泊地棲姫の空   作:たこ焼きうどん

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戦争が終わり、鎮守府にも深海自治区にも平和が訪れた。
泊地棲姫は艦娘たちと共に間宮のあんみつを食べに鎮守府へと赴く。




緑多き、赤レンガ

海岸都市、鎮守府。長い海岸線、

そして白い砂浜が弧を描き、その中央に大きな島が見える。

鎮守府側の海岸と島との間には、大きくて真っ白なつり橋が架かっている。

海岸線にそってずらりと広がる住宅地と商業地。

その向こうには緑色の山がいくつも見える。

都市は大勢の人々で賑わい、どこもかしこも活気に溢れている。

緑の多い自然豊かな空間に、綺麗な赤レンガの建物がたくさん並んでいる。

果てしなく続きそうな町の繁栄。そこで浮かぶ数えきれない夢、希望、未来。

泊地棲姫もまた、この街、鎮守府で青春時代を送ってきた。

「だいぶ変わりましたね」

周囲をまじまじと見回す泊地。

その姿は、まるで田舎から出てきたおのぼりさんのようである。

広い歩道。まぶしい陽射し。焼けつくような道路。

夏の暑さが泊地を囲む。

「泊地さんは、前に住んでいたんですよね」

如月が泊地を案内する。

汗をタオルでぬぐう泊地。

入院していた頃が嘘のように、泊地は彼女に頼もしさを感じる。

辛い体験が彼女をここまで強くしたのだろうか。

お馴染み4人組が横に並ぶ。

「私、田舎から来たので、この町あんまり慣れてないんです」

「私は吹雪ちゃんの住んでた田舎に住んでみたいなぁ」

「泊地さんは鎮守府のOBっぽい」

吹雪、睦月、夕立、そして如月。

艦娘に街案内をされる深海棲艦。

しかしこれは戦前にはごく当たり前の光景であった。

学生時代を鎮守府で過ごした泊地。

そして、深海自治区へ小学校教師として赴任。

今頃同級生たちはどこで何をしているのだろうか。

泊地の胸の中をさまざまな想いが駆け巡る。

「泊地さん、ここです」

如月の目の前にある店。

「ここが…間宮ですか」

みんなでいつか行こうと言っていた間宮甘味処。

泊地も噂には聞いていたが、実際に足を運ぶのは初めてである。

「もんのすごい大きなあんみつっぽいよ~」

夕立のような小さな女の子でも食べられる量だから、

多分食べきれるだろうと自分に言い聞かせる泊地。

玄関の戸をがらがらと引く如月。

店内を見渡す泊地。

お客さんは今日は少なそうである。

ぽつぽつと女の子たちが座っている。やはり女の子の町である。

そもそもこの町の衣料品店はほとんどが女性向けである。

まるで男子禁制の町である。

席に座っている女性2人がぺこりと頭を下げる。

「あなたは…」

泊地も頭を下げる。

超特大あんみつを前に座る女性2人。

「こんにちは、赤城先輩、加賀先輩」

吹雪も頭を下げる。

座っていたのは、赤城と加賀であった。

眼帯と三角巾をした2人。

奪い、奪われ、奪い返して。

色々あったが、今こうして間宮に来て、

一同が顔をそろえている。。

これは否応なく、1つの現実の形なのだろう。

席につく泊地達。

テーブルの1つに、赤城、加賀、泊地が座る。

もう1つの横のテーブル、に吹雪、睦月、夕立、如月が座る。

「じゃあ、あんみつ普通盛り5人前で、お願いします」

注文する如月。

ここの普通盛りというのは、どうも普通の普通盛りとは違うらしい。

先に来ていた赤城と加賀の前には、あんみつが置いてあった。

しかし、赤城と加賀のあんみつは大きすぎる。

これは最近の鎮守府の文化なのだろうか。

泊地にとっては少しカルチャーショックである。

「小学校の生徒さんたちはお元気ですか」

赤城が話を切り出す。

少し間が空く。心の整理は済んだ、そう考えていた泊地。

でも、やはり、もやもやしたものが胸の奥に残る。

