こんなの非日常   作:はなみつき

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中堅戦

vsなのは


公輝となのはと11話

 

 

「よしっ!」

 

 そう一言気合を入れて、私は今日のプランを確認する。

 今日ははやてちゃんとフェイトちゃんと話し合った計画を実行する日! 今日は私の番だ。

 先日、はやてちゃんが作戦を実行に移したと聞いたけど、失敗してしまったらしい。詳しいことは話してくれなかったんだけど、それ以来、はやてちゃんは公輝くんと顔を合わせるのが少し恥ずかしくなってしまったみたい。本当に、何があったんだろう?

 

「まずは、公輝くんに紅茶の淹れ方を教えてもらいながら、さりげなく距離を縮める」

 

 今日は、私に紅茶の淹れ方を教えてくれるという名目で、公輝くんを翠屋に招待している。誘うときにちょっと失敗しちゃったけど、大した問題にはならないはず。

 

「次に、一緒に淹れた紅茶で翠屋のシュークリームを食べる」

 

 あわよくば、「はい、あーん」なんかしちゃったりして。しちゃったりして!

 

「か、完璧だ……完璧すぎて自分が怖いよ」

 

 私は自分の考えたプランの完璧さに感心してしまう。こんな風に公輝くんに近づけば、きっと彼もドキドキするよね? だって、私がそうなんだもん。

 これで普通の感覚を思いだしてくれるはずなの!

 

「こんにちはー」

 

 そんなことを考えていると、どうやら公輝くんが来たようだ。

 よーし、作戦開始!

 

 

 

 

 

 

「それにしても、さっきのなのはさん変だったな」

(確かに、挙動不審だったな)

 

 おれは今、なのはさんに翠屋に来て欲しいというお誘いを受けたため、翠屋に向かっている途中である。

 学校が終わった直後になのはさんが、

 

「きょ、今日時間空いてる? ま、ま、公輝くんがよければ、私に……その……こ、ここ紅茶んんっ! 紅茶の淹れ方を、教えて欲しいんだ」 

 

 と、言ってきたのだ。

 

「……罠か?」

(一体、何のためにだ?)

 

 それだ。なのはさんがおれを罠に掛ける動機が分からない。もし、この誘いがはやてによるものだったとしたら完全に罠であると確信できるんだが、今回のお誘いはなのはさんによるものだ。

 

(マサキの中の主は一体どうなっているんだ)

「隙あらばおれに何かして来ようとしてくるだろ」

 

 全く、おれはこんな悪戯娘に育てた覚えはないんだがな。

 

(主もそんな覚えはないだろうな)

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。今の問題は、なのはさんが何故おれを呼んだのかという問題だ。

 

「そもそもコウチャンの入れ方ってなんだ?」

(心当たりはないのか?)

 

 うーん、コウチャン……紅茶ん……甲ちゃん……あ!

 

「なるほど、そう言うことか……」

(知っているのかマサキ!)

 

 全ての疑問は解消した。

 

「コウチャンとはつまり甲ちゃんを示す。これはこの間のアップデートで追加された瑞鶴改二甲及び、翔鶴改二甲のことだ。甲ちゃんの入れ方、つまり、五航戦改二甲の入手方法を聞きたかったんだ。五航戦改二甲の入手方法は試製カタパルトの入手方法と同義」

 

 おれは一息付いて結論付ける。

 

「なのはさんはおれに試製カタパルトの入手方法を教えて欲しいんだ!」

(な、なんだってー!)

 

 おれは証明終了と言わんばかりにドヤ顔でリインさんに説明する。

 

(って、そんな訳ないだろ。それだけならマサキを翠屋に誘う必要はない)

 

 それもそうだ。本当にそれが聞きたかったのなら、その場で聞けばいいだけなのだから。それなら一体、コウチャンとは……

 

(考えても仕方がないだろ。もう着いたぞ)

 

 そんなことを考えながら歩いていると、翠屋の前まで来ていた。

 翠屋のドアに手を掛け開けようとしたおれだが、そこでピタッと止まる。

 

(? どうかしたか)

「もし、なのはさんがおれを罠に掛けるとしたら、ドアに設置すると思うんだ」

(ゲームのやり過ぎだな)

 

 そんなこと言ったって、最近やってるゲームの所為でそう言うことに敏感になってるんだよ。敵がいないと思ったらしれっとクレイモアがこんにちはしてくる。本当に心臓に悪い。でも、やめられない。

 

(いいから早く入れ)

 

 リインさんに急かされ、おれはしぶしぶドアを開ける。

 

「こんにちはー」

 

 何があろうと動じるものか!

