仮面ライダーウィザード 【異世界奮闘記】   作:Mr.K

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二話目の投稿です。


第二話

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 次元の扉に吸い込まれた晴人は、現在自由落下に似た体験をしていた。

 

 扉に吸い込まれた直後に変身が強制解除された為、今は晴人の姿で落下中だ。

 

 この空間は特殊なもので、魔法がキャンセルされるらしい。その証拠に、先ほどからベルトからはエラーコールが発声されている。

 

 しばらく落下していると、虹色の光の奔流が晴人を包んだ。

 

 晴人の意識はそこで途絶えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 一体どれくらい眠っていただろう…。晴人は身体に当たる水の感触に眼を覚ました。

 

 

「………砂浜?」

 

 

 リズム良く当たっている水は、波だったのだとこの時初めて気づく。

 

 

「確か俺は…次元の扉に吸い込まれて…」

 

 

 僅かずつだが、記憶が蘇ってきた。

 

 

「そうだ、あいつは!?」

 

 

 吸い込まれる直前まで戦っていた青年の事を思い出す。茶色いローブを着た【ラド】と呼ばれていた青年。

 

 敵ではあったが、どこか憎めない青年…。その姿は周囲には無い。

 

 

「ってか、ここどこだ? 携帯は圏外だし…」

 

 

 自分の携帯に表示される【圏外】の文字。晴人は自身が置かれている状況を察し、溜め息をついた。

 

 

「……ホントに世界を渡ったみたいだな」

 

 

 その呟きに答えてくれる者は誰も居ない。晴人は、とりあえずその場から移動する事にした。

 

 

『コネクト、プリーズ』

 

 

 赤い魔方陣から愛車のバイク(マシンウィンガー)を取り出す晴人。その表情には安堵の色が浮かんでいた。

 

 

「良かった。魔法は使える」

 

 

 晴人は一息つくと、バイクに跨がって先に進み始めた。

 

 しばらく走ると、周囲の景色に変化が起こる。先ほどとは異なり、小さい木々や茂み等が目立ち始めたのだ。潮の香りももうしない。

 

 しかし、晴人にとってそんなことはどうでも良かった。晴人は、今世紀最大のピンチに陥っていたのだ。

 

 

「…………どこだここ?」

 

 

 迷ったのである。何せ右も左も解らない異世界なのだ。迷うのは当然といえる。

 

 晴人はバイクを止めると、右手の指輪を交換しベルトに翳した。

 

 

『ガルーダ、プリーズ』

 

 

 晴人は使い魔を召喚し、人が居そうな場所の捜索を頼む。

 

 

「…とりあえず人を探してくれ。これじゃあマトモに動けない」

 

 

 晴人の言葉に、ガルーダは頷くとすぐに飛び立っていった。

 

 ふぅ、と一息ついた晴人は、【コネクトウィザードリング】を使用して、ハングリーのドーナツ(プレーンシュガー)を取り出し、近くの岩に腰かける。

 

 

「やっぱコレでしょ♪」

 

 

 美味そうにドーナツをかじる晴人。いつもならここで何かしらの邪魔が入るのだが、今回は心配ないようだった。

 

 と安堵していたのも束の間、背後から低い唸り声が聞こえてきて、思わずヒヤリとする。

 

 振り返ると、紅蓮の毛並みをもつ狼に似た動物がヨダレを垂らしてこちらを見ていた。

 

 

「でかっ!?」

 

 

 晴人は、その狼の大きさに目を見開いた。少なく見積もっても、体長三メートルはある。

 

 狼の目は、完全に晴人をロックオンしていた。

 

 苦笑いを浮かべながらゆっくりと立ち上がる晴人。そして、狼を刺激しないように、ゆっくり後退りを始めた。

 

 たがその努力虚しく、狼は晴人を食べようとその大きな口を開けて突っ込んで来る。

 

 あまりにも咄嗟の事で、晴人は反応出来なかった。

 

 晴人は、この後起こるであろう結果を覚悟し目を閉じた。

 

 「らしくない」…晴人はそう思った。だが、いつまで経っても何の衝撃も来ない。

 

 不思議に思って目を開けた晴人は、驚くべき光景を目の当たりにした。

 

 

「よぅ、無事か青年?」

 

