ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第七話

「ジャック! 詠春! お主らでヤツを引き止めることは可能か!?」

 

「はっ、余裕だぜ! 闘技場での借りを返してやらぁ!!」

 

「こんな所で大和君と闘うことになるとは……だが、相手にとって不足はない!」

 

ナギのいない今、(死んでいないが)『紅き翼』は自然とラカンと詠春が前衛、アルビレオとゼクトが後衛を担当する。

後衛に向かわせないためにラカンはアーティファクトで手甲と足甲を展開、詠春は自らの愛刀である夕凪を構えた。

 

「おい詠春! こいつは俺一人じゃさすがに抑えきれねぇ! 勝手にへばんじゃねぇぞ!」

 

「そんなこと、お前に言われるまでもない!」

 

そして二人は大和に向けて駆ける。

 

「交渉は決裂か……まあ、わかりきったことだがな」

 

大和は二人がかりの攻撃を、双魚の理でそれぞれ受けとめた。

そのまま三人はもつれ合うかのように接近戦へと移行する。

 

「ラカン、インパクトォォ!!」

 

ラカンは剣術を使うよりも直接殴る方が性にあっていたため、大和に敗北して以来は体術の訓練をしていた。

武具の群れを飛ばす方法も大和には通じなかったため、牽制だけにとどめている。

 

「神鳴流奥義、斬岩剣!」

 

一方、詠春はこのメンバーの中で一番大和の能力に詳しい。

彼の使用している斬魄刀、双魚の理についても知っていた。

故に、雷鳴剣などの放出系の技は避け、直接攻撃系の技で大和に攻撃する。

 

だが、達人二人の猛攻すらも、大和はいなし、逸らし、かわし続ける。

 

ラカンの岩をも砕くような突進を見れば、瞬歩で回避し、回り込んで詠春への楯にする。

 

詠春の鉄をも切り裂くような斬撃を見れば、双魚の理の十手で固定し、武器破壊を目論む。

 

アルビレオとゼクトは必死に大和の隙を探るものの、ナギの『千の雷』があっさりと返されたことを考えると、迂闊に魔法を放つわけにもいかない。

 

現状、彼らは膠着状態になっていた。

 

 

「破道の五十八——嵐(てんらん)」

 

大和はそれを崩しにかかる。

 

ラカンと詠春の目の前に突如竜巻が現れ、視界を塞ぐ。

竜巻に直接的な攻撃力はなかったものの、一瞬大和を見失ってしまった。

 

その一瞬の隙を使い、再び解号を唱える。

 

 

「こんどはこいつだ。水天逆巻け——捩花(ねじばな)」

 

 

大和が唱え終わった瞬間、両手の刀は消失し、代わりに身の丈を超すほどの三又の槍が現れた。

それを片手で軽々と持ち上げ、独特の高い構えをとると同時に回転させる。

 

「おい詠春、あれの能力はわかるか!?」

 

「あれは捩花——振ると同時に、水の波濤を繰り出して敵を滅する槍だ! 絶対に下がって回避するなよ! 波濤に巻き込まれる!」

 

「おっしゃ、了解!」

 

再び二人は大和に攻撃を開始する。

だが、カウンターに特化した双魚の理とは違い、凄まじい攻撃力を持つ捩花に二人は徐々に押され始める。

 

「いい加減に諦めたらどうだ?」

 

「はっ、抜かせ!」

 

「御免被る!」

 

既に二人の身体には無数の切り傷が刻まれていた。

たとえ槍の一撃を防いだところで、追加攻撃の波濤に粉砕される。

よって防御はできず、二人はどんどん苦しい戦いを強いられていた。

 

このまま大和が押し切るかと思われたが、

 

(っ、これは……重力か?)

