ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

13 / 39
第十一話

「なんじゃ、これが『紅き翼』の秘密基地か。ただの掘っ立て小屋ではないか!」

 

「そーだそーだ。こちとらゲストだぞ。VIPだぞ。もっと待遇よくしやがれ」

 

「……おい、ヤマトとじゃじゃ馬姫。今の俺たちはお尋ね者なんだが、そこんとこ理解してんのか?」

 

「うるさいのじゃ筋肉ダルマ。闘技場でヤマトにけちょんけちょんにされたくせに」

 

「よし、俺って今喧嘩売られてるよな? だったら買っていいよな?」

 

「助けてなのじゃヤマトー! 筋肉ダルマが襲ってきたのじゃー!」

 

「あ、テメェ卑怯だぞ!」

 

「よし任せろ。焼死、凍死、圧死、溺死、感電死、ショック死、窒息死、衰弱死、野垂れ死に、どれがいい?」

 

「最後のひどいな!」

 

「ふふふ、楽しそうですね。ねぇ詠春?」

 

「そうか……?」

 

和気藹々(?)に行動を共にする、大和たちと『紅き翼』。

 

 

 

アーウェンルクスとの戦闘を終えた後、『紅き翼』は王女の危機に駆けつけた。

 

そして、そこにいたのは殺気立った大和に、今まさに掴み掛かられんとしていたアリカ。

 

その状況を見て、リーダーであるナギは即座に割って入ろうとしたのだが。

 

「……」

 

「おや、ナギはまだ拗ねているのですか?」

 

「……拗ねてなんかねぇよ」

 

ニヤニヤと笑うアルビレオ。

 

「まあ仕方ないだろ。かっこよく助けにきたのいいものの、勘違いで命の恩人に攻撃しそうになったんだから」

 

タバコとスーツが似合う渋い男、ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグも同調する。

 

「それにしても、あの張り手は痛そうでしたね……空中で三回転もする張り手なんて初めて見ました」

 

その弟子である、高畑・T・タカミチが無邪気に傷口を抉った。

 

「だああああテメェらうっせええええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

あの時、ナギは大和に向けて突撃。

完全に戦闘態勢に入っていた。

 

大和も、ナギの様子から説得は不可能と判断し、迎撃の姿勢に移る。

 

誤解と勘違いから『紅き翼』との全面戦争になるところだったが、それを止めたのはアリカだった。

 

「心配してくれたのは有難いが、少し落ち着け」

 

「ふもっふ!?」

 

大和に拳を振り上げていたナギの顔面に張り手が炸裂。

 

見事なトリプルアクセルをきめた。

 

(アレ痛いんだよなぁ……)

 

地面に墜落し、痙攣するナギを見下ろす。

 

少し、哀れだった。

 

「ナギ! 勝手に飛び出すな……って、大和君!?」

 

「詠春さん……」

 

続々と『紅き翼』のメンバーが集まる。

 

「何だお前ら、この男とは知り合いなのか?」

 

「ふむ、知り合いと言いますか、なんと言いますか。どちらかといえば裏ボスって感じでしょうか、ガトウ」

 

「裏ボス?」

 

「……以前、グレート=ブリッジで辛酸を舐めさせられた相手ですよ」

 

「コイツが、噂の!? まだ子供じゃないか!」

 

「……子供で悪かったな。俺はもう帰るぞ」

 

気を失っているテオドラをアリカからひったくり、肩に担いで『紅き翼』に背を向ける。

 

 

「待て」

 

「……なんだ。王女さんよ」

 

 

アリカに呼び止められ、嫌々な顔を隠そうともせず振り返る。

 

「先程は助かった。礼を言う」

 

「ああ?」

 

「わらわを助けるつもりはなかったのだろうが、結果的に奴らに捕まることもなかったのも事実じゃ」

 

「あっそ、どーいたしまして」

 

素っ気無く言い放ち、再び歩を進める。

 

「待ってくれ、大和君!」

 

だが、今度は別の人物に呼び止められた。

 

「……なんですか、詠春さん」

 

「君と話がしたい。少しの間でいい、私たちに付いてきてくれないか?」

 

その発言をした詠春に、『紅き翼』から正気か? という視線を向けられる。

 

ちなみに、ナギはまだ痙攣していた。

 

「俺には話なんてないですよ」

 

「君が去った後の、刀子君の様子を知りたくはないか?」

 

 

