ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第十五話

 

「……まったく、理不尽なほどの強さだね」

 

「ご託はいい。姫子ちゃんが何処にいるか言え」

 

 

『墓守り人の宮殿』内部にて、ナギがアーウェルンクスを撃破。

 

彼の胸ぐらを掴み、持ち上げる。

 

ナギの体には目立った外傷は無く、相当に腕を上げていることを伺わせる光景だった。

 

「皆さんも終わったようですね」

 

「まあな。多少の怪我は負ったが」

 

「うおっ、詠春お前、刀がやたらとカッコ良くなってねえか?」

 

「四人とも修行を怠っておらんかったようじゃな。まあ、少しヒヤヒヤさせられる場面はあったがの」

 

他の『紅き翼』のメンバーも集結する。

 

多少は消耗しているものの、全員が戦闘可能の状態だった。

 

最早『完全なる世界』に勝ち目は無い。

 

その場にいた誰もがそう考えていた。

 

だが、アーウェルンクスは笑う。心底愉快だと言いたげに。

 

「ふ、ふふふ。まだ、君は僕が黒幕だと思っているのかい……?」

 

 

その瞬間、アーウェルンクス諸共に、ナギの腹部を閃光が貫いた。

 

 

次の攻撃に一番最初に気づいたのは戦闘を行わず、油断なく周囲を警戒していたゼクトだった。

 

「皆の者、上からデカいのが来るぞ!!」

 

ゼクトの声が響きわたると同時、上方から無色の閃光が放たれる。

 

「最強防護(クラティステー・アイギス)!」

 

「障壁展開!」

 

ゼクトは己の魔法の中でも屈指の防御力を誇る楯を呼び出した。

 

アルビレオも、自分の魔力の殆どを障壁に費やす。

 

「月牙天衝!」

 

「瞬閧!」

 

詠春とラカンも、自らの最高の攻撃力を誇る技で閃光を相殺せんと試みる。

 

だが、閃光は止まらない。

 

巨大な閃光はその威力を削られながらも、『紅き翼』に降り注ぐ。

 

ラカンの片腕が吹き飛び、詠春は腹部を数箇所貫通されている。

 

アルビレオは外傷こそ少ないものの魔力が底をつき、一番怪我が少ないのは体力と魔力を温存していたゼクトだった。

 

「な、何が……起きた……」

 

詠春が倒れ伏しながらも、攻撃された方向を向く。

 

「おいおいマジか……アレは、一体何なんだよ」

 

失った片腕を抑えながらラカンが呆然と呟いた。

 

魔法世界人である彼には、目の前にいる敵が『どういった存在』か、うっすらとだが認識できる。

 

一目見ただけでわかった。アレは、自分にとって絶対に敵う者ではない。

 

それこそ、大和の氷輪丸を見た時以上の絶望。

 

黒いローブを着た年齢も性別も不明の存在を、ジャック・ラカンは確かに恐れていた。

 

だが、

 

 

「……はっ、上等だ」

 

 

吐血し、腹部から血を流しながらもナギ・スプリングフィールドは立ち上がる。

 

「おいナギっ! 待て、アイツはやべぇ!」

 

「おいおいどうしたよジャック。怖気付くなんてお前らしくないぜ」

 

口の端から血を流しながらも、ナギは不敵に笑う。

 

「俺には解るんだよ! アイツは俺らに敵う相手じゃねぇんだ!」

 

「……かもな。俺にだって、アイツがヤバいことぐらい解る」

 

それでもナギは諦めない。

 

 

「——けどな、ここで立ち止まってたらあの時と何にも変わんねえだろうがッッ!!」

 

 

大和に敗北したあの時、ナギは何も出来なかった。

 

仲間が傷つけられているというのに、相手に一撃を入れることすら叶わなかった。

 

その屈辱と恐怖はリーダーであるナギに容赦なく襲いかかった。

 

だからあの日の夜、ナギは自らに誓ったのだ。

 

強くなる。

 

あんな思いを、二度としないために。

 

ナギの堂々とした後ろ姿に『紅き翼』の闘志に火が灯る。

 

「……ったく。んなこと言われたら、ビビってる自分が情けなさすぎるだろうが」

 

ラカンは失った左腕を抑えながらも立ち上がる。

 

「リーダーにそこまで言わせてしまったなら、我々も応えねばな」

 