 

双魚の理を解除したことにより、後衛の二人が戦闘に参加できるようになった。

 

めまぐるしく位置が変わっていく高速戦闘の中で、アルビレオは的確に大和だけを重力で捉える。

特殊な歩法で重力の影響を地面に逃しながらも、戦いにくくなったのは否めない。

 

一方のゼクトはというと、空中で全体の流れを把握し、絶妙なタイミングでの魔法でサポートをしていた。

捩花がラカンを捉える直前でゼクトの遠隔障壁に阻まれた時は、大和でさえ驚愕に目を見開く。

 

(あの距離から障壁を展開して、しかも捩花を防ぐほどの強度。しかも全体の司令塔までしてやがる。……なるほど、コイツらの中で一番厄介なのはあのガキか)

 

そう判断し、大和は真っ先にゼクトを排除することに決めた。

 

 

「君臨者よ! 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ!」

 

 

「この野郎、接近戦の最中に涼しい顔して詠唱しやがって!」

 

「蒼火堕か、もしくは赤火砲か、攻撃系の鬼道がくるぞ!」

 

大和に鬼道を使わせまいと、ラカンと詠春の攻撃が一層苛烈になる。

だが、

 

 

 

「——雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ」

 

 

 

「っ、二重詠唱か!? まずい、大和君の狙いは——」

 

 

 

「蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 縛道の六十一——六杖光牢」

 

 

 

大和の詠唱が終わると同時、ゼクトの周囲に六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さり、その動きを奪う。

 

「くっ、外れん!」

 

 

「破道の七十三——双蓮蒼火墜!」

 

 

大和は捩花を上に投げ、空いた両手を合わせる。

そして、その両手から蒼火堕を遥かに超える規模の波動が放出され、そのままゼクトを飲み込んだ。

 

「ゼクト殿っ!」

 

「おいおいやばいんじゃねぇか!?」

 

「今のを直撃では……」

 

『紅き翼』のメンバーに緊張が走った。

 

だが、その予想は裏切られる。

 

 

 

「……こっちじゃ、皆の者」

 

 

 

空中にいたはずのゼクトの声がすぐ側から聞こえ、大和以外の全員が驚愕する。

大和は落ちてきた捩花を受け止め、苦い表情を隠さない。

 

「命中する寸前に、転移魔法を発動させたか……やっぱりテメェは厄介だな」

 

虚空から現れたゼクトは少々傷を負っていたものの、まだまだ戦闘可能な状態であった。

 

それを見て『紅き翼』のメンバーは安堵の表情を見せる。

だが、

 

 

「——少し、舐めてかかりすぎたか」

 

 

その場を覆う殺気が一段と濃密になり、咄嗟に身構える。

 

「安心しろ、殺しはしねぇ。けどな、多少は本気でやらせてもらう」

 

大和は捩花を解除、通常の刀の形態に戻した。

 

そして、

 

 

 

 

 

「——卍解」

 

 

 

 

 

その言葉を発した瞬間、大和の気の圧力が爆発したかと錯覚するほど膨れ上がった。

 

 

 

「神殺鎗(かみしにのやり)」

 

 

 

『紅き翼』のメンバーに、油断はなかった。

 

いかなることが起きても、咄嗟に回避か防御ができるように構えていた。

 

だが、

 

 

 

——まるでコマを落とされた映像の如く、一瞬後にゼクトの腹部を刀が貫通していることに、誰もが硬直した。

 

 

 

刺さった時同様、一瞬後には刀は元の長さにまで縮んでおり、ゼクトは無言で崩れ落ちる。

 

ここに至り、ようやく『紅き翼』の硬直が解ける。

 

そして大和はそのままアルビレオへと刀の切っ先を向けた。

 

(っ、マズイ!)

 

あの刀の能力はわからないが、このままではゼクトの二の舞になることは間違いない。

 

そう直感したアルビレオは、自身の持てる魔力の大半を使って障壁を展開。

 

そして、

 

 

 

「神殺鎗——無踏連刃(ぶとうれんじん)」

 

 

 

まるで壁が迫るかのように、大和の持つ刀が伸縮を繰り返してアルビレオの障壁を削った。

 

(そうか、この刀の特性は異常なまでの伸縮速度!)

 

アルビレオはそのことを看破するも、今の状況は変わらない。

このままではいずれ、障壁が全て削りとられる。

 

(ならば!)

