ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第六話

SIDE:紅き翼

 

目の前にそびえる建築物、グレート=ブリッジを前に、連合の兵士たちの士気は最高潮になっていた。

 

「今日こそグレート=ブリッジを帝国の奴らから奪い返すぞ!」

 

「連合の底力を見せてやる!」

 

「俺たちには『紅き翼』がついてんだ! 恐れることはねぇ!」

 

兵士たちの口から度々『紅き翼』という言葉が出る。

 

赤毛の少年、ナギ・スプリングフィールドをリーダーとする戦闘集団。

これまでの帝国との戦いにおいての活躍は目を見張るものがあり、個人の戦闘力は尋常ではない。

さらに、新メンバーとしてジャック・ラカンが参入したことにより、尚更手が付けられなくなっていた。

 

『紅き翼』はグレート=ブリッジ奪還作戦の中核を担う予定となっている。

彼らは迫る戦いに向けて準備を、

 

「んー、『赤毛の死神』……ダメだな。いまいちピンとこねぇ」

 

「そうだな……『千の呪文の男』なんてのはどうだ?」

 

「おお、かっけぇ! すげえぞジャック!」

 

「何が『|千の呪文の男(サウザウンドマスター)』じゃ、この馬鹿弟子。お前は未だにアンチョコ見ながらでないと詠唱もできんじゃろうが」

 

「まあまあ、ハッタリとしてはいいんじゃないですか? 味方の士気も上がりますし」

 

「お前ら少しくらい緊張しろよ……」

 

——していなかった。

 

 

 

 

 

「さて、今回の作戦もいつもどおりでいいですね?」

 

「……おいアル、俺たちはいつも作戦なんて立てていたか?」

 

「あるじゃないですか詠春——突っ込んで暴れろ、です」

 

「孫子に謝れ」

 

「まあまあ、でも実際これが一番効果的じゃないですか。あの二人が前線に突っ込んで暴れ、私たちがカバーする。単純ですがそれ故に破れにくい」

 

「まあ、確かにな」

 

「……あれ、おいジャック。今俺たち馬鹿にされてんじゃねぇの?」

 

「ちげーよ、アルの野郎、最近出番があんまり無いからひがんでんだよ。ここは大人の余裕で受け流せ」

 

「おお、なるほど!」

 

(馬鹿じゃの)

 

「それにしても、最近の敵は手応えがねぇぜ。これならヘラスの闘技場の方がレベルが高かったな」

 

「そういやジャックは拳闘士出身だったな。強い奴とかいたか?」

 

「おうよ、聞いて驚け! そこの新チャンピオンとは今までに八回戦ったが、全て完敗だ! 手も足も出なかったぜ!」

 

(((なぜ自慢げ?)))

 

この瞬間、アル、ゼクト、詠春の心は一つになった。

 

「ジャックが手も足も出ねぇとはな……やべぇ、俺も戦いたくなってきた!」

 

興奮を隠そうともしないナギ。

 

「いや、悪いが今のお前じゃ勝てないだろう。これは俺の勘だが、あの野郎は俺と戦った時も手加減してやがった」

 

「そんなこと聞いたら余計に我慢できねぇよ! なあなあ、ソイツの名前は?」

 

「ああ、そいつの名は——」

 

ラカンが答えようとした時、彼らのいる天幕が開いた。

 

「『紅き翼』の皆さん、そろそろ作戦開始時刻となります」

 

伝令兵の知らせにより、弛んでいた空気が張り詰める。

 

「——話の続きはコレが終わった後だな」

 

 

「おう! 行くぜてめぇら、『紅き翼』、出陣だ!!」

 

 

 

 

 

 

SIDE:大和

 

「ヤマト……本当に大丈夫なのか?」

 

「今更なに言ってやがる。ちょっと行って、少し薙ぎ払ってくるだけだ。命の取り合いまでしてくる気はねぇよ」

 

「だが……」

 

グレート=ブリッジの頂上、戦いが一望できる場所に大和とテオドラは立っていた。

本来この場所も戦闘区域内であり、大和としてもテオドラを連れてくる気はなかった。

だが、

 

『わらわがお主を戦場に送り出すのだぞ! わらわが見届けんでどうする!』

 

テオドラが吠えたことにより、こんな所までついてきてしまったのだ。

 

俯いて不安げな顔を見せるテオドラに、大和は頭を掻いた。

 

「おい、テオドラ」

 

大和の声に反応して顔を上げる。

その顔色は悪い。

 

「俺が誰だが忘れたか? 常勝無敗の闘技場チャンピオンだぞ?」

 

もう引退したけどな、と慣れないジョークまで言う。

 

その言葉でやっと安心したのか、決意の表情で頷くテオドラ。

 

「——頼むぞ」

 

