とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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エイダ視点2

ザインと呼ばれる孤島、かつてアレックス・ウェスカーが拠点にしていたとされるその場所で活動を開始した男が持つ情報に用があったわたしは単身でザインへと乗り込み、襲いくるロトンやヴォルケンブラバー達を排除しながら進んだ。辿り着いた塔の残骸の一角、新たに作り出された居住スペースの扉を開けると中に居た男が銃を向けてきたが、此方が構えていたクロスボウが発射される方が一足早かった。放たれた矢によって弾き飛ばされた銃に飛びつこうとする男に装填した矢を向けて動かないように促しておく。室内には数多くのモニターが取り付けられており島内の至るところに設置された監視カメラの映像が映し出されていた。モニターにはBSAA北米支部コンサルタントであるバリー・バートンの娘モイラ・バートンと、BSAA北米支部アルファチーム隊長クリス・レッドフィールドの妹クレア・レッドフィールドの姿が映し出されている。BSAAに恨みを持つこの男のことだから憂さ晴らしのために彼女達を拐ってきたんでしょうね。BOWに襲わせて殺すつもりなのだろうけどラクーンシティを生き延びたクレアを相手には甘い考えだと気付いていないようだ。

 

想像していた通りクレアとモイラはBOWには決して負けず、怯むことなく立ち向かい勝利していく。その有り様に苛立つ男から情報を聞き出すのは骨が折れたが必要な情報を入手することができた。男が嘘を言えるような精神状態では無かったことは幸運と言える。監視カメラが破壊されているのかいくつかのモニターが映らなくなった。モニターが消える前に一瞬見えたあの顔はジョンが変装に使う顔の1つ。どうやらジョンもこのザインに来ているらしい。クレアとモイラの救助に来たのかもしれないが、目的を達成したジョンがこの島に何をするのかと考えると急いで脱出する必要がありそうだ。用件は済んだから帰ることにすると此方が言うと男は忙しい時に邪魔しやがってと悪態を吐いていた。危機感を抱いていない男には悪いけれど彼を助ける義理はない。残念だけれどジョンが来た時点でこの悪趣味な催しは破綻している。フックショットを用いて最短距離を進み、ザイン島内から全速力で脱出した。ザインから飛び立ったヘリ、あれにきっとジョン達が乗っている。遠目でも解るザインへと降り注ぐ超高熱の収束された太陽光エネルギーがザインを焼き払っていく。あの男はザインと運命を共にすることになったようだ。

 

世界的に有名なレストランでアレクシアとエヴリンの目撃情報があった。注目の的になるほどの美女であるアレクシアと同席していた男性がいたようだが、その男性は間違いなくジョンだろう。アレクシアが同席を許す男性はジョン以外は有り得ないことだ。たとえジョンが変装していようとあのお嬢様なら容易く見破ることは間違いなく、同席となったのもお嬢様が強引に同席にした可能性が高い。美女と同席しているにも関わらず若干嫌そうな顔をしていた男性に何の不満があるのかと憤慨していた人もいるようだけど、ジョンとお嬢様の関係を知っているわたしとしてはご愁傷様としか言い様がないわね。ジョンにとっては天敵との心休まらない一時だったんでしょうけど、アレクシアお嬢様にとっては愛する人との幸せな一時になったことでしょう。腕を組んでレストランを出ていったそうだけど力づくで強引にことを進める力強さがお嬢様にはあるようね。ジョンからではなくお嬢様から腕を組みにいく積極性は凄まじいけれどジョンにとっては敵対者からの行動としか思えないから警戒していたんじゃないかしら。1度自分を殺した相手に警戒を緩めるジョンではないだろうから緊張を続けていたことは確かだ。単にお嬢様は貴方のことが好きで堪らないだけだとジョンには気付けない。いや気付きたくないのかもしれないわね。

 