 

アルビレオは切り札を使う。

 

それは重力使いとしての奥義ともいえる、自らにかかる重力の軽減。

 

アルビレオは自身の体重を限りなくゼロに近づけ、高速移動により大和の背後へと回り込んだ。

 

そして、その掌に重力球を作り出す。

 

アルビレオはそのまま重力球を大和に叩きつけようとするが、

 

 

 

 

「裂き狂え——瑠璃色孔雀(るりいろくじゃく)」

 

 

 

 

背中越しに大和の声が聞こえたかと思うと、彼は無数に蕾をつけた蔦に絡みつかれた。

 

「これは、一体!?」

 

アルビレオは必死に脱出しようと試みるが、蔦は決して緩まない。

むしろその強度を増しているように思える。

 

 

そしてアルビレオは気づく。自分の魔力がどんどん減っていることに。

 

 

「その蔦についている蕾は見えているな? 瑠璃色孔雀は敵の魔力を喰らい、その花を咲かせる。諦めて大人しくしていろ」

 

咄嗟にその蕾を見る。

確かに自分の魔力が失くなっていくにつれて、蕾はゆっくりと膨らみ始めていた。

 

「そうはさせん!」

 

「俺たちを忘れてんじゃねぇぞ!」

 

現在大和は無手であり、詠春とラカンにとってはこれ以上ないほどの好機だった。

 

二人は同時に反対方向から大和へと駆け、自らにできる最強の一撃を放つ。

 

「全・力・全・開!! ラカン、インパクトォォォ!!!」

 

「神鳴流決戦奥義、真・雷光剣!!!」

 

避けようのないタイミングでの攻撃だった。

 

そして事実、二人は自分たちの攻撃が大和に直撃するのを確認した。

 

 

だが、瞬きをしてみれば、そこには誰もいない。

 

 

またしても硬直する二人だったが、突如詠春の両手が後ろ手に固定される。

 

(これは縛道! だが詠唱は聞こえなかったぞ!?)

 

詠春の手を固定したのは、最も基本的な縛道の一——塞である。

一流の戦闘者にとってはすぐに解除できるものであり、詠春もすぐに弾き飛ばそうとしたが、さらにどこからともなく現れた気の縄が絡みつく。

 

「今度は這縄かっ! くそっ、どうして詠唱が聞こえない!?」

 

二つの縛道を合わせられたならば、即刻解除とはいかない。

必死にもがくが、解除するよりも早く、這縄が引かれて詠春の体は宙を舞う。

 

そして、引っ張られれた先に大和の姿が浮かび上がるのを見て、縛道の二十六——曲光で身を隠していたのだと理解した。

 

 

 

「——俺は三十番台以下の鬼道に限り、念じるだけで発動できます。『完全詠唱破棄』と呼んでますがね」

 

 

 

そのデタラメさに詠春が驚愕を顕にする前に、破道の一——衝が顎に直撃し、脳を揺さぶられて昏倒した。

 

 

 

そして同時に、瑠璃色孔雀の花が咲き誇り、存在を維持できなくなったアルビレオが一冊の本となって地に落ちる。

 

 

 

 

「で、残るはお前だけだ。筋肉ダルマ」

 

「……やっぱりお前はとんでもねぇな。けどよ、ここでスゴスゴと引き下がる俺様じゃねぇぜ?」

 

「ついでに言っておくと、お前らの攻撃をかわしたのは歩法『空蝉』っつー技だ。直撃したように見えたろ?」

 

自分はここまでデタラメな相手と何度も戦っていたのか、と冷や汗を流すラカン。

 

「お前はどこまでボロボロになっても立ち上がってくるからタチが悪い」

 

大和は瑠璃色孔雀を解除し、ラカンへと向き直る。

 

「だから、お前は物理的に動けなくするのが一番だ」

 

またしても、大和の気の圧力が増す。

 

 

 

 

「——卍解、大紅蓮氷輪丸」

 

 

 

 

そして、世界は極低温に支配される。

 

氷輪丸。かつてラカンが二度敗れた斬魄刀。

 

それがさらに力を増すというのか?

