魔法少女リリカルなのはViVid~レディアントマイソロジー~ 作:薄茶
カノンがユミルの養子となった数日後、カノンはいまだに記憶喪失の状態からは脱していないが、特に変化もなく一日一日をゆっくり過ごしていた・・・のだが。
《……見ていられんな》
あの日以降、ことある事に見張りの目を抜け出し聖王教会の内部を歩き回ったことで、ある程度教会の構造を知ったカノン。
その後、彼が次に教会内で起こした行動は、目に入るありとあらゆる物を勝手にいじくり、後片付けもせずにそのまま他の物を触りさがす、ある種の嫌がらせだった(本人自覚無し)。
これも好奇心のなせる技と言うべきか、それとも退屈しのぎと言うべきか。……あるいは、本当に嫌がらせをしているのか、どれにしてもやられた側はたまったものではない。
余りに目に余る行為が増えた為、カリムも見張りを増やすようシスターの人達にお願いしたのだが、結果はご覧の有り様。
そしてその様子を同じくカノンと共に数日前からこの教会に身を置くニアタは呆れたように遠くから眺めている。
《元気があるに越したことはないが、これでは手におえないな……さて、それにしてもデバイス……だったか?》
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「…………」
「カーノーンーくーんー? 何度言ったらわかるのかな……? いやむしろ、わかってる……? と、とにかく見たものは元の場所に片付ける! せめて床に置いたりしない! そもそも安易に教会の物をさわっちゃダメ! わかった!?」
「……はーい」
《フフフ……彼女もあれこれ言っていたわりにはしっかりとそれらしく出来ているな》
《同意》
仁義なき鬼ごっこから数分後、カノンはばったり遭遇したユミルによりその両手足をバインドによって縛られ、ユミルが教会から借り受けた部屋に引きずられながら連行され、ユミルから説教を受けていた。
今はバインドを解かれているが、目の前に保護者(鬼)がいる為か、さっきまでこれでもかというほど好き勝手をしていたカノンもベッドの上で体育座りの格好でおとなしくしている。
「全く、まさかカノン君がこんなにじゃじゃ馬だったなんて……」
《……主に向けて通達。発信者『高町ヴィヴィオ』殿。文章と共に1枚写真付属》
「ぇ、ヴィヴィオちゃんから? 一体なんだろう……」
スカイランナーに届いた一通のメール。ユミルの様子を見る限り知り合いのようだ。ユミルはすぐに椅子から立ち上がり、スカイランナーを操作し送られてきたメールを確認し始める。送られてきたメールと写真をみるなり、ユミルは小さく笑みを浮かべる。
「そっか……ヴィヴィオちゃんももう初等科4年生なんだった」
送られてきた写真にはカノンより少し小さな3人の女の子達が仲の良さそうに写っていた。
《ふむ、知り合いかな? 元気があって良さそう……ッ!?》
「あ、ニアタさんもそう思いますか? この子、知り合いの娘さん達なんですけど、ニアタさんがいった通りいっつも元気一杯で。それと『ストライクアーツ』なんて格闘技もやってて……」
《これは……いや、しかし……まさか……》
写真を隣で見たニアタに次々と話を繋げるユミル。この年ぐらいの年齢の女性なら、多少の事で少しばかりお喋りになってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
しかしニアタはいつも通り相槌を打つわけでもなく、なにやら小声で喋っている。
「それで……あ、そうだ。なんと明日、カノン君にはおつかいがあります!」
「……おつかいって、なにするの?」
「うん。でもそんなに難しいことじゃないよ? ちょっとしたお買い物。それと、わたしの家……と言うより住んでるアパートにニアタさんと二人でいってもらいます!まぁ、私もなるべく早く帰るようにするけど……」
買い物……と言うのは口実で、本当の目的はカノンが教会の外でも無理なく生活できるかのチェックと、外に出る事で本人にとっていい刺激になれば……そしてあわよくばそのショックで記憶を少しでも思い出してくれれば……という事である。
もしカノンの身になにかあるかもわからないためニアタを同行させ、念のためサーチャー(※本来は警備や周囲の確認、偵察のために使う魔法)を使用し、遠くからカノンを見守り、もしなにかあればユミルがすぐさま駆け付けるようになっている。
「家……まだ行ったことないけど……」
「大丈夫。場所は事前にニアタさんに伝えてるからしっかりニアタさんの話を聞けば無事にたどり着ける筈だよ。ね、ニアタさん?」
《……っあ、あぁ。難しいことではない。そう気張らずとも大丈夫だ》
「……わかった、がんばってみる」
「……うん。じゃあ、任せるね」
ユミルとしてはニアタ1人に任せるのに多少の不安はある。サーチャーをつけるのはそう言った理由も含まれている。
今だカノンから離れようとはしない、そしてその理由も口を固く閉ざしているニアタ=モナド。むしろユミルにとっては、このニアタの素性を確かめる為のおつかい、と言っても過言ではないのかもしれない。