最近はやてのおれに対する視線がおかしい。いや、視線だけでなく色々とおかしい所があるのだ。
例えば、おれがなのはさん達のような女と話していると異様にこちらを観察しているような気がする。まあ、これは気の所為という事にしておくとしよう。
次に、おれがジュンやザフィーラさんのような男と話しているとピリピリしているような、困惑しているような視線を向けてきている……気がする。これも気のせいだとしよう。
「だけど……」
おれは自分の部屋のベッドの前で思わず一人呟いてしまう。いや、正確には一人ではないのだが。
「これはおかしいだろ」
(ふむ、これは一体どういった意図があるのだろうか?)
では、一体何がおかしいのか。それは、おれのベッドの下だけ特別綺麗になっていることだ。おれ達も手伝うが基本的に家の掃除ははやてがしている。はやての掃除は家中万遍なく綺麗にするので、いつも八神家はピカピカだ。だが、今回はおれのベッドの下だけが他の場所とは比べ物にならないくらいピカピカなのである。文字通り輝いている。
「徹底的に掃除しなければいけなくなるほど汚いものがここにあったとか?」
(黒光りするGでもいたのだろうか)
Gか……それはあり得るな。部屋を汚くしているつもりはないが、あいつ等はどうしてもいる所にはいるものだからな。
「ならば、おれもはやてのためにこの部屋のGを殲滅することにしよう」
(どうするのだ? バルサンでも焚くのか?)
なるほど、確かにバルサンはGに対して有効な手段であろう。しかし、おれはそんな物には頼らないぞ!
「部屋をひっくり返して大掃除だ!」
(ついでにいらないものも捨てると良い)
最近ミッドで見つけたおもしろい骨董屋で色々買ってたらいつの間にか部屋の中の物が増えたんだよなー。そのせいではやてには怒られるし。良い物ばっかりなのに。
「まあいい。さっさと始めないと日を跨ぐことになりそうだ」
(マサキなら徹夜くらいなんてことはないだろ)
そりゃそうだけど、徹夜はしたいものではないのでな。
「やるぞー」
(頑張ってくれ)
リインさんも手伝ってくれればいいのに。まあ無理なのは分かってるけどさ。
☆
「あ、これ懐かしいな。去年のジャンプじゃん」
(捨てろ)
週刊誌ってかさばるけど貯めると所有欲というかコレクター心が満たされるんだよな。どうせ読みたい漫画はコミックを買うから雑誌の方を読み返すことは無いんだけどな。
おれはジャンプをビニールの紐でくくってまとめる。
その作業を終わらせると次のダンボールに取り掛かる。
「ん? ああ、これは小学校の教科書だな」
(そんなものもう使わないだろ)
おれもそう思ったんだが、もしかしたら必要になる時が来るかもしれないと思うと教科書って捨てづらいんだよ。まあ、結局再び使うなんてことは無いんですけどね。
「はい、いらないものはドンドン捨てちゃいましょうねー」
(初めからそうしていればいいのに)
そう言われてもね。その時はどうにもできないものがあるんだよ。
「ん?」
小学校の教科書をまとめて入れていたダンボールの中に見知らぬ封筒が入っていることに気が付いた。
「なんだこれ」
(封筒……マサキの成績表とかではないのか)
「おれの成績表の類は全部はやてが保管してるからそれは無いだろ。それに、これ結構厚みもあるし」
改めて考えるとはやてはおれのオカンか何なのだろうか。
おれはとりあえず封筒の中身を確かめてみる。
「おん? エロ漫画じゃないか。流石にこれは予想してなかった」
(ふむ、これはマサキの趣味か?)
いやいや、おれはペッタンコロリものは買わない。買うんだったら貧乳でも無く爆乳でもないバランスの良い胸のって……まあ、そんなことはどうでもいい。
おれは漫画をペラペラとめくって中身を少しだけ見てみる。
「おいおい、これはどうみてもR-18指定のマジもんじゃないか」
(自分で買ったんじゃないのか?)
最初の数ページを見ただけでおれはそれが青少年には相応しくないものだと見極める。
確かに、思春期真っただ中である中学生となって、大分あんなことやこんなことをしたいなーと言う気持ちが沸く様になってきたのは認める。だが、今のおれはどうあがいても中学生。こんなものを自分で手に入れることは不可能だ。そもそも購入した記憶もないし。
(心拍数が上がっているぞ)
「それは仕方のない事なの」
男なら仕方のない事なのだ。
「しかし、本当にこれは一体……あ」
(思い出したか?)
ああ、思い出した。これジュンに貰ったんだ。確か小6のある日に「へっへっへ……すごい物手に入ったから公輝にもやるよ」って言われてこの封筒を押し付けられたような気がする。家に帰って開けようと思ってたけど、何やかんやと用事があって開けるのをすっかり忘れてたんだ。そして、小学校を卒業したおれは小学校関係の物をすべて同じダンボールにしまった。その時にこれも紛れ込んでいたのだろう。
「全く、あいつはとんでもないものを押し付けてくれたものだ」
そう言いながらもおれはペラペラとページをめくって中身の確認を続ける。
(こ、これは……不潔だ! こんなに幼い子供を……)
漫画を読み進めていくと、まあ、アレなシーンが来るわけで。そこに来たところでリインさんが今までに見せたことの無いような慌てぶりを見せる。正直面白い。
「何慌ててるんだ。ただの漫画じゃないか」
(し、しかしだな! これはおかしいだろ!)
リインさんはまだまだ日本に馴染めていないようだな(偏見)
おれ達日本人は外人から言わせると未来に生きてるらしいしな。
(す、捨てろ! そんな不純異性交遊を記した本など、私のディアボリックエミッションで塵も残さず消し去ってやる!)
どんだけ……
特に興味のない分野のモノとはいえ、流石にそこまでするのは気が引けるというか、もったいない精神が待ったをかけるというか。まあ、おれが18歳になって、その時まで趣味嗜好が変わってないとも言い切れないし、とりあえず置いておこう。
(捨てろ~~~~~~!!)
はいはい、リインさんうるさいですよ。
おれは入れていた封筒に再びしまうために漫画を読み続けながら封筒を探す。
その時、閉めていたおれの部屋の扉が開いた。
「さーて、今日もハムテルくんの部屋の掃除する……でー……」
この状況を冷静に観察してみよう。
エロ漫画を読みふけるおれ。
もうこれだけで酷いシチュエーションである。つまり、何が言いたいのかと言うと。
「そ、そうやな……ハムテルくんも男の子やし……そういうことに興味沸くのもしゃーないやんな……」
「ちょっと待ってはやて」
これは……
「あ、あはは……お邪魔しましたああぁぁぁ」
「待ってー!!」
おれはその日、家族にエロ本がばれた時の感覚を味わった。