とある街のショッピングモール内で巻き起こされたバイオテロ。それを解決したのはBSAAではなく1人の男性だったらしい。男性に救われた人々は彼のことをヒーローだと讃えていた。男性に救われた人々の内の1人の女性が、撮影していた男性の顔写真はジョンが変装に使う顔の1つだったが、プライベートでもバイオテロに巻き込まれているジョンは運が悪いとしか言い様がない。それでもジョンがいたことで救われた人々がいることは確かだ。今までジョンに救われた命の数はどれだけの数となるのだろうか。ジョンにとっては日常茶飯事で大したことはしていないと言うのかもしれないが、積み重ねられた実績はかなりのものとなる。悪名高きアンブレラの研究員であった彼が人々の命を救う存在となるとは誰も想像していなかった筈だ。

 

元トライセルの研究員であるミゲルがジョンの元に自分を売り込みにいったらしいが、それは失敗に終わったようだ。ジョンにとっては自称天才は必要無かったということになる。ミゲルは自分自身を天才だと思っているようだったが、多少は優秀であれど天才とまではいかない才能の持ち主だったみたいね。自分を認めなかったジョンに後悔させてやると考えているようだけれど、それは無謀なことだと教えてくれる人はいなかったのかしら。しかし、そんなミゲルを後押しする組織が現れた。それがジョンを狙う組織であることは間違いないが、ジョンをそう簡単に討ち取れると考えているならば大間違いとしか言えない。強大な組織であろうと単身で立ち向かい勝利してきたジョンの姿を知るものとしては、ジョンの敵となることの恐ろしさを実感できていないと感じる。ジョンを過小評価をしていることは間違いない。それがきっと命取りになる。

 

ジョンの殺しを駆け出しの殺し屋に依頼したミゲルが熟練の殺し屋に狙撃で頭を撃ち抜かれて殺された。これはジョンの報復の始まりに過ぎない。ミゲルを後押ししていた組織もジョンに拠点の居場所を見付け出され、ジョンの襲撃を受けて壊滅した。組織の生き残りは1人もなく残らず殲滅されているようだ。組織の資金も残らず奪われていたあたりジョンの手に渡っていることは間違いない。勝者のみが全てを手に入れ、敗者は全てを奪われる。それが裏社会の厳しい現実。数え切れないほど勝利を重ねてきたジョンと敵対したがる人間は、余程の自信がある人間か身の程知らずしかいない。結局はどちらもジョンに敗北することは変わらないが。今のジョンを止められるのはアレクシアお嬢様ぐらいだろう。

 

再現実験体を作製している組織からリサ・トレヴァーの再現実験体が脱走したらしい。組織はオリジナルのリサ・トレヴァーも確保しているようだ。オリジナルのリサ・トレヴァーが居たアークレイ研究所はもう1人のジョンが居た場所でもある。彼は非道な実験を行うアークレイ研究所に務めるには人間的にまとも過ぎたようで残虐な実験を取り止めるようにアンブレラの上層部に是正する意見を提出していたがそれが受理されることは無かった。もう1度彼と生きて会うことは無かったけれど、きっと彼のことはジョンが覚えていてくれるだろう。ジョンならば忘れることなく彼のことをずっと記憶している筈だ。わたしがいずれ忘れてしまってもジョンだけは必ず忘れることはない。それだけは確かなことだ。

 

リサ・トレヴァーの再現実験体の女性はジョンに保護されたようだ。再現実験体を作製している組織はそれに気付いていない様子。迂闊に手を出せない相手の元に再現実験体が転がり込んだことが解っていないようだが、研究に力を入れているために情報収集能力はそれほど高くはない組織なのかもしれない。

 

再現実験体の回収のために送り込んだ大量のジュアヴォが再現実験体により全滅したらしい。銃器の扱いや格闘術を身に付けていたあたりはジョンが仕込んでいたようだ。短期間で対抗ができる程度の実力を身に付けさせることができているジョンの指導力はかなり高い。大量のジュアヴォを一度に失ったことから再現実験体の回収を組織は一時中止にした。これは再現実験体の女性にとっては良い結果となったことだろう。そしてジョンによって送り出された再現実験体の女性は何処かへと消えた。足取りを掴むことはできない。ジョンの保護下にあることは間違いないが、それ以上の情報を入手することが不可能となった。情報をジョンが封鎖しているようだ。

 

