ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第十話

「まったく、計画を漏らしてしまった上に勧誘も失敗するとは……今日の僕は散々だ」

 

「ご託はいい、とっとと仕込みでもなんでも終わらせろ。待ってやるから」

 

「それではお言葉に甘えて……『おお 地の底に眠る死者の宮殿よ、我らの下に姿を現せ』」

 

アーウェルンクスの詠唱が始まり、それと同時に彼の巨大な魔力が膨れ上がる。

 

地面を蹴り、宙を舞いながら苦もなく上級攻撃呪文を完成させた。

 

 

「挨拶代わりだよ。『冥府の石柱』」

 

 

アーウェルンクスの背後上空より、突如として大質量の石柱が複数出現。

 

総数五本にも及ぶ巨大な石柱は、大和だけでなく背後のアリカとテオドラ共々、圧砕せんと迫り来る。

それを、

 

 

「轟け、天譴」

 

 

大和は迎撃を選択。

 

大質量の石柱を、それ以上の規模を誇る刀をもって爆砕する。

轟音を響かせ、打ち砕かれた岩の塊が三人の周囲に突き刺さった。

闘技場のように障壁など存在するわけもなく、テオドラは目の前で始まった『殺し合い』の重圧に押されて蹲る。

 

『冥府の石柱』を砕いた刀を返し、その一撃にて空中のアーウェルンクスを捉える。

 

だが、

 

 

「その防ぎ方は失敗だったね」

 

 

まき散らされたのは臓腑ではなく、岩の欠片。

 

上半身と下半身を分断されたアーウェルンクスは、地面へと落ちる際に砂と化した。

 

 

「『|石の槍(ドリュ・ペトラス)』」

 

 

周囲に突き刺さった岩石群。その中の一つから大和の頭めがけて鋭い石柱が飛来する。

 

大和は首を傾けることで回避するが、その石柱から石柱が生え、避け続ける大和をまるで茨のような槍が追い続ける。

 

 

「二人とも、伏せていろ」

 

 

石の槍は周辺の岩石からどんどんその数を増しており、石でできた檻は物理的に回避ルートを潰している。

 

そこで大和がとった方法は単純明快。

 

全てを薙ぎ払う、である。

 

巨人の腕と刀は、咄嗟に地面に伏せたアリカとテオドラの上を通り過ぎ、まるでおもちゃのように周りの岩石を吹き飛ばしていく。

 

だが、アーウェルンクスの攻撃は止まらない。

 

「『千刃黒耀剣』」

 

まき散らされた石の礫のことごとくが黒き刃となり、三人を包囲する。

 

「——一斉射出」

 

アーウェルンクスに躊躇いはない。

この男が敵に回れば、自分たちの主以外に太刀打ちできるものがいない。

今回の任務は重要人物二人の拉致だったが、危険度で言えば大和の方が遥かに高い。

 

故に、魔法が通じぬアリカはともかく、テオドラ一人くらいなら死んでも構わない、という気で攻撃している。

大和の意識をテオドラを守ることに使わせるために。

 

「唸れ、灰猫」

 

大和の持つ刀の刀身が崩れ、灰のように空中を舞う。

 

灰猫とは、粉々になった刀身が相手を切り刻むという応用性の高い斬魄刀であるが、この状況でテオドラを守るには一手足りない。

 

「破道の五十八——嵐」

 

大和は続けてその一手を打つ。

詠唱とともに、大和たち三人の周囲を竜巻が覆う。

 

台風の目の中に入り込む形となった三人だが、この鬼道にアーウェルンクスの一斉射出から身を守る防御力はない。

 

 

しかし、そこに灰猫が加われば話は別だ。

 

 

灰猫は嵐の風に乗り、まるで鉄のカーテンのような防御壁に姿を変える。

 

アーウェルンクスの千の刃はそれを突破せんと試みるが、その風に触れた刃は例外なく刻まれ、削られ、風化していき、最後にはその嵐に吸収されていった。

 

なんとか危機を逃れ、安堵するテオドラの顔に影が落ちる。

 

 

「上ががら空きだよ、五木大和。『万象貫く黒杭の円環』」

 

 

咄嗟に上を見上げたテオドラの目に映るのは、無防備な上空から放たれる無数の黒杭。

下は地面、そして横は嵐。逃げ場は存在しない。

 

 

「——舞え、袖白雪(そでのしらゆき)」

 

 

解号と共に、大和の刀が再び変化。

そして現れた、刀身も鍔も柄も全て純白の斬魄刀に、テオドラは危機的状況を忘れて目を奪われる。

 

 

「|初の舞(そめのまい)——|月白(つきしろ)」

 

 

大和が刀で地面に円を描き、詠唱を終えた瞬間、その円の範囲内の天地全てが凍りついた。

 

無論、黒杭もその氷結領域から逃れることはできず、凍り、粉々になって砕ける。

 

「これで終わりか?」

 

「まったく……本当に、君を引き入れることができなかったのが悔やまれる」

 

「なら、今度は俺から行くぞ」

 

大和は袖白雪を解除。

刀を半回転させ、逆手に持ち帰ると同時、大和の体がブレる。

 

 

「尽敵螫殺(じんてきしゃくせつ)」

 

 

その言葉はアーウェルンクスのすぐ背後から聞こえた。

 

 

「雀蜂」

 

 

まさに一瞬、回転をかけた瞬歩『閃花』により回り込まれたアーウェルンクスだったが、それからの大和の攻撃を右手へのかすり傷で済ますことができた彼は、やはり超一級の実力者だった。

 

(今のは瞬動!? いや、途中で軌道を変えることができる瞬動など聞いたことがない!)