 

 そこには、巨大なメイスで紅蓮の狼の押さえつける少女の姿があった。

 

 流れる様な腰まで伸びた青髪。褐色の肌は、必要最低限の箇所を除いて限界まで露出している。

 

 出る所は出ていて、引き締まるべき箇所はちゃんと引き締まっている。所謂、ボン・キュッ・ボンの体型だった。

 

 少女は、晴人を見て声高らかに宣言する。

 

 

「青年、手を貸してやるぜ!」

 

「えっと…キミは誰?」

 

「おっと…詳しい話は後だ。まずはこの紅蓮狼(クリムゾンウルフ)を倒すのが先だ!」

 

 

 少女はそう言うが早いか紅蓮狼をメイスで殴り飛ばす。

 

 

「すっげぇ怪力…」

 

「何か言ったか?」

 

 

 晴人の呟きが聞こえたらしく、ギロリと睨む少女。どうやら性格はかなり攻撃的なようだ。

 

 殴り飛ばされた紅蓮狼は、体勢を低くして飛び掛かる準備をしている。完全に攻撃体勢だった。

 

 

「仕方ない」

 

『ドライバーオン、プリーズ』

 

 

 溜め息をついて晴人はベルトを出現させる。

 

 

『シャバドゥビタッチヘーンシーン! シャバドゥビタッチヘーンシーン!......』

 

 

 軽快に流れる待機音声。それを聞いた少女は、あからさまに顔をしかめた。

 

 

(やかま)しっ! 何だソレ!?」

 

「変身!」

 

『フレイム! プリーズ』

 

『ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!』

 

 

 基本形態(フレイムスタイル)変身した晴人を見て口笛を吹く少女。

 

 

「すげぇなソレ。魔武装か?」

 

「魔武装? 何ソレ…」

 

「属性を自分の身体に纏わせて強化する技さ。でも、基本魔武装は姿変わらない筈だけどな~」

 

 

 そう言って首を傾げる少女。

 

 

「ふ~ん。ま、魔武装ではないと思うよ。

 俺はウィザード。しがない魔法使いさ!」

 

「魔法…使い…」

 

 

 唖然とした感じで少女が呟く。

 

 そんな少女を尻目に、晴人は【ウィザーソードガン】を取り寄せて紅蓮狼に向かっていった。

 

 しばらくポカンとしていた少女だったが、すぐにウィザードに続く。

 

 

「青年! お前、魔法使いだったんだな!」

 

「まぁね。ところで、後で色々聞きたい事があるんだけど…?」

 

 

 ウィザードと少女は、紅蓮狼の相手をしながら会話する。

 

 

「いいぜ。何でも聞きにこい!」

 

「んじゃ、とっとと片付けるか」

 

 

 ウィザードはそう言ってウィザーソードガンをガンモードにしてハンドオーサーを起動させた。

 

 

『キャモナ・シューティング・シェイクハンズ! キャモナ・シューティング・シェイクハンズ!......』

 

『フレイム! シューティングストライク!』

 

『ヒー、ヒー、ヒー! ヒー、ヒー、ヒー!......』

 

「フィナーレだ。はぁっ!」

 

 

 気合いと共に、ウィザーソードガンの銃口から炎の塊が紅蓮狼に向けて勢い良く発射された。

 

 だが、その一撃が紅蓮狼に届く事はなかった。紅蓮狼の手前で吸い込まれる様に消えたのだ。

 

 

「へぇ~、火は効かないわけか…」

 

「あいつは火属性の攻撃を無力化するアビリティを持ってる。火は効かねぇぞ!」

 

「なるほど…だったらこれだ!」

 

 

 ウィザードは右手の指輪を、青い魔宝石が嵌め込まれた派手な装飾の指輪に換えてハンドオーサーに翳した。

 

 

『ウォーター! ドラゴン!』

 

『ジャバジャババシャーン、ザブンザブーン!』

 

 

 青い魔方陣と共に、水のエレメントを纏ったドラゴンの幻影がウィザードと一体化する。

 

 絶大な水の魔力が、ドラゴンの咆哮と共にウィザードの姿を変えた。

 

 雫を模したひし形に近い形状のアルターベゼルウォーター。両肩にはひし形の封印石が追加されている。

 