一瞬、大和の肩が揺れた。

 

 

 

「私も、刀子君も、鶴子に素子ちゃんも、君と話したいことは山ほどあるんだ。頼む、少しだけでいい。時間を私にくれないだろうか」

 

詠春は深々と頭を下げる。

 

「……」

 

大和も詠春も、他の人間もなにも言葉を発しない。

 

その沈黙を破ったのは、

 

「いいではないか、ヤマト」

 

「テオドラ……お前、起きていたのか?」

 

大和の肩に担がれた、テオドラだった。

 

「目が覚めたのはついさっきじゃがの。それでもそこの男との会話は聞いた。別にちょっと話すぐらいよいではないか」

 

「やかましい、ガキは黙ってろ」

 

「なにをーっ! ヤマトだってそんなに変わらないではないか!」

 

いつものじゃれ合いをする二人に、『紅き翼』の面々は呆気に取られる。

 

「ならばわらわが『紅き翼』と行動すればよいのじゃ! そしたら護衛であるヤマトもついてこなければいけないのじゃ! わらわ天才じゃ!」

 

「そうか、なら遠慮なく行ってこい」

 

大和はテオドラをラカンへ投げ飛ばす。

 

美しい放物線を描き、ラカンにキャッチされた。

 

「そんなバカな!? 命にかえても守ってくれるのではなかったのか!?」

 

「誰がいつそんなこと言った」

 

「むがーっ!!」

 

ラカンの腕の中で暴れるテオドラ。

たまに腕や足などがラカンの顎に直撃する。

 

「ちょ、コイツいい加減に離せ! 筋肉臭い!」

 

「お? そんなに俺様の筋肉臭が気に入ったかい? よし、遠慮なく嗅いでいいぞ」

 

「むぎゃーっ!!??」

 

テオドラの絶叫が響きわたる。

 

その間、ずっと詠春は頭を下げ続けていた。

 

「詠春さん……やめてください、貴方がそんなことをする必要はありません」

 

「俺が京都を離れて武者修行する理由のひとつは、君を探し出すことだ。前回は戦場だったが、今回の機会を逃すわけにはいかない」

 

「……」

 

「頼む」

 

このまま断り続ければ、詠春は土下座でもしそうな勢いだった。

 

青山家に仕えていた身分として、居心地の悪さがひどい。

 

「……少しだけです」

 

結局テオドラを放っておくこともできず、大和は一時『紅き翼』と行動を共にすることに決める。

 

 

 

この間、ナギはずっと地面で痙攣していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『紅き翼』の隠れ家に案内された大和は、ナギの威嚇やラカンの挑戦、タカミチの尊敬の視線などを受け流していた。

 

(コイツら、俺が敵だってこと忘れてんじゃねえだろうな……)

 

テオドラはといえば、ラカンとじゃれついていた。

その光景を見た大和はため息をつく。

 

そして、少し離れていたガトウ達が状況の整理を始めた。

 

「つまり、マクギル議員亡き今、連合すら頼ることはできません。我々も敵の罠により、指名手配されてしまいました」

 

「そうか……連合も帝国も、既に奴らの手の内か」

 

「残念ながら」

 

「なるほど、これで世界中が敵に回ったわけじゃな」

 

絶望的な状況であるにも関わらず、アリカの顔には焦燥は見えない。

 

むしろ不敵な笑みすら浮かべる。

 

「だが、まだお主らがおる。一人一人が一騎当千の『紅き翼』が」

 

アリカはナギに正面から向き直った。

 

「我が騎士ナギ・スプリングフィールドよ」

 

「騎士? 俺は魔法使いだけど……」

 

そこまで言ったナギは、周りから『空気読め』の視線を受け、黙り込んだ。

 

「我らに味方はおらぬ。連合も敵。帝国も敵。このままでは世界は奴らに滅ぼされるのを待つだけじゃ」

 

「……」

 

ナギも大和も、その言葉を受け入れる。

 

「誰も頼ることはできぬ。これからもわらわたちが奴らと戦うということは、世界と戦うことと同義」

 

そこでアリカは一度言葉を区切った。

 

 

「——それでも、戦い続ける覚悟がお主にはあるか?」

 

 

そう問いかけられたナギは不敵に笑う。

 

 

「ああ。俺たちはこんなところで折れるほど、ヤワな翼は持ってねぇ」

 

 

その言葉を聞いたアリカも笑う。

 

 

