ネギま!で斬魄刀   作:こごろう

9 / 39
第九話

「ウェスペルタティア王国の王女と会談をするだぁ? おいテオドラ、てめぇ何考えてやがる」

 

 

 

グレート=ブリッジの戦いから二ヶ月が経過したあくる日、緩やかな日々を過ごしていた大和にテオドラはそんなことを言い出した。

 

 

あの戦いにより、確かに大和は『紅き翼』を撃退したものの、グレート=ブリッジ自体は連合に奪還された。

テオドラから事情を聞いたが、建物内部から何者かの手引きがあったということ以外なにもわからず、帝国の上層部を悩ませている。

 

そしてその後の大和だが、てっきり国民からまた戦場に出てくれ、などと言われることも覚悟していたのだが、自分がテオドラの護衛をしていると明かすと『じゃあ護衛の方に専念してくれ』と言われた。

 

 

この小さな皇女は自分の予想以上に、国民に愛されているらしい。

 

 

そんなわけで、これまで通りにテオドラの護衛をする日々が今まで続いていたのだが、

 

「……この戦争にはな、どうやら裏で糸を引いている連中がいるようなのじゃ。ウェスペルタティアの王女もそれに気づいたらしくての、二人で対策を練ろうということになったのじゃ」

 

「中立国の王女だろ。そんなヤツと会ったら同盟を目論んでいるとか思われるんじゃねぇのか?」

 

「無論、バレたら大問題じゃ。だからお忍びで行く。そして大和にもついてきて欲しいのじゃ」

 

「まぁ、別に異論は無いけどよ」

 

 

 

そのような経緯があり、大和はその会談に護衛としてついていくことが決まった。

 

 

 

 

 

 

会談の場所は帝国にほど近い位置で、テオドラと大和はすでに到着しており、後は王女を待つだけとなっていた。

 

「王女ってのはどんなヤツなんだろうな」

 

「わらわも写真とかで顔は知っておるがの、かなりの美人だったのじゃ。ヤマトも見蕩れるかもしれぬぞ」

 

「はっ、んなわけあるか」

 

そんな軽口を叩きながら時間を潰していると、フードを目深にかぶった者がこちらに近づいてくるのが見えた。

 

 

 

そして、その女を見た瞬間、大和は目を見開いて硬直する。

 

 

 

「本日はこのような会談の機会を頂き、感謝する」

 

「いや、それはお互い様なのじゃ、アリカ殿」

 

 

 

彼の前でテオドラが挨拶をしているが、そんなものはまったく意識の中に入らない。

 

大和の意識はアリカの顔に集中し、それ以外の情報は全て遮断していた。

 

ふと、アリカが大和の方を向く。

 

 

「この者が噂の護衛であるか?」

 

「そうじゃ。彼が今回の会談を護衛してくれる五木ヤマトなのじゃ」

 

 

アリカとテオドラが自分のことを話しているが、それすらも無視する。

 

大和はアリカの顔から目が離せない。

 

そしてアリカは大和の顔と雰囲気を確認し、こう言った。

 

 

 

「ふむ、確かに面白い護衛を雇っておるな」

 

「いや、面白いのはお前の眉毛だって。枝分かれってなんだよ。面白すぎんじゃねぇか」

 

 

 

次の瞬間、王家の魔力をふんだんにこめた平手打ちが顔面を直撃し、大和はトリプルアクセルをきめた。

 

 

 

「よし、埋めるか」

 

「ま、待ってほしいのじゃ! わらわの護衛を埋めないでくれなのじゃ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、ここ最近で久しぶりにダメージ食らったぞ」

 

「むしろそれで済んだのを幸運に思うべきなのじゃ、ヤマト……」

 

アリカは弛んだ空気を引き締めるために咳払いをし、正式に自己紹介する。

 

 

「お初にお目にかかる、テオドラ皇女。わらわがウェスペルタティア王国が王女、アリカ・アナルキア・エンテオフュシアじゃ」

 

 

「え、アナル?」

 

 

次の瞬間、王家の魔力をふんだんにこめた平手打ちが以下略。

 

 

「殺す。ケルベラス渓谷に突き落とす」

 

「ヤマトはそれでも生き残りそうな気がするのじゃが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やばい、視界が朦朧としてやがる……」

 

「もうフォローのしようもないのじゃ」

 

 

「さあ、テオドラ皇女。早速会談をはじめよう」

 

どうやらアリカは大和のことをなかったことにするつもりらしい。

 

テオドラとしても、いつまでも馬鹿な問答をしているわけにもいかないので、アリカと話し合いを始める。

 

大和は二人に背を向ける形で周囲を警戒していたが、

 

「この間のグレート=ブリッジでも奴らが動いていたのは間違いないのじゃ」

 

「ふむ。となると、奴らは両軍に介入したことになるな」

 

 

(なんか重要なことを話してるっぽいが、俺としてはどういう経緯で王女の眉毛がああなったのか、という方が気になる)

 

 

あまり集中はしていなかった。

 

 

「過去の戦闘の記録も調べたのじゃが、戦争の勝敗が決まりそうな戦いの時は必ず、奴らの介入の跡が見られるのじゃ」

 

「つまり奴らの目的は、戦争の長期化か? しかし一体なんのために……」

 

 

(元からあんな風に枝分かれしていたのか? いや、あんな不自然な眉毛が生えたヤツがいるとは思えねぇ。必ず裏がある)

 

 

「双方ともに、かなりの上層部まで入り込まれているようじゃな」

 

「うむ、『紅き翼』の調査によるとメガロのナンバー2も黒らしい」

 

 

(そうか! 元々は極太の一本の眉毛だったのを、真ん中だけ剃ったのか! ……なるほど、さすがに一国の王女なだけはある。侮れねぇぜ)

