とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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ヴェルデューゴは「P.R.L.412」なら一撃で倒せる

 月 日

頼んでもいない豪華客船への招待状が私に届いた。怪しいことこの上ないが同封されていた手紙では私が来なければ世界各地にtウィルスを無差別にばら撒くバイオテロを行うと脅しが書かれていた。今の私ならばどんな危機的状況でも乗り越えられるだろう。装備を整えてから向かうことにした。顔に特殊メイクを施してから正装をして重装備の荷物を持ち、指定されたクルーズ船の船員に招待状を見せてクルーズ船に乗り込んだ。荷物を持とうとする船員の申し出を断ると一等客室にまで案内され客室の鍵と娯楽室の鍵を渡される。一応は良い部屋を用意していたみたいだが、これから何が起こるのかが問題だ。直ぐに何かが起きる訳では無さそうだが、既に敵の手中に居る事は間違いない。渡された娯楽室の鍵は向かえということだろうな。最低限の荷物を持ち、客室を出て船員に聞いた娯楽室へと向かう。辿り着いた娯楽室で誘われたブラックジャックをやっていたら隣の席に純白に金糸の華が咲き誇るチャイナドレスを着た黒髪の美女、というかエイダが座ってきた。

 

彼女が私を呼び出した訳ではないな。エイダも呼ばれたんじゃあないだろうか。ブラックジャックを勝ち続けていくと「強いわね貴方」とエイダが話しかけてきた。運が良いだけだと答えて「何か御用かなお嬢さん」と聞いてみると「少し2人で話したいのだけれど」と答えが返ってくる。良いですよと返事を返して席を立つ、人気の少ない娯楽室の一角でエイダと会話を始めた。まず始めに「貴方も招待状で呼ばれてきたのかしら」と聞かれたので「そうですよ」と答える。ため息を吐いたエイダは「わたしも招待状で呼ばれたのだけれど、手紙は同封されていたかしら」と質問されたので「手紙は同封されていましたね」と答えを返す。微笑みを浮かべたエイダに「送り主に覚えはあるかしら」と問いかけられたが「いえ、ありませんね」と正直に答え「ですが、きっと録な奴ではないでしょうね」と自分の見解も付け加えておく。笑みを深めたエイダは「ええ、その通りだと思うわ」と頷き「それじゃあ、そろそろ部屋に帰らせてもらおうかしら」と踵を返した。別れ際に「その顔よりも本当の顔の方が素敵よジョン」と耳元で囁いてエイダは去って行く、どうやら気付いていたらしい。

 

次はポーカーに誘われたので席に座り配られたカードを受け取っていると銀髪の男が隣の席に座ってきた。笑みを浮かべながら「楽しんでいるかい」と話しかけてきたので「まあ、それなりには」と答えてカードを交換するとフルハウスの役が完成し私が勝つ。くつくつと喉を鳴らしながら「なかなか強いじゃないか、一勝負どうだい」と挑んでくる銀髪の男に「構いませんよ」と答えて再度配られたカードを受け取る。人間とはかけ離れた動体視力を持つ私の目には手持ちのカードを隠し持っていたカードとすり替える、銀髪の男の手の動きもはっきりと見えていたがそれを言及はしなかった。イカサマで揃えたキングのフォーカードを見せつけて勝ち誇る銀髪の男にジョーカーを含めたエースのファイブカードの手札を見せつける。愕然とした銀髪の男に「私の勝ちだな」とだけ言って席を立つ。

 

娯楽室で遊びながら観察していたが集められた面々の顔には見覚えがある。裏社会の人間達ばかりが集められているようだ。世界中でバイオテロが起ころうと気にしない連中ばかりだから招待状で呼び出されたのはエイダと私だけだろう。何の目的でエイダと私を呼び出したのか、この集まりの主催者を知ることが出来れば情報を吐かせてやるのだが。動くには情報が足りなさすぎる。娯楽室で十分時間は潰せた、一等客室に戻るとしよう。部屋に戻って暫く装備の点検をしているとノックがされたので装備をしまいこみ扉を開ける。船員が「お食事のご用意が出来ておりますので食堂までご案内します」と言ってきたので全ての荷物を置いて食堂に向かう。用意された豪勢な食事は食材は一級品を使ってはいたが料理人の腕はいまいちで、タロウ・ヨシハラ氏がオーナーを務めているレストランの方が美味しい料理を出してくれたと考えながらも食べ終えて食堂を後にする。

