とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

59 / 85
アレクシア和解ルート2

 月 日

元UBCS隊員カルロス・オリヴェイラを見かけた。ラクーンシティからの生存者である彼が今も生きていることは知っていたが、今何をしているのかまでは知らない。気になりはしたがカルロスがアンブレラに強い怒りを抱いていることは間違いないので、元アンブレラの研究員である私との接触を喜ぶことはないだろう。元気ではやっているようなので関わることなくその場を後にした。

 

 月 日

アレクシアが私の拠点に体調の悪そうなエヴリンを連れてやってきた。以前の私ならば追い返していただろうが、珍しく深刻な表情をしたアレクシアと体調が悪そうなエヴリンを無下に出来ない程度の関係に今ではなっている。アレクシアだけの手には負えないエヴリンの症状を私なりに分析した結果として生物兵器であるエヴリンには劣化を抑えるために調整が必要となってくるが、その調整にも限界というものがあったらしい。限界を迎えたエヴリンは、このままでは細胞劣化が進行し、急速に老いて死んでしまう。それを防ぐためには細胞劣化を食い止める必要がある。ウロボロス・ウィルスに適合する遺伝子を用いて遺伝子の選別を除き永劫状態を維持する効能のみを抜き出した万人に不老を与える筈の試作段階の薬品であるが、今のエヴリンにはこれを投与するしか劣化を止める方法はない。アレクシアにそれを伝えると「ジョン、貴方を信じる」と頷いた。

 

エヴリンに薬品を投与すると、始まりかけていた細胞劣化が停止する。永劫状態を維持する効能は正常に機能しているようだ。悪くなっていた体調も改善されて横になっていたエヴリンが起き上がったが、アレクシアに「しばらく安静にしてなさい」と寝かし付けられていた。とりあえずは細胞劣化を防ぐことができたみたいだが、安定しているかしばらくは経過観察が必要となりそうだ。エヴリンには私の目の届くところにいてもらわなければならない。投与した薬品が完全に安定していると判断ができるまでは同居ということになるな。当然アレクシアも一緒だろう。着替えが必要になりそうだ。買いに行かなければならないな。エヴリンが元気になったら一緒に買いにいくとしよう。

 

 月 日

買い物にきたがエヴリンが、とても元気に動き回っている。エヴリンの体調に問題は無さそうだ。アレクシアがはしゃいでいたエヴリンと手を繋いで落ち着いて行動するように、たしなめている。すっかり母親のようになっているアレクシア。端から見れば私も家族の一員のように見られているのだろうか。いい加減そう思われることにも慣れてしまったので、特に動揺することもない。家族というものがどういうものなのか、まともな家庭で育ってはいない私には解らないが。彼女達とこんな穏やかな日々を過ごすことになるとは思ってもみなかったな。過去の私にそう言っても確実に信じることはないだろう。エヴリンが私にも差し出してきた手を握る。そうしてアレクシアとエヴリンと並んで買い物をした。アレクシアとエヴリンはとても幸せそうに笑う。生まれが明らかに普通ではない2人が、こんな笑顔を見せられるようにまでなったのは良いことなのかもしれない。

 

 月 日

アレクシアとキッチンで並んで料理をする日がくるとは思わなかった。問題はないと思うが手伝いをしたがるエヴリンをテーブル席に座らせておく。それで私が料理をしようと思ったらエプロンを着けたアレクシアがキッチンに入ってきた。何しにきたのかと問えば「手伝うわ」と答えるアレクシア。2人で料理をすることになったがアレクシアは当然のように手際がよく、あっという間に下拵えを済ませるアレクシア。負けじと私も腕を振るい料理を完成させていく。2人で作った料理の数々をエヴリンの前に置いていき、エヴリンを真ん中にしてテーブル席に並んで座る。出来上がった料理の数々は1人で作った時よりも出来が良かった。エヴリンはとても喜んで「美味しいよ、パパ、ママ」と言ってくる。喜んでくれて何よりだと笑うとエヴリンが「パパが笑った」と驚いていた。確かにエヴリンの前で笑ったのはこれが初めてだったので、驚くのも無理はない。彼女達の前で笑えるほど私がリラックスしていたのは初めてのことだ。

 