 

 

「……マト……ヤマト!」

 

気がつくと、いつの間にかテオドラが自分の服を引っ張っていた。

 

「ん、どうした?」

 

「どうしたはこっちのセリフなのじゃ。ボーっとして、何か考えごとでもしておったのか?」

 

「ああ、ウェスペルタティアの王女もやるじゃねぇか、と思ってな」

 

「ほう、お主もようやく理解したか。無礼者の其方にはわらわ達の話し合いなど、とうてい理解できぬと思っていたが」

 

認識に多少の齟齬があるが、通じているので問題はない。

 

「というか、さっき『紅き翼』って言葉が聞こえたような気がしたんだが」

 

「む? 彼らならば、わらわの協力者として動いてくれているぞ?」

 

「「……」」

 

思わずテオドラと顔を見合わせる。

 

「彼らがどうかしたのか?」

 

 

この前、ボッコボコにしました。

 

 

「「イイエ、ナンデモナイデス」」

 

——そんなこと言えるはずもなく、大和とテオドラは誤魔化すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「さて、会談も終わったんだろ? さっさと帰ろうぜ、テオドラ」

 

「う……久しぶりに城の外に出たのじゃ。ちょっとぐらい遊んでもよいではないかの? ほら、アリカ殿にこの辺の案内もしたいし」

 

「いや、気遣いは無用だ。わらわにもこの後、出席せねばいかん会議があるのでな」

 

「ほら、本人もこう言ってんだろ。それに——」

 

 

「日が暮れたら、変質者とか増えるしな?」

 

「……いつから気づいていたんだい?」

 

 

 

ボコリ、と地面が盛り上がり、それは徐々に人の形をとった。

 

「最初から。俺が王女に二回目の張り手食らった時」

 

「……なるほど。『紅き翼』を打倒したのはマグレじゃなさそうだね」

 

地面から現れた白髪の青年に、アリカとテオドラは身構える。

 

「白髪の男……何度か情報に上がっていたが……」

 

「『完全なる世界』の人間か!」

 

「ああ、初めましてだねアリカ王女、それにテオドラ皇女も。僕の名はアーウェルンクス。プリームムと呼んでくれても構わないが」

 

「『|1番目(プリームム)』ねぇ……センスのねぇ名前だな。で、そのプーさんが何の用だ?」

 

「アリカ王女とテオドラ皇女の拉致——」

 

アーウェルンクスがその言葉を発した途端、アリカとテオドラの警戒は最大になった。

 

「——の予定だったんだけどね。流石に君相手じゃ分が悪そうだ。今日はやめておくよ」

 

 

「ん? 別にそこの王女を守る気はないが」

 

 

大和がそう返した時、テオドラはもちろんのこと、アーウェルンクスさえも目を見開いた。

 

アリカだけが驚きもせず、表情も変えない。こうなることが分かっていたかのように。

 

「……正気かい? 僕らにその王女を渡せば、ロクなことにならないなんてこと、少し考えれば予想できるはずだけど」

 

「別に、俺に害がなけりゃ構わん」

 

「そ、そんな! 大和、これはどういうつもりなのじゃ! そなたはこの会談の護衛として——」

 

「だから、もう会談は終わったじゃねぇか」

 

「うっ!?」

 

確かに会談は終わっており、テオドラ自身も町に繰り出そうとしていただけに言い返せない。

 

「い、家に帰るまでが会談なのじゃ!」

 

「……遠足かよ。あのなテオドラ。俺にはあの王女を守る義理も義務もねぇ。お前のことは気に入っているし、皇帝からの依頼もあるから守るさ。けどな、今日会ったばかりのヤツのために命張れってのか?」

 

「う、うぅ、でも、ヤマトならあんなやつ簡単に」

 

「ああ、無傷で殺せる。だからな、テオドラ。——今日会ったヤツのために、俺に人を殺せってのか?」

 

大和の言葉にテオドラは固まる。

 

そうだ。彼は見ず知らずの人のために戦うのを嫌い、そして自分もそれを承知していたはずなのに——

 

 

「くくく、はっはははははは!」

 

 

アーウェルンクスが哄笑をあげる。

本当に愉快だと言わんばかりに。

 

「君は面白いな、五木大和! どうだ、いっそ僕たちの仲間にならないか! 君がいれば僕らの計画だって必ず成功するはずだ!」

 

「まぁ、内容によるな。テオドラを守る気なのは変わらねぇし」

 

「ヤマト!?」

 

「そうだね。確かに、計画も話さずに仲間になってくれというのは虫のいい話だった。……ここで、この二人に計画のことを知られるのは予定にないが、まあ直に分かることだしね」

 

 

そしてアーウェルンクスは語る。

自分たち『完全なる世界』が何を為そうとしているのかを。

 

 

「なるほど、このままだったら魔法世界は滅ぶ。だからテメェらはその前に、魔法世界人たちを『完全なる世界』に避難させようってわけだ」

 

「まあかなり大雑把な概要だけどね。僕たちは誰も傷つける気はないし、殺すなんてもっての外だ。それはもちろん第三皇女も例外ではない。どうかな、少し興味が湧いてきたかい?」

 

「——そうだな。他に魔法世界の滅亡を止める手がないんなら、お前らの策が一番かもな」

 

「ヤ、ヤマト……」

 

テオドラの顔に絶望が宿る。

アリカは無表情を崩さない。

 

「ただ、一つ聞かせろ。テメェらはそれで魔法世界人が幸せになれると信じているのか?」

 

「もちろんだ。少なくとも、このまま消えてしまうよりはずっとマシだろう?」

 

その言葉を