 

 

 

 

「何だ、紅茶の淹れ方だったのか」

「え? なんだと思ったの?」

 

 おれはなのはさんに「今日は何でおれは呼ばれたんですか?」って聞いた。そうしたらきょとんとした表情で紅茶の淹れ方を教えて欲しいと言ってくれた。なんだ、コウチャンとは紅茶の事だったのか。おれの推理は大外れだった。

 

「いや、うん。まあ、それはいいじゃないか。じゃあ早速始めよう」

「ん?」

 

 なのはさんは納得した様子ではなかったが、特に気にしないことにしたようだ。おれもその方が助かる。

 

「いやー、楽しみだな。公輝くんが淹れる紅茶」

「えっ! お父さん?」

「こんにちは、士郎さん」

 

 さっきまで厨房にいたであろう士郎さんが姿を見せる。そんな士郎さんに対し、おれはすかさず挨拶をする。人との交流の基本はまず挨拶から。それが目上の人となるとなおさら重要だ。

 

「こんにちは、公輝くん。君の淹れるミルクティーの噂はなのはからよく聞いているよ。楽しみだな」

「ははは……翠屋の店長さんに期待されたら流石に緊張しますね」

 

 翠屋は喫茶店。普通のランチメニューなどもあるが、メインはケーキやシュークリーム等だ。それに合わせて飲み物が用意されているのは必然である。ここのオススメはマスター(士郎さん)のコーヒーではあるが、士郎さんが淹れる紅茶もまた絶品であることに違いはない。実際に飲んだおれが言うんだから間違いない。

 そんな人に期待されたら流石に緊張してしまう。ここはおれも本気を出さざるを得ないな!

 

「よしっ、なのはさん! そうとなれば、おれが全力で教えてあげよう!」

「は、はいっ!」

  

 なのはさんの気合は十分。おれの持つすべてをなのはさんに教え込もうじゃないか!

 こうして、マサキのパーフェクト紅茶の淹れ方教室が始まった。

 

 

 

 

 

 

「なのはさん! レシピとは秘訣! 先人達が経験に経験を重ねて作り上げた宝。まずはそれの通り、完璧に作ることが大切だ! ミリグラム単位の誤差は仕方がないが、誤差はないに越したことはない!」

「はい!」

 

 紅茶を淹れるための下準備をした後、最初は茶葉をポットに入れるところだ。おれが参照していたおいしい紅茶のレシピを思いだしながら、なのはさんに茶葉の分量を教える。とりあえず、カップ2杯半位の紅茶で良いかと思い、茶葉を5グラムと言う。すると、流石は喫茶店の娘と言った所だろうか、なのはさんはティースプーン山盛り2杯分の茶葉をポットに入れた。

 しかし、それではだめだ。それでは約5グラムでしかない。確かに、何度も紅茶を淹れることによって自分の好みの茶葉の分量を感覚的に把握することもできるようになるが、今はまだその段階ではないはずだ。

 なので、細かいことだがそこは徹底させてもらう。

 

「茶葉を多少増やすか減らすで味は変わるから、気を付けるんだ」

「はい!」

 

 そんなことをしていると、温めていた水が頃合いになって来た。そこで次の説明に移る。

 

「紅茶を淹れるときのお湯は完全に沸騰させちゃいけないんだ。完全に沸騰させちゃうと、上手くホッピングしないから良い具合に抽出できない。目安としては、5円玉くらいの泡が、水面真ん中からボコボコ立つくらいが目安かな。大体90度から95度位って言われてる」

「はい!」

「今日は説明のために時間を掛けてやってるけど、出来ればお湯を準備してから手早く茶葉をポットに入れた方が良いよ。ゆっくりやって、折角いい温度のお湯が冷めちゃうと意味無いしね。それに、茶葉を長い間空気に晒しちゃうと、少しかもしれないけど風味が逃げちゃうからね」

「はい!」

 

