魔法少女リリカルなのはViVid~レディアントマイソロジー~ 作:薄茶
とりあえず、サクッとどうぞ。
side:3人称
夜中の住宅地。本来なら街灯と建物から溢れる少しばかりの光に照らされる静かな街の一角。
「……ハァ……ハァ……止まれってのぉ! お姉さんの言うことは聞くもんでしょ!? 一体何時まで走り続けるのよ!?」
「……んーっと、お姉さんが止まるまで?」
「あなたほんっとにいい度胸してるわね!? 」
しかしその静寂はピンク、碧銀、オレンジのカラフルな髪の男女によって跡形もなく打ち壊されていた。
「(……それにしても、この女の子なんで追いかけられてるんだろう)」
ピンクの髪の少年、カノンは追われている最中、後ろに背負った少女に何があったのかを自分なりに想像する。追われているのが少女である為、普通に考えれば如何わしい目的に……と思い付くのは想像に難しく無いのだが、追ってきているのは同じ女性。
故にこの背負っている少女がなぜ追われているのか、カノンにはどう考えてもわからない。
そして、1度気になった物はなにが何でも知りたいカノンは…………
「ねぇ、なんでこの子追いかけてるの?」
……こんな事を、それもあろうことか追ってきている本人に聞いたのだ。
「……そっ……それを今更あんたが言うかぁぁぁぁぁ!!!!」
まぁ、今の今まで(無意識にだが)怒らせていた人物がそうそう教えてくれるはずもなく、帰ってきたのは先程よりも大きな怒声だけだった。
「(……お金でも持ってるのかな?)」
そう思いチラリと自分の背中で眠っている少女の顔を覗いてみる。一般的な女性なら誰もが羨むような整った顔立ちと、こまめに手入れされていそうな綺麗な長髪。間違いなく美少女という類いに入る人種だろう。……カノン自身、女性の顔など聖王教会の人達しか知らない為なんとも言えないが。
「(……あの子、私に『この子を追っているのか』って言った。もしかすると、本当に今回の件には無関係?)」
そして、さっきまで怒声を発していた女性……『ティアナ・ランスター』は、表上にまで出ている怒気とは裏腹に、頭では冷静に現状を分析する。
「(……いや、でもそれじゃ一緒に逃げる理由がわからない。裏で操っている人間がいる? でも、それじゃ私に追いかけてる理由を聞いてくるのはなおさら不自然よね。……それじゃ洗脳……なーんていう線もあの様子じゃ薄いし……)」
「おれ、なんでこんなに走ってるんだろう?」
「(もしかして、『そういう仕事』をしている裏の人間? でもそれじゃ、尚更仕事に疑問なんて持つはずがないし……まぁ少なからず無関係では無さそうだし……)」
《……クッ、もう彼女から渡された地図に載ってない場所まで来てしまったようだ。このままでは……っ。》
「……じゃあ、帰り道どうするの!?」
《もうそれどころではないぞ!?》
「(あっちはあっちでなんかほのぼのしてるのよねぇ……私だけ必死で、なんかバカみたい……)」
やるせない心境とは裏腹に、悲鳴を上げる肺と両足に渇を入れ、目の前を走る少年に追い付かんと必死に走る。このまま捕まえてしまえばそれでよし。捕まえられなかったとしても、あとに控えるスバルが確実に2人を押さえてくれるだろう。
「……っ通れない!」
《カノン! そこの路地だ!》
「……え、たしかあの道って……」
路地に入っていく二人(と1個)を見ながら、ふとティアナはこの通路周辺の工事情報を思い出した。地盤の緩みやらなんやらで、ここ最近この辺は立て続けで工事が行われているらしい。
そして今少年達が入った路地にはまさにその工事中。夜間であるため作業は止まっているが、まず間違いなく通行止めのはず。
ティアナは内心ガッツポーズしながら、滑り込むようにして後に続く。すでに勝利を確信し、その表情にはさっきまで見えなかった笑みがこぼれている。
