学校。それは、子供たちが大人になるために一般的な常識を身に着け、良い会社に就職するために良い大学に入るために良い高校に入るための勉強をする場所である。しかし、この裕福な日本と言う国に生まれた子供たちにとっては時につまらないものであり、時に退屈なものであり、時に昼寝をする場所である。
(いかん……昼飯食った所為というのもあるが、昨日の徹夜の所為でめちゃくちゃ眠たい……)
(おい公輝! 寝るな! もうすぐ授業が始まるぞ!)
リインさんがおれの頭の中で叫んでおれの目を覚まさせようとしてくれているが、まったく効果がない。とうとう我が家に導入された最新ゲームハードであるPS3ではやてと遊びまくってたらこの様である。おれと同じように徹夜したのに、なんではやてはあんな元気なんだ?
もう能力使って眠気吹き飛ばしちゃおうかな……だめだ……頭がボーっとして最高の自分をイメージできない……
(リインさん……おれ……は……もう……だめだ……)
(公輝いいいいぃぃぃぃ!!)
グー。
☆
「はい! てなわけで、体育祭の参加種目はこれで決定や!」
ぼんやりとした意識の中、聞こえてきたのは学級委員であるはやての声だった。そういえば5時間目は来週行われる体育祭の種目を決めるんだったな。寝てしまったので楽な種目を選ぶことが出来なかった。しかし、これは完全におれの落ち度だ。例え誰もが嫌がる持久走だろうがやってやるさ。そもそも、おれにとって持久走は苦でも何でもない。能力を使えばこの学校の誰よりも速く1500メートルを走り切る自信がある。なお、能力を使わなかった場合、おれの記録はこの学校で下から数えた方が早い。
(む、起きたか。大変なことになっているぞ)
リインさんがそう言ってくる。なーに、どんな競技でも文句は言わないよ。
(5種目も出るというのは中々大変だな)
えっ……
慌てて黒板に書かれている種目名と参加する人の名前を見る。
二人三脚:公輝、(略)
持久走:坂上、(略)
借り物競争:ハムテル、(略)
腕相撲:マサキ、(略)
騎馬戦:キミテル、(略)
このクラスで坂上も公輝もおれしかいないし、ハムテルやキミテルと呼ばれるのもおれしかいない。
「はあああああああああぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
「お、ハムテルくん起きたんか。もう修正は利かへんで」
おかしいだろ! 一人で5種目って……絶対だれか1種目も出ないやつがいるはずだ。
「ありがと~坂上く~ん」
「さんきゅーやで、ハムテルくん」
「ありがとう! 坂上くん!」
そう声をあげたのはクラスの女子3人。この3人がおれが5種目出ることによって1種目も出る必要が無い人達だろう。って、おい! はやてもかよ! あとの二人は……名前が出てこない……人の名前を覚えるは難しいからな。
キーンコーンカーンコーン
「チャイムも鳴ったことやし、今日はもう解散や。SHRは省略してええって先生も言っとったから今日ははよ帰れるでー」
教室から歓声が上がる。いつものおれなら彼らと一緒になって歓声を上げていただろうが、今のおれにはそれすらできないほどの衝撃を受けている。
体育祭5種目出場……
(マンドクセ━━━━━━('A`)━━━━━━!!)
(偶には苦労するのもいいだろ)
かくして、おれは体育祭で苦労することが決まった。
★
チャイムが鳴り、帰る人は帰ってしまった。いつも一緒に帰るハムテルくんも今日は先に帰ってもらった。
ふふふ……ここまでは私の計画通りや。ハムテルくんのことやから楽そうな借り物競争に立候補するとは思うとったが、まさか競技決めの時に寝とるとはなぁ。私も管理局の仕事で夜更かしに慣れてなかったらハムテルくんみたいになっとったやろな。予定とはちょっとちゃうけど、計画通りや。
「まあ、これで第一段階完了や。後は……」
そこにいたのは私たちのクラスで体育委員をしているジュンイチ君。第二段階で肝となる人物や。
「ジュンイチ君、ちょっち頼みがあるんやけど」
「な、なに、八神さん」
ここでちょっちジュンイチ君について説明しよう。彼は私たちのクラスの体育委員で、体育委員会の中では借り物競争担当の委員なのである。さらに、ハムテルくんの親友でもある。まあ、ここでは関係ない情報やな。そして、このジュンイチ君、彼は聖祥大付属中学校の女神ズに並々ならぬ関心を抱いているのだ。ちなみに、自分で言うんは恥ずかしいんやけど、聖祥大付属中学校の女神ズとは、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、そして、私ことはやてを合わせた呼び名である。
そんな女神ズの一員である私がジュンイチ君に頼み事をして彼が断わることは難しいはずや。
「借り物競争で使うお題をこれに変えて欲しいんや」
私はジュンイチ君に私が希望するお題が書いた紙を渡す。
「え、うーん。そう言われても、これは委員会で決めたことだからなぁ……」
む、まだ押しが足りないんやな。まだまだ手はあるで。
「お礼に私の好きなコーラ味のチュッパチャップスあげるわ」
「え!? あ、うん。……じゃあ、ちょっと頑張ってみるよ」
計画通り。男の子が大好きな女の子から物を貰えると知って、うれしくないはずはない! さらに、今の会話の中にはもう一つポイントがある。それは「私の好きな」と、言うところだ。ジュンイチ君が私たちのことを恋愛対象としてではなく、アイドル的な存在として見とることは、どこかのアホと違って鈍感じゃない私にはすぐわかった。好きなアイドルの好物は何か? という情報はファンにとって重大な情報や。この情報を露骨に渡すのではなく、さりげなく公開することによって無意識的にお得感を出すことが出来て効果的なんや。
「ほんでな、そのお題の紙をハムテルくんのコースの真ん前に置いてほしいんや。借り物競争の競技の準備をするジュンイチ君なら簡単やろ?」
「公輝のコースの前に? まあ、それはお安い御用だけど」
よっしゃ! これで下準備は完了や。お題を変更できない可能性も微粒子レベルであるけど、基本的には問題ないやろ。今決まっているお題だって委員会が適当に決めたものやっていう情報は掴んどる。変更も楽なはずや。
「じゃ、ジュンイチ君、また明日~」
「うん。八神さん、また明日」
そう言って私たちはクラスを出て家路につく。
体育祭が楽しみや。
なんだかはやてが自分の容姿を使って男子を言いなりにしてるみたいに見えるけど違いますからね。自分が出来ることを現在存在する条件をうまく、効率的に使いながら行った結果こうなっただけですからね。(2回目)