 ここで軽く注意なんかを入れながら、どんどん説明していく。なのはさんもメモを取りながらしっかり聞いてくれるもんだから、おれも楽しくなってきてしまった。

 

「よし、次はお湯を注ぐよ!」

「はい!」

 

 そんな感じで紅茶教室を続けていったのだった。

 途中でリインさんがおれに(本気過ぎだろ……)って言ってたけど、気にせずに全力全開を出してしまった。

 

 二人で淹れた紅茶は最高の出来で、翠屋のシュークリームをおやつに美味しくいただきました。

 

 

 

 

「「「「「ご馳走様でした」」」」」

 

 テーブルに座っているみんなが声を合わせて食後の挨拶をする。

 

「今日は食後のデザートがあるから楽しみにしててね?」

「やった!」

 

 お母さんの言葉に、お姉ちゃんが喜んでいるようだった。

 

「それじゃあなのは、お願いね」

「任せて!」

 

 私はお母さんにあることを頼まれる。それは、私が今日の放課後を全部掛けて学んだ事。そう、紅茶を淹れることだ。

 

(まずは、カップをお湯で温めて、次は紅茶を淹れる用のお湯を用意する)

 

 私は公輝くん教わったことを一つ一つ思いだしながら確実に、完璧にこなして行く。

 

(茶葉の計測は正確に。お湯の注ぎ方は茶葉がホッピングする程度かつ丁寧に)

 

 紅茶をおいしく入れるコツは全ての手順を丁寧に行うこと。その言葉を忘れずにやっていく。

 

「な、なんかなのはがすごい本気だ……」

「ああ、すごい集中力だ」

 

 傍で見て居たお姉ちゃんとお兄ちゃんが何か言っているが、今の私には何も聞こえない。全ての意識を紅茶を淹れるという行為に注ぐ。

 

(蒸らす時間も紅茶の味を左右する大事な要素。ここで気を抜いちゃいけない)

 

 私はとりあえず、みんながおいしく楽しめる濃さの紅茶を淹れるため、一番基本の蒸らし時間を選択する。

 

 ……

 

 今!

 

 無駄な振動でポットを揺らさないように、しかし、手早くポットを掴み、みんなのカップに紅茶を注いでいく。

 全員のカップに紅茶を注ぎ終え、私は初めて気を抜くことが出来る。

 

「やった……やったよ! 私、できたよ!」

「お? 出来たのか。それじゃあ、みんないただこうか」

 

 どうやら、デザートのシュークリムはすでに準備が出来ていて、みんな私が淹れる紅茶待ちだったみたい。

 お父さんがそう言うと、みんなはまず紅茶を一飲みする。

 この瞬間は緊張する……みんなは美味しいって言ってくれるだろうか?

 

「ん~!! おいしい!」

「ほう……おいしいよ、なのは」

 

 最初に反応したのはお姉ちゃんだった。お姉ちゃんには好評だったみたい。次はお兄ちゃん。お兄ちゃんも美味しいって言ってくれた。それに、お兄ちゃんのあんな安らかな顔は初めて見た気がする。

 

「美味しいわ、なのは。毎日お願いしたい位!」

「おっ、これは翠屋(うち)の看板メニューにできるぞ」

 

 お母さんも喜んでくれたみたい! それに、お父さん、流石にそれは言い過ぎだよー。

 

「えへへ~。ありがとう! だけど、看板メニューにするなら公輝くんをアルバイトとして雇った方がいいんじゃない?」

 

 私が公輝くんをアルバイトとして雇った方が良いのでは? と、言うと、お父さんは「それもいいな」なんて言いだしてしまった。あれ? そうしたら、公輝くんと一緒に居れる時間が増える? それはいい考えだ!

 

「ん?」

 

 その時、私は大事なことを思いだした。

 公輝くんと……一緒に……居る?

 

「あー!!」

「ど、どうしたなのは?」

 

 突然叫び出した私に驚いた様子でお父さんが聞いてくる。でも、今はそんなこと気にはしていられない。

 

「忘れてたあああぁぁぁぁぁ!!」

 

 紅茶を淹れるのに一所懸命過ぎて、考えていたプランを実行するのを忘れていたのだった。

 

 




勝者:公輝

敗因:熱中しすぎた

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