 胸部には、フレイムドラゴンと同じくウィザードラゴンの顔を模した装甲が施されていた。

 

 その身に宿すエレメントと同じ、澄んだ青のウィザードローブをはためかせて、特殊形態(ウォータースタイル)の強化形態・水を司どる魔法使い(ウォータードラゴン)が静かに立っていた。

 

 

「わぁお。アンタ、複数の属性が使えるんだな!」

 

 

 感心する少女。そんな少女を尻目に、ウィザードはウィザーソードガンをソードモードに変更して紅蓮狼に斬りかかる。

 

 吹き飛ばされた紅蓮狼は、体勢を崩しながらも、その口から大きな火球を放った。

 

 放たれた火球は、まっすぐにウィザードを狙う。

 

 だが、ウィザードはあくまでも冷静だった。落ち着いて、右手の指輪を【ウォータードラゴンウィザードリング】と同じ魔宝石から削り出された指輪に取り替えると、ハンドオーサーに翳した。

 

 

『チョーイイネ! ブリザード、サイコー!』

 

 

 音声コールと同時に右手を前に翳す。すると、青い魔方陣が出現し、凄まじい冷気を放出し始めた。

 

 冷気はあっという間に放たれた火球を呑み込み、一瞬で周囲を白銀に変える。

 

 いつの間にか、紅蓮狼も氷漬けになっている。

 

 

「お前、氷も操れるのか…?」

 

「まぁね。今度こそフィナーレだ!」

 

 

 ウィザードは紅蓮狼に対して悠々と宣言する。

 

 同時に、深紅の魔宝石が嵌め込まれた指輪を右手に嵌めた。

 

 

『チョーイイネ! スペシャル、サイコー!』

 

 

 青の魔方陣から再びドラゴンの幻影が出現し、ウィザードラゴンの体の一部をウィザードの身体に具現化させた。

 

 ウォータードラゴンが具現化させたソレは…。

 

 

「ソレ、尻尾…か?」

 

 

 少女の呟き通り、ウィザードの腰部からウィザードラゴンの尻尾・ドラゴテイルが出現していた。

 

 

「はぁぁっ!!」

 

 

 気合いと同時にドラゴテイルを紅蓮狼に叩き付ける。

 

 ウォータードラゴンの必殺技『ドラゴンスマッシュ』が決まり、紅蓮狼の躰が砕け散り、戦闘終了(フィナーレ)を意味する青い魔方陣と共に消滅した。

 

 

「ふぃ~」

 

 

 それを確認すると、ウィザードは変身を解除する。

 

 纏っていた魔力が結晶となって流れ落ち、元の晴人の姿に戻った。

 

 

「それで、キミは誰? そしてここはどこなんだ?」

 

「私はラン。そしてここは【ヴィガルニア】だ!

 にしても、アンタ強ーんだな! あのBランクの紅蓮狼をあっさり倒すなんて…もしかして、余計な事しちゃったか?」

 

「そんなことないよ。助かった、ありがとう」

 

 

 晴人の言葉に、少女・ランは頬を赤らめる。

 

 

「詳しい話は私ん家で良いか? ここじゃ、またさっきみたいな魔物が襲ってくるからな」

 

「判った。お邪魔させてもらうよ」

 

「よっしゃ! じゃあ、着いてこい!

 っとその前に、知り合いを迎えに行かなきゃならねぇんだが、良いか?」

 

「もちろん」

 

「よし! じゃあ、出発だ!」

 

 

 嬉しそうに晴人を手招きするランに、晴人もまた笑みを浮かべながら着いていった。

 

 この時、晴人はこの先に驚愕の事実が待ち受けているとは、夢にも思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇が支配する空間。その空間を照らすのは、二本の松明だけだ。

 

 そんな薄暗い空間で、数人の男女が何やら話していた。

 

 

「――――――以上が報告の全てです。奴等は次元の扉を通って戻って来たようですね…」

 

「ふむ。こちらの準備は整った、もう奴等は敵ではない。

 問題は一緒にやって来た指輪の魔法使い(ウィザード)だな…早急に始末せよ」

 

「はっ! では、グリズリー…ウィザードを始末して来なさい」

 

 

 その言葉の直後、背後の暗闇から大柄な体躯の大男が姿を現す。

 

