仮面ライダーウィザード 【異世界奮闘記】   作:Mr.K

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第三話

 暗闇の中に佇む一人の女性、ファントム・リヴァイアサン。

 

 セミロングの青い髪。深海の様に深く美しい青い瞳。美しくも鋭い顔立ち。

 

 どこか儚げなその視線は、暗闇の中心を見据えている。

 

 髪の色と同じ青のドレスを着ているリヴァイアサンは、その口をゆっくりと開いた。

 

 

「計画通り、グリズリーは指輪の魔法使いに倒されました。次はどうされますか?」

 

「そうか…では次から本格的に殲滅する。グリズリーの戦闘でウィザードのデータは完全に揃った。ウィザードを消すことなど容易い」

 

「おっしゃる通りですオロチ様。すぐに次の刺客を送ります」

 

「理想の為に…頼むぞリヴァイアサン」

 

「仰せのままに、オロチ様」

 

 

 リヴァイアサンは声が発せられている暗闇に向かって一礼し、踵を返した。

 

 幕で遮断された部屋から出たリヴァイアサンは、廊下を歩き、日の光が差し込む礼拝堂の様な部屋に入る。

 

 その部屋には先客が居た。灰色のロングコートを羽織った茶髪の男だ。

 

 

「あら、来てたの?」

 

「リヴァイアサンか…相変わらずオロチにベッタリか?」

 

「「様」を着けろバジリスク! オロチ様を愚弄する気か!?」

 

 

 リヴァイアサンが怒鳴る。バジリスクと呼ばれた男は、それを鼻で笑うと立ち上がった。

 

 

「別に愚弄しちゃいないさ。オロチだって無理に様を着ける必要はないって言ってるし、好きに呼ばせてもらうぜ」

 

「貴様!」

 

「熱くなるなよ。お前の取り柄は冷静さだろ?」

 

「くっ…」

 

 

 自分のペースを乱されたリヴァイアサンは歯噛みする。この男にはいつもペースを乱される為、リヴァイアサンは好きではなかった。

 

 

「お前、グリズリーを捨て石にしたらしいじゃねーか」

 

「勘違いするな。奴が任務に失敗しただけの事だ」

 

「指輪の魔法使いか? そもそも、次元の扉を出現させたのはナイトメアだろ?

 奴はどこだ? お前の部下じゃねーか」

 

「さぁ。私にも奴がどこに居るのかは知らない」

 

 

 リヴァイアサンは首を横に振る。

 

 

「ところで、貴方は今まで何をしてたの?」

 

「ちょ~とな。俺は俺で計画があるのさ」

 

 

 バジリスクの言葉にリヴァイアサンはあからさまに顔をしかめた。

 

 

「オロチ様の計画に従わないと?」

 

「そうは言ってねぇ。だが、今回は俺も独自に動かせてもらうだけだ。オロチ"様"の理想を叶える為にな」

 

 

 バジリスクはそう言ってその場から立ち去る。残されたリヴァイアサンは、しばらくバジリスクの後ろ姿を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、隠れ家【アルカンシエル】では、コヨミの登場で晴人が呆然としていた。

 

 

「コヨミ…何で?」

 

「え? あなた、私を知ってるの?」

 

 

 可愛らしく小首を傾げるコヨミ。仕草、表情、声色、性格…全てが晴人の知るコヨミだった。

 

 今はもう会うことが出来ない懐かしの人物と同じ姿の少女の登場に、晴人は混乱した。

 

 頭では別人だと解っていても、目から入ってくる情報がそれを受け入れない。

 

 

「なぁハルト。お前コヨミを知ってんのか?」

 

「……まぁね。正確には、俺が居た世界の知り合いに生き写しなんだよ」

 

「へぇ~珍しい事もあったもんだな」

 

「ここは俺にとって異世界だ。別に不思議じゃないさ…それより、詳しい話を聞かせてくれ」

 

 

 無理矢理納得させた晴人は、ランに説明を促す。

 

 

「そうだな。実は――――」

 

 

 ランは前置きしてから話始めた。

 

 

 

 

 

 時は遡り一年前、平和そのものだった【ヴィガルニア】に突如として邪悪な闇が舞い降りた。

 

 自らを【オロチ】と呼称するその闇は、【ヴィガルニア】の人々を混乱と恐怖のドン底に陥れた。

 

 僅か一日で【ヴィガルニア】最大の王国を蹂躙したオロチは、何人かの国民を捕らえて姿を消した。

 

 その後、連れ去られた人々を見た者は一人も居ない。

 

