とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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ルート分岐


アレクシア敵対ルート

 月 日

元UBCS隊員にしてアンブレラの監視員であった男。ニコライ・ジノビエフの姿を確認した。金次第で動く冷徹な傭兵として知られているニコライが動いているということは近々何かが起きるという前兆である可能性がある。問題はどこの組織がニコライを雇ったのかということになるが。それを調査してみるのも良いかもしれない。

 

 月 日

アレクシアが活発に活動を続けて数多の組織が壊滅させられている。組織に潜ませていた部下達はアレクシアに見逃されたようだが私に対する伝言を預かっていた。アレクシアは私に「遊びましょう、ジョン」と言葉を残したらしい。アレクシアにとっての「遊び」とは何だろうか。嫌な予感しかしないが、部下達にはアレクシアの相手は任せられない。私が対処するしかないようだ。それにしても私に伝言を伝えるためだけに数多の組織を壊滅させるとは随分と大胆なことをするものだが、ウィルス適合者である彼女にとっては造作もないことか。壊滅させられた組織の面々には堪ったものではないな。アレクシアに備えて装備を整えて常に万全の状態にしておくとしよう。エヴリンのことも忘れてはいけない。特異菌を無尽蔵に生み出すことができる生物兵器であるエヴリンへ対抗することができる装備も用意しておかなければならないな。あの母子の相手は油断ができない。何を仕出かすか解らないところがある。常に警戒しておかなければいけない。

 

 月 日

私の拠点がある街が、尋常ではない数のモールデッドの群れに占拠された。巻き込まれた無関係な人々は逃げ惑う。逃げ惑う人々を救う為に槍を振るい数多のモールデッドの頭部にある中枢神経を破壊していく。特異菌特殊強装弾が幾らあっても足りないほどの大量のモールデッドが街中を闊歩している。休まず動き続けて目につく範囲のモールデッドは狩り終えた。人々を避難させてBSAAの到着を待つ傍ら、現れるモールデッドの数々を槍で始末していく。千を越える数のモールデッドを倒しても一向に減らないモールデッドの数。どれだけの数が居るのか数えるだけ馬鹿らしくなりそうだ。これがアレクシアにとっての「遊び」の始まりだろうか。私を狙ったものに巻き込まれた人々には申し訳がないな。圧倒的な物量が相手だとしても尽きることはない体力で動き続けて少しでも人々に被害が及ばないように戦い続けることが私にできる最善。人々の避難場所に向かわせない為に2千を越えるモールデッドを打ち倒していく。それでも数が減らないモールデッド。終わることのない戦い。

 

止まることなく一昼夜動き続けて倒したモールデッドの数は5千を越える。ようやく疎らになったモールデッドの数。終わりが近そうだ。その後も戦いを続けて6千を越えたところで全てのモールデッドを狩り終えたようだった。休憩を入れずに動き続けた身体はまだ動けるが少し休んだ方が良さそうだ。拠点に戻り一眠りするとしよう。数時間ほど眠り全快した身体に疲れが残ることはなく自分が人間離れしていることが良く実感できた。一足遅れて到着したBSAAが街の除菌と避難していた人々の保護をしていく。槍は拠点に置いて顔も特殊メイクで新たな顔に変えておくとしよう。すっかり街の人々の間では「槍の人」として有名になってしまった。特殊メイクで作製した顔の1つが、この街の人々の前では使えなくなってしまったな。まあ、それだけ多くの人が助かったということだ。良いことだと思うことにしよう。

 