 

「はい。招かれざる客の始末…我にお任せ下さい」

 

 

 一礼した大男の周囲の空間が陽炎の様に歪み、一瞬で姿を変えた。

 

 鋭い目と牙を持ち、頭部には熊の様な丸い耳がある。身体は更に巨大になっていた。

 

 ファントム・グリズリーの本来の姿がそこにはあった。

 

 グリズリーは再び一礼すると、闇に姿を消した。

 

 

「………グリズリーは捨て駒だ。文句はないね、リヴァイアサン」

 

 

 グリズリーの気配が完全に無くなった後、闇の中から声が発せられる。

 

 

「もちろんです、オロチ様。あやつには我等の悲願の礎となってもらいましょう」

 

 

 そう言って闇の中から姿を現す女性。見た目は二十代前半で、青い髪に青い瞳をしている。確実に美人の部類に入る容姿だ。

 

 

「ふむ。この世界を我等ファントムの世に変える。邪魔する者は容赦するな」

 

「はっ!」

 

 

 リヴァイアサンと呼ばれた女性は、一礼すると闇に消えた。

 

 

「私はしばらく休む。灯りを消せ、トロール」

 

「ウス!」

 

 

 低いしわがれ声と共に、二本の松明が消える。

 

 

「ごゆっくりお休み下せぇ、オロチ様。あっしは外で見張っておりますんで」

 

 

 しわがれ声はそれだけ言うと、気配を消した。後には暗闇と静寂だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 周囲が開けたサバンナの様な荒れた場所で、ウィザードに変身した晴人の声が轟いた。

 

 現在晴人は、フレイムドラゴンとなっている。

 

 そして相手は、漆黒のローブに身を包む男・ダクだった。

 

 ランに着いていった晴人は、知り合いとの待ち合わせ場所に到着。

 

 そこで待っていた六人は、つい先ほどまで晴人が敵だと思っていた存在だったのだ。

 

 すぐさま晴人は変身し、ダクとの戦闘になった。そして今に至る訳だ。

 

 少し離れた場所では、ラン達が二人の戦いを観戦していた。

 

 

「あ~あ、や~っぱりこうなったかぁ」

 

 

 呆れたように溜め息をつくメラ。

 

 

「あの二人…何かあったのか?」

 

「あの二人と言うより私たちとちょっと揉めたんです」

 

 

 ランの問いにヒュウカが答える。

 

 

「まぁ、ウィザードはホンマの事を知らんだけやねん。あーなるんも無理ないわな」

 

「大体、ウィザード()に真実を教えないダクも悪いと思うよ。最初から素直に言えば、彼なら協力してくれただろうし…」

 

「…同意…」

 

 

 サンがウィザードに同情し、ラドがダクの文句を言う。それに水色のローブを纏った女性・アクアが同意した。

 

 そんなやりとりを見ていたランは、ダクの不器用さに深い溜め息をついた。

 

 一方のウィザードとダクは未だに戦闘を続けていた。

 

 

「待て待て我輩の話を聞け! 話せば判る!」

 

 

 ダクは必死に敵意が無い事をアピールするが、ウィザードの攻撃は止まらない。

 

 

「この期に及んで、一体何の話をするんだ?」

 

「とにかく待て! 奪った魔力ならもう返した!」

 

「…………何?」

 

 

 その言葉にウィザードの攻撃が止まる。

 

 ダクはホッとしたように持っていた武器を下ろした。

 

 

「実は、我輩達がこの世界に帰還する為に使用した次元の扉は、魔法使いの魔力によって出現するのだ」

 

「あぁ、知ってる。ある研究者の資料で見た」

 

 

 ウィザードは変身を解除せずに相槌を打った。ダクは話を続ける。

 

 

「我等は魔力を持たん、故にこうするしか無かったのだ。

 次元の扉の出現に使用した魔力は、一定時間で元に戻るのだ。おそらく、我等が魔力を奪った魔法使い達は既に目覚めている」

 

「え…じゃあ、何でもっと早く言わないんだ?」

 

 

 いつの間にか変身を解除した晴人がダクに訊ねる。その問いに答えたのはダクではなくメラだった。

 

 

「それは、ウィザードを【ヴィガルニア】(こっち)に連れて来る為だよん♪」

 