「ならば、我らが世界を救おう。我が騎士ナギよ、我が楯となり、我が剣となれ」

 

 

「へ……まったく、相変わらずおっかねぇ姫さんだぜ」

 

 

そして、ナギは騎士の誓いを立てる。

 

日の出の明かりに照らされたその光景は、まるで物語の中のようだった。

 

 

それを見た大和は思う。

 

自分がかつて目指し、失敗した道を。

 

 

 

——自分は、どこで間違えてしまったのか、と。

 

 

 

 

 

 

 

「すまないな、こんな時間に呼び出してしまって」

 

「いえ」

 

現在は夜。

詠春に呼び出された大和は、隠れ家の外で落ち合った。

 

「まず、君が無事でよかった。あの日に行方をくらませてから、君が無事かどうかもわからなかったからね」

 

「……」

 

「京都を出てから、ずっと一人で旅をしてきたのかい?」

 

「……ええ、旅費は拳闘士の試合とかで稼いでいました」

 

「そうか。まあ、大和君なら問題なかっただろう」

 

「ええ」

 

「……」

 

「……」

 

会話が途切れる。

 

大和が心を開く様子がないのは明白だ。

 

詠春は思わず天を仰ぐ。あの素直な大和がここまで変わってしまったことに。

 

「大和君。あの日に一体何が起きたのか、俺に教えてはくれないか」

 

「……」

 

「いや、何が起きたのかは大体理解している。あの時に君が何を思っていたのか……それを教えてくれないか」

 

詠春の真摯な願いに、大和は首を振る。

 

「……別に、大したことじゃありません」

 

そう告げる大和の顔に、表情は存在しなかった。

 

 

 

「ただ、人のために戦うとか、少し疲れたんです」

 

 

 

「……そうか」

 

詠春は、大和が自分にこれ以上本心を打ち明けてはくれないだろうことを悟った。

 

「とりあえず、君が無事で安心した。できるならば京都に一度戻って、刀子君たちに顔を見せてくれると嬉しい」

 

「はい……」

 

大和は踵を返し、隠れ家に戻っていく。

 

詠春はその場に座り込み、もう一度天を仰ぐ。

 

 

二年前のあの日も、こんなに綺麗な夜空だったな、と思った。

 

 

 

 

 

 

「で、今度は王女さんか」

 

「うむ。お主たちが外に行くのが見えたからな」

 

「……こんなに堂々と盗み聞きしてたのをバラすやつ、初めて見たわ……」

 

隠れ家の小屋の前、部屋に入って寝ようとしていた大和の前に立っていたのはアリカだった。

 

「その点については謝罪しよう。すまなかった」

 

「……いや、別に気づいて見逃してたし、大事なことも話すつもりもなかったしな」

 

大和は特に気にしていない。

そんなことよりも、さっさとベッドで寝たかった。

 

アリカの横を通り過ぎて、小屋の中に入ろうとする。

 

だが、

 

「……おい、なんだよこの手は」

 

アリカの手が、大和の腕を掴んで離さない。

 

「話がある」

 

「断る」

 

アリカの提案を聞く前に却下。

 

内容など簡単に予想できる。

 

「どうせ、『紅き翼』と協力しろって言うつもりだろ? 悪いがパスだ」

 

「先程お主が言っていた、人のために戦うのが疲れたと、そういうことか?」

 

「ああ。心配しなくても、アンタの騎士は強い。俺なんざいなくとも『紅き翼』だけで十分に世界なんざ救えるさ」

 

実際に戦ってみてわかった。

 

ナギ達の力は、まだ伸びる。

 

現在はあのアーウェルンクス達の方が強いだろうが、このまま成長を続ければ、間違いなく追い抜くだろう。

 

「だから、この手を離せ」

 

 

「ふむ、先程は我らの騎士の誓いを羨ましそうに見ていたのでな、てっきりお主も世界を救いたいのかと思ったわ」

 

 

「……っ」

 

無言で腕を振り払う。

 

「わらわはこれでも王族じゃ。人を見る目くらいはある。お主が内心では、人を救いたがっていることぐらい丸わかりじゃ……どうしてそこまで無理をする」

 

図星だった。

 

 

そもそも、戦うことが嫌いなのに、刀を捨てていない時点で語るに落ちている。

 

 

結局、五木大和はまだ、縋っているのだ。

 

刀に。

 

力に。

 

 

 

——この力で、何かを守りたいと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。