ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第四話

 

「お願いします! 私に斬魄刀戦術を教えてください!」

 

《……はあ?》

 

大和の素性を知った刹那は、刀を相手に土下座するという宗教じみた行為をしていた。

 

まるで祭壇のように岩の上に置かれている大和としては戸惑うしかない。

 

《おい小娘、いきなりどうした》

 

「歴史の長い五木家の中で、最強と言われる大和さんに斬魄刀を教わることができれば、木乃香お嬢様をお守りすることも可能と思いました!」

 

不退転の覚悟を決めた瞳で大和を見上げる。

 

今の刹那の力では、精々野生の獣を相手にすることができるぐらいだ。

 

木乃香を狙う暗殺者はおろか、そこらの見習いにすら勝てるか疑問である。

 

しかし、あの五木大和から直々に斬魄刀を学ぶことができれば、今の自分でもある程度は通用するかもしれない。

 

刹那はそう考えた。

 

「斬魄刀戦術は五木家の秘伝であることを承知の上で、お願いします。私にはもう、これしか……」

 

そう言って、刹那はより一層深く頭を下げる。

 

《……とりあえず頭を上げろ。そんな調子じゃ話もできん》

 

「は、はいっ」

 

刹那が正座の形になったことを確認して、大和は話し出す。

 

《まず誤解の無いように言っておくが……斬魄刀はお前が思っているほど使い勝手のいいものじゃない》

 

「え?」

 

《斬魄刀を使用するには、まず精神世界で本体を屈服させる必要がある。それだけでも並の人間では一苦労だ。しかも、戦闘時の能力は斬魄刀の機嫌によって左右される》

 

「斬魄刀の機嫌……ですか?」

 

《ああ。斬魄刀には意思があり、機嫌もある。ヤツらが使い手に同調しなければ戦闘能力は大きく落ちるんだよ》

 

刹那は初めて聞く斬魄刀の秘密に驚いた。

 

関西の人間が抱く斬魄刀のイメージといえば、その多様性と攻撃力だ。

 

直接的に攻撃する斬魄刀もあれば、火や水といった自然現象を操るものも存在する。

 

そしてそれらの殆どが一般的な術者達よりも高い戦闘力を持っているのだ。

 

斬魄刀こそが関西において最強の戦闘方法だ、という意見も少なくない。

 

 

しかし、現実的にはそんなことはなかったりする。

 

 

斬魄刀は持ち主を選ぶ。

 

たとえ斬魄刀を屈服させるほどの実力があろうと、本体に気に入られてなければ力は半減する。

 

無論、気に入られていれば限界以上に力を引き出すことも可能だが、そんな人間は滅多にいない。

 

基本的に斬魄刀の精神は捻くれており、歪んだ人間を好むという性質があるのだ。

 

 

対照的に、神鳴流ほど安定して戦える戦術はない。

 

 

近距離戦闘はもちろんのこと、飛び道具への対処も充実している。

 

達人であれば遠距離戦も十分に可能である。

 

これが斬魄刀の使い手が少なく、そして神鳴流が広く伝わっている理由だ。

 

大和はそれらの理由を刹那に説明する。

 

《確かに斬魄刀は強いが、それ以上に不安定だ。今のお前には神鳴流の方が相応しいはず》

 

「そうですか……」

 

《逆に、適合率が高ければ限界以上に力を貸してくれることもあるんだけどな。そんなヤツは見たことがない》

 

大和の言葉を聞き、刹那は顔を俯ける。

 

木乃香を守るためには力が必要だが、自分の力を制御できない護衛など百害あって一利なしだ。

 

大和のように完璧に斬魄刀を操るようになるまで、どのぐらいの時間を費やさなければならないのだろうか。

 

それを考慮すると、確かに神鳴流の方が自分には合っている気がした。

 

しかし、

 

《付け加えるなら、俺はほとんどの斬魄刀に嫌われている》

 

「え……?」

 

大和の呟きに、刹那は固まった。

 