詠春も腹部の怪我を帯で止血しながら、斬月を構える。

 

「ふふふ、今の私では大して力にはなれそうにありませんが……それでも、微力ながら尽くしましょう」

 

魔力切れにより震える膝を強引に立たせて、アルビレオがいつもの笑みを浮かべる。

 

「元よりワシの怪我はこの中で一番浅い。そろそろ出番が欲しかったしな」

 

目立った外傷の無いゼクトが、ナギの隣に立つ。

 

そして、

 

「——よく吠えた、バカフィールド」

 

 

五木大和が、ボロボロの体を引きずりながら現れた。

 

 

「大和君!? その怪我は!」

 

「ちょっと外でソイツにやられましてね」

 

黒いローブの人物、『造物主』を顎でしゃくる。

 

「よう。さっきの借りを返しに来たぜ」

 

右足は折れ、体中から血を流し、刀に寄りかかりながらも大和は戦う意思を見せる。

 

だが、最早近接戦闘は不可能な状態だった。

 

「おいおい、『剣の王』ともあろうものがボロボロじゃねえか。イメチェンか?」

 

「はっ、腹に風穴開けておいて、よくほざく」

 

ナギと軽口を叩きながら、大和は横に並んだ。

 

これが、大和と『紅き翼』が真の意味で手を組んだ瞬間。

 

「詠春さん! 筋肉ダルマ! 敵の注意を引きつけてくれ!」

 

大和の指示が飛ぶ。

 

「はっ、余裕だぜ!」

 

「任せろ!」

 

ラカンはを、詠春は斬月を使って『造物主』へと仕掛ける。

 

だが、二人の攻撃は曼荼羅の如き障壁に阻まれた。

 

「月牙、天衝!」

 

詠春は弐の太刀を織り交ぜながら月牙天衝を繰り出すものの、始解に至って間もない。

 

曼荼羅の障壁を抜けたとしても、『造物主』に致命傷を与えることはできなかった。

 

慣れぬ戦いを続ける内に、怪我のせいでどんどん体力が削られていく。

 

「瞬閧!」

 

ラカンは片腕で瞬閧を使い、圧倒的なまでの破壊力で『造物主』を薙ぎ倒さんとする。

 

しかし、『造物主』が掌をかざすと、曼荼羅の障壁の密度が一気に跳ね上がった。

 

それを見た大和は『造物主』の障壁の特性を理解する。

 

 

(オートで全方位に展開している第一の障壁。さらに掌をかざすことによって数十倍の密度になる第二の障壁。……第二の障壁は、恐らく俺でも突破は不可能だ)

 

 

現在大和はなんでもなさそうに立っているが、実際は気合で体を支えているだけである。

 

間違いなくこの場にいるメンバーの中で一番の重傷だ。

 

接近しての高速戦闘などできるわけもなく、セラスを助ける際に使った鬼道のせいで、気も大して残っていない。

 

だが、

 

「おいバカフィールド」

 

「なんだよ」

 

「お前の全力で、あの野郎をぶっ倒せ」

 

今の彼は独りではない。

 

「……今の俺の最大火力でも、あの障壁を突破する自信はねえぞ」

 

「構わん。俺が一度だけ、アイツにお前の全力を直撃させてやる。だからお前はただ、バカのように全魔力を注ぎ込めばいい」

 

あの、二年前の夜とは違う。

 

「ならば、私たちの魔力も使って下さい。とは言っても、私の魔力はほとんど残っていませんがね。それでも無いよりかはマシでしょう」

 

「……そうじゃな。今一度、お主らに賭けてみるかの」

 

もう、独りで何もかもを背負いこむ必要はない——

 

 

「けっ、この技はテメェにリベンジするためのとっておきだったんだがな! 仕方ねえからここで披露してやるよ!」

 

 

そう叫ぶと同時、ナギの持つ最高品質の媒体である杖に、ナギとアルビレオ、さらにゼクトの魔力が注がれる。

 

杖は発行しながらその形状を変えていき、神をも殺せるかのような槍へと変化していった。

 

大和はそれを見届けると、その一撃を確実に当てるための下準備に取り掛かり始める。

 

 

(通用するのは一回だけ。だが、その一回は絶対に防ぐことはできない)

 

 

大和は刀を抜き、その斬魄刀を呼び出した——

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、二人だけでコイツを抑えんのはキツいぜ!」

 