 

咄嗟に掌に生み出した石の剣で、大和の新たな斬魄刀——右手中指に付けたアーマーリング状の刃を防いだ。

その際、剣を持った右手にかすり傷を負ったが、それは戦闘に支障のない程度。

 

そのはずだったが、

 

 

「なんだ……これは」

 

 

アーウェルンクスの右手に出現した蝶の紋章。

別に体に異常は感じない。

魔力が減少したわけでもないし、毒を打ち込まれたわけでもない。

 

しかし、右手に存在する蝶の不吉さは、アーウェルンクスに二の足を踏ませた。

 

「その紋章が気になるか?」

 

「……まあね、どうせロクなものじゃないんだろうけど」

 

「正解だ。その紋章は『蜂紋華(ほうもんか)』といってな、その気になる効果だが」

 

大和は隣に積み上がった瓦礫に、雀蜂を刺す。

 

「この斬魄刀に傷つけられた位置に、蝶の紋章が浮かび上がる」

 

アーウェンルクスの右手同様、蜂紋華が出現した。

 

「そして、同じ箇所をもう一度傷つければ——」

 

蜂紋華の中心を、雀蜂で刺す。

 

 

その瞬間、蝶の紋章が巨大化し、瓦礫を飲み込んだ。

 

 

「——な? ロクなもんじゃねぇだろ?」

 

「ッ!」

 

再び瞬歩にて接近、そのまま近接戦闘に移行するが、元々アーウェルンクスは戦士よりも魔法使いタイプであるのに対し、大和は近接が主流。

 

さらに、右手の蜂紋華をかばいながら戦わなければならないアーウェルンクスは苦戦を強いられる。

 

「はっ、はあっ、……くっ」

 

「これで右手のを合わせて、もう五箇所か。そろそろ限界だろ?」

 

息切れするアーウェルンクスと、涼しい顔をした大和。

 

最早、勝敗は明らかだった。

 

「確かに……これは少しやばいかもね」

 

でも、と続けるアーウェンルクス。

 

 

「僕は慎重だから、保険はかけておくタイプなんだ」

 

 

そう嘯き、懐から四枚のカードを取り出して、招喚の言葉を唱える。

 

その言葉に反応したカードは発光し、彼の四人の従者を呼び出す。

 

 

 

「一人一人が『紅き翼』級の実力者だ。それぞれ火、風、氷、影のエキスパート。君も少しは手こずってくれるよね?」

 

 

 

そして彼らは自分たちにできる最大の攻撃を放つ。

 

『燃える天空』

 

『千の雷』

 

『こおる大地』

 

『千の影槍』

 

『引き裂く大地』

 

一人に対して使う規模の魔法ではない。

 

五つの魔法、そのどれもが対軍勢用魔法。

 

圧倒的練度で放たれる、それらの攻撃は全てを灰にし、焦げ尽くし、凍てつかせ、串刺しにし、大地の力で飲み込む。

 

 

 

「なるほど。確かに、これはちょっとキツイ」

 

 

 

万象一切灰燼と為せ。

 

 

 

「でも——ピンチと言うほどでもないな」

 

 

 

——流刃若火。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げたか……まあ妥当な判断だな」

 

刀をひと振り、解除して鞘に戻す。

 

「それにしても王女さん、アンタ胆が座っているな。普通はそこのじゃじゃ馬姫みたいになるはずだが」

 

魔力や気の飛び交う戦闘を間近で見せられたせいか、テオドラは気を失っていた。

 

そして、そのテオドラを平然と支えるアリカ。

 

 

「ふん、普通の戦闘ならばいざ知らず、其方の戦いなど見ても怖くなるわけがない。そこらの子供が喧嘩しておる方がわらわには恐ろしいわ」

 

 

「ああ?」

 

 

「まだわからんか? 人を殺すのが怖くて、怯えながら剣を振っておる其方など、恐ろしくもなんともないわ」

 

 

「——おい、テメェ」

 

 

大和がアリカに掴みかかる。

 

そしてその時、

 

 

「五木ヤマトッ! 姫さんから手を離しやがれッッ!!」

 

 

ナギ・スプリングフィールドの咆吼が響く。

 

 

大和はその声を聞きながら、またややこしいことになった、とため息をついた。

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