「おう、ここで見物でもしてろ」

 

大和は下で起きている戦闘を観察する。

噂の『紅き翼』は、確かにすさまじい突破力で帝国の軍勢に食い込んでいた。

 

(このまま突っ込む前に)

 

大和は両腕の袖を上げ、両手の親指に気を集中させる。

気の集中させた親指で腕をなぞることにより複雑怪奇な紋様を印す。

 

「黒白の羅 二十二の橋梁 六十六の冠帯 足跡・遠雷・尖峰・回地・夜伏・雲海・蒼い隊列 太円に満ちて天を挺れ」

 

(悪いが、奴らと戦うのにてめぇらは邪魔だ)

 

「縛道の七十七——天挺空羅」

 

薄い気で作られた網が、大和を中心に展開し、天を覆いつくしてゆく。

 

この技は自らの気で編んだ網を展開することにより、遠く離れた存在の捕捉、伝令を可能とする。

戦闘区域では突如として出現した天挺空羅に混乱していた。

 

『——おいヘラス帝国の野郎ども。聞こえているな』

 

耳元に響く声に、帝国軍の誰もが周囲を見回す。が、気で編まれた網以外には何も存在しない。

 

『いいか、よく聞け。そこの『紅き翼』の相手は俺がする。てめぇらはグレート=ブリッジの防衛に専念しろ』

 

戸惑いの表情を見せる帝国軍達。それを見て大和は舌打ちする。

 

(無理もねぇか。戦場で突如降って湧いた声に従うヤツなんざいやしねぇ。クソっ、対策しておくべきだった)

 

少しばかり無理をすれば、帝国軍を巻き込まずに相手をすることも不可能ではない。

説得を諦めて自分も参戦しようとしたが、

 

「テオドラ?」

 

テオドラが自分の袖を掴んで引き止めていた。

そして大和も理解する。テオドラの狙いを。

 

「なるほど、おもしれぇ。やってみろよテオドラ」

 

不敵な笑いを浮かべてテオドラは頷く。

 

そして、

 

 

(帝国軍の勇者たちよ、聞け! わらわの名はテオドラ! ヘラス帝国の第三皇女である!)

 

 

その声を聞いた帝国軍の者は皆、一様に動きを止めた。

巨大な軍勢が、まるで一つの生き物のように息をひそめる様は、不気味ですらあった。

 

(皆の者! 確かに敵、連合の勢力は強大じゃ! かの戦場の死神、『紅き翼』を尖兵とする奴らには今まで幾度となく苦渋を舐めさせられた!)

 

固唾を飲んで次の言葉を待つ。

 

(——だが、臆することはない! 我らには誇り高き戦士が味方してくれる! かの闘技場で無敗を誇ったチャンピオンじゃ!)

 

目を見開く。あの男が我らに味方してくれるというのか?

 

ヘラス帝国の人間で五木大和の名を知らぬ者はいない。

そして、その『紅き翼』を凌駕するであろう戦闘力を知らぬ者もまた、いない。

 

(『紅き翼』の相手は五木ヤマトに任せるのじゃ! 皆はグレート=ブリッジの防衛に専念! 今回の戦いがこの戦争の正念場なのじゃ!)

 

一瞬の静寂。

 

そして、

 

ドオッッッッ!!!!!

 

爆発した。

 

 

「やるじゃねぇか」

 

「ふん、当然じゃ」

 

ここまでお膳立てされては、自分としても答えなければなるまい。

 

「じゃ、行ってくる」

 

「うむ、はよう戻ってくるのじゃぞ」

 

自分を信頼しきった声に、ニヤリと笑うことで返した。

 

 

 

「っしゃあっ! 轟け——天譴(てんけん)ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはっ、天挺空羅か!? しかもこの規模——まさか!」

 

『紅き翼』のメンバーの中で、空に拡がる気の網に一番動揺したのは詠春だった。

 

他の面々はどちらかというと、様子のおかしい帝国軍の方に注目している。

 

今まで必死に自分たちの進撃を食い止めようとしていたにも関わらず、急に動きを止めたかと思えば、今度は一糸乱れぬ撤退だ。

ナギ達だけでなく、他の連合軍も訝しんでいる。

 

 

そして自分たちに迫る脅威にいち早く気がついたのは、フォローのために索敵魔法を展開していたゼクトだった。

 

 

自分の索敵範囲内に一点の反応。

 

その点は恐るべきスピードでこちらに接近しており、咄嗟にその方向を視認する。

 

かなりの距離が空いているため、姿はほとんどわからない。

 

 

 

しかし、その点は急激に気の圧を増し——

 

 

 

突如として、天をも衝くほどの刀を構え——

 

 

 

自分たちに向かってその刀を——!