「……っ行き止まり!」
そしてティアナの思った通り、路地の先には高い壁があり、これ以上先には進めないようになっている。引き換えそうとカノンは元来た道を振り替えるが……
「はぁ……はぁ……どうやら、この辺の地理に関しては勉強不足だったようね……私の勝ちよ!」
「……ニアタ、おれ達の負けだって」
「あんたほんっとに……ハァ……緊張感ないわよね……ハァ……さて……それじゃあ、とりあえず後ろの子含めて、ご同行お願い致しますってね?」
そこにはすでに自分達に追い付く追っ手の姿。カノン達が自分からこの逃げ場の無い路地にあの駅から向かったのはティアナ自身運がよかっただけだが、運も実力の内とはよく言ったもの。体力的にカノンの方が上であっても、こういった運という要素に勝利を阻まれることもある。
「……いえ、同行していただくのは貴方です」
そう、確信した勝利をたったの一手で奪われる事も勝負事では珍しくない。
「っ!? だr「振り向かずに。その場で両手を上げてください」ッ……!」
背後からの突然の奇襲。今まさに二人を拘束しようとしたティアナの真横を、カノンの保護者(仮)のユミルが持つ薙刀の刃が構えられる。完全に隙を突かれ、言われるがままに両手を上げるティアナ。
「……ふぅ、カノン君! 大丈夫!? 怪我はない!?」
「うん。あ、でも足痛い。疲れた。だけど、リンゴとパンは落とさなかったよ」
「(リンゴ……?)……よく、この場所まで追ってこれたものね」
「っ……この子にはずっとサーチャーをつけていました。理由はわかりませんが貴方がこの子達を追っている所も最初から把握していました。自宅からも近かったので、追い付くのも容易でした。……そうですね、ひとつだけ予想外があったとすれば、その子の帰りが色々あって遅れたという所だけです」
「最初からこの子達……じゃなくて、貴方の手の内だったってわけね……誘い込まれたのは私の方だったわけか」
ユミルからの返答に諦めたようにそう呟くティアナ。こうして、この鬼ごっこの勝負はカノン達の敗北に終わった。
だが、お忘れではないだろうか?
《ユミル、とにかく管理局に連絡を》
この鬼ごっこは最初から
「…………へ? ユミル? 管理局?」
お互いの勘違いから始まっていたと言うことを。
「……どうしたの、おねーさん?」
ギギギギッと効果音がつきそうなほどに恐る恐る、ゆっくりと振り向くティアナ。そして、ユミルはというと、その顔を見るなり固まって……
「へっ? ティ、ティアナ……ちゃん?」
「お、おひさしぶりです……ユミルさん」
「……知り合い???」
「お待たせティア! ……あれ、ユミルさん? なんで?」
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side:クラウス(?)
「……ん、んぅ……っ!?」
視界に差し込む朝日によって眼が覚ますと同時に、自分がベッドの上で寝ていることに気付く。……私、たしか昨日駅前で意識を失って……
「よっ、やっとお目覚めか」
寝起きで混乱する頭で必死に動かしている最中、自分のすぐ右にいる女性は……昨晩、私と路上で手合わせした人物……『ノーヴェ・ナカジマ』さん。
「あの……ここは?」
「あー、そうだな。ここは」
「あ、起きたんだ」
「……はい?」
ノーヴェさんが答えようとした矢先、ノーヴェさんとは反対方向、つまり私の左から声がした方を向く。恐らく私と同年代、もしくは少し上の歳のピンクの髪の男の人が。…テンションたしか、ノーヴェさんの家族には私と同じくらいの男性は居なかったはず……って。
ちょっと待って。
今の私の状況を落ち着いて確認する。
※今私はベッドの上にいます。
※隣にはノーヴェさんがすこし困ったような顔をしています。
※半袖のTシャツを着ています。私の鞄に入っていた物です。
※・・・下は?