 月 日

エヴリンの状態に問題はなし、今後とも経過観察を続ける。アレクシアと一緒に昼寝をしているエヴリンを起こさないように気をつけながら、静かに行動。自分の拠点内で誰かに気をつかうのは初めての経験だ。できるだけ音を立てないように拠点内を移動する。拠点を出て向かう先は食材を売っている場所。まだまだ食材は残っているが、これからしばらくは同居が続くので3人分の食材を補充する必要がある。買い込んだ食材は1週間分ほどだ。あまり大量に買いすぎても腐らせてしまうことになりかねない。きっちりと使いきれる分量の食材を買うことに成功した。拠点に帰ってきたところでエヴリンとアレクシアが出迎えてくれる。エヴリンが「おかえりなさい、パパ」と言い、アレクシアが「おかえりなさい、ジョン」と笑みを浮かべた。買ってきた食材を3人で手分けして冷蔵庫に入れておく。頑張ってくれたエヴリンの頭を撫でると抱きついてくるエヴリン。何故かアレクシアまでも抱きついてきて頭を撫でろと要求してくるので撫でておくと、とても嬉しそうな顔をしていた。

 

 月 日

アレクシア達を狙い対物ライフルで狙撃をしてきた奴がいたので放たれたライフル弾を左腕義手で掴み取っていく。弾切れになるまで全てのライフル弾を掴み取ったら、エヴリンをアレクシアに任せてライフル弾の発射位置から予測した狙撃地点へと迅速に移動する。流石に狙撃地点にはいなかったが対物ライフル片手に逃げていく男の後ろ姿を発見。追い付いて自白剤を投与し、アレクシア達を狙った理由を吐かせる。どうやらアレクシア達の首には多額の金が懸けられている様子。それを狙っての狙撃だったようだ。散々色々な組織を壊滅させてきたアレクシア達が狙われるのも当然のことかもしれないが、何も今じゃなくてもいいだろうにと思わなくもない。思わずアレクシア達を守ってしまったが、彼女達なら問題はなかったんじゃあないだろうか。余計なことをしてしまったかと思いながら帰ってきた私を迎えたエヴリンとアレクシアは「助けてくれてありがとう」とお礼をしてくる。私のしたことは無駄ではなかったようだ。

 

 月 日

アレクシア達の首に多額の賞金を懸けている複数の組織を把握した。このままでは彼女達が狙われ続けるので複数の組織には消えてもらうことにする。私の手元に彼女達がいる時に彼女達へ賞金を懸けたことが悪い。確実に巻き込まれる私が対抗措置を取ることは当然のことだ。久しぶりに太陽光集積システム「レギア・ソリス」の出番がくる時がきた。複数の組織の拠点へと1つずつ順番に「レギア・ソリス」の転用による膨大な太陽光エネルギーを収束させた超高熱照射を行い、拠点を壊滅させていく。賞金を支払う組織が無くなってしまえば、賞金狙いの輩が現れることはないだろう。しかし、それで狙われなくなるという訳ではない。アレクシア達を狙うもの達は、まだ潜んでいることは間違いない筈だ。裏社会では有名人であるアレクシア達を始末して名を上げようと考えるものや単純に彼女達を邪魔だと思っているものなど、数え切れないほどの敵に狙われているアレクシア達が今まで生き残れたのは強者であったからだろうな。

 

 月 日

エヴリンの状態に問題はなし、経過観察は続行。生物兵器であるエヴリンに投与した試作段階の薬品は問題なく効力を発揮しているらしい。細胞劣化が始まれば急速に老いて死んでいたであろうエヴリンがこうして元気でいられるのも研究を続けていたおかげだな。ウロボロス・ウィルスから遺伝子の選別を除き、永劫状態を維持する効能のみを抜き出すことに成功したのは、ウロボロス・ウィルスの適合者となりえる遺伝子を用いたからだが、私が適合者でなければこの薬品を造り出すことはできなかっただろう。元々は部下達の為に作製していた薬品だったが、生物兵器だとしても助けられる命にはかわりない。生きていられる方がいいのは当然だ。以前は敵だと思っていた相手に対して、このような情を抱くようになるとは思わなかった。エヴリンを助けられて良かったと思うようになるとはな。自分を殺しにきていた相手に対して思うことではない。つくづく私は対処が甘いのだろうな。それで良いと思っているあたり重症だ。

 