「俺を連れて来る為?」

 

「今この世界は危機に瀕してるんだよ。人に化ける魔物が民を虐殺してるのよね」

 

「人に化ける魔物? まさか…」

 

 

 晴人はそのワードに反応する。元の世界で嫌という程戦ってきた存在。自分の中にも居る存在。

 

 それが、次元を越えた先にも存在していたとは驚きだった。だが、不自然ではない。

 

 生来、魔力の高い人間…所謂【ゲート】が絶望した時に生まれるファントムは、例え次元を越えていても現れる可能性はあるのだ。

 

 もし、人に化ける魔物=ファントムなのだとしたら、晴人は戦う覚悟は出来ている。自分は、最後の希望なのだから…。

 

 

「で、我輩達はその集団と一戦交えた際にその中の一人に異次元へと飛ばされてしまったのだ」

 

「なるほど」

 

「だからウィザードには奴等を倒す手伝いをして欲しいんだよん。頼めるかにゃあ?」

 

 

 メラの質問に晴人は一同を見渡す。晴人の答えは決まっていた。

 

 

「事情は解った。俺で良かったら協力するよ。俺は、最後の希望だから…」

 

 

 晴人はそう言って、左手を握って前に突き出した。そこには赤く煌めく指輪が嵌まっている。

 

 その時、どこからともなく大声が響いた。

 

 

「では、その最後の希望を絶ってやろう!」

 

 

 声がした方向を全員が見る。そこには、傭兵のような逞しい体をした大男が立っていた。

 

 大男はゆっくりと近づいてくる。

 

 その服装は、明らかに晴人が居た世界のそれだった。

 

 ゆっくりと近づいて来る大男。すると、周囲の空間が陽炎のように歪み、その姿が変化した。

 

 その場に居た全員が警戒する。その中で、メラが声を上げた。

 

 

「あいつ。前に戦った集団の中に居た…つまり敵だよ!」

 

「待て!」

 

 

 晴人は今にも飛び掛かろうとするメラを晴人が手で制す。

 

 

「ウィザード…?」

 

「この世界にもファントムは居るのか。ゴメン。俺、君たちを誤解してたみたいだ…」

 

 

 そう言って指輪をベルトに翳す。

 

 

『ドライバーオン、プリーズ』

 

 

 ベルトが出現するのすぐさまハンドオーサーを左側に傾ける。

 

 

『シャバドゥビタッチヘーンシーン! シャバドゥビタッチヘーンシーン!......』

 

 

 ベルトから例によって軽快な待機音声コールが流れる。

 

 晴人は左手に【フレイムウィザードリング】を嵌めてハンドオーサーに翳した。

 

 

『フレイム! プリーズ』

 

『ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!』

 

 

 フレイムスタイルに変身した晴人は、ゆっくりと左手を顔の横に翳した。

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 駆け出すウィザード。同時に、ファントム・グリズリーもウィザードに向かって駆け出した。

 

 手元に取り寄せたウィザーソードガンで攻撃するウィザード。一方で、グリズリーはその長く鋭い爪で攻撃していた。

 

 流れる様なアクロバティクな動きに翻弄されながらも、グリズリーは攻撃を仕掛ける。

 

 一方のウィザードも、自身の攻撃がグリズリーの爪で防がれていることに若干の苛立ちを感じていた。

 

 その時、グリズリーの爪がウィザードの胴体を捉える。

 

 激しい火花を撒き散らしながら吹き飛ばされるウィザード。グリズリー畳み掛けるように追撃する。

 

 

「く…」

 

 

 次第に防戦一方になるウィザード。マスクで表情は窺えないが、恐らく焦りの表情を浮かべているはずだ。

 

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

 

 再び攻撃を受けて吹き飛ぶウィザード。

 

 グリズリーはニヤリと笑うと、ウィザードに語りかけた。

 

 

「何だ? もう終りか指輪の魔法使い」

 

「もう終り? んな訳ないでしょ」

 

 

 ウィザードはそう言いつつ左手の指輪を黄色い魔宝石から削り出された指輪に換える。

 

 そして、再び左側に傾けたハンドオーサーに翳した。

 

 

『ランド! プリーズ』

 

 