「……なんでもいいけど、スボン履く?」
「キ……」
「ん?」
「キャアアァァァァァァァー!!!?」
「え、なにどうs……」
『パァンっ!』
「ベブゥッ!!!?」
「あー……ほんっとこいつ、聞いた通り空気読まない奴っていうか何て言うか……」
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side:3人称
「い、痛ぁ……」
「まぁ、これは仕方ないな」
「(み、見られた見られた見られた見られたぁ!!?)」
「……どうしたのこれ?」
「あぁ、実はな……」
3人がいる部屋に入ったティアナは部屋の中の状態に戸惑う。
頬を両手で抑えて涙ぐむ男の子。布団に潜り込み震えている女の子。そしてその様子を見てため息が出ている親友の妹。
「……なるほどね。カノン、どう考えても貴方が悪い!はい、謝る!」
なにがあったか聞くや否や、カノンに向かってビシッ!と指を指し、怒らせた少女に謝るように伝える。
「ご……ごめんなさい……あ、そういえばこのズボン使う?」
「ッ!」
謝りながら差し出したジャージのズボンを、少女はカノンの手から引ったくるようにして奪い取る。悪いことをしたと思ったのか、カノンも少女に叩かれた事で本当に怒っているとわかったらしく、なんだかいつもより少ししおらしい。
「はぁ……まぁとにかく。おはよう、自称『覇王イングヴァルト』……いえ、ザンクトヒルデ魔法学院中等科一年生の『アインハルト・ストラトス』さん?」
ティアナが布団の中の少女……『アインハルト・ストラトス』にそう訪ねると、恐る恐るといった様子で、アインハルトが布団から顔を出した。
「悪ぃけど、ロッカーの荷物なら全部出して確認させてもらったぞ? あぁ、ちゃんと荷物は全部持ってきたから安心しろ。……それにしても、制服どころか学生証まで持ち歩いてるとは、ずいぶんとぼけた喧嘩屋だな?」
「……学校帰りだったんです。それに、あんな所で倒れるなんて」
ノーヴェの言った言葉にアインハルトはそっぽを向きながらそう答えた。事実、あの場所で倒れることなど彼女自身思いもしなかったのだ。まぁ、それだけ昨日戦ったノーヴェが自分の予想を上回る実力の持ち主だったと言うことだ。
「あ、みんなおはよー。お待たせ! 朝ごはんできたよー?」
そういって両手一杯に料理を持って部屋に入って来たのは、青いショートヘアの緑の瞳をしたエプロン姿の女性。
「おお、ベーコンエッグ」
「それと 野菜スープね? あ、はじめましてアインハルト。『スバル・ナカジマ』です。・・・事情とか色々あると思うけど、まずはみんなで朝ごはん食べようか?」
『スバル』と名乗った女性は、料理を並べながら、アインハルトにそう言いながら笑顔を浮かべた。
「……そういえばあんた、あのデバイスモドキはどうしたの? 朝からあまり見かけないけど」
「……モドキ? あ、ニアタのことか。さっき『貸して』って言われたから渡したけど?」
「……貴方、あっさりしすぎじゃない?」
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スキット03 ~優しい?~
カノン「……お腹すいた」
ティアナ「ん? あぁ、大丈夫よ。貴方の分もスバルに頼んで作ってもらってるから、安心しなさい」
カノン「……え、ほんとに?」
スバル「うん、元々一杯作る予定だったし、一人分くらい増えても大丈夫だよ。それに、ご飯はみんなで食べた方が美味しいでしょ? 遠慮しないで食べてね?」
カノン「……ありがとう」
スバル「ん♪ どういたしまして」
ティアナ「……それと、昨日はごめんなさい。話も聞かずに勝手に決めつけて追いかけ回しちゃって……」
カノン「……さっきから思ってたけど、おねーさんって」
ティアナ「? なによ、急に?」
カノン「優しいの?」
ティアナ「や、優しいって、それ普通本人に聞くことじゃないでしょ ……もう、本当に調子狂うわね」
カノン「……今度は怒られた」
スバル「ううん、大丈夫。ティア、いっつもこんな感じだから」
ティアナ「こらそこ! 余計なこと言わなくてもいいの!」
スバル「もう、素直じゃないな~♪」
カノン「……やっぱり優しいのかな?」
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さて、今回は以上となります。
さて。ようやくオリジナルパートから抜けました。これからは基本原作沿いに進んでいきますが、話の合間にはオリジナルの話も少しずつ盛っていきます。
そしてヒロインから好感度マイナスからスタートする主人公。まぁ会ってすぐ好感度高いなんて話もあり得ないんですけどね。
2018/6/23 文章修正