 

 

 

「俺が何故、捩花を使ったと思う?」

 

 

 

ラカンが見たのは、巨大な翼を持つ氷の竜を纏った大和。

 

 

 

「氷輪丸は氷を操る斬魄刀だが、新たに氷を生み出すよりも、その元となる水があった方がより力を発揮する」

 

 

 

足元を見れば、捩花によりまき散らされた水。

 

 

 

「つまり、こういうことだ」

 

 

 

ラカンが最後に見たのは、自分に迫り来る無数の氷柱だった。

 

 

 

 

——千年氷牢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだよ、これ……」

 

 

 

ナギ・スプリングフィールドは自身の魔法に吹き飛ばされた後、飛行魔法を使って仲間たちの元に向かって急いでいた。

 

ナギはこれでも仲間の強さを信用しており、まさか自分のいない数分の間に全滅しているとは思いもしていなかった。

 

むしろ、自分が戻るまでに敵を倒しているのではないか、と心配していたほどだ。

 

 

 

——だからこそ、ナギは目の前の光景を信じられない。

 

 

 

そこで見たのは、腹部から血を流して倒れているゼクト。

 

 

 

本となって地面に落ちているアルビレオ。

 

 

 

外傷こそ少ないが、気を失っている詠春。

 

 

 

そして、

 

 

 

「ああ、筋肉ダルマならこの中だぞ。ナギ・スプリングフィールド」

 

 

 

見上げんばかりの氷の塊と、その側に立つ大和の姿だった。

 

 

 

「こいつらをやったのは、テメェの仕業か……?」

 

ナギは怒りに震える。

 

仲間を傷つけたこの男に。

 

そして、最初にむざむざ退場してしまった自分自身に。

 

「ああ、そうだ。まぁこいつらも死んではいねぇけどな」

 

「そうかよ——それだけ聞けりゃ、充分だッッッ!!!」

 

咆哮を上げて大和に突撃するナギ。

 

 

 

「勘違いしているかは知らんが、俺はお前のことを低くは評価していない」

 

 

 

 

大和は刀を突き出し、その切っ先を地面に向ける。

 

 

 

「まさか、双魚の理の吸収限界に近づくヤツがいるとは、思いもしなかった」

 

 

 

そして大和は刀から手を離す。刀は音も無く地面に吸い込まれた。

 

 

 

「だから、喜べ。こいつを見せてやる」

 

 

 

 

 

——卍解。千本桜景厳。

 

 

 

 

 

 

「かなり痛いだろうが——そのかわり、綺麗だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

連合軍の一部隊は『紅き翼』が敗北したと聞き、半信半疑ながらも救助に向かうこととなった。

 

そして、彼らは驚くべきものを見る。

 

そこで見たのは、情報通りにボロボロとなった『紅き翼』と、

 

 

 

 

——全身に傷創を刻まれながらも、決して膝をつかぬように、立ったまま気絶しているナギ・スプリングフィールドの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、五木大和が『紅き翼』を倒したってのは本当か!?」

 

「ああ、偵察のやつに直接聞いたから間違いねぇ! やっぱチャンピオンはとんでもねぇよ!!」

 

グレート=ブリッジの内部にて、帝国軍の兵士たちはその報告に沸き立つ。

 

「これからも帝国軍と一緒に戦ってくれんのかなあ」

 

「それはわからねぇが、とりあえずこの戦いで勝てたことでも凄いって! ここを拠点にして連合と戦えるんなら、帝国の勝利も目前だ!」

 

 

 

——それじゃあ、困るんだよね。

 

 

 

どこからともなく聞こえたその声に、帝国兵は慌てて周りを見回そうとするが、それはできなかった。

 

なぜならば、彼らの胸には既に、石の槍が突き刺さっていたから。

 

 

 

「今回の戦いで帝国はグレート=ブリッジを奪われる。そういう『シナリオ』になっているんだよ」

 

 

 

暗がりから白髪の青年が現れる。

 

 

 

「さて、早く仕事を終わらせようか」

 

 

 

 

——『|完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』が、動き出した——

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