「ま、そんなわけで、これからは俺も『完全なる世界』と戦うことにした」
「「「「「「「「……え?」」」」」」」」
明朝、大和の突然の宣言により、『紅き翼』+テオドラは目を丸くした。
そして詠春は、大和の顔つきが昔に近づいていることに気がつく。
「大和君、もしかして……」
「ええ……全部が全部吹っ切れたわけじゃないですけど、少しずつでもいいから、前に進んでいきたいな、と……今まで色々心配かけました」
照れくさそうに頬を掻く大和。
その仕草は紛れも無く、彼の昔からの癖で——
「そうか……良かった、本当に良かった」
それを見た詠春は思わず涙ぐむ。
「え、ちょ、ちょっと待つのじゃ! なんか感動のシーンっぽいのだが、わらわ達まったくついていけないのじゃ!」
テオドラの叫びに同調する『紅き翼』。
「うるさいぞテオドラ。空気読め」
「できるかなのじゃあああああああああ!!」
結局、いつものじゃれ合いになる大和とテオドラ。
一方、『紅き翼』の反応はというと。
「別にいいんじゃないですか? 彼が協力してくれるというならば心強い」
「そうじゃな、実力は保証済みであることじゃし」
「ヤマトと共闘か……燃える展開じゃねえか!」
「お、おい待てよ、アルにお師匠にジャック! コイツはグレート=ブリッジで戦った敵だぞ!?」
概ね同意の意思を見せる『紅き翼』だったが、ナギは異議を唱える。
「ナギ、お前は負けたことを根に持っているだけじゃろうが」
「むぐっ!?」
完全に図星をつかれるナギ。
「まったく、ナギはツンデレですねぇ。心の中では誰よりも彼のことを認めているのに」
「ああ!? テメェぶっ飛ばすぞアル!」
「でもこの前、『あの野郎は絶対に俺が倒す!』って息巻いていましたよね」
無邪気にナギの傷口を抉るタカミチ。
「……お前って気持ち悪いヤツだな、バカフィールド」
「ぐがあががががががあああがが」
大和にトドメを刺され、ナギは床でのたうち回る。
「ヤマトはわらわの護衛をやめてしまうのか!?」
「いや、別にテオドラの護衛をやめる気はねぇし、ましてや『紅き翼』に入るつもりもねぇ。ただ、俺は俺で帝国側から動いてみようってだけだ」
「おお、それならばわらわも異論はないぞ! むしろ協力するのじゃ!」
大和とテオドラの間でも話は纏まった。
「さて、それじゃ帰るぞテオドラ」
「もうなのか? もう少しくらいよいではないか」
「ダメだ。女騎士とかも心配するぞ。お前は一応皇女だろうが」
「一応とはなんじゃ!」
じゃれ合いながらもテオドラは帰還の用意をする。
流石にテオドラも本気で発言したわけではない。皇女である自分の責任というものを理解している。
仕度を終えた二人は隠れ家から外に出る。『紅き翼』のメンバーも見送りをするらしく、外に出てきた。
「あ、そうだ! 記念に全員で写真でも撮りませんか!?」
タカミチが名案とばかりに声を上げる。
「写真ねぇ……俺はいいが、テオドラや皇女さんは立場上マズイんでねえの?」
現在、『紅き翼』は御尋ね者だ。
指名手配犯と親しげに写真を撮るというのは問題ありなので、最終的に大和と『紅き翼』だけで写真を撮ることにした。
「で、なんでお前が隣に来るんだバカフィールド」
「俺だってお前の隣なんてゴメンだっての!」
「もう撮りますから、二人とも喧嘩しないでくださいよ」
結局、大和とナギが顔を背け合うという、微笑ましいようなそうでないような写真しか撮れなかった。
「それでは、これで失礼します詠春さん」
「ああ、君も気を付けてくれ」
「お前らも縁があったらまた会うかもな」
「おう、また闘技場で戦おうぜヤマト!」
「けっ、もう来るんじゃねえよ」
「バカフィールド、お前には言ってない」
「ああ!?」
『紅き翼』との別れをすませ、大和はアリカへと向き直おる。
「王女さん、今回はアンタにも世話になった」
「……立ち直おったのはお主自身の力によるものじゃ。わらわは何もしておらぬ」
「それでも、感謝する」
「……ふん」
アリカは顔を背ける。どうやら照れているらしい。
「あんまりバカフィールドが頼りないなら俺を呼べ。多少は力になろう」
「んだとコラァ!」
「ナギ、もうあなた完璧にチンピラですよ」
そうして大和とテオドラは帝国へと帰還し、『完全なる世界』との抗争に身を投じることになる。
(まだ、あの日の気持ちを完全に取り戻したわけじゃない)
思い返すのは、いつもの場所で、少し気になっていた女の子とした約束。
——誰かを助けたい。
(でも、いつかきっと、取り戻してみせる)
大和は再度己に誓う。
たとえ辛いことがあろうとも、今度は見失わないように。