの周辺の地図と、いくつもの光点が動いているのが映し出されていた。言うまでもなく、光点はパライストラ生徒たち全員に取り付けさせた腕時計から送られてくる位置情報である。
「ほとんどが各々の部屋ごとに分かれて協力して進んでいるようですが……その進行速度は極めて遅いですね。
この自然環境だから……というのもありますが、
「だろうな。
無意識に
その辺りの冷静さがある者は意外と少ないからな。
シュウトたち
「全員いつでも動けるように準備しています」
「結構だ」
今回の『
そのためパライストラ生徒たちの安全を考え、現役の
「さて……一体どれだけの者が残るのやら……」
「……」
アルバフィカのその言葉に、リニスは無言で大型スクリーンへと視線を移した。
~~~~~~~~~~~~~~~
「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」
グルァァァァァァ!!
猛ダッシュで駆けるカルマ・レスティレット、サビク・アルハゲ、ヨハネス・スピンドルの『55号室』の面々の背後から、熊のような猛獣が追いすがる。
「ど、どうするみんな!?」
「それはこっちのセリフだよ!
こっちに道が、とか言ってカルマ君が進んだせいだろ!
どう見ても獣道だったじゃないか!」
「見つけた時にはそこまで思い至らなかったんだよ!」
歩きにくい原生林の中、ついつい歩きやすい道を見つけて歩いていたところ獣道であり、そこでばったり出くわした猛獣に追われているのが今の状況だった。
「カルマくんもヨハネスくんも言い合っている場合じゃないだろう!!」
言い合うカルマとヨハネスをサビクが諌める。
「どうする! 一戦交えるか!?」
「いいや、今後どうなるか分からないのにここで体力を消費するのはマズい!
僕に考えがある。
3分ほどでいい、囮になって時間を稼いでくれ!」
「3分……結構な無茶を言うね、サビク君も!」
サビクの言葉に、全速力で走りながらもヨハネスが肩を竦める。
「任せろ! しばらく逃げ回ってる!!」
「頼むよ、サビク君!!」
そう言ってカルマとヨハネスは気を引くために石を投げながら猛獣を誘導する囮になる。
「よし!」
自分から猛獣が離れていくのを確認すると、サビクはいつの間にか手にしていた草を手近な石を使ってすりつぶし始める。そして作業開始からきっかり2分30秒、サビクはそれを自分の衣服の一部を破って袋状にすると詰め込んだ。
そして未だ猛獣に追われるカルマとヨハネスの元へと舞い戻る。
「こっちだ!!」
木に昇っていたカルマとヨハネスに吠えたける猛獣は、その声にサビクの方を振り返る。
瞬間、サビクが手にした袋を猛獣の顔面へとヒットさせる。
ギャゥン!!?
猛獣は短く悲鳴を上げると、そのままどこかに去っていった。
その様子に、猛獣に追いたてられていたカルマとヨハネスも、ホッと息をついて木から下りてくる。
「いやぁ、助かったよサビク君」
「ホント、助かったよ。
でも、今何やったんだ?」
「なに、この辺りの植物でみたことあるのがいくつかあったからね、ちょっと即席の臭い玉を作ったんだ」
元々医療知識に長けていたサビクは周辺の草花から強烈な臭気を発する臭い玉を作り、その臭いで猛獣を退散させたのである。
「さぁ、急ごう。
まだまだ先は長いんだし」
そう言って促すと、3人は再び目的地に向かって歩き始める。
その距離は未だに遠い……。
~~~~~~~~~~~~~~~
自分にとって一番誇れるものは何か?
