こちらも時間がかかると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ。
国立音ノ木坂学院。
今俺の前にそびえている建物の名前だ。
古くから存在しているということもあって、見た目は少し古いが、かなり大きくて立派だ。
「ふむ、随分立派だなぁ」
俺の名前は浅沼薫。
今日からこの音ノ木坂学院に編入となった。
音ノ木は本来女子高。しかし、現在廃校の危機に陥っており、その改善策の一つとして共学化が持ち上がった。
しかし、いきなり共学化なんてできないという意見も。
そのため、俺が共学化のテスト生として選ばれた。
俺の母がここの理事長と親しいらしく(というか二人ともこの学院の卒業生らしい)、理事長の『共学テスト生』の頼みを快く、俺に何も言わずに承諾してくれやがった。
そんなわけで、俺は急きょ元いた学校から住居を変えてまでこの学院に編入となったわけだ。
もともとはアパートに住んでいたのだが、いつの間にか両親が家を用意していた。そこで一人暮らしをしながら通うのだ。
……っと。こんな事を考えている場合ではなかった。早く理事長室へ向かわなくては。
そう思い学院に足を伸ばす。
すると───
「わぁぁー!そこの人どいてどいてぇぇーーっ!」
後ろから叫び声と凄い衝撃が。
「ぐぉぁあっ!?」
その衝撃に耐えきれるわけもなく、俺はぶつかってきた何かと共に地面にずっこけた。
「いっつつ……」
「あいたたた……」
俺はぶつかってきた何かを抱えるようにして倒れていた。
あ、柔らかくて良い匂いがする……。頭痛いけど。
しばらくこの弾力、心地よさを味わっていたいと思いながらも、俺は抱えている物体を見る。
「…………っ」
可愛い。真っ先に思ったのがそれだ。
俺が抱きかかえていたのは、制服を着た女の子だった。
少し頬を赤く染めながらも、キョトンとした顔でこちらを見続けている。
俺はつい見惚れてしまった。
「あ、あの……そろそろ離してください……」
「っあ!わ、悪い!」
女の子が困ったように(若干おびえてもいた)出した声に我に返り、その女の子をすぐさま離す。
女の子は立ち上がると、制服についた埃を払う。
俺もその間に立ち上がり、埃を払う。この道が石畳でよかった。新品の制服が少し砂がつくだけで済んだ。
二人とも払い終わると、何とも言えない沈黙が場を包む。
まぁそりゃそうか。見知らぬ男に(事故とはいえ)抱きしめられたらそりゃなんて言ったらいいのかわからん。
「あの……」
そう思っていると、女の子が口を開いた。
「ごめんなさい!」
そして、頭を下げる。
突然の事で少し固まってしまうが、俺も遅れて頭を下げる。
「い、いや、俺の方こそごめん!その、抱きしめるような事しちゃって……」
「いえいえ、私のほうこそ!」
「いや、俺のほうが───」
と、日本人特有(?)の謝罪合戦になりかけた時、俺の携帯のアラームがなった。
「ん、……やべぇ!理事長室行かなきゃ!」
念のためにセットしておいたアラームは、理事長に言われた時間の5分前を知らせるものだった。
この学校の中は全然知らないので、少しゆとりをもって行動しようとしていたのだ。
今から理事長室を探すとなると、遅れる可能性が高い。
誰かに聞くという手もあるが、そう都合よく人はいないし────
「あ、いた」
「え?」
「いやー、助かったよ。ありがとう」
「ううん。このくらい平気だよ!」
あの後、俺は心底申し訳ないと思いながらも、女の子に理事長室まで案内してくれるよう頼んだ。
女の子は一瞬悩むような素振りを見せたが、すぐに了承してくれ、案内してくれた。
幸いなことに理事長室は昇降口から入ってすぐの階段を上がった目の前という、近場だった。
「じゃあ、俺はここで」
「うん。……あ、あの」
時間が時間だったので別れようとすると、あの女の子が引き留めてきた。
「あの、良かったら名前を───」
「あら、浅沼君。それに高坂さんも」
女の子が何かを言いかけた時、後ろから穏やかな声が聞こえてきた。
「あ、理事長」
後ろを振り向くと、この音ノ木坂の理事長、雛子さんが立っていた。
「ごめんなさいね、こちらが時間を指定したのに遅れてしまって」
「あ、いえ、時間的にはぴったりですし、何より俺も今来たばかりなので」
「そう言ってくれると嬉しいわ。………ところで、高坂さんはどうして浅沼君と一緒に?」