 しばらく後にとある山奥で、赤い光といくつかの小さな紫の光を見た者が数人居た。

 

 その目撃者の話では、その小さな紫色の光の数は、連れ去られて行方不明になった国民の人数と同じだったという。

 

 その更に数日後、連れ去られた一人の男性が王国の村に帰って来た。

 

 彼の名はハデルヤ。しがない鍛冶屋の息子だった。

 

 彼の両親は大変喜んだ。

 

 

「無事だったんだなハデルヤ!」

 

「心配したのよ! 一体何があったの!?」

 

 

 涙を流しながら語りかける両親。その中心にある息子の邪悪な笑みに気づかずに…。

 

 

「とにかく無事で良かった」

 

「無事? 笑わせんなよ人間風情が…。ハデルヤは絶望して死んだ。俺というファントムを産み出してなぁ!」

 

 

 そう叫ぶと同時に姿を変える。その姿は、怪物そのものだった。

 

 

「俺はフェンリル。貴様らを葬るファントムの名だ、覚えておけ!!」

 

 

 その後、その村で村人を見た者は居ない。

 

 その村を訪れた者は語る。【絶望の村】だった、と。

 

 

 

 

 

「……【絶望の村】、か…」

 

 

 ランの話が終わると、晴人は呟いた。

 

 

「【絶望の村】はこの近くにあるのさ…」

 

「へぇ~。この近くにあるんだ」

 

「そして夜な夜な、村人達の苦しそうな呻き声が…」

 

 

 そこまで言うと部屋の明かりが突然消える。そして晴人の耳元で…。

 

 

「うぅぅぅぅぁぁぁぁ……」

 

 

 低い呻き声が響いた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 悲鳴を上げる晴人。そこで部屋の明かりが点いた。

 

 晴人が辺りを見渡すと、ニヤニヤと笑っているランや他の面々。

 

 サンに至っては、床を拳で叩いて爆笑している。

 

 

「お前ら…」

 

 

 晴人のこめかみに青筋が浮かぶ。

 

 

「怪談話は夜にやるもんだぜ」

 

 

 晴人はそう言って右手に指輪を嵌める。黒色の魔宝石から削り出された指輪だ。

 

 ベルトのバックル状態のハンドオーサーに翳した。

 

 

『ホラー、プリーズ』

 

 

 正面に出現した黒い魔方陣から、靄と共に数々の悪霊や怨霊の幻影が現れた。

 

 パニックになる一同。晴人はそれを見てイタズラっ子の様にニヤリと笑った。

 

 

「おかえしだ。これがホントの心霊体験ってね♪」

 

「冗談きついよハルトぉ~!」

 

 

 メラが両目に涙を溜めて口を尖らせる。ヒュウカ達女性陣も涙目だ。

 

 

「貴様の魔法は洒落にならん!」

 

「アレって、君の居た世界の幽霊たちでしょ? けっこう怖いじゃん…」

 

「…同意…」

 

「ホンマ心臓止まるかと思たで! 冗談も大概にせぇや!」

 

「悪い悪い。ちょっとやってみたくなってね」

 

 

 イタズラっぽく微笑む晴人。

 

 使用した指輪は【ホラーウィザードリング】。黒い魔宝石から削り出された指輪で、使用すると魔力量に応じた数の幽霊が出現する効果がある。戦闘向けではない指輪だ。

 

 しばらくして落ち着きを取り戻した一同は、各々自分のやるべき事をし始めた。

 

 

「え? メラが料理するのか!?」

 

「ぶぅぅぅ! 失礼だぞぅ! こう見えても、私けっこう上手なんだからね!」

 

「まぁ、私も一緒に作るから大丈夫ですよハルトさん♪」

 

「そっか、それなら安心だ」

 

「うぇぇぇぇぇぇん!」

 

 

 それからしばらく隠れ家【アルカンシエル】には、メラの泣き声が響いていた。

 

 数分後、妙に張り切ったメラと、そんなメラに若干引いているヒュウカは料理を作っていた。

 

 

「む~。目にもの見せてやるんだからぁ!」

 

 

 妙に気合いが入っているメラ。どうやら晴人に言われた言葉がよほどショックだったようだ。

 

 

「どーしよアレ。ちょっとからかい過ぎたかな?」

 

「気にせんでええよ。いつもの事やから」

 

 

 ちょっとやり過ぎたと後悔している晴人に、サンが優しく語りかける。

 

 

「あの娘のポジションは弄られキャラやねん。それに、メラはハルトが気に入ってんねんで?」

 

「え?」

 