 月 日

大量のモールデッドは始まりに過ぎなかったようだ。数多の組織を壊滅させて資金を調達していたアレクシアは、その潤沢な資金で大量のBOWを購入して私にけしかけてくる。全てのBOWには強化薬物P30を継続的に投与する体外装置が取り付けられており、身体能力が驚異的なまでに引き上げられていた。モールデッドほどの数ではないが格段に向上した身体能力を持つ大量のBOWを槍で始末していく。全てのBOWを始末するのにかかった時間はモールデッドの掃討に比べれば、たいした時間じゃない。BOWを送り込んでくることがアレクシアにとっては「遊び」なのだろうか。それにしては手緩いと思っていたらBOWの身体にウロボロス・ウィルスを仕込んでいたようで死体から黒いヒル状のウィルス嚢胞が溢れ出し、瞬く間に大量の死体を取り込んで巨大なウロボロス・ウィルスの集合体と化した。

 

衛星レーザー兵器シャンゴに位置情報を送信するデバイスを拳銃サイズに小型化したものを持ち歩いていて正解だったと言える。宝石のようなコアを持つ巨大なウロボロス・ウィルスの集合体に有効な攻撃手段が手持ちの兵器ではそれだけしかなかったからだ。発光するコアを狙い照準を合わせて衛星からレーザーを放ち、巨大なウロボロス・ウィルスの集合体を処理することに成功した。ウロボロス・ウィルスを増殖させる為だけに、アレクシアが大量のBOWを用意したことは間違いない。相変わらず性格が悪いところは変わっていないな。

 

 月 日

アレクシアに攻め込まれ続けているのは良くないので、此方からも攻めることにする。アレクシアの拠点の居場所を世界中に潜ませている諜報員達と、数多の組織に潜入させている部下達からの情報で見つけ出すことに成功した。装備を整えて義手を背負いアレクシアの拠点内部に潜入する。奥深くへ入り込んでいくと広い一室の中央でtーVeronicaの力を解放したアレクシアが剣と注射器を持ち、1人佇んでいた。私の方を向いたアレクシアが「さあ、遊びましょうジョン」と言いながら自らの首に注射器を突き立てて何かを注射していく。そしてこれまで以上の速度と力強さで振るわれる剣を槍で受け止めるが力づくで徐々に押し込まれる。明らかに以前よりも速度と力が増しているのは先程の注射が影響しているのは間違いない。私に力負けしていたアレクシアが、私以上の力を手に入れているのだから。どうやら身体能力を向上させる効果がある注射だったようだ。アレクシアが笑みを浮かべながら「強化薬物P30の身体能力を向上させる効果だけを抜き出した薬品を作製してみたのだけれど、効果は十分みたいね」と注射器の中身を態々教える余裕を見せつけてきた。

 

強化薬物P30であるなら効果時間が短いという欠点がある筈だが、そのような欠点を残したままで終わるアレクシアではないだろう。当然改良はされている。振るわれる剣は一撃ごとに、より鋭くより速くより力強く変わっていく。人間を超越したその先へ足を踏み入れているアレクシア。片手では完全に力負けするので両手で槍を振るう。繰り出した眉間を狙った突きは真正面から振り下ろされた剣で弾かれた。振り下ろされた両刃の大剣が跳ね上がる。上体を反らして剣先を躱し、その体勢のまま中段廻し蹴りを入れたが回避された。横一線に振り払われる剣を縦にした槍で受け止める。響き渡る金属音。特殊な合金製の剣と槍がぶつかり合う。槍で受け止めた剣を弾き、穂先で両断しようと渾身の力を入れて槍をアレクシアに振り下ろす。一撃では容易く受け止められるというのならば二撃、三撃、四撃、五撃と角度を変えて幾度も繰り出していく。その悉くを全て涼しい顔で受け止めきるアレクシア。

 