パライストラの女子生徒であるアンネ・エルシュトーネはそう聞かれたら迷わず『運』、と答えるだろう。
彼女の兄はヨハネスの元同僚、シャウラに模擬戦で完膚なきまでに敗北した『本部第三武装隊』の一員であった。彼女自身は魔力の素養も少なくごくごく平凡な管理局局員だったのだが、優秀な兄を打ち倒したシャウラに興味を持ち、そのインスピレーション刺激される容姿にころりとやられてしまったのだ。
そのため兄を倒した力への興味という建前と、シャウラを間近で見たいという本音を持ってパライストラに入校してきたのである。ちなみにパライストラ内の一部女子たちの間で大流行している、シュウトとシャウラの薄い本の作者は彼女であった。
そんなある意味でミーハーな志で入校してきたアンネだ、本来ならすぐにでも根を上げてやめていくものだが、彼女に
パライストラは『部屋』という単位が重要だ。『部屋』での連帯責任を負うことで、お互いに支え合い脱落者を生まないシステムを採用している。そのため、『部屋』のメンバーが優秀だと何かと助かる。どんな相手と同じ『部屋』になるか……これは完全に『運』だが、彼女はこれが最高に良かったと思っていた。
ちらりと見れば、同部屋である猫山霊鳴とロニス・アルキバが話をしている。
「……ダメ。 鳥たちが言ってる。 この先は湿地帯、足を取られる」
「うーん、でもこっちの道もね。
どうも『嫌な予感』がするわ」
「その意見には同感。
この道の周りは鳥たちも警戒してる。
恐らく猛獣か何かが出る」
「とはいえそれ以外に進む道はないし……」
そんな風に真面目な顔で会話をする2人。この2人はパライストラ女子の中ではツートップである。
かたや女子の代表であり成績優秀な猫山霊鳴。噂では
かたや実技・座学ともに成績女子トップをひた走るロニス。彼女も噂では
その2人と『運』よく同室になったお陰で、自分はこうしてここに居るのだと痛感する。
(ルームメイトが優秀だとラクだわ、ホント。
特に2人ってばどこから持って来たのかよくお菓子貰ってきて分けてくれたりもしたし、ほんと私ってば『運』がいいわ)
そんな風にアンネが思っていると、話を終えた霊鳴がやってくる。
「行きましょ、危険だけど獣道をいくわ。
あなたの能力で周りの警戒よろしくね」
「りょーかい」
アンナの持つレアスキルは『
しかし、探査範囲は魔力探査の方が何十倍も広く、探査対象も『音』に限定されるため管理局では使えない能力の烙印を押されていた。
彼女自身も正直使える能力とは思っていない。たまにパライストラに視察にやってくるシュウトとシャウラの会話を聞いて、薄い本のための妄想にふけるための能力だと思っているぐらいだ。
彼女は言われるままに周囲に気を配り、猛獣などの足音を探りながら2人とともに歩いていく。
アンネは気付いていない。
ただただ『運』が良いだけの人間が、このパライストラに最後まで残っているはずが無いことに。
そして同時に、自分が2人を頼っているのと同じように、2人から信頼されていることを。
かくして正真正銘の女子のトップチームは協力し合いながら確実に目的地に向かって進んでいた。
~~~~~~~~~~~~~~~
トム・ウィリアムは辺りを見渡し、どうしたものかと思案する。辺りには一歩も動けぬように息をつくパライストラ生徒たちが8人へたり込んでいた。
トム・ウィリアムとエイム・ロイドの総代・副総代はともに管理局時代に長期サバイバル過程などを卒業しており、こういった原生林での訓練経験もあった。
そのためそんな2人は順調に進んでいたのだが、そんな中どうも猛獣に襲われたらしい8人を発見したのだ。
どうやら全員
同時に、彼らをこの状態のままここに放置するのは危険極まりない。どうしたものかと考えていると、歩み寄ってきたエイムは言った。
「総代、我々は先を急ぎましょう」
その言葉に、トムは耳を疑う。
「正気か、エイムくん。
この辺りは猛獣などの危険も多い。彼らを今の状態のまま放っておく訳にはいかないだろう」
「では、彼らを守って我々も失格となりますか?
総代、これは『
今の彼らの状態は言うなれば自業自得、我々までそれに付き合う訳にはいきません。
彼らも、我々の足かせになるよりはこのまま進み、我々がこの予選を突破することを望むでしょう」
「そうです。
総代、副総代、自分たちは大丈夫。
先に行ってください……」
「うーん……」
エイムの言葉に、体力が尽きてへたり込んでいたパライストラ生徒たちが同調する言葉を聞きながらトムも考えていた。
エイムの言うことは正しい。これは『
しかし、状況が状況だ。下手をすれば命の危険まである状況で、例え当人たちが賛同していたとしても見捨てていくという判断を下すのは躊躇われる。
そんな風にトムが思案していると、上空から2つの影が降りてきた。
「よう、トムのおっさん。
あんたは大丈夫そうだな」
「トムさん、大丈夫ですか?」
それは黄金と白銀の影、
トムは元々管理局で教導官をやっていたため、魔法についての指導が上手く、なのはに数々の魔法について指導していた。言うなればなのはの魔法についての師の一人と言える。そんな縁で、快人もトムのことは知っていた。
「快人どのになのはどの。
お二方は何故ここに?」
「あー、脱落者の回収だよ」
なのはの魔法の師の一人とはいえ、
「なるほど……よく考えれば、校長や教皇様たちがこの事態を想定していない訳がありませんな。
しかし、ここで
「この程度、
「私は
何でもない風に答える快人となのはに、改めてトムは
「そういう訳でここは俺らに任せて行ってくれ」
「わかりました。
ではエイムくん、我々も先を急ごう」
「……ええ」
そう言ってトムはエイムを促すが、エイムは何か名残惜しそうにしてからトムと一緒に先を急ぐ。その後ろ姿が見えなくなるまで、快人となのははそれを見ていた。
「……まったく、ありゃケンカ売ってんのか?