「あん時も「ウィザードと遊べる!」言うて、ダクの制止も聞かんと会いに行ってしもて…ダク(なだ)めんの大変やってんで?」

 

「なるほど。これは謝るべき…なのか?」

 

「別に謝らんでもええよ。ハルトの所為や無いからな」

 

「仲…良いんだな」

 

「ハルトは居らんの? 元の世界で帰りを待ってる人は…」

 

 

 サンの言葉で晴人の脳裏に【面影堂】の面々が過る。

 

 凛子、瞬平、輪島のおっちゃん…。そして、いつしかライバルであり戦友でもある仁藤。

 

 

「今頃心配してるかな…みんな」

 

「帰りたくなった?」

 

「いや。まだ帰る訳にはいかないよ。ファントムを倒すまでは…ね」

 

「ふぅん。頼りにしてるで~魔法使いさん♪」

 

「任せて。俺が最後の希望だ」

 

「頼もしな~」

 

「もし…」

 

「え?」

 

「もし、絶望しそうになったら……俺が希望になってやるよ」

 

 

 笑顔で右手に嵌められた指輪を前に翳し、そう宣言する晴人を見て、サンは顔を赤らめた。

 

 その様子を影から見ていたラドとダクは…。

 

 

「ねぇダク…ハルトって女たらしなのかな?」

 

「かもな。しかも天然女たらしときたもんだ。羨ましい~」

 

「ダク…キャラが壊れてるよ…」

 

 

 そんなやり取りをしている二人だった。

 

 そうこうしている間に、無事に料理が完成したようだ。

 

 メラとヒュウカの二人が次々と食卓に料理を運ぶ。

 

 晴人とサンも手伝い、瞬く間に食卓は料理で埋め尽くされた。

 

 

「多いな。短時間でこれだけの量を作れるとは…相変わらず流石だな二人とも」

 

 

 ダクが二人を労う。全員が食卓に揃った時点で、夕食が開始された。

 

 まず晴人は、卓上の中央に置かれている大皿に手を伸ばす。そこには、唐揚げが置かれていた。

 

 

「ドーナツも美味いけど…こっちも中々だね」

 

「せやろ!? メラが作る唐揚げは美味しいんや!」

 

「そんな誉めても何も出ないよぅ!」

 

 

 食卓を笑いが包んだ。

 

 晴人はコヨミが普通に食事しているのに驚いた。

 

 やはりここは世界が違うのだと改めて実感する。例え世界が変わっても、この笑顔は守り抜こう、晴人そう心に誓った。

 

 しばらくして食事を終えた一同は、少し話をしたあと就寝した。

 

 

「ベッドはこれを使ってくれ。何かあったら私に言ってくれよ」

 

「ありがと。じゃ、おやすみラン」

 

 

 晴人は短く返事をして横になる。今日は色々な事があって疲れたようだ。

 

 横になってしばらくすると、晴人は静かな寝息をたて始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらい寝ていただろうか…。晴人は誰かに名前を呼ばれてふと目を覚ました。

 

 

「…………ここは?」

 

 

 晴人は自分が居る場所に驚く。そこは【アルカンシエル】のベッドの上では無く、辺り一面のお花畑だった。

 

 

「………何で?」

 

 

 呟く晴人。その疑問も当然と言える。

 

 起き上がった晴人は辺りを見渡す。しかし、人っ子一人居ない。

 

 

『晴人…』

 

「!?」

 

 

 その時、晴人は自身を呼ぶ声を聞く。その声は、晴人がよく知る人物の声だった。

 

 

「コヨミか! どこに居る!?」

 

『聞いて晴人。今、【ヴィガルニア】は危機に瀕してる』

 

「知ってるよ。ファントムだろ?」

 

『ただのファントムじゃないわ』

 

「どういう意味? ただのファントムじゃないって…」

 

『最強最悪のファントムよ。名前は【オロチ】』

 

「オロチ……」

 

『気をつけて晴人。それから、【ヴィガルニア】を救って。貴方は最後の希望よ』

 

「わかったよコヨミ。俺が必ず救う。だから安心して眠ってて」

 

 

 その言葉に安堵するかのように、コヨミの声は気配を消した。

 

 同時に晴人は強烈な眠気によって、再び眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 【アルカンシエル】のベッドの上で晴人は目を覚ました。

 

 あれは夢だったのだろうか……。目を閉じると鮮明に脳裏に浮かぶ先ほどの光景。

 

 出てきたコヨミは、晴人がよく知るコヨミだった。

 

