とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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家族編



親がどうしようもないと子供は苦労します

 

 月 日

 

私が流出させた色々な情報にクリス君達の持ち帰った物まで加わり更に愉快な事になったトライセルが、アンブレラと同じ末路を迎える日は近いだろう。

 

そんな大企業の惨状を目の当たりにした裏の連中もグラサンの死を確信したのか、以前よりも活発に動き出しているようだ。

 

その中でも、かなりの勢力を誇る大組織の連中が、グラサンと一時期関係を持った女性が居ると知り。様々なウィルスへ耐性を持っていた稀有な体質の持ち主である父親の血を引いた子供の存在と、その母を捜し求め始めた。

 

人間を辞めていたグラサンと比べれば遥かに無害な女と子供を狙う。危険を避けて安全な手段を選ぶ事は賢くも正しいが、それを許した覚えはない。私は世界中に潜ませている子飼いの諜報員達と連携して念入りに作成した偽装情報を、全世界に情報網を持つ厄介な組織の構成員達へ掴ませて妨害してやる事にした。

 

すると、錯綜した情報が混乱を極めて何故かグラサンが女性と関係を持ったこと事態が間違いだとされたらしく。最終的に、グラサンは極めて清らかな身体のまま死んだということになったが。

 

ミューラー親子の存在を完全に隠蔽する事に成功。向けられていた矛先は充分に逸らせたので目的は達成だな。良く働いてくれた彼等にも報酬を支払っておこう。

 

死者に鞭打つ行為かもしれんが、どうしようもないグラサンが死後に童貞扱いされる程度の些細な事で救われる者が居るなら、別に良いんじゃないだろうか。

 

私は一向に構わん。

 

死人に口無し。良い言葉だ。

 

 月 日

 

 

入院中のミス・ミューラーだが、患っていた病も治り生来の病弱さも大幅に改善されているそうだ。

 

イエローハーブを提供した甲斐があったようで何よりだな。体調が万全になるまで病院から出すんじゃあないと伝えてはあるが。この報告通りならば、もう少しで退院出来るだろう。

 

色々と嗅ぎ回っていた連中は手間暇かけた偽の情報で掻き乱した後に追い返しておいたので、あの病院で入院中の彼女がアルバート・ウェスカーの子を産んだ女性だと気付く奴は誰も居ない。

 

彼女の元へ欠かさず見舞いに来ている青年が、ウェスカーの血を継いだ息子だと知る者は居ない。

 

だから彼等二人は只の親子で、子に愛情を持って接する温厚な母親と性格は少しひねくれているが根は優しい息子でしかない。

邪魔をする無粋な者共は排除しておいた、精々親子水入らずを楽しんでくれたまえ。

 

それにしても。

 

彼女は善人ではあるんだが、男を見る目は無いようだ。別れた相手であるグラサンを未だに愛している上に、胡散臭い私を全く疑わずに只の親切な人だと思っているとは。

 

これ以上ろくでもない悪人に騙されないように、もう少し警戒心を持った方が良いんじゃあないかね。

 

まあ、これは私が気にする事ではないか。ジェイク君の頑張りに期待しておこう。

 

君の家族は、君が守りなさい。

 

 

 

 月 日

 

ミューラー親子を狙っていた組織の名は「ファミリー」率いる長の名は「ディレック・C・シモンズ」表向きは大国の政府高官の役職を務めているシモンズは1998年にラクーンシティの滅菌作戦を指示した男だが、ラクーン事件以降政府内で保護という名の軟禁研究実験生活をおくる、Gウィルスをその身に宿したお嬢さんの保護者代わりでも有るようだ。

試作型のネメシスを取り込んだリサ・トレヴァーから発見されたウィルスの改良者にしてGウィルスの開発者、ウィリアムの娘であるシェリー・バーキン。ラクーン事件で両親を喪い天涯孤独となった彼女にシモンズが、手厚く支援と援助を欠かさなかった理由は純粋な善意等ではなく。Gウィルスをその身に宿した貴重な実験動物が弱り果てぬように調整していただけだろう。

 

何も知らない彼女にとっては残酷なことだが、実験が終われば用済みとなる存在だとしか思われていないんじゃあないかね。

利用価値が無くなれば、切り捨てられて始末されるかもしれんな。

 

国へ所属するエージェントとなることで、漸く厳重な軟禁を解かれる彼女に私が接触することは難しい。万が一接触が出来たとしても、彼女にとっては全く面識の無い不審な人物が語る言葉に耳を傾けるかどうか。

 

だからと言って彼女が信頼している人物にシモンズの裏の顔と悪行を報せたとしても「ファミリー」の力で全て握り潰されるだけだ。

 

彼女は未だ「ファミリー」の手中、ジェイク君とは状況が違い過ぎる。先ずは落ち着いて、付け入る隙を探るとしよう。

 

 月 日

 

シモンズの財団が所有する研究所に研究員として潜入中の部下から届けられた調査報告書を読み取くと、ある一人の女性に対するシモンズの常軌を逸した執着が見受けられた。

 

掻い摘まんで書き示すとディレック・C・シモンズという男は気に入っていた女性(エイダ)とビジネスパートナー以上の関係を持てず、非人道なラクーンシティ滅菌作戦を推し進めて決行した自身の行動が原因で仕事上の関係すらも女性(エイダ)に切り捨てられて相手にもされなくなった程度で精神の均衡が崩れて取り乱すような輩であり。現在も諦めきれず女々しくも人体実験を繰り返し、フラれた女性(エイダ)のクローンを造ろうと必死に躍起になっているらしく。繰り返した実験回数は12234回。

 