 

食後に一等客室で一段落したところでまた部屋がノックされて「品評会の準備が整いましたのでご案内します」と船員が言った。嫌な予感がした私は衣服に仕込めるだけ持ち込んだ武器を仕込み部屋を出て船員の後に着いていく。到着したプレゼンテーションルームには大型のモニターが設置されていてそれを眺める人々で溢れていた。エイダと先程の銀髪の男もプレゼンテーションルーム内でモニターを眺めている。現れた司会が「お待たせいたしました、これより選りすぐりのBOWの品評会を開始したいと思います」と宣言した。まず大画面のモニターに映し出されたのはハンターの姿であり「このハンターはただのハンターではありません。かするだけで致命的な猛毒を持つ爪を持っており、身体能力も選りすぐりのエリートと言っても良い存在です。では実際の戦闘映像を見てもらいましょう」と司会が言った瞬間、ハンターによって襲われる人間の姿が映し出される。ハンターの素早い爪による一撃を喰らい倒れ込んだ男の血溜まりが拡がっていく。司会は平然と「ご覧いただけた通りかなりの殺傷力を持っております。続いては此方のBOWです」紹介を続ける。

 

ロス・イルミナドス教団が作製したリヘナラドールにヴェルデューゴ、トライセルが開発したポポカリムにUー8、様々なBOWの性能紹介と人間を襲う凄惨な瞬間を映像で見せられ続けた。裏社会の面々はそれを楽しい見せ物でも見るかのように愉しげに眺めている。どうやら私と彼等では趣味が合わないようだ。遂に全ての紹介が終わり集まった面々が盛大な拍手を送るなかでエイダは真剣な表情でモニターを睨み付けていた。彼女の趣味にも合わなかったらしい。司会は「それでは皆さまにも実際に体験してもらいましょう」と言って指を鳴らした。するとプレゼンテーションルームの入り口が開いて大量のハンターが入り込んでくる。

 

まさか自分達が襲われるとは思っていなかったのか激しく動揺して逃げ惑う裏社会の面々を掻き分けて私は懐のホルスターからL・ホークを引き抜いて襲いくるハンターを撃ち抜いていく。エイダも拳銃であるブラック・テイルで危うげなく応戦しているようだ。飛びかかってきたハンターを撃ち落としてやり、繰り出された爪の連撃を余裕で躱して頭部を撃つ。向けられた銃口から抜群の反射神経で逃れようとするハンターの動きを凌駕して急所に弾丸を叩き込む。ハンターを全て片付けた私とエイダは合わせて司会に銃を向ける。

 

銃を向けられた司会は微笑みを浮かべて両手を上げたかと思えば口内に仕込んでいた何かを噛み砕いて倒れ込んだ。致死性の猛毒を仕込んでいたらしく、私とエイダが駆け付けた時には司会は既に死んでいた。生き残った裏社会の面々は憤慨してヘリを呼んで直ぐにでも帰らせてもらうと言っていたが生憎の天候でヘリが飛べる様な状態では無さそうだ。非常用の船を出しても転覆してしまうだろう荒れ模様で暫くはこのクルーズ船に居るしかないらしい。あっさりとハンターが撃退されたことに一人だけ、つまらなそうな顔をしていた銀髪の男はこの件に関与している可能性があるな。エイダに解っているかと目配せをすると彼女は軽く頷いた。

 

この場で問い詰めてもしらをきるのは間違いない。一度客室に戻って装備を整えるとしよう。何処に行くんだとすがり付いてくる裏社会の面々を引き剥がして、一等客室までの通路を進んでいく。途中でtウィルスに感染し感染者となった船員達が襲いかかってきたが問題なくL・ホークで脳天を撃ち抜いて眠らせてやる。中央階段室を通り2階の一等客室に到着した私は持ち込んでいた装備を装着し始めた。戦闘用義手2本と念のための「P.R.L.412」を背負い、特殊合金のナイフを鞘に納めて腰に装着しアンプルシューターも大腿部のホルスターにしまい各種ワクチンも懐に納めておく。装備は完了した、これでどんなBOWが襲って来ても対処が出来るだろう。

