ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

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第八話

SIDE:紅き翼

 

あの『紅き翼』が撃破されたという情報は、連合軍の間に大きな動揺をもたらした。

 

救助部隊は『紅き翼』のメンバーを直ぐに回収、治療を行い、彼らは奪還成功したグレート=ブリッジに運び込まれた。

彼らの怪我は重傷ではあったが、致命傷には程遠く、しばらく治療に専念すれば、また戦場に復帰できるとのことだ。

 

だが、心の方はどうかというと——

 

 

「こんなところにいたか、ナギ」

 

「……ジャック」

 

 

グレート=ブリッジの上、大和とテオドラが会話していた場所で、ナギは座り込んでいた。

 

もうすでに夜の帳が空を覆い、野営地の明かりがぼんやりと浮かんでいる。

 

「お前、怪我は大丈夫か? 全身ボロボロだったらしいじゃねぇか」

 

「……そういうジャックはどうなんだよ。氷河期時代のマンモスの化石みたいになってた、って聞いたぞ」

 

「ガハハ、俺は氷漬けにはもう慣れた」

 

いつもの軽口もどこか空々しく、覇気がない。

 

「なあ、ジャック」

 

「なんだ?」

 

「お前が言ってた闘技場の無茶苦茶強いヤツって、あいつのことだよな?」

 

「そうだ。俺もあそこまでデタラメなやつだとは思わなかったけどな」

 

「……俺たち、手加減されてたよな」

 

「ああ。妖怪ジジイもアルの野郎も、少し休めばまた戦えるってよ。最初から俺たちを殺す気はなかったんだろ」

 

「……そうか」

 

会話がなくなり、二人は建物の上から雄大な夜景を眺める。

 

グレート=ブリッジは連合が奪還に成功し、下の野営地では勝利の宴が開かれていた。

 

だが、『紅き翼』に笑みはない。

 

「……何が『紅き翼』だ……何が『千の呪文の男』だよ。強いヤツと戦いたいだの言っておいて、結局ボコボコにされてへこんでる」

 

「はは、俺も奴隷拳闘士の時はもっと強いヤツはいねぇのか、とか思ってたな。まぁヤマトの野郎にあってからは考え直したが」

 

「……」

 

「……」

 

また、二人の間に沈黙が訪れる。

 

「ジャック、頼みがある」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

 

 

 

「「お前、俺の新技の実験台になってくれ」」

 

 

 

 

「……ぷっ、くっくく、何だよ、考えることは一緒か」

 

「だな。このまま負けっぱなしてのは性に合わねぇ。あのスカした面に一撃くれてやらにゃ、俺たちは前に進めない、だろ?」

 

ガハハ、と二人して笑い合う。

 

「おう! よっしゃ、早速戦ろうぜジャック! 俺すんげー必殺技思いつんたんだよ! 雷を自分に直撃させて突っ込む、『神風アタック』だ!」

 

「俺も新技考えついたぜ! 世界中の生物から気合を少しづつ吸収して(無理)放つ、『超気合玉』だ!」

 

二人は立ち上がり、距離をとって向かい合う。

 

 

——その夜、グレート=ブリッジの上で、巨大な魔力と気がぶつかり合うのが確認された。

 

 

 

(馬鹿弟子が落ち込んでるかと思って来てみたが……いらぬ心配じゃったの)

 

 

 

 

 

 

 

 

青山詠春は、グレート=ブリッジの一室の中で座禅を組んでいた。

 

(まさか、こんな所で彼に会うとは思いもしなかったが……やはり彼の強さは変わっていなかった)

 

詠春は座禅を組みながら、過去に思いを馳せる。

 

 

 

——詠春とヤマトが初めて出会ったのは、詠春が十五の時だった。

 

詠春は神鳴流の修行に明け暮れている日々の中で、五木家に天才がいるという噂を耳にする。

 

神鳴流の中で、既に詠春の相手ができるのは師範代クラスだけだったことから、その噂の天才に興味を引かれるのは当然の流れだった。

 

木刀を引っさげて五木家に乗り込み、道場で瞑想をしていた大和に手合わせを申し込んだ記憶はまだ、詠春の中に色褪せずに存在していた。

 

 

もちろん結果は敗北。

しかし、それ以降の詠春の修行はより一層苛烈になり、得た物も確かにある。

 

 

(それにしても大和君、随分ガラが悪くなっていたな……)

 

 

——今の大和しか知らない人間には信じられないだろうが、昔の大和は礼儀正しく、素直な少年だった。

 

手合わせした以降、詠春と大和は親しくなったのだが、その時も大和は目上の人間に対する礼儀を心得ていたのだ。

それがどうなってああなったのか、流石に詠春も気になったが、今はそれよりもこれからの方が大切だった。

 

(今のままでは彼には勝てない……やはり、アレを習得するしかないか)

 

これまでは大和に勝つことは一度もできなかった。

しかし、これからもそうであるわけにはいかない。

 

詠春は『紅き翼』の中で一番軽傷だった。

ほぼ無傷だったと言っても過言ではない。

 

 

——だが、それは一番手加減されていた、ということにほかならない。

 

 

知り合いだから、昔親しくしていたからという理由で手加減された。

 

その事実は、普段冷静な詠春の心に火をつける。

 

 

 

「見ていろ……絶対に追いついてみせるからな、五木大和!」

 

 

 

 

 

この叫びが隣の部屋にいたアルビレオに聞かれ、後で散々弄られたのは余談である——

 

 

 

 

 

 

「そう言えば詠春、貴方の故郷から何かが届いていましたよ」

 

「本当か!?」

 

「ええ、私が預かっておきましたが……これは書物ですか?」

 

「ああ……こんなに早く届けてくれるとは、ありがたい」

 

 

詠春が手にした書物、それは青山家に伝わる秘伝の書。

 

 

本来五木家にだけ伝わる『斬魄刀』の秘伝。

だが、長い時代の流れの中で、一冊だけ青山家に流れた書物。

 

かつて詠春が挑み、そして敗北した記憶を持つ斬魄刀。

 

 

 

 

 

 

 

——その名は、斬月。

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