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「二人とも、よう来てくれたな」
「うん、突然どうしたのはやてちゃん?」
「姉さんは呼ばなくてよかったの?」
今、我が家の机を囲んでいるのは私、なのはちゃん、フェイトちゃんの三人。今日はヴォルケンリッターのみんなとあいつは各々の用事のため、家にはおらへん。その日を狙って私はこの二人を家へ呼んだのである。
「今日は二人と話し合いたいことがあってな。あー、アリシアちゃんは……とりあえずええんや」
そう言いながら、ゲストの二人に私が淹れた紅茶を振る舞う。もちろん、自分の分を入れることも忘れない。
……やっぱり、紅茶を淹れる腕はあいつには敵わんな。
そんなことを考えながら紅茶を飲む。そして、私が淹れた紅茶を飲む二人の様子を見てみる。
「……おいしい」
「……おいしいね、だんだん寒くなって来たから温まるよ」
フェイトちゃんとなのはちゃんは私が淹れた紅茶を褒めてくれたが、一瞬間の間があったことを私は見逃さへんかった。
二人ともあいつの紅茶の味を知っとる。おそらく、私の家で紅茶を飲むという状況は自然とあいつの紅茶の味を思い出させ、比較してまうんやろう。
「なあ、今二人は誰のこと考えたん?」
「えっ!」
「ッ!?」
二人は目に見えて狼狽えているのがようわかる。話の切り出しどころはここやな。
「それで、今日集まってもろた理由なんやけど……単刀直入に聞くで?」
ここで一息入れる。
今から言おうとしていることは正直自分でもすっごい恥ずかしい。それでも、ここでやらな誰も得しない結果に成り得るんや。
意を決して、再び話し始める。
「二人とも……ハムテルくん……公輝のこと好きやろ?」
「え……え? え! えー!」
「な、にゃ、にゃにお……」
フェイトちゃんは顔を真っ赤にして、さっきから壊れたレコードのように「え」しか言わなくなってしまっとる。顔真っ赤のフェイトちゃんはかわええな。
一方のなのはちゃんは、トレードマークのツインテールが上下にピョンピョン跳ねとる。なのはちゃんのテンションメーターのツインテールが今まで見たことないくらいの反応を見せている。そして、慌てて噛んじゃうなのはちゃんかわええ。
「私は……好きや……公輝のこと好きや」
言った! 言ってもうた!
でも、これで二人も自分の心の内に秘めていることを話易くなるはずや。
「二人は? 公輝のこと、好き?」
初めに二人に紅茶を振る舞ったのも、二人にあいつのことを無意識的に意識させ、この質問に答えさせやすくするためのもの。まあ、これは念のための保険でしかないが。
「……」
「……」
やはり、少女にとって、好きな人を告白するというのは中々難しいんやろう。二人とも話し始めようとしない。
やけど、二人は話し始めてくれた。
「私は……私も好き……だよ。公輝くんのこと……」
「うん……私も、マサキのこと……好き……」
先に話し始めたのはどちらと言う訳ではなかった。同時だったんやろう。それでも、二人の言ったことははっきりと聞き取ることが出来た。
そうか……やっぱり二人ともそうやったか……
ライバルが増えたことに少なからず落ち込むが、同時に二人には絶対に負けないという思いが燃え上がる。
「やっぱりそうなんやな。いや! それはええんや。絶対に二人には負けへんで!」
私は二人に宣戦布告を行う。けど、今日の目的は二人の気持ちを知って宣戦布告することや無い。私たち三人が協力して、共通の思い人に関する問題を解決することや。
「そうなんやけど、公輝に関して問題があるんよ」
「「問題?」」
なのはちゃんとフェイトちゃんは疑問の声を挙げる。当然やろう。一見するとあいつに問題なんてないんやから……
私はこの間判明した驚愕の事実を二人に話すことにする。
「公輝は……ホモでロリコンかもしれんのや」
「えっ……」
「ホモ? ロリコン? それって何?」
なのはちゃんは事の重大さがわかったようや。フェイトちゃんはホモとロリコンという言葉の意味を知らんかったみたいで、いまいちピンと来ていない様子。
「あ、あのねフェイトちゃん。ホモとロリコンって言うのは……」
「うんうん………………ッ!!!!」
意味を知っていたなのはちゃんがフェイトちゃんに耳打ちでその言葉の意味を教えてあげている。それにしても、なのはちゃんはどうして意味を知っとったんやろな? まあ、それはええか。
「そ、そ、そ、それって!」
「そうや、公輝は……私たちのことを恋愛対象として見てくれへんっちゅうことや!!」
な、なんだってー!
「それに、マサキがロリコンってことは……あ! もしかして、今日姉さんを呼ばなかったのは」
「うん、『今の』アリシアちゃんは公輝のストライクゾーンど真ん中や。やけど、一般的な人として、それはええこととは言えへん。……もちろん、個人の自由ってのもあるけど。何より! 私たちのチャンスがなくなってしまうんや!」
驚愕の事実を知った時、私が一番初めに思ったこと。あいつは私の事をそう言う対象として見てくれへんと言うこと。そして、あいつはヴィータのことをそういう目で見とる可能性があるということ! 闇の書事件の時、私がヴィータとあいつが付き合っていると誤解した時があったが、それが実現しようとしとる……
試合が始まる前から負けが決まってしまっているなんて言うのは悲しすぎる。どうせ負けるなら、試合を全力全開でやってから気持ちよく負けたい。
「それでな、二人にも協力してもらいたいんよ」
「私たちにできるかな……」
なのはちゃんが自信なさげに言ってくる。
さっきまでピョコピョコ動いていたなのはちゃんのツインテールはしょんぼりとしていることからも、自身のなさをうかがい知ることが出来る。
「それは……わからへん。やけど、やれるだけのことはやりたいやん!」
「そう……だね!」
「うん!」
私の言葉に二人は賛成してくれる。
「私たちは恋のライバルやけど、それと同時に仲間や! 一緒に公輝の性癖を矯正したろう!」
「「おー!!」」
こうして、私たちの公輝誘惑計画が始動したのである。
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