雛子さんは俺の返答に微笑むと、俺の後ろに居た女の子(高坂というみたいだ)に視線を向けた。
高坂は先ほどの経緯を説明する。
「そうだったの。ありがとうね、高坂さん」
「い、いえ!私がぶつかっちゃったのがいけないんだし……」
どうやら高坂は根っこから優しい良い子みたいだ。
ふと、俺は気が付いた。
「そういえば高坂、走ってたってことは何か急いでたんじゃないか?」
「あ、あぁぁぁーーっ!そうだった!遅刻寸前だったんだ!」
俺の言葉に高坂はハッとして、あわあわし始めた。
「あら、そうだったの。ごめんなさいね、高坂さん。担任の先生には連絡しておくから、教室に行ってもいいわよ」
「す、すいません!それじゃあ失礼しまぁーす!」
理事長の言葉で、高坂は走り去っていった。
あ、そういえばさっき高坂が言いかけてた事ってなんだろうか。
………まぁいつかまた会えたら聞くか。
「さ、浅沼君、中に入って。少しお話があるから」
「あ、はい」
俺は理事長と共に理事長室へ入り、今回の計画についてを聞いた。
といっても、事前に聞いていたことの確認のようなもので、5分もかからずに終わった。
「じゃあ浅沼君、今から貴方のクラスに案内するわ。着いてきて」
「はい」
理事長に連れられ、新しい高校生活を送る教室へと向かう。
「このクラスよ。少し待ってて、担任の新渡戸先生と少し話すから」
俺たちは理事長室から歩いて3分ほどの場所にある教室へと着いていた。
上を見ると、2-Bと書いてある。
少し耳を澄ませると、理事長と、若い女性の話し声が聞こえた。
『連れてきた』、『じゃあ早速紹介を』的なことを話していたので、恐らく、俺の紹介についてだろう。
すぐに理事長が教室から出てきて、俺に教室の中に入るよう促す。
「じゃあがんばってね。そしてよろしく、浅沼君」
理事長はそう言うと理事長室の方向へと去っていった。
俺も、軽く深呼吸して教室へ入る。
「失礼しまーす……」
俺が教室に入ると、新渡戸先生が教壇の脇に立つよう促す。
そこまで歩いている間に、女子生徒達の小声の会話が聞こえる。
「ねぇ、あれ男の子だよね?」
「どうして男?」
「いったい何?」
等と、やはり俺の事を不審に思っているようだった。
まぁ無理もないだろう。女子高なのに制服を着た男が入ってくるのだから。
教壇の脇まで立つと、新渡戸先生が生徒達を静かにさせ、俺の紹介をしてくれた。
「皆、静かに。えー、彼は、浅沼薫君。今日から共学化テスト生として、うちのクラスに編入となった。ほれ、自己紹介しな」
「えっと、浅沼薫です。寂しい高校生活は送りたくないので気軽に話しかけてほしいです。これからよろしく」
ふむ。結構ちゃんと喋れたようだ。クラスの生徒の不審そうな目が、珍しいものを見るような目に変わった。
新渡戸先生も満足げに頷くと、教室の後ろのほうを指さし、
「じゃあ浅沼の席は、あそこの………寝てやがる高坂の隣な」
ん?高坂?もしかして……。
言われた席の方へ行くと、案の定、先ほど理事長室へ案内してくれた高坂がいた。
…………どうやら爆睡しているようだが。
その後、HRが終わると、クラスの皆がわっと集まってきた。
転校生の味わう質問地獄というやつだ。
俺は一人一人の質問に答えっていった。
「彼女はいる?」
「いや、年齢イコール系男子だよ」
「好きな食べ物は?」
「駄菓子があれば生きていける」
「趣味は?」
「うーん、歌ったり、ベースもちょこっとやってる」
等など、1時限目が始まるまでずっと間髪無しに答え続けた。
皆が席に戻り始めたころ、隣の席の高坂が話しかけてきた。
起きてたのか。
「君、転校生だったんだね!私は高坂穂乃果!よろしく浅沼君!」
「あぁよろしく高坂。俺の事は薫でいいぞ」
「じゃあ私の事も穂乃果でいいよ、薫君」
「ん、わかった。穂乃果」
俺たちはさらっとだが自己紹介をし、1時限目に挑んだ。
今日は特別日課らしく、3時限目が終わったあと帰宅出来た。
帰りにも行われた質問地獄をなんとか終わらせ、帰路に着く。
歩きながら考えるのは、穂乃果の事。
あんなに明るく、元気な子と早くも仲良くなれた。
なかなか楽しい学校生活を送れそうだ。
いかがだったでしょうか。
私は基本思い付きで書いているので、おかしい点もいくつかあると思いますが、青い春と合わせて頑張っていくので、アドバイスなんかありましたら、どんどんお願いします。
それでは、また次回会いましょう。