 左手を足元に翳す。そこから土を纏う黄色の魔方陣が出現し、ゆっくりと上昇していく。

 

 

『ドッドッドッドドドン、ドンドッドッドン!』

 

 

 完全に通過した後には、ウィザードの姿を変化させていた。

 

 土のエレメントをその身に宿すウィザードの剛力形態(ランドスタイル)。ベゼルランドの形状は力強さを感じさせる四角形だ。

 

 

「仕切り直しと行こうぜ!」

 

「そうこなくては…楽しくなってきたぞ!」

 

「アンタ戦闘狂かよ」

 

 

 そう言いながら右手に持つウィザーソードガンを振りかぶり、ウィザードはグリズリーに向かっていった。

 

 グリズリーの爪の一撃を左手で受け止め、右手のウィザーソードガンで切りつける。

 

 火花を散らしつつ後退するグリズリーに、追撃の蹴りを放つウィザード。その攻撃には一切の手加減は無かった。

 

 

「く…なかなかやるなウィザード。そうでなければ面白くない」

 

「そういう戦闘狂発言は止めてくれ。フェニックス(あいつ)思い出して鳥肌立つんだよ」

 

「関係ないな!」

 

 

 瞬間、グリズリーの両目が光を放ちその体をさらに巨大にさせた。ゆうに三メートルはある。

 

 

「おいおいおい、そんな事も出来んのかよ!」

 

 

 驚きの声を上げるウィザード。だが、巨大になった反面、敏捷性は落ちるようで、その動きにはキレが無い。

 

 

「図体ばかりでかくて動きはノロマか…。でかけりゃ良いってものでも無いでしょ」

 

 

 そう言って左手の指輪を素早く交換する。行使したのは緑の指輪。ベルトに翳した後頭上に翳す。

 

 

『ハリケーン! プリーズ』

 

『フー、フー、フーフーフーフー!』

 

 

 出現した風を纏う緑の魔方陣を通過し、ウィザードの姿が再び変化した。

 

 風のエレメントをその身に宿すウィザードの敏捷形態(ハリケーンスタイル)。緑色に煌めくベゼルハリケーンの形状は逆三角形だ。

 

 手に持つウィザーソードガンを逆手に持ち変え、身体に風を纏わせて空を飛ぶ。

 

 それは正に魔法使いと呼ぶに相応しい姿だった。

 

 高速で飛行しながら連続攻撃を決めるウィザードに、グリズリーは為す術が無かった。

 

 斬っては離れ、斬っては離れのヒットアンドアウェイを繰り返すウィザード。

 

 グリズリーはもうボロボロだった。

 

 止めを刺すべく、ウィザードはウィザーソードガンのハンドオーサーを起動する。

 

 必殺技発動の待機音声が流れ、ウィザードが左手を翳そうとしたその瞬間、メラの叫び声が木霊した。

 

 

「ちょっと待ってよぅ!」

 

「んあ?」

 

「こいつ、前の戦闘で私が相手をしてたんだよぅ。だから、後は譲ってもらえないかなぁ? 決着、着けたいんだ」

 

「判った。そういう事なら後の事はメラに任せる」

 

 

 ウィザードはそう言うと左手の指輪を換えた。

 

 

『フレイム! ドラゴン!』

 

『ボー、ボー、ボーボーボー!』

 

 

 一瞬のうちにフレイムドラゴンに変化(チェンジ)する。

 

 そして、右手に紫色の魔宝石から削り出された指輪を嵌めた。

 

 この指輪は、ファントム・オーガを倒した後、笛木の家を調べていた木崎警視から受け取った、言わば笛木の形見の指輪だった。

 

 ハンドオーサーを右側に傾ける。

 

 

『ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー! ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!......』

 

 

 待機状態を意味する音声コールが鳴り響く。

 

 一瞬の躊躇いの後、ウィザードは指輪をハンドオーサーに翳した。

 

 

『エクスプロージョン、プリーズ』

 

 

 音声コールと共に右手を前に突き出す。すると、グリズリーの周囲に激しい爆発が起こった。

 

 まともに喰らい吹き飛ばされるグリズリー。転がっていった先には、メラが立っていた。

 

 

「ありがとウィザード♪ 後でチューしてあげる♪」

 

