こんなの非日常   作:はなみつき

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続くと思った?続いたよ。
本編考えてたらこっちが先に降りて来た。
またしばらくお付き合いください。


現実という名のCパート
女子会と飲み会と1話


 

 

 

「フェイトちゃーん!」

「なのは!」

 

 私は向こうからやって来るフェイトちゃんを見つけると手を振って呼びかける。フェイトちゃんも私に気付いたようで笑顔を浮かべながら手を振り返してくれる。

 ミッドチルドの首都クラナガンの夜。仕事帰りの人達によって道は埋め尽くされている。それでもフェイトちゃんの綺麗な金髪のロングヘアーのおかげで一瞬で判別することが出来る。

 私の栗色の髪だと人混みに紛れちゃうかな?

 

「それじゃ行こうか」

「そうだね」

 

 目指すは居酒屋!

 

 

 

 

 

 

 やって来たのはグラナガンにある行きつけの居酒屋。

 居酒屋と聞くと仕事終わりのおじ様たちが集う場所のようなイメージがあるが、この店は女性が入りやすいように内装は明めで、甘めのサワーの種類が豊富。もちろん、食事は女性が好む物を豊富に取りそろえている。

 これらの理由でこの店は女性が行きやすいことで定評がある店なのである。

 

「私はカシオレと野菜のスティックを。なのはは?」

「私もカシオレと焼き鳥を……塩で!」

 

 やっぱりお酒のあては焼き鳥でしょ!

 ここの店の焼き鳥は良い物を使ってるみたいでとってもおいしい。

 一噛みすると口の中に溢れる肉汁。

 固すぎる事はなく、柔らかすぎることのない良い歯ごたえ。

 そして、この店で扱っている秘伝のタレと塩!

 タレも塩もどっちも美味しいから迷ってしまうけど、今日の気分は塩なので塩にすることにした。

 

「なのはは相変わらず焼き鳥好きだね」

「美味しいからね。フェイトちゃんにもあげる!」

「ふふ……ありがとう」

 

 可愛いもの見ているような、可愛くないものを見ているような何とも言えない表情を浮かべながらほほ笑むフェイトちゃん。

 一体どうしたんだろう?

 ……!

 わかった! フェイトちゃんはカシオレと焼き鳥の組み合わせが許せないんだね!

 

「大丈夫だよフェイトちゃん。次はビール頼むから!」

「なのは……」

 

 あ! フェイトちゃんが安心したような生暖かい目でこっちを見てくる。

 うんうん、やっぱり思った通りだ。美味しい焼き鳥はどんな組み合わせでも美味しくいただけるけど、やっぱり焼き鳥に合わせるお酒はビールだよね!

 ちゃんと私がビールと焼き鳥を合わせると聞いてフェイトちゃんも安心しているみたい。

 

「それにしても、はやては来られなくて残念だね」

「うん、最近はやてちゃん忙しいみたいだもんね」

 

 エクリイプスウイルスによって巻き起こされた大事件。その後始末で今日も遅くまで仕事らしい。やっぱり部隊長っていうのは大変だ。

 

「カシスオレンジ二つ、野菜スティック、焼き鳥お持ちいたしました」

「あ、来た来た」

「ありがとうございます」

 

 スタッフの女性が二杯カシオレ、コップに入った野菜のスティックと焼き鳥を持ってきてくれる。

 焼き鳥の内訳はモモ二本と皮一本。湯気を上げている焼き鳥は自身がアツアツであることをこれでもかというほど私に主張し、さらに焼けた肉の良い匂いが食べてくれと訴えかけて来ているみたいだ。

 ジュルリ……へっへっへ……そんなに焦らなくてもしっかり美味しい内に食べちゃうよ……おっと、焼き鳥が美味しそうだからにやけちゃいそうだった。

 

「そ、それじゃあ乾杯しようか」

「そうだね」

 

 フェイトちゃんもこう言っていることだし、二人で乾杯することにしよう。

 

「はい! 今日もお疲れ様。乾杯!」

「かんぱーい」

 

 私とフェイトちゃんはグラス同士を軽くぶつけ合う。

 二人の間に上下関係はない。対等な相手とのサシ飲みであるためグラスのぶつけ方も適当だ。

 私はカシオレをゴクゴクと飲んでいき、グラスを口から離した時には中身は残り三分の一程度にまで減っていた。

 この店のメインターゲットは女性ということでアルコールは弱めだ。だから甘いジュースのようにゴクゴク行けてしまう。

 

「ふぅ……そして、お次は……」

 

 お酒を飲んで一息ついたので、皿の上に並んでいる三本の焼き鳥に目標を定める。

 ターゲットは二本あるモモ。モモ、皮、モモの順に楽しむのだ。

 

「あー……んっ! …………んー!!」

 

 串の一番前に刺さっているモモ肉を口の中に含み、串を引き抜く。そうすることで目的の肉だけが口の中に取り残されることになる。

 後は口の中の肉を噛み締めて味わうだけ。

 時々焼き鳥を頼むと、あらかじめ串から肉を外して箸で食べる人を見るけど、私からするとあれは邪道。焼き鳥を串から外すとそれはただの焼いた鳥! 焼き鳥じゃなくて焼いた鳥!