マヌエラ・ヒダルゴと同様に臓器移植によるtーVeronicaとの適合を実現したウィルス適合者が裏社会で思うがままに暴れ回り、裏社会の人間達を拐うと自分にその臓器を移植するという暴挙を繰り返していた男の排除を、多数の組織が連名でジョンに依頼したようだった。ジョンはそれを引き受けたらしい。派手に暴れ回っていた男の命運は尽きたも同然だ。裏社会の秩序を守らぬ無法者を粛正する。それがジョンに依頼された内容だ。ジョンは直ぐ様依頼に応えて無法者を排除した。殺害が完了した証として首だけとなった男の写真を多数の組織に送信して振り込まれた依頼料を受け取ったジョン。依頼を達成したジョンに信頼を深めた組織は多数存在している様子。

 

ジョンに依頼をした組織がまた1つ。今度の内容は警護のようだ。代替わりをする組織の長の身辺警護をジョンに任せたらしい。襲いくるマジニやプラーガを排除していったジョンの働きは素晴らしいものだったそうだ。組織の長を狙った狙撃を阻止して狙撃手まで捕らえたジョンの働きは組織も満足がいくものだったらしく。警護対象だった組織の前長がジョンをとても気に入っていたことから、根が真面目なジョンは仕事に真剣に取り組んでいたみたいね。ジョンと敵対するよりも味方となるように依頼をする組織が増え始めたのはこの時からだった。敵として相対すれば絶望的なジョンが味方として戦ってくれるならば、これほど心強いものはない。挙って依頼する組織の数々だがあくまでも依頼を選ぶのはジョン自身である。

 

猛毒の爪を持つハンターの改良型を更に強化薬物P30で強化したものが売り出されてから、その毒の血清を血眼になって求める者達で溢れていた裏社会。ハンターの爪に存在する猛毒に対する血清を大々的に売り出したのはジョンだった。売り出された血清の売れ行きは上々でとても質が良いと評判になっている。わたしの所属している組織も彼の売り出した血清を入手していたみたいだ。手に入れた血清を元に量産を開始する組織が大多数いる中で血清が売れるのは一度限りの一時的なことだとジョンも理解しているだろうが、それでも今回ジョンが手にした利益はかなりのものとなる。莫大な利益を得たジョンがそれを何に使うのかは興味があるが、彼はそう簡単に目的を明らかにするような男ではない。

 

イレギュラーミュータントを主戦力とする組織と対立組織の戦いに対立組織側の人間として戦いに参加したジョン。対立組織が用意したタイラント数体と共に数多のイレギュラーミュータントを打ち倒して戦いに貢献したようだ。彼に依頼をして雇うことができたのは正解だったと勝利した対立組織は語っている。

 

裏社会の面々が大多数も参加するパーティーが開かれたがある組織の首領を狙いBOWが放たれた。BOWはパーティーの主催者側の人間達に直ぐ様排除される。清掃が済んでから再開されたパーティーは大盛況であったが、ジョンだけが個別に呼び出しを受けていた。パーティーの主催者である筋骨隆々の大男とジョンが会話を交わしている姿を目撃したが、とても楽しそうに会話している2人。楽しそうな彼等の邪魔をするのも野暮なので、その場を後にしたわたしは料理もお酒も上質なパーティーを程々に楽しんで会場から外に出た。わたしが目当てだったらしいある組織の構成員が拳銃を懐のホルスターから引き抜くよりも速くわたしが抜いていたブラックテイルの引き金を弾く。眉間を撃ち抜かれて倒れ込んだ構成員。踵を返して帰路につく。

 

驚くべきことにアレクシアが複数人のウィルス適合者に敗北し捕らわれたようだったが、更に驚くべきことにジョンが救出に向かったようだ。重症を負っていたエヴリンに要請されたとはいえ敵対していた筈の相手を助けようとする彼にどんな心境の変化があったのか知りたいところだが、ウィルス適合者達を皆殺しにしてからアレクシアを背負い拠点に帰っていく彼はとても落ち着いていた様子だったらしい。その後はエヴリン共々ジョンの拠点でかなりの日数を過ごしていたアレクシアはジョンとの距離を縮めることができたのだろうか。

 