「それは勘弁して欲しいね。ま、気持ちだけ受け取っておくよ」

 

 

 ウィザードはいざというときの為に変身は解除せずにラン達の待機している場所に向かう。

 

 

「良いのか?」

 

「あぁ。残念だが、俺のショーはここまでだ。ここからは…メラのショータイムだ」

 

 

 そこからはメラの一方的なお仕置きだった。

 

 ウィザードの攻撃によって既に弱っていた事を差し引いても、メラは強かった。

 

 グリズリーの巨大な体は、強大なパワーがまったく機能せず、ただの的でしかなくなっていた。

 

 メラは全身に炎を纏い、グリズリーを攻撃する。

 

 流石に危険を感じたグリズリーは、逃走を計ろうとした。

 

 

「逃げるの? じゃぁ、止め!」

 

 

 メラは両手を頭上に翳す。そこから巨大な灼熱の球体が出現した。

 

 

「ひ…ひぃぃぃぃ! 助け…」

 

「喰らえ、『灼熱の隕石(メテオフレア)』!」

 

 

 メラの怒りの一撃を受けたグリズリーは、断末魔の叫びと共に消滅した。

 

 

「終わったか…」

 

「ふぃ~」

 

 

 一息ついて変身を解除するウィザード。そこにメラが近づいて来た。

 

 

「任せてくれてありがと♪」

 

 

 そう言って晴人の頬にキスするメラ。

 

 

「……え?」

 

「おうおう、お熱い事ですなぁウィザード」

 

 

 ダクが茶化す。見ると、全員がニヤニヤしていた。

 

 だが、忘れてはいけない。メラが幼女体型だということを…。生憎、晴人にそんな趣味は無かった。

 

 戦闘が終了し、一同は改めて再会を喜んだ。

 

 しばらくしてから、ランが口を開く。

 

 

「じゃあ、隠れ家に行くか」

 

「そうだね。こんな所に長居は無用だ」

 

 

 ランの提案にラドが賛成する。その中で晴人が手を上げた。

 

 

「あの~俺は行っても良いのかな?」

 

「もちろん、歓迎するで~! もうウチら仲間やん!」

 

「…歓迎…」

 

 

 おずおずと聞いた晴人に、満面の笑みで答えるサン。アクアも無表情だが歓迎してくれるようだ。

 

 一同は足並みを揃えて隠れ家に向かった。

 

 隠れ家は街から少し離れた郊外にあった。

 

 晴人が想像していた廃墟とは違い、レンガ造りのちゃんとした家だった。

 

 

「へぇ~。意外と普通の家なんだな」

 

「偏見だぞソレ。廃墟とかだったらいかにもですぐにバレるだろ?」

 

「そういうもんかね」

 

「ハルト、ここが我輩達の隠れ家『アルカンシエル』だ」

 

「へぇ~、ネーミングぴったりじゃん」

 

「さぁ、入った入った!」

 

 

 ランに急かされ、晴人は隠れ家の中に入った。

 

 隠れ家の中は案外普通の構造になっており、パッと見では隠れ家には思えなかった。

 

 

「ここは普通の生活を送るスペースだ。ホントの隠れ家は地下だよ」

 

 

 そう言って床を指差すラン。晴人は大体予想していたのであまり驚かなかった。

 

 しばらくリビングの様な少し広いスペースで寛いでいると、玄関の扉が開き誰かが入って来る。

 

 気配は段々とリビングに近づいて来た。

 

 リビングの扉を開き一人の少女が入ってくる。

 

 その少女は、最初晴人の姿に驚いていたが、やがて笑顔を見せて口を開いた。

 

 

「ただいま。お客さん来てるんだね、こんにちは♪」

 

「おかえり。さっき私達を助けてくれたハルトだって…どうしたハルト?」

 

 

 晴人は帰ってきた少女を見て固まっている。それは、あまりにも知り合いにそっくりだったからだ。

 

 いや、そっくりという言葉は語弊がある。まさに生き写しだったのだ。

 

 

「…コヨ…ミ…?」

 

 

 グレムリンの攻撃によって消滅した筈の人物。

 

 自分が魔法使いとなるキッカケを作り、自分に魔法使いになる事を薦めた人物の娘。コヨミだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(続く…)

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