上段に構えた剣が振るわれて槍を大きく弾き、そこからアレクシアからの攻勢が始まる。縦横無尽に振るわれる剣を槍で受け止め続けていく。一撃一撃が重く鋭い。一瞬でも力を抜けば槍を弾き飛ばされる。気を引き締め、槍を掴む手に力を込めて猛攻を耐え凌ぐ。中段の切り払いに槍を叩き付け、剣を弾き槍を回転させて石突きをアレクシアの腹部へ叩き込もうとするが、アレクシアに掴み取られた。槍を手離し瞬時に間合いを詰めてアレクシアの心臓を狙った手刀を繰り出したが瞬時に剣を手離して空いた手で手刀を受け止めるアレクシア。互いに中段廻し蹴りを放ち、ガードはしたもののそれの威力で互いに吹き飛ばされる。今度はアレクシアが穂先の大きい槍を構え、地に落ちた両刃の大剣を私が拾い上げた。放たれた喉を狙った突きを剣の腹で受け止める。真正面から垂直に振り下ろした剣が槍で受け止められたが、槍の表面を滑らせて槍を掴んでいる指を狙う。槍を手離し、それを避けたアレクシア。その瞬間を見逃さず槍を蹴り上げる。宙を舞う槍に一瞬目を奪われたアレクシアに剣を振るうが、白刃取りで受け止められた。

 

剣を持ったまま両刃の剣身に押し込むような蹴りを入れて、受け止められた剣の刃をアレクシアの身に届かせる。肩口に僅かに食い込んだ両刃の大剣。僅かに垂れたアレクシアの血液が発火する。剣を手離して跳躍し、槍を掴み取り真下へ槍を振り下ろす。両刃の剣身から手を離して槍を躱すアレクシア。地に落ちる両刃の大剣。剣を蹴り飛ばして、すぐには手の届かない場所まで距離を離す。素手となったアレクシアに槍を振るうが槍を受け止められた。人間離れしたウィルス適合者2人分の力が加えられた槍が軋む。酷使に耐えきった槍も寿命がきていたらしく。遂には無惨にへし折れてしまった。互いに槍の残骸から手を離して、ここからは素手の戦いとなる。渾身の力を込めて繰り出した拳はアレクシアの腕で受け止められた。返礼として放たれた上段廻し蹴りを身を屈めて回避する。そして下段の掬うような水面蹴りを放つが後方に一跳びで下がられて避けられた。互いに一瞬で距離を詰めて激突する拳と肘。

 

放たれた拳の応酬。上段、中段、下段の蹴りが繰り出される。対峙してから常に笑みを浮かべているアレクシアは、楽しくて仕方がないといった様子。私はちっとも楽しくはなかったが。いつまでも素手に拘るつもりはないので不意を突いてアレクシアの肩を掴み、変形した左腕義手からせり出した銃口を腹部に押し当てて時限式炸薬弾を連続で発射する。突き刺さった時限式炸薬弾が爆裂し、アレクシアの腹部から血液が噴き出す。空気に触れて発火する血液。アレクシアに明確なダメージを与えた。ここから一気に畳み掛ける。変形した左腕義手から飛び出した特製のワイヤーがアレクシアの身体に巻き付いて動きを一瞬阻害。懐から取り出したL・ホークを連射して硬化ムース弾を身体の各部に着弾させる。硬化した耐熱硬化ムースがアレクシアの動きを止めた。左腕義手を取り外して指先から突き出た太い注射針をアレクシアの腹部に突き刺すとモーターが稼働して血液を吸い上げる。

 

背負っていた義手を装着してL・ホークに弾装を装填。アレクシアの頭部に弾丸を撃ち込んでいくと発火する血液が頭部から噴き出て燃え上がる。血液を吸い上げ続ける変形義手のタンクに血液が貯まっていく。遂に硬化ムースが破壊され自由となったアレクシアは腹部に突き刺さる変形義手を引き抜いて放り捨てた。炎を纏う手刀を繰り出してくるアレクシアの腕を掴み取り、腕を極めて投げ飛ばす。血液を吸い上げられて血中に存在する薬品の効果も薄れたのかアレクシアの向上していた身体能力も弱まっているようだ。今こそが好機。投げ飛ばして地に倒れたアレクシアの顔面を踏みつけようとするが、地を転がり避けられた。立ち上がり燃え盛る火球を連続で撃ち出してくるアレクシア。火球を躱して急速に接近し、アレクシアの腹部に全力で拳を叩き込む。吹き飛んだアレクシアに追いついて追撃の踵落としを喰らわせた。