 

一等客室を出ると同じく一等客室から出てきたエイダと鉢合わせになる。招待状を送られた相手は一等客室に案内されていたようだな。此方の装備を見て「随分と重装備ねジョン」と笑いかけてくるエイダに「これでも足りないぐらいだ」と答える。船内が生物災害状態になっているにもかかわらず余裕そうな笑みを崩さずにエイダは「あの銀髪の男が首謀者かしら」と問いかけてくるので「首謀者か、それに近い人間である事は確かだ。ハンターもあの銀髪の男を明らかに避けていたからな。だからあの男は余裕を崩しておらずハンターが人を襲う度に笑っていたのだろう」と問いに答えた。微笑みを絶やさずにエイダは「流石に良く見ているわね、こんな状況はもう慣れっこかしら」と言ってきたので「慣れたい訳では無かったが、こんな状況には慣れてしまったよ」と本音を言う。

 

銀髪の男を捕まえて情報を吐かせる事にした私とエイダは連れ立って行動する事にした。移動中に現れたtウィルスの感染者やハンターを連携して撃ち抜いて倒しながら進んでいく。現れたリヘナラドールに背負っていた「P.R.L.412」で体内の寄生体を死滅させて排除する。天井を突き破り登場したヴェルデューゴに「P.R.L.412」を発射して処理。襲いくる幾多の障害を取り除いて辿り着いた屋上デッキのヘリポートで荒れ狂う嵐の中1人佇む銀髪の男。男は驚いた様子で「良くここまで辿り着いたな」と言い放つ。エイダが銃を向けて「知っていることを話してもらうわよ」と追求すると「おやおや気付くのが早いな、そうとも、この俺が君達を招待したのさこのクルーズ船にね。やはり君達は愚鈍な者達とは違うようだ」そう言って銀髪の男は拍手を始めた。

 

そして銀髪の男は続けて「君達はハンターの群れにも動じずに冷静に対処していたね。おかげであまり血が見れなかったのは残念だったよ。君達がいなければハンターの犠牲になった者を見て笑っていた愚かな者達が今度は自分が犠牲者になる最高のショーを特等席で眺める事が出来ただろうに。とても残念だ。しかし君達を呼んだ事に後悔はしていないよ俺はね。何故なら君達は愚鈍な者達とは比べ物にならないほど優秀だからだ。俺と共に新世界を生きる存在として相応しいよ。俺は選ばれた存在なんだ、優秀な遺伝子を選別するウロボロスにだって適合する事は間違いない。なにしろ調べてあるからね。証拠を今から見せようか」銀髪の男は取り出した注射器を自らの身体に打ち込んだ。中身は恐らくはウロボロス・ウィルス。

 

男は呻きながら身体を肥大化させていき銀色の頭髪も失われていく、みるみる内に大男と化した元銀髪の男は「これが選ばれし者の姿だ」と叫んだ。確かに限りなく適合者に近い遺伝子を有してはいたようだな。異形の大男であれどウロボロス・ウィルスの嚢胞の繁殖を抑えて人間に近い姿を保っている。しかし「あれが選ばれた人間の姿には見えんな」と溢すと「ああは、なりたくないわね」とエイダも呟いた。元銀髪の男は「素晴らしい、力が溢れてくる。君達はもういらない。皆殺しだ」と知性は保持しているものの強い殺意に突き動かされているようだ。

 

元銀髪の男は左肩を前に向けた姿勢で凄まじい勢いで此方へ走り、身体ごとぶつかってくるタックルをしかけてきたので回避すると私へめがけて左腕でフックを繰り出してきた。バックステップでそれを避けて背負っていた対ウロボロス用の義手と現在の義手を交換し装着する。内蔵されているのは威力を高めた特殊な焼夷剤と炸薬が込められた焼夷弾と特製の燃料カートリッジが使われている火炎放射機。この雨の中でも効果的なのは焼夷弾の方だろう。弾数は5発、1発も無駄には出来ない。私は内蔵兵器をグレネードランチャーに切り替えてせりだしてきた銃口を元銀髪の男に向けて焼夷弾を発射する。着弾した特殊な焼夷剤はこの嵐の雨の中でも消えずに燃え盛った。