 おそらく現実と夢が融合したものだったのだろう、そう結論付けた晴人は、コヨミの言葉を思い出す。

 

「最強最悪のファントム」……コヨミは確かにそう言った。

 

 

「……オロチ……か…」

 

 

 晴人の呟きは闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝。柔らかな日射しに照らされ、晴人は再び目を覚ました。

 

 

「ふぁぁぁ~~ぁぁ……」

 

 

 大きな欠伸をひとつつくと、ベッドから起き上がる。

 

 リビングに向かうと、既に全員が揃っていた。

 

 

「あ、お寝坊な魔法使いさんが起きて来たで~」

 

「遅いよ晴人ぉ~!」

 

「悪い悪い。おかげで良く眠れたよ」

 

 

 晴人は苦笑いしながら頭を掻く。

 

 

「晴人、貴様はこれからどうするのだ?」

 

「俺? 俺は…その辺をぶらぶらするかな。この世界を見て回りたいからさ」

 

「呑気なものだな」

 

「その呑気さが俺の取り柄さ。夜には戻るよ」

 

 

 晴人はそう言うと、笑みを浮かべて【アルカンシエル】から外に出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシンウィンガーに跨がり、アクセルを噴かす。

 

 

「さぁて、行きますか」

 

 

 晴人はヘルメットを被るとバイクを走らせる。

 

 10分くらいだろうか、ちょっとした広場に到着し、晴人はバイクから降りる。

 

 周りには暖かな日射しの下、多くの人々で賑わっていた。

 

 

「こうやって見ると、ファントムの影響なんか感じられないな……」

 

 

 晴人は近くの噴水の淵に腰掛け、外出の際ランから渡されたドーナツを頬張った。

 

 

「もし、そこのお若い方…」

 

「ん? 俺の事?」

 

 

 ふと顔をあげると、にこやかに微笑む初老の紳士が晴人を見ていた。

 

 

「貴方、指輪の魔法使いさんですか?」

 

「そういうアンタは、ファントムさん…だよね?」

 

「御名答。お初にお目に掛かります。(わたくし)、ファントム・ヤタガラスと申します。以後、お見知り置きを……と言っても、貴方はここで死ぬのですが…」

 

 

 初老の紳士はファントム本来の姿に戻ると、周囲に灰色の石をばらまいた。

 

 それは徐々に形を成していき、ついに二つの角を持つ【グール】と呼ばれるファントムの(しもべ)に変化する。

 

 

「随分と大人数だな」

 

「パーティは多い方が楽しめるのでね」

 

「…なるほど。ファントムにしては良いこと言うじゃん」

 

「お褒めに預かり恐縮です。お礼に、出来るだけ痛くないように殺して差し上げます、よ!」

 

「おっと! はは…せっかちさんは嫌われるぜ?」

 

 

 ヤタガラスの攻撃を躱した晴人は、ベルトを指輪をベルトに翳す。

 

 

『ドライバーオン、プリーズ』

 

『シャバドゥビタッチヘーンシーン! シャバドゥビタッチヘーンシーン!......』

 

『ランド! プリーズ』

 

「変身!」

 

『ドッドッドッドドドン、ドンドッドッドン!』

 

 

 出現した黄色い魔方陣を潜った晴人は、剛力形態(ランドスタイル)に変身していた。

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

「料金は払いませんよ!」

 

「それならツケにしといてやるよ!」

 

 

 ウィザードはそう言ってウィザーソードガンを取り出す。

 

 そしてヤタガラスを切る、斬る、切り裂く。

 

 ヤタガラスは火花を撒き散らしながら転げ回った。

 

 

「く…流石にお強い! ですが!」

 

 

 次の瞬間、ヤタガラスの両目が鈍く輝き、黒い光弾を飛ばす。

 

 

「おっと!」

 

 

 躱すウィザード。だが、その隙にヤタガラスはその場から姿を消した。

 

 

「どこ行った!」

 

「上ですよ!」

 

 

 突如真上からヤタガラスの声が響く。見上げると、まさにヤタガラスが攻撃を仕掛ける瞬間だった。

 

 咄嗟の事で反応出来なかったウィザードは、ヤタガラスの攻撃をまともに喰らう。

 

 

「アンタ、空も飛べるのか!」

 

「カラスが飛べるのは当然ですよ」

 

 

 小馬鹿にしたように笑うヤタガラス。

 

 

「そうか。だが、飛べるのはお前だけじゃないさ!」

 

『ハリケーン! ドラゴン!』

 

『ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!』

 

 