 

地に叩き付けられバウンドするアレクシアを蹴り上げる。追撃の手は緩めない。宙に浮いたアレクシアの心臓を狙い再び放った左腕義手の手刀がアレクシアの胸部に食い込んだが、心臓を貫く前に腕を掴まれた。しかし掴まれた腕の肘に膝蹴りを叩き込むことで強引に心臓を貫くことに成功。アレクシアの胸部から盛大に噴き出す大量の血液が一斉に発火して燃え盛る。口からも血を吐き出したアレクシアはまだ絶命してはいなかったが時間の問題だろう。tーVeronicaの適合者は血液を大量に失えば生きてはいけない。心臓を貫かれて瀕死の状態となったアレクシアが腕を伸ばしてくる。私の頬を撫でながら微笑み「楽しかったわ、ジョン」と呟いた。咳き込み血を吐きながら「貴方はいつまで生きるのかしら」と問いかけてくるアレクシアに生きられる限りは生きていくと答える。アレクシアは「エヴリンは細胞劣化による老化が数日で急速に進行して、彼女は今朝息を引き取ったわ。最後の最後まで手伝ってくれたことには感謝をしないとね」と息を吐く。何故こんなことをしたのかと聞くと「一瞬だけでも楽しい方が良いでしょう、つまらないことは嫌いなの」と笑うアレクシア。死にかけとは思えないほど楽しそうに笑うアレクシアは最後の力を振り絞って私の顔を掴み、勢いよく顔を近付けてきた。不意に奪われた唇、血の味がするキス。

 

アレクシアは悪戯が成功したかのような、とても楽しそうな顔をして「さようなら、ジョン」と言って息を引き取った。最後の最後まで彼女らしい。アレクシアの死体が燃え上がる。後には何も残らない。だとしても彼女のことは忘れられなくなりそうだ。

 




ネタバレ注意
バイオハザード3、アウトブレイク、オペレーションラクーンシティに登場する人物
ニコライ・ジノビエフ
UBCSデルタ小隊B分隊の隊長
ロシア共和国モスクワ出身
旧ソ連軍特殊部隊スペツナズの元隊員という経歴を持つ彼は、生還率の高さからハンクのライバルといわれた
冷戦時代は、世界各地で要人暗殺や破壊活動を繰り返し、その任務の特殊性から軍歴に多くの謎を残す
兵士としての技能はずば抜けており、アンブレラ側の評価も非常に高い
その反面、彼の生還率に対する疑問の声は多く、部隊内でも彼の評判はいいものではなかった
ラクーンシティで始まった民間人救出作戦において、ニコライはいくつもの密命を帯びて任務に参加した
アンブレラの真の目的は開発中のBOWの戦闘データや医療データの回収にあり、それを任されたのがニコライを始めとする数名の隊員だったのである
ニコライは百戦錬磨のUBCS隊員をBOWと戦わせ、それをモニターする監視員の役目を担っていた
より多くの成功報酬を得るために、他の監視員を殺し回収データの横取りまでするニコライ
STARS隊員のジル・バレンタインが生存していたことを知ると、ジルに懸けられた賞金をせしめるために、彼女の命まで狙おうとする
ニコライは、市街戦や密林戦の経験を生かすことで、次第に任務を成功へと近付けていった
ブービートラップや暗殺術に精通する彼にとって、仲間を罠にかけることなど造作もないことだったのだ
たとえ窮地に立たされても、それをチャンスに変えて自分の死を演出する
彼の隠密行動はまさに完璧だった
ジルがニコライの素性に気付いた頃には、彼の目的はすでに達成されていた
全ては、ニコライの計画通りに進行したのだ
そして、彼はまんまと脱出用のヘリを奪取すると、非情にもジルと部下のカルロス・オリヴェイラを置き去りにする
全てを知ってしまった彼等を、滅菌作戦もろとも葬り去るというのが、ニコライの狙いだった

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