 みんなで食べられるようにってそう言う人達は言うけど、本当にナンセンスだと思う。出席している人に焼き鳥を味わってほしいのならみんなの分の焼き鳥を頼むべき。もしくは、串から直接食べてもらうべき。

 ちなみに、フェイトちゃんには私が今食べている串を渡して一口食べてもらった。

 

「すいませーん! ナマチュー一つくださーい!」

 

 カシオレを飲みきってしまう前に次の飲み物をあらかじめ頼んでおく。こうすることで飲み物が目の前に無い時間を短くすることが出来る。もちろん、飲み物が目の前に二つある状態にはさせない。そうすると無駄にグラスを占有してしまい、お店に迷惑を掛けてしまう。

 そんなことはしてはいけない。

 私は残ったカシオレを飲みつつモモ肉を食べていく。

 

「お待たせいたしました」

「どーも」

 

 スッタフの人がビールを運んで来、空いたグラスを持って戻っていった。

 やって来たビールを早速一飲み。

 昔は苦いだけで何が美味しいのかさっぱりわからなかったビールだけれども、いつの間にか美味しく飲めるようになっていた。美味しく感じるようになったのっていつだっけ? まあ、いっか。美味しいに越したことは無いよね。

 次の目標は皮。

 実は私はモモと皮だったら皮の方が好き。

 焦げた鳥皮のカリカリ感が何とも言えないんだよね。

 

「はふー……」

 

 皮のカリカリ感を堪能しながら噛んでいると皮のうま味が口全体に広がっていく。その美味しさに堪らず手を頬に当てて息が漏れてしまう。

 

「し・あ・わ・せ……」

「あはは……なのは、ここに来るとすごい幸せそうな顔するね」

 

 そりゃ、幸せだからね!

 フェイトちゃんは野菜スティックの中のキュウリスティックをぽりぽりと食べている。なんだかハムスターみたいで可愛い。いや、どちらかと言うとウサギさんかな? どちらにしてもかわいい。

 少し食べて落ち着いたところで、これからはフェイトちゃんとのお話しタイムだ。

 

「そうそう、ウチの隊のエーミちゃんとビー君が結婚することになったんだよ」

「へー! それはおめでたいね。同じ部隊内の人と結婚かぁ」

「それでね、お祝いの品を考えてるんだけど、何が良いかな?」

 

 ありがたいことに、私は二人の結婚式に御呼ばれしている。そして、二人の結婚を祝うために贈り物をしなきゃいけない。

 

「うーん、結婚式のお祝いだと……お鍋とかかな?」

「お鍋はシーディちゃんの結婚のお祝いであげたんだよねー」

「じゃあ、おそろいのカップは?」

「カップはイフ君の結婚のお祝いであげた」

「え? じゃ、じゃあ、食器セットとか?」

「食器セットは……ああ、ジエイチ君のお祝いで」

「うーん、うーん……あ! フォトフレームなんてどうかな!」

「フォトフレームはイケちゃんのお祝い」

「……別に他の人にあげたお祝いとかぶっちゃってもいいんじゃない?」

「それもそうだね」

 

 フェイトちゃんにこのまま意見を出してもらっても終わりが見えなさそうなので妥協することにする。よく考えれば全部違う物をあげる必要はないもんね。二人のお祝いはお鍋にしよう。そうしよう。

 

「それにしても、なのはは色んな人の結婚式に出てるんだね」

「そうだねー。改めて考えると周りの人たちがどんどん結婚してるよ」

 

 うーん、それにしても……最近周りで結婚する人多いな……。

 むぅ……ちょっと羨ましい。

 フェイトちゃんは結婚についてどう思ってるんだろう?

 

「フェイトちゃんはイイ人居ないの?」

 

 私はフェイトちゃんに親指を立ててそう聞く。

 

「え! い、居ないよ! うん……居ないよ……」

 

 フェイトちゃんは慌てたようにして答える。そして、答えてから悲しくなったのかな? 声が次第に小さくなっていった。

 

「エリオ君はどうなの?」

「……なのは」

「嘘嘘! 冗談! あはは、何かへんなこと言っちゃったね。私よっぱらっちゃったかな! あはは……」

 

 光源氏みたいに理想の彼氏を育ててるのかとふと思って軽い気持ちで聞いてみたら、フェイトちゃんに凄い目で見られた。

 光が一切ない目でじっとりと見つめられるのがこんなに怖いなんて知らなかった。

 

「そう言うなのはこそ、彼氏は居ないの?」

「居ないよ。もし居たらフェイトちゃん達に真っ先に報告するし」

 

 それにしても彼氏かー。できるのかな? 全然想像できないや。

 それに結婚するっていうことは、いずれ……そ、そういうこともするんだよね? うん、なんだか彼氏彼女持ちって違う世界の生き物みたいに思えて来た。

 

「ユーノはどうなの? なのはと仲が良い男の子筆頭じゃない?」

「ユーノ君? うーん、どうだろう。今でもユーノ君の事は友達と思ってるし、そういう対象として見た事はないかな」

「……ユーノも大変だ」

「? 何か言った?」

「いいや、気のせいだよ」

 

 おかしいな。フェイトちゃんが何か言ったように聞こえたんだけど、気のせいだったのかな?