ジョンとアレクシアとエヴリンの3人で食料品の買い物に行っている姿が目撃されている。家族と勘違いされるほどに距離は縮まっていたらしく。アレクシアにとっては喜ばしいことであることは間違いない。3人で一緒に行動しているあたりジョンも少しは気を許しているのだろう。ジョンの警戒も少しは薄れたのかもしれない。

 

アレクシア達に懸賞金を懸けていた複数の組織がジョンが使用した「レギア・ソリス」によって壊滅した。ジョンにとってアレクシア達は守るべきものとなったようだ。ジョンによって守られていることが判明したアレクシア達を狙うものは激減している様子。ジョンとアレクシアを同時に敵に回す度胸があるものは少ないがいなくなった訳ではない。残された僅かな組織はこれからもジョンとアレクシアを狙い続けるだろう。それが成功するとはとても思えないが。

 

アレクシアから驚きの報告が届いた。なんとジョンと結婚したというのだ。どうやらアレクシアはジョンとの距離を縮めることには成功したらしい。お祝いの言葉は送っておいたけれど、知人が結婚したというのは初めての経験ね。結婚はジョンから言い出したことのようで、責任を取ろうと思ったとのことだ。そういうところは真面目なジョンは誠実な男性ではある。幸せの絶頂といった様子のアレクシアはジョンと結ばれることができて嬉しくて仕方がないみたいだった。末永くお幸せにと言っておきましょう。

 

それにしてもジョンとアレクシアが夫婦になったことには驚愕を隠せない。元からジョンを好んでいたアレクシアはともかくあのジョンがよくアレクシアを受け入れたと思う。一度自分を殺した相手を愛することができるジョンの心はとても広いようだ。愛してもいない相手と結婚する人もいない訳ではないが、ジョンに限ってはそんなことはないと断言できる。彼はアレクシアを愛しているから結婚に踏み切ったのだろう。これで相思相愛となったジョンとアレクシアに何が待ち受けていようと彼と彼女の2人なら容易く乗り越えられることは間違いない。

 

母親似の息子を抱えたジョンと手を繋いだアレクシアのもう片方の手は成長していたエヴリンと繋がれている。穏やかな家族の一時を邪魔するのは無粋だろう。ジョンには用事があるけれど急ぎの用事ではないから、また今度日を改めることにする。ジョンの家族は、とても幸せそうな家族だと思えた。殺伐としていた関係が改善されてあんなに和やかな関係になっていたとは、実際に見てみると驚いてしまう。幸せそうに笑うジョンの顔を初めて見たけれどとても良い顔をしていた。本人達が幸せなら言うことはない。より多くの幸せがあの家族に訪れることを祈っておこう。

 

「また今度ね、ジョン」

 

さあ、仕事の時間。組織から下されたオーダーをこなす時がきた。真の目的を果たすその時まで、わたしの戦いは終わらない。




ネタバレ注意
バイオハザードリベレーションズ2に登場するクリーチャー
ロトン
アフリクテッド達は、ウィルスの働きによって代謝異常が発生し、やがて人のそれとは別物の細胞へと置き換えられる
その結果、強靭な筋力を獲得すると同時に、もはや新陳代謝がほとんど行われない活動体へと変容していく
新たな皮膚が構築されないために肉体は朽ちていくが、筋組織の大半は維持された状態で、骨が露出した外見でも運動性能に衰えは見られない
この長期活動体を指してロトンと呼称している
主な攻撃方法は腕をゆっくり振りかぶってから1~2回振り回す素手攻撃と両手を前に向けた姿勢で近寄って掴みかかり、相手を掴んだら首筋に何度も噛みつく噛みつき

ヴォルケンブラバー
ウィルスに感染させられ発症した人間には、大脳新皮質が死滅してしまうためか高次思考能力がいっさい残されていない
しかしこの大型アフリクテッドには与えられた火筒型の大砲に着火して火炎弾を射出するという複雑な攻撃行動をとれるだけの知能は残されている
耐久力もずば抜けており、異常に肥大した体格を考慮すると、素体となった被験者はウィルス以外にもさまざまな薬物によって生体改造を受けたものと思われる
主な攻撃方法は大砲を左りに振り回す振り回しと相手に走り寄り、左肩を前に出してぶつかるタックルと大砲に松明の炎を入れ、火炎弾を1~4回発射する砲撃

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