 月 日

エヴリンが寝静まった夜、自作のつまみを食べながら1人で酒を飲んでいるとアレクシアが現れる。アレクシアも飲みたいらしいのでグラスをもう1つ用意して手渡し酒を注ぐ。グラスを軽く合わせて静かに乾杯。飲み始めたアレクシアは懐かしいアンブレラの南極研究所時代の話を始めた。南極研究所ではアレクシアが主任研究員を務めていて私はその部下の1人だった頃の話だ。随分と遠い昔だった頃のように思えるな。笑いながら父親を実験体にしたことを語るアレクシアに相変わらず苦笑いしか返せなかったが、実験体となったアレクシアの父親であるアレクサンダーはどうなったのだろうか。それを聞いてみるとどうやらウェスカーの組織が奪取してtーVeronicaを手に入れていたようだ。アレクサンダーには欠片も興味がなかったので今まで知りもしなかったがそんなことになっていたとはな。ウェスカー亡き後にそんな事実を知ることになるとは思わなかった。顛末に驚いている私にアレクシアが顔を近付けてきて不意に唇を奪われる。酒の味がするキス。口内に差し込まれる舌。水音が静寂に響く。口を離したアレクシアが「今はわたしだけを見て」と呟いた。その後に何があったのかは日記に書くようなことではないな。

 

 月 日

エヴリンが私とアレクシアを見て「パパとママ、虫にでも刺されたの?首のとこが赤くなってるよ」と言ってきた。アレクシアがエヴリンの頭を撫でながら「悪い虫さんに身体中に、たくさん痕をつけられちゃったけど大丈夫よ」と笑っている。誰が悪い虫さんだと言いたいがエヴリンの教育には良くないので黙っておく。服を着ても見える位置に痕をつけてきたのはアレクシアからだったんだが、昨夜のことはエヴリンには内緒だ。エヴリンが知るにはまだ早い。エヴリンが見ていないところで私に向けて唇を舌で舐めるアレクシア。エヴリンがいなければ確実に私に襲いかかってきているのは間違いない。昨日が初めてだったとは思えない貪欲さ、どうやら今夜も徹夜になりそうだ。ウィルス適合者の身体は1日2日程度の徹夜だろうと問題ないが、流石に1週間以上は問題があると思う。そんなことはないと思うが、そうなる前には食い止めておきたい。強制的に寝かし付けてやるしかないな。




ネタバレ注意
バイオハザード3、アンブレラ・クロニクルズに登場する人物
カルロス・オリヴェイラ
UBCSデルタ小隊A分隊所属
階級は伍長
インディオの血を引く若き傭兵で、かつては南米某国で反政府ゲリラとして活動していた
政府軍によって組織が掃討された後、彼はアンブレラの傭兵コーディネーターにスカウトされ、UBCSに入隊する
軽口が多いものの、情に厚く熱血漢
戦火の中で育ったためか、危険に自ら飛び込む勇敢さも持ち合わせている
若いながら東側諸国の銃器に精通しているため、UBCSでは主に重火器を担当
後方支援、警戒、並びに武器の整備や現地調達まで兼任している
しかし傭兵としてのカルロスの能力はそれだけにとどまらない
大型車両、ヘリ、セスナ機などあらゆる乗り物を操る技能を持ち、その腕は確かなものである
アンブレラが行った民間人救出作戦においてカルロスは重武装で出動
タクティカルベスト、レッグホルスター、ニーパッドなどでその身を覆い、多数の予備弾倉とM4A1アサルトライフルを携えて市民の救出任務に参加した
UBCSが予想外の事態で大敗を喫すと、カルロス自身も窮地に立たされる
なんとかゾンビの群れから逃げることに成功した彼は、脱出路を探す際に遭遇したジル・バレンタインと協力し合うことになる
ジルの助けを借りて路面電車を修理して追跡者からの襲撃を受けながらも時計塔にまで移動する
時計塔で追ってきた追跡者との戦いになりジルがtウィルスに感染させられてしまう
カルロスは治療方を求めて病院に行き、そこでtウィルスのワクチンを手に入れジルを救うことに成功する
廃工場でゾンビに囲まれたジルを助けて滅菌作戦の存在を語り協力して脱出手段を探そうとするカルロス
無線で外部に救援を求めたカルロスはジルを捜しているという人物に無線が繋がり助けに駆け付けると応答が入る
救援に駆け付けてくれたバリーの操縦するヘリに乗り込んだジルとカルロスはラクーンシティから脱出する
その後のカルロスの行方は解らないが彼がアンブレラに対する強い怒りを抱いていることは間違いない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。