 

「ユーノは駄目かー。お兄ちゃんがエイミィと結婚してなかったら、なのはと結婚してたかな?」

「えー! どうかなー?」

 

 フェイトちゃんのお兄ちゃん、クロノ君かぁ…… 

 うーん、やっぱり想像つかないかな。

 

「それじゃあ……マサキとか?」

「公輝君? ないない。と言うより、公輝君を取っちゃったらはやてちゃんに何されるかわかったもんじゃないよ!」

「ふふ、そうだね」

 

 公輝君、はやてちゃんの家の居候を自称しているがもう実質八神家の一員と言っても過言ではない青年。

 彼との付き合いもフェイトちゃんやはやてちゃんとの付き合いと同じ位になる。

 

「はやてちゃんはあれで隠してるつもりなのかな?」

「見ててすぐわかるよね。まあ、肝心の本人には気付かれてないからいいんじゃないかな?」

 

 八神はやては坂上公輝に恋をしている。

 はやてちゃんが公輝君に恋愛感情を持つようになったのはいつなんだろう?

 あの二人は私と知り合った時からお互いの距離が近かったけど、それは家族としての距離に見えた。そして、彼らと交友を持つようになって数年経った頃だろうか? いつの間にかはやてちゃんは公輝君に恋してた気がする。

 変化はゆっくりだった。だけど、確実にはやてちゃんは公輝君のことを強く思うようになってたと思う。

 その様子を私達は優しく見ていたけど、結局今の今まで大きな進展は全くなしである。

 

「もう……はやても可哀想だよね。マサキは自分の事を思っている女の子が居ることに早く気付いてほしいよ。何度伝えたくなったことか」

「あはは、わかるわかる。はやてちゃんがさり気なくアピールしてるのに公輝君ったらスルーしちゃうんだもんね。まあ、はやてちゃんのアピールもさり気なさすぎるのは問題だと思うけど」

 

 二人の仲が進まないのは公輝君が全面的に悪い訳ではない。

 いつも大胆なはやてちゃんが変なところでへたれる所為で公輝君が気付かないんだよね。だけど、こういう場合はどんな小さなことでも男の子は気付いてあげなきゃいけないんだよね。

 小さな変化か……

 ……そういえば……

 

「ねえ、最近公輝君、ちょっと変じゃない?」

「なのはもそう思う? 実は私も気になってたんだよね」

 

 そう、それは今年に入ってから感じていた違和感。

 はやてちゃんと公輝君の中は相変わらず良い。家族的な意味で。

 しかし、二人が話している姿を見ると何とも言えぬ違和感を抱いたのだ。

 

「……」

「……」

 

 フェイトちゃんもその違和感の正体を明かそうと考えているのだろう。

 私たちは一旦話すことをやめ、飲み物もそっちのけにし、まぶたを閉じて熟考する。

 考えろ。思い出せ。

 何がおかしい?

 二人が話している時、何がおかしかった?

 今までと違う所を思い出せ!

 

 ……

 

「「あ」」

 

 わかった。

 私は違和感の正体に気がついた。

 それとほぼ同時にフェイトちゃんも気がついたようだ。

 私たちは答え合わせをするように声を合わせて言う。

 

「公輝君がはやてちゃんに目を合わせてない!」

「マサキがはやての目を見られてない!」

 

 表現の仕方こそ違うが、私とフェイトちゃんの答えは同じだ。

 公輝君は人と話す時、人の目を真っ直ぐに見て話す癖がある。それはもう彼と話している自分が恥ずかしくて目をそらしたくなるくらいこっちの目を見てくる。

 そんな彼がはやてちゃんと話している時に限って視線を少しだけ、本当に少しだけ下げているのだ。

 外側から見ることができる第三者だからこそ気がつくことができた小さな変化。

 そして、この変化が示す答えは……

 

「公輝君がはやてちゃんの事を意識してる!」

「マサキがはやてのことを意識してる!」

 

 机に乗り出すようにして私とフェイトちゃんは見つめあう。

 そして、得られた答えに満足するようにお互いうなずくと、私たちは宣言する。

 

「「あの二人をくっつけよう!」」

 

 その後、私とフェイトちゃんとで二人をくっつけるための作戦会議をしたのだった。

 それはもう、残っていたモモ肉の存在を忘れてしまう程熱中して。

 

 

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