「え、そんな、あの大和さんが斬魄刀が嫌われてるなんて、嘘ですよね?」

 

《事実だ。俺は斬魄刀の力を完全には引き出せていない》

 

「ええええええ!?」

 

五木大和と言えば、歴代で最も優れた斬魄刀の使い手として有名だ。

 

その大和が斬魄刀に嫌われているという情報は刹那に大きい衝撃を与えた。

 

《あいつらは基本的に快楽主義者だからな。人助けのために力を振るう俺は、面白みに欠けるんだとよ》

 

「でも、大和さんは自由自在に斬魄刀を使っていた、って……」

 

《それは俺が斬魄刀を屈服させて、無理やり力を引き出していただけだ。本当に適合率が高ければ身に付けている装束が変化したりする。一回も経験したことはないが》

 

「ウチの英雄に対するイメージが崩れていきます……」

 

《真実なんてそんなもんだ》

 

憧れの英雄の思わぬ真実を知り、刹那はへこんだ。

 

《符を使うという手もあるが……近衛家のような魔力も能力も無いお前では、補助に使うのが関の山か》

 

「近衛家の能力、ですか? このちゃ……お嬢様に凄まじい魔力があるのは知っていますが、それ以外にも何かあるのですか?」

 

《ああ。近衛家は先天的に魔力が多い家系だが、それだけじゃない。近衛の血は『招喚』に特化している》

 

「『招喚』……?」

 

《式神に使う、いわゆる鬼などの異形を呼び寄せやすい体質だということだ。近衛家の血を使えば、それこそ『リョウメンスクナ』でも呼び出すことができるだろう》

 

近衛家の血には豊富な魔力の他に、異形をこの世につなぎ止める力を持っている。

 

一般的な術者が鬼を呼び出すのに必要な魔力を百とすると、近衛の者であれば一の魔力で済む。

 

勿論、呼び出すことだけで、使役するとなればまた別の話なのだが。

 

しかし、その血族にのみ伝わる力は青山家とも五木家とも一線を画する。

 

神鳴流は、本当は近衛家を守護するために生まれたという説があるほどに。

 

「あの、質問があります」

 

《何だ》

 

「『リョウメンスクナ』って、なんですか?」

 

《……とても強い鬼、とでも覚えておけ》

 

脱線した話を戻すために、大和は一つ咳払い。

 

《そんなわけで、地力を上げるには神鳴流が最適なんだが……俺は神鳴流を会得していない》

 

「え、そうなんですか?」

 

数多い大和の逸話の中で、その圧倒的なまでの戦闘センスが挙げられる。

 

剣術にせよ鬼道にせよ、初歩ならば見るだけで習得してしまう、というものだ。

 

そしてそれは事実であり、大和も斬岩剣くらいなら余裕で使える。

 

しかし、それはあくまでも我流。洗練された型ではない。

 

大和の力を知った青山家はその才能を恐れ、神鳴流を習うことを禁じたのだ。

 

《あとは自分達の土俵である神鳴流で抜かされるのを恐れたとか、そんなんだろ。メンツの問題ってやつだ》

 

「なるほど」

 

《で、お前に神鳴流を教えるには、他の誰かに頼む必要があるわけだが……今のお前の立場じゃ、それもままならんか》

 

「うう……すみません」

 

《責めてないっての。誰かお前に神鳴流を教えてくれそうな人に心当たりは無いのか?》

 

大和の問いに、刹那は必死に考える。

 

「長……はやっぱりダメですよね」

 

《そりゃ、あの人も忙しいだろうしな》

 

「あ、そういえば」

 

《心当たりがあるのか?》

 

「長がこの前言っていたのを思い出しました。つい最近になって、長期の出張から帰ってきた神鳴流の人にお嬢様の護衛をしてもらっている、と」

 

《へえ……強いのか?》

 

「自分がかなりの信用を置いている、とも話していました」

 

《それなら試してみる価値はあるな。そいつの名前は?》

 

 

 

 

 

 

「——確か、葛葉刀子っていう人だったはずです」

 

 

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