 緑色の魔方陣と共に風のエレメントを纏ったドラゴンの幻影が出現し、ウィザードと一体化する。

 

 絶大な風の魔力が、ドラゴンの咆哮と共にウィザードの姿を変えた。

 

 頭部のアルターベゼルハリケーンは通常(ハリケーン)スタイルと同様に逆三角形。両肩には逆三角形の封印石が追加されている。

 

 胸部には、ウィザードラゴンの顔を模した装甲が施されている。

 

 その身に宿すエレメントと同じ、緑一色のウィザードローブ。周囲に荒れ狂う風を従えた敏捷形態(ハリケーンスタイル)の強化形態・風を司る魔法使い(ハリケーンドラゴン)がその姿を現した。

 

 ウィザードはウィザーソードガン・ソードモードのハンドオーサーを起動させ、右手の指輪を翳した。

 

 

『コピー、プリーズ』

 

 

 魔方陣と共にウィザードの左手にウィザーソードガンがもう一振り現れる。

 

 

「お前に構ってる時間は無くてね。悪いが一気に決めさせてもらう!」

 

 

 そう言うと、ウィザードは再びウィザーソードガンのハンドオーサーを起動し、指輪を翳した。

 

 

『『ハリケーン! スラッシュストライク!』』

 

『『ビュー、ビュー、ビュー! ビュー、ビュー、ビュー!......』』

 

 

 音声コールと同時に二振りあるウィザーソードガンの刀身が風を纏う。

 

 

「はあっ!」

 

 

 短い気合いと共に振られたウィザーソードガンから風のエレメントを纏う斬撃が放たれる。

 

 その斬撃は寸分の違いもなくヤタガラスを直撃した。

 

 だが、ヤタガラスは吹き飛ばされた程度でまだ倒されてはいない。

 

 ウィザードは再び左手の指輪を変えた。

 

 

『ランド! ドラゴン!』

 

『ダン、デン、ドン、ズドゴーン! ダン、デン、ドゴーン!』

 

 

 黄色い魔方陣と共に土のエレメントを纏ったドラゴンの幻影が現れる。

 

 咆哮を上げながらウィザードと一体化すると、ウィザードの姿がまた変わった。

 

 力強さを感じさせる四角形のアルターベゼルランド。両肩には四角形の封印石が備わり、胸部にはウィザードラゴンの顔を模した装甲が施されている。

 

 黄色のウィザードローブはその身に宿すエレメントを十分に表現している。

 

 大地を司る魔法使い(ランドドラゴン)……ウィザードの剛力形態(ランドスタイル)を強化した姿である。

 

 ゆっくりと構えを取るウィザード。

 

 その視線はヤタガラスをしっかりと捉えていた。

 

 

「やれやれ。その姿で空を飛べる私とやり合うつもりですか?」

 

「いくらでも手はあるんでね!」

 

『チョーイイネ! グラヴィティ、サイコー!』

 

 

 ベルトに翳した指輪に込められた魔法が発動する。重力を操るその魔法は、ヤタガラスの動きを完全に封じた。

 

 

「フィナーレだ!」

 

『チョーイイネ! キックストライク、サイコー!』

 

 

 右足の下に魔方陣が現れ、土のエレメントを纏う。

 

 

「やられる訳にはいきません!」

 

 

 瞬間、ヤタガラスはその身を翻して姿を消した。

 

 

「くっ……逃がしたか」

 

 

 変身を解除する晴人。気付けば、周りにはかなりの人だかりが出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里離れた山の中にひっそりと聳える廃墟と化した古城。そんな古城の中に、ヤタガラス(人間形態)が静かに座っていた。

 

 

「随分と勝手な真似をしてくれたみたいね……ヤタガラス!」

 

「ほぅ。リヴァイアサンですか……これは珍しいお客様ですね」

 

「貴様……何故オロチ様の作戦に従わない!?」

 

「お言葉ですが、私はバジリスク様の指示に従っただけです。オロチ殿に逆らうつもりは毛頭ありませんが、従うつもりもまたありません」

 

「貴様っ!」

 

 

 リヴァイアサンは怒りを露にする。彼女にとって、ヤタガラスはバジリスクと同様に嫌な相手だった。

 

 

「まぁまぁ、方法は違えど我等の最終目的は同じ。少しは信用して欲しいものです」

 

「……ふん、まぁ良い。それで? ウィザードはどうなってるの?」

 

「えぇ、()()彼なら…倒すのも容易いかと」

 

「そ。じゃぁそっちは任せるわ」

 

 

 リヴァイアサンは踵を返すと再び闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(続く…)

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