 

元銀髪の男は「ああああ、熱い、身体が熱いいいい」と叫びながら身悶えて胸部にコアを露出させる。私はすかさずL・ホークでコアを狙い撃ちながら「露になった核を狙うんだエイダ」と教えると「解ってるわ、ジョン」とエイダもブラック・テイルで元銀髪の男のコアを狙い撃つ。たまらず高く飛び上がり後方に下がった元銀髪の男は右腕にウロボロスのウィルス嚢胞の触手を発現させる。そして「この程度で俺を倒せると思うな」と叫びながら触手を真っ直ぐ伸ばして掴みかかろうとしてきたので横に跳び退いて躱す。2発の焼夷弾を元銀髪の男へと叩き込むと燃え上がりながら身悶えて熱いと叫び始め、コアを再び露出させたので反動によるブレを力付くで完全に抑え込みL・ホークを連射する。

 

触手を纏う右腕で大振りのアッパーを繰り出してきた元銀髪の男の攻撃を身を反らして避けながら弾装を交換しL・ホークで射撃を続けた。交換した弾装を撃ち尽くすとコアが弾けて遂に倒れ込んだ元銀髪の男へ念のため2発の焼夷弾を撃ち込んで完全にトドメを刺しておく。戦いが終わると雨が上がり雲の切れ間から日差しが差し込んでくる。どうやら嵐は過ぎ去ったらしい。結局呼び出された理由はこの元銀髪の男が言った通り、新世界を生きる住人として呼ばれたということになるのだろうか。何ともくだらない理由で呼び出されたものだな。さて、部下に連絡して迎えにきてもらうとするか。

 

「君はどうするんだエイダ、良ければ送っていくが」と問いかけると「もうわたしの迎えは来ているようよ」と答えた。現れたヘリコプターがヘリポートへと降りてくる。今度はエイダが「良ければ送っていくけれど、どうするのかしら」と問いかけてくるので「いや、私は迎えが来るのを待つことにするよ」と答えた。エイダは「また会いましょう、ジョン」と耳元で囁いてからヘリコプターへと乗り込んでいく。今度会うときはもう少し落ち着いた場所で出会いたいものだ。長くなったが今日の日記はこれまでにしよう。

 




ネタバレ注意
バイオハザード4に登場するBOW
リヘナラドール
ひとりの人間に複数のプラーガを寄生させる実験によって生まれたリヘナラドールは、スペイン語で「再生者」の意味が表すように、驚異的な復元能力を持ち、体の一部を失っても瞬時に再生することができる
人間の形を保ってはいるが、耳はなく、鼻は崩れ、目は赤く光り、唾液を垂らす大きく裂けた口には鋭い牙状の歯が並ぶ
歩行速度は遅いが両腕を伸ばして敵を引き寄せ、その鋭い歯で噛み付く
生殖器を含めて全身に隆起がないため実験体の男女の区別は不可能であり、内臓から脳にいたるまで肉体構造そのものが独自の変異を遂げて、最早人間としての知能は残されていない

ヴェルデューゴ
人間に昆虫の遺伝子を使った応用実験が成功し、高い戦闘能力と同時にプラーガによる完全な制御を実現した
非常に硬質な外殻がその身を覆うため、ロス・イルミナドス教団が開発した生物兵器の中でもトップクラスの耐久性を誇り、さらに柔軟性も備えていて、天井裏などのわずかな隙間に入り込んで不意に鋭利な爪や尾で襲ってくる
ヴェルデューゴとはスペイン語で「死刑執行人」の意味である

バイオハザード4に登場する武器
ブラックテイル
バランスのとれたハンドガン
威力の高さと装弾数の多さがウリで、使い勝手はいい
初期装備のハンドガンを全体的に強くした感じの武器だが、限定仕様にしたときのメリットは初期装備のハンドガンほど大きくない
また、改造にかかる費用が高いため、この武器に買いかえるかどうかは、既に持っているハンドガンの性能をもとに決めたほうがいい
限定仕様にした場合威力が4.5になる
費用が高いわりに、威力の上がる割合が約1.4倍とあまり変化がないので、所持金にゆとりができるまでは、ほかの武器の改造を優先させたほうがいい

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