「ええ、相変わらず活発な子だちです」

泊地の言葉に、安堵の表情を浮かべる赤城と加賀。

赤城がお茶を入れて泊地に差し出す。

「ありがとうございます」

泊地がそのお茶をずずっとすする。

伝説の一航戦、多くの艦娘たちが慕い誇る人達。

同じく深海棲艦の子供たちに慕われる泊地がいる。

少し神妙な面持ちの赤城と加賀。

「泊地さん、実は…」

話を切り出す赤城。

ごほんと咳払いをする加賀。

間宮にきて、あんみつ屋に来て、何かいきなり暗い話であろうか。

泊地の嫌な予感は的中する。

「最近、艦娘が次々と何者かに襲撃されるという事件が起きています。

いずれも鎮守府内での出来事です。

犯人はまだ特定されていないのですが…」

険しい顔をする赤城。

「現場に、これが残されていました」

赤城が紙を泊地の前に差し出す。白黒のコピー用紙だろうか。

「深海侵攻を忘れるな」とだけ書かれている。

泊地の心に強い不安がよぎる。

この紙を見る限り、深海棲艦の犯行である。

あまり想像したくない。

それとも深海棲艦に罪を着せようとしている何者かの仕業か。

「襲撃されたのは第6駆逐隊。

艦娘とはいえ、まだ小さな少女達です。

 偶然居合わせた金剛さん達が加勢した事で事なきを得た様ですが」

「艦娘に真っ向から挑んでくるほどの手練れです。

よほど自分の腕に自信があるのでしょう」

赤城と加賀の説明に、考え込む泊地。

「鎮守府は今回の事件を内密にしています。ようやく和平が結ばれ

戦前のような友好的な関係が再び築かれつつある矢先の出来事です。

泊地さんを前にして、

あまりこういう事を言うのも良くないのでしょうが…。

 深海棲艦の中に、何か思い当たるような人物はいますでしょうか」

赤城が泊地に問う。

飛行場姫ではあり得ない。

彼女なら艦娘が束になってもそう易々とは勝てない。

ヲ級は飛行場姫と共に行動している事が多い。

何より、こんな面倒くさい事をするような人物ではない。

何か思いついた様子の泊地。

「気になる事が1つ。皆さんはダメージを受けた際に、

入浴した上で修復剤というものを使用されていますが」

泊地が指摘する。

艦娘は損傷すると入浴し、そこで体力を回復させる。

場合によっては修復剤というものを使用している。

「お湯はおそらく排水されているでしょうが…

 その排水が深海棲艦に、

 何らかの影響をもたらしている可能性があります」

「公害…ですか」

泊地の指摘に後ろめたいものを感じる加賀。

「とりわけ、イ級のような弱いタイプの棲艦は、

概して自然環境の影響を受けやすいのです。

 もし万一、イ級が深海進化をしていたなら…」

「深海進化?」

加賀が問う。

「そうです。ごく稀にですが、

 イ級が人間化し、イ級棲姫となる事もあり得ます」

「イ級棲姫…!」

驚く赤城。

「そんなバカなっぽい」

夕立もぽかんとした顔をする。

「どのような深海棲艦に生まれるかは、

 生まれた時から決まっています。

 しかし同時に、艦娘における改二のようなものが、

 深海棲艦にも起こる事があります」

「夕立ちゃんみたいに…」

夕立を見る吹雪。

「えっへん、ぽいっ」

胸を張る夕立。

「…いずれにせよ、今後は単独行動を控えた方がいいでしょう。

 私であれば、話がいくらか通じるかもしれません」

目の前に置かれたあんみつをじっと見つめる泊地。

鎮守府に来てからいきなり面倒事に巻き込まれてしまう。

なかなか世の中は自分を放っておいてくれないようである。

あんみつを食べながら、ふとそう思ってしまう泊地であった。




ある意味、第2部みたいな感じになりました。
登場人物は引き続きアニメ版をベースにしています。

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