 

 

 

 

「全員横に飛ぶのじゃあああぁぁッッッ!!!」

 

 

 

ゼクトの号令、いや、怒号により『紅き翼』のメンバーは反射的に行動を起こす。

 

そして、数瞬前まで自分たちがいた地点に巨大な鉄塊が叩きつけられた。

 

その異常なサイズの刀は地面にぶつかっても勢いが死なず、まさに大地を割ろうとせんが如き力で抉り続ける。

度肝を抜いた先制攻撃に『紅き翼』達の額に冷や汗が流れた。

もしあんなものが直撃すれば、たとえ障壁を張っていようと諸共に潰されるに違いない。

ゼクトの指示がなければ、まず間違いなく巻き込まれていただろう。

 

 

「今度は天譴——やはりっ」

 

「この刀の形って、おいおいマジか!?」

 

詠春とラカンは敵の正体に確信を持つ。

 

 

 

「はじめまして、いや、久しぶりでもあるな、『紅き翼』。できればそのままお引き取り願う」

 

 

 

「大和君、なぜ君がこんな所に!」

 

「お久しぶりですね、詠春さん」

 

「はぁ!?」

 

大和が詠春に対して敬語を使ったことにより、目が飛び出そうなほど驚くラカン。

こいつはヤマトの偽者か? などとテオドラと同レベルのことを考えている。

 

「話には聞いていたが、本当にテメェもいたんだな、筋肉ダルマ」

 

「あ、本人だわ」

 

すっかりお馴染みの毒舌を受け、むしろラカンはホッとした。

 

「ってコラぁ! 俺を無視してんじゃねぇ!」

 

天譴の一撃による風圧に吹き飛ばされていたナギが復帰。

 

「まったく、いきなりあんなもの振り回すとは乱暴な人ですね」

 

「これまで長く生きてきたが、あんなものは初めて見たわい」

 

アルビレオとゼクトも大した怪我を負っているわけでもなく、それぞれ別方向から復帰。

 

図らずとも大和を五方向から包囲する形となった。

だが大和の実力を知っている詠春とラカンからすれば、これでも心もとないぐらいだ。

 

「さっきも言ったが、このまま帰ってくれるんなら戦う気はねぇ」

 

「……いきなり不意を打って先制攻撃してきた人の言葉を信じろと?」

 

「あんなもんただの挨拶だ」

 

「ふざけたことを言いよって……」

 

アルビレオとゼクトは大和に怒りを顕にするが、さっきの一撃は本当に挨拶に過ぎないことを知っている詠春とラカンは気が気でない。

実際、天譴ではなく『卍解』のいずれかを放っていれば、そこで終わっていただろう。

 

「この五人に囲まれておきながら、大層な余裕ですね」

 

「まあな。で、返答は?」

 

「そんなもの——」

 

 

「断るに決まってんだろうがッッ!! マンマンテロテロッ!」

 

 

「おいナギ!? 待て、迂闊に魔法を——」

 

「うるせーぞ詠春! 結局の所、コイツは敵なんだろうが! 『契約により我に従え、高殿の王。来れ、巨神を滅ぼす燃え立つ雷霆。百重千重と重なりて、走れよ稲妻』!」

 

詠春の静止を振り切って、対軍勢用魔法の詠唱に入るナギ。

 

「——波悉く我が盾となれ。雷悉く我が刃となれ」

 

 

 

「喰らいやがれッ! 『千の雷』!!」

 

「んなもん喰らうか——双魚の理」

 

 

 

解号が終わり、大和の刀が変化する。自身の所有する中で、ただ二組しか存在しない二刀一対型の斬魄刀。柄同士が札付きの縄で結ばれた特殊な形状をしている。

 

そしてこの斬魄刀の能力は、敵の技を片方の刃で吸収し、刀を繋ぐ縄と札で威力を調整して、

 

「あぷろぺっ!?」

 

——敵に返すことができる。

 

自らの『千の雷』を受け、吹き飛んでいくナギ。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「さっきも言ったが、このまま帰ってくれるんなら戦う気はねぇ」

 

「……いきなり不意を打って先制攻撃してきた人の言葉を信じろと?」

 

「あんなもんただの挨拶だ」

 

「ふざけたことを言いよって……」

 

アルビレオとゼクトは大和に怒りを顕にするが、さっきの一撃は本当に挨拶に過ぎないことを知っている詠春とラカンは気が気でない。

実際、天譴ではなく『卍解』のいずれかを放っていれば、そこで終わっていただろう。

 

「この四人に囲まれておきながら、大層な余裕ですね」

 

「まあな。で、返答は?」

 

 

 

「「「「断るッ!!」」」」

 

 

 

グレート=ブリッジの地にて、闘技場無敗の男と、『紅き翼』が激突する——

 

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