いっつも人の
「憧れてるからなんだろうけど……何でだろ、エイムさんの視線って何だか悪寒が走るんだよね」
そう言ってなのははブルリと肩を震わせる。
「まぁいいさ。 それよりこいつら回収して戻ろう」
「了解なの」
2人はトムとエイムのことは頭から放り出すと、自分たちの仕事を始めた……。
~~~~~~~~~~~~~~~
『
そんな中、ルーク・ブランシュ、リュウセイ・コトブキ、ハインリヒ・フォン・ネテスハイムの『33号室』の3人は焦りを抱き始めていた。それと言うのも原生林の突破のために時間をかなり消費してしまい、時間内に突破できるか難しいところになってしまったからだ。このままでは時間内に目的地に着かず、失格になってしまう。そこで3人は博打にでることにした。山の頂上までの最短ルートの強行突破である。
「うわっ!?」
「リュウセイくん、大丈夫か!」
危うく滑りそうになったリュウセイに、その下を昇るハリーが無事を確認する。リュウセイが掴み損ねた石がガラガラと音をたてて落ちて行くが、その音はいつの間にか聞こえなくなっていた。
ここは切り立つような断崖絶壁だ。その絶壁をルーク・リュウセイ・ハリーの3人はよじ上っている。
「あぶねぇ……」
その高さにゾッとしながら、リュウセイは冷たい汗を拭う。
「……気を付けろよ。
思った以上にこの辺りの岩は脆い」
先頭をよじ上っていたルークが注意を促す。
入校時は刺々しかったルークではあったがそれも6年も一緒に苦楽をともにすれば変わるもの、無愛想なのは相変わらずだがリュウセイとハリーに対してはいつの間にか打ち解けていた。
そんなルークの言葉にハリーは笑いながら返す。
「そっちこそ気を付けて下さいよ。
焦りは禁物です」
「……分かっている」
ハリーの見透かしたような言葉に、ルークはどこかバツ悪そうに答えた。
ルーク自身も、今の自分の中に焦りがあることは感じている。ルークは魔法の才能無く家族から『おちこぼれ』扱いをされ、
リュウセイやハリーとの出会いやエルシドの導きで以前ほど虚栄心に凝り固まっている訳ではないが、それでもそんな感情が自分の根底には泥のように溜まっており、もはや無くすことは出来ないだろうとは気付いていた。だから自分の価値を示す最高の舞台、『
しかし、この状況で焦りは危険だ。
ガラッ!
「ッッッ!!?」
「ルーク!!」
「不味い!!」
ルークの手にしていた岩が突如として崩れ、バランスを崩したルークの身体が宙を浮く。そして刹那の間も無く、重力に捕われルークの身体が落下を始めた。
(死……ぬ!?)
瞬時にそれを意識するルークだがその瞬間、リュウセイとハリーは動いていた。
「ハリー!」
「リュウセイくん!!」
互いに名を呼び合うとルークと同じく宙へと身を躍らせるリュウセイとハリー。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
リュウセイは
瞬時に自分たちの身体を使ってルークを捕まえることに成功したが、それだけでは終わらなかった。
ガッ!!
