魔法少女リリカルなのはViVid~レディアントマイソロジー~ 作:薄茶
side:ユミル
ニアタさんとの遭遇から翌日、私は今日も世界樹の調査を続けている。しかし、あの日の夜に見えた『光』は今だに確認できず、あれ以降の目立った変化は世界樹には見られない。
「カノン君やニアタさんの事も気になるけど……まずは自分の仕事をやらないとね」
そもそも私がこの世界樹の観測の仕事を始めたのは9歳の頃、レミリアの家系が代々やってきた世界樹の観測の仕事を私が父と母から無理を言って前例よりも早く受け継いだ時から始まったことだ。
あの頃の私はなんというか、自分で言うのも恥ずかしい事だが若くして魔力の素質がほかの子より良く、聖王教会の騎士団にも当時最年少で入団していたこともあって、有頂天になっていたというか、天狗になっていたというか……早い話、調子にのっていたのだ。
「そういえばなのはちゃん達ともそんな時期に知り合ったんだっけ? でも……なぁにが『あなた達と一緒にしないでくれますか?』だ当時のわたしぃ……! 何様のつもりなのよ本当に……今思い出しても後悔しか思い浮かばない……」
とある事件で初めて知り合ったなのはちゃん達に対して失礼にも程がある態度で接し、挙げ句その事件の途中で私は撃墜するという余りにも無惨な結果。
だが何だかんだてなのはちゃん達は私のおバカな態度の事も許してくれて、そんなこんなでみんなと友達になれたのだ。……まぁこの話はまたの機会に。
「(でも、あの時の事件の詳しい事がどうにも思い出せない……まるで記憶にモヤがかかったみたいに……でも)」
『大丈夫、僕には……なのはやフェイトみたいに撃ったり切ったりすることは出来ないけど……怪我してる君一人くらい、なんとか守って見せるよ』
「(……あの事はしっかり覚えてるんだなぁ///)」
side:カノン
《カノン、どうかしたのかね?》
「あ、ニアタ……おなかすいた。フランスパン、固いしちょっと食べにくいから……」
《もうそろそろ正午か……確かにそろそろお腹が減ってくる頃だろう。だがそれは我々に言われてもどうすることも出来ない相談だ。我々のこの体は食べ物の調理には不向きなのでね》
「うぅ……」
《それに、昼食はユミルと共にとる約束だろう? それまでは我慢しなさい》
「約束……うん、そうだね。フランスパンで、我慢する……」
side:3人称
「御馳走様でした」
「……ごちそうさまでした」
ユミルの仕事が一段落し、二人は聖王教会の食堂で少しばかり遅めの昼食をとった。
これからユミルは教会騎士団で騎士見習いの人たちの指導を控えているのだが、先程カリムにカノンを連れて自分の所に来るように言われたことを思いだし、カノンとニアタを連れてカリムの自室に向かう。(※ニアタは勝手についてきた)
「お待たせしました、カリム様」
「いえ、こちらこそお時間を取らせてすみません。それでですが、あなたにお話というか、相談したいことがあって……」
「相談……ですか? 私でお力になることがあれば何でも言ってください」
「ありがとうございます。それで、カノン君の事なんですけど……やっぱり彼について知ってる人はいませんでした。親や親戚、彼を知ってる人ですら。管理局の人達にカノン君の事で目撃情報や捜索願いが出てないかどうか見てもらったのですけど、結果は想像する通りです」
「ッそう、ですか……」
正直、ユミルはここ周辺での目撃情報がなかったという知らせを受けた時点でこうなることは何となくであったが予想できていた。ミッドでカノンを知る人がいないということは、ほかの管理世界でも結果は同じであろう。
「それで、ここからが本題ですらカノン君のこれからについて、私からひとつあなたに提案が」
「はい?」
「このまま彼を聖王教会に置いておくにも彼にとってのこれからの成長には限界があります。だからといって全く知らない方に記憶喪失の彼を預けるのもその人やカノン君にとってもお互いにあまり得策とは言えません。・・・それで」
「はぁ……」
「シスターユミル、カノン君の両親が見つかるまで、あなたがカノン君を預かって見るのはどうでしょうか?」
「……はい……はい?」
「カノン君の両親が見つかるまで、あなたがカノン君を預かって見るのはどうでしょうか?」
「あの……それはその、つまり……?」
「つまり少しの間、あなたがカノン君の親代わりになってはどうでしょうか?」
…………
「…………え、ええええええええ!!!?? いやいやいやいや無理です無理です絶対無理です!!」
「あら、私、教会の中でははあなた以外の適任はいないと思うのですが?」
突然の申し出にこれまでに無いくらいに焦りまくるユミルだが、対してカリムは穏やかな笑顔。
「え、あの……なんでわたしなんですか? まず理由を教えてほしいのですが……」
「私は管理局の仕事や教会の仕事でカノン君を見る時間があまり無いというのもありますし。それにカノン君もあなたには少し慣れているというか……」
「私に……? か、カノン君……そうなの?」
「……?」
「私が見る限りは、ですがね。それにほかのシスターがカノン君と一緒にいてもいつのまにか逃げてしまうのですが、貴方と一緒だとなぜか逃げないんですよね……」
「…………ぁ」
確かにユミルが思い付く限りカノンが自分やニアタ以外と一緒にいる所をあまり見たことがない。自分が仕事をしていた時もほとんどが部屋を抜け出して自分のいる所に来ていた気がする。
「以上があなたを選んだ理由の一部です。……どうです? 引き受けてくれますか?」
「……で、でも私、一時的だったとしても、子供との過ごし方なんてわかりませんし、どうすればいいのか……」
「その辺は私達も全力でサポートしますし、それこそあなたの友達にそういった事を知ってる人がいるでしょう?」
「た、たしかに……。で、でも……私に、できますか……ね?」
「はい、あなたなら必ず。自信をもって下さい」
自分に向けて笑顔を向けるカリムに、戸惑いながらそう返したユミル。少し考えたあとカノンの目線に会わせるように膝を曲げ、彼の肩を掴んでしっかり彼の目を見詰める。
「カノン君」
「?」
「カノン君はどうしたい? 私が母親代わりで大丈夫?」
「……」
「どう……かな? そこはやっぱり君の意見を聞きたいの」
「……『おれ』は……うん、大丈夫」
「……うん、ありがとう。じゃあこれから少しの間……よろしくね、カノン君?」
「わかった。がんばる」
「そ、そこはがんばるじゃないんじゃないかな……?」
少々強引なのですが、カノンがユミルを慕うのには理由があります。ですが、それは本編で語られることなので今は伏せさせていただきます。(2017/5/18)