「大和君達はまだ準備ができないのか!?」

 

ラカンと詠春の二人は『造物主』相手に、時間を稼ぐという無謀な行為を続けていた。

 

既に二人の体には幾重にも傷が刻まれ、流れ出る血が二人の体力を奪っていく。

 

そして、腹部に深手を受けている詠春は、ラカンよりも体力の消耗が激しかった。

 

血を大量に失ったことによる貧血で、詠春は足元の石に躓くという初歩的なミスをしてしまう。

 

「しまっ」

 

その隙を見逃す『造物主』ではなく、無色の閃光が詠春を貫いた。

 

詠春は無言でその場に倒れ伏す。

 

「こんの、クソッタレがああああああああああ!!!」

 

ラカンの反撃。

 

瞬閧を纏った右腕により、『造物主』の横っ面をぶん殴る。

 

収束しきれずに溢れたエネルギーが、ラカンを中心として渦巻いた。

 

「ちくしょうが……」

 

それでも届かない。

 

ラカンが最後に見たのは、片腕で自らの攻撃を完全に防いだ『造物主』と、視界を埋め尽くす無色の閃光だった。

 

 

 

 

 

 

 

前衛の二人を倒し、大和達に向き直る『造物主』。

 

「解せんな……」

 

その黒いローブの奥から男とも女ともとれる声が響く。

 

「お前達はこの世界の真実を知っているはずだ。だというのに何故、そこまでして彼らに味方する?」

 

この世界は作り物。

 

この世界に住む人々も紛い物。

 

なのに、どうして彼らにこだわるのかと『造物主』は問う。

 

「確かに、この世界はまやかしなのかもしれない」

 

大和は刀を前方で回転させる。

 

「でもな、俺が戦っているのは魔法世界人のためじゃねえんだよ」

 

残っている気を、全て刀に注ぎ込む。

 

「ただ俺は、自分自身に胸を張れる俺であろうと決めた。それだけのことだ」

 

そして大和は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべる。

 

「——なんだか、いい香りがするとは思わねえか?」

 

「っ!?」

 

 

——倒れろ、逆撫(さかなで)

 

 

その瞬間、『造物主』の世界が変わる。

 

上が下に、下が上に、右が左に、左が右に。

 

「——これは」

 

「おもしれえだろ? コイツは逆撫っつってな、敵の動作や感覚を上下左右、全て逆にすることができる」

 

『造物主』は左腕を動かそうとする。

 

だが、動いたのは右腕だった。

 

『造物主』は腕を下げようとする。

 

だが、意に反して腕は上がった。

 

 

 

「今だ、バカフィールド! 思いっきりぶちかませッ!!」

 

「う、お、らああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッっ!!!!」

 

 

 

体を思い通りに動かせない『造物主』目掛けて、ナギの全魔力を注ぎ込んだ槍が飛翔する。

 

「成程、上下左右の全てが逆」

 

『造物主』は掌をかざすことにより、障壁の硬さを爆発的に増すことができる。

 

しかし、掌を正確にかざすことができなければ障壁は発動しない。

 

体の感覚の異変に慣れる前に、ナギの槍が『造物主』を貫く。

 

——そのはずだった。

 

 

「——そして、前後も逆か」

 

 

いきなり体の感覚が逆になり、すぐに反応できる生物などいない。

 

なおかつ、上下左右だけでなく、前後までも入れ替わっていることに気付くなど人間技ではない。

 

しかし、『造物主』は反応してみせる。

 

飛翔する槍に向け、正確に掌をかざした。

 

(駄目か!?)

 

ナギ達の顔に絶望が宿る。

 

だが、曼荼羅の障壁が展開され、槍が衝突する瞬間。

 

 

「ああ、一つ言い忘れていたが」

 

 

槍が、前触れなく消滅し——

 

 

 

 

「見えてる方向とダメージを受ける方向も逆だから」

 

 

 

 

 

——背後から現れた雷の槍に、『造物主』は貫かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見届けた後、大和の意識は霞んでいく。

 

元々気合だけで立っていたようなものだった。

 

体が休息を求め、大和も抵抗することなく倒れる。

 

 

——ただ、完全に意識が闇に落ちる前に、ゼクトの声と、ナギの怒号が聞こえた気がした。

 

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