「グゥ!?」
「!? ハリー!!」
リュウセイとハリーによって九死に一生を得たルークだが、2人を見上げた途端、ポタリと何かが落ちてくる。それは赤い液体……血だ。見ればハリーが左目の辺りから血を流している。
リュウセイとルークを繋ぐ役割であったハリー、彼は2人を両手で繋いだが、そのため勢いよく岩肌に叩きつけられたときに顔面を守ることができず、傷を負ってしまったのだ。
「ハリー!!?」
「あ、あはは……大丈夫さ。
こんなのよりデフテロス教官のゲンコツのほうが何倍も痛いよ」
そう言ってアハハと笑うと、ハリーはリュウセイを見上げた。
「リュウセイくん、行くかい?」
「……おう。
ただ、俺だけの
「分かってるよ。
僕の
ハリーはその言葉と共に自分の
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
リュウセイはハリーから受け取った
「あはは……無事かぁ?」
「お陰さまでね……」
「お前ら……」
「お前ら……何故こんなことを……」
「おいおい、仲間を助けるのに理由はいらないだろ?」
「だが! そんな状態じゃお前ら2人はここで……!!」
「うーん、そうだねぇ。
残念だけど僕ら2人はここまでかな……」
ルークの言葉に、リュウセイとハリーは苦笑しながら答える。
「僕たち2人はここまでかもしれないけど……ルークくんは大丈夫だろう?」
「そうそう。
……あとは頼むぜ。 本戦じゃ暴れまわってくれよ」
その言葉にルークは唇を噛みしめる。このリュウセイとハリーとてこの6年を全力で駆け抜けてきた。その成果を示す舞台であるはずの『
「……」
ルークは無言のまま2人の傍に座り、2人の胸に手を当てる。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
そしてゆっくりと
「!? おい!!」
「何を!?」
ルークからの
「俺は!
お前たちを踏み台にしてまで『
その強い語気にリュウセイとハリーの動きが止まる。
「……確かに俺は自分の価値を示すために
魔法を使えないために俺を『おちこぼれ』呼ばわりした家族を、周囲を、そのすべてを見返すために
そんな俺にとっては『
だがな……俺はそれと同じくらい、お前たちに感謝を感じている!
6年……この6年ともに励んできたんだ! 見捨てるなど……できん!!
『
それ以外、俺は認めない!!」
「ルーク……」
「ルークくん……」
ルークの言葉にリュウセイとハリーは互いの顔を見合わせ、肩を竦めて苦笑した。
「わかった、わかったよ」
「仕方ないですね。
ルークくんたっての頼みです」
そう言って2人はルークへと手を差し出す。
「行こう!」
「ええ、もう時間もあまりありません」
「ああ、行こう!」
2人の手を取りルークが立ち上がると、3人は再び絶壁に挑み始める。
体力も
~~~~~~~~~~~~~~~
「もうそろそろだね……」
「うん……」
時計を見ながらのシュウトの言葉に、フェイトは頷く。
2人がいるのはゴール地点である山の頂上だ。アルバフィカから最終合格者を確認するように言われた2人は、ここで最終的な『
現在2人の周りにはパライストラ生徒が13人、大半が地面にへたり込んだ状態で座っていた。もはや会話する体力もないのか、山頂は静かだ。
「あの3人がいないね……」
「本当だ……でも、勝負は時の運とも言うしそういうこともあるよ」
シュウトたちとしては、すでに
「それじゃそろそろ……」
「……いや、待ってフェイト」
シュウトの言葉に、フェイトは少しだけ周囲を探ってみると頂上への断崖絶壁側から何か音がする。
「まさか!?」
フェイトが断崖絶壁を覗いてみれば、そこには頂上に向かって猛然とよじ上ってくるルーク・リュウセイ・ハリーの姿があった。
「急げ、もう時間が!!」
「分かってる!」
「簡単に……言ってくれますね!」
そして一歩先を行くルークがついに頂上へと昇りきった。
「リュウセイ!」
「ああ!」
即座にルークが後続のリュウセイに手を伸ばし、リュウセイを頂上へと引っ張り上げる。
「「だぁぁぁぁぁぁ!!」」
そしてルークとリュウセイは最後の力を振り絞ってハリーを頂上へと引っ張り上げた。
「やったぞ!」
「あはは、やったぁぁぁ!!」
「これで予選突破だよ!」
勢い余り頂上で大の字で倒れながら3人は笑いを漏らす。その瞬間、その場に居た全員の腕時計からアラームが聞こえた。『
「16人、だね……」
「うん。 アルバフィカさんに連絡入れるね」
そう言ってフェイトは通信を始める中、シュウトは頂上に集うパライストラ生徒たちを見た。幾人か足りない気がするが、
そんな未来に共に闘うだろう同志たちを、シュウトは頼もしそうに見つめるのだった……。
というわけで『銀河戦争』予選編でした。
読者さんから貰ったオリジナル聖闘士候補生たちは順当に予選を突破しています。
次回はそんなオリジナル聖闘士候補生たちの激突する『銀河戦争』本戦編です。
次回もよろしくお願いします。
最後に映画『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』の感想を……。
蟹座は愛されている! 主にスタッフから!
魚座は泣いていい! 許す!