偽者で妥協しようとしている理由は、本物が絶対に手に入らない事を薄々悟っているからかもしれんな。

 

良い歳して初恋を拗らせた髭親父の大人の人形遊びの為に万を超える命が犠牲になるとは、ストーカー染みた髭親父の下卑た欲望の実現化の糧とされて喜ぶ奴など居るわけがない。

 

犠牲者達も浮かばれんよ。

 

 月 日

 

t-Veronicaに始祖ウィルスのDNAを変異させる特性を抜き出して組み込む事で脳細胞への強い拒絶反応を打ち消した改良型であるt-02とGウィルスを合成して生まれた新種のウィルス。Cウィルス。その投与した人間の身体を作り替えるという作用を応用した12235回目の「エイダの再現」にはシモンズの腹心とも言える優秀な科学者であり、Cウィルスの開発者でもあるカーラ・ラダメスが、本人には内密で被験者として選ばれているようだ。

 

目標人物との遺伝子配列が近しい事から複製が成功する可能性は極めて高いが、最もそれは外見上の話で内面までの再現は流石に不可能。故に元となったカーラ・ラダメスの人格や意思が僅かでも残ればシモンズへの反逆を企てるかもしれない。

 

それが単なる内輪揉めで髭親父が惨たらしく殺される程度の小規模で済めば良いんだが、アレクシアとウィリアムが完成させた別種のウィルスを組み合わせて新種のウィルスを造り出すような人物が形振りと後先を考えずに復讐へ走った場合はどうなるか。

 

想像してみると無駄に規模が大きくなりそうな気がするのは、私の気のせいでは無いだろう。

 

何かもう嫌な予感しかしないんだがね。

 

今日を書き終えた日記を閉じて表紙にペンを置き、座り心地の良い椅子に深く身を沈める。嫌な予感を今は忘れて軽く気分転換に一眠りでもしようかと瞼を閉じたが、備え付けたモニターから私を呼ぶ電子音が喧しく鳴り響いた。

 

「音量の設定を間違えたかもしれんな」

 

眠気が一気に吹き飛ぶ程の大音量の呼び出し音を止め、モニター画面に私の眠りを妨げた相手の映像を表示する。

 

「久方ぶりだな、毒蛇よ」

 

画面越しの邂逅一番に私へと親しげに話しかけてきた者の姿形は「暴君」に良く似ていたが、中身はどうやら違うらしい。私を毒蛇と呼ぶのは数年前に死んでいる筈の奴だけだ。色々と聞きたい事は有るが、とりあえず奴には言わなければならない事があるな。

 

「私へ勝手に変な渾名を付けて呼ぶんじゃあないと、以前貴様には言った筈だがな。セルゲイ」

 

誰が毒蛇だ、ふざけるなよ。このドMが。と口汚く罵りたいところだが罵倒しても奴は悦びに悶えるだけなので悪態は抑えておくとするか。

 

「君には相応しい呼び名だと思うが、何を嫌がる毒蛇よ」

 

笑みを浮かべて流暢に喋る「暴君」という違和感しか感じない映像が流れる画面を消す事が出来る素晴らしいスイッチに指を添えながら。

 

「嫌がっている事が解るんだったら、その呼び方はさっさと止めたまえ。さもなくば私はこの画面の電源を切り、二度と貴様からの連絡は受け付けんぞ。何かしらの用が有って態々連絡してきたのだろう?私は別に構わないし寧ろ今すぐ切りたい位だが、きみは困るんじゃないか」

 

本音混じりの軽い脅しを入れてみたんだが、少しは効果が有ったようだ。

 

「仕方がないな、此方が折れよう。ジョン」

 

「最初からそうしてくれれば、滞りなく会話が出来たんだが。まあいい、用件を聞こうか」

 

「アルバート・ウェスカーが死んだ今こそが好機だ。スペンサー卿が望んだ新たなる世界を導くに足る、適合者達を集めなければならないのだよ。君にはアレクシアの説得を」

 

「おっと指が滑った」

 

不吉な言葉が聞こえたので指が滑り、思わずモニターの電源を切ってしまったが不可抗力だと私は思う。

 

抗議の如く再び鳴り響く電子音を「歳を取ると耳が遠くなっていかんな」と聞こえなかった事にして無視を決め込み部屋を出る。

「そういえば、義手の素材で足りない物が有ったような気がするな」

 

買物に行こう。

そうしよう。

 

私は財布を片手に住処を飛び出した。

 




ネタバレ注意

髭親父
ディレック・C・シモンズ

バイオ6の事件が起こった元凶

エイダに執着し過ぎて気持ち悪い

発想がストーカーっぽい
カーラに復讐としてウィルスをブチ込まれ
レオン編とエイダ編にボスとして登場

獣になったりケンタウルスになったり恐竜になったり最終的にはゾンビ取り込んで蠅になる

レオンとエイダが過去を思い出して微妙にイチャイチャしてる場面を見せつけられたりもしていたけど

色々と気持ちの悪い髭親父と髭の生えたイケメン(レオン)の差は遠いんでしょうね

46歳髭親父のヤンデレとか誰が得するんだ


Cウィルスの開発者

カーラ・ラダメス

エイダのクローンにさせられた人

シモンズに心酔していたが

裏切られた事でぶちギレた

シモンズの望んだ安定した世界なんてぶっ壊してやる!と世界中に吸ったらゾンビになる煙を詰めたミサイル撃とうとしたり

自分が死んだとしても

吸ったらゾンビになる煙を身体から出す巨大な生物兵器(しかも無限に分裂して増える)が解き放たれるように設定していたりもする

世界を巻き込む盛大な内輪揉めを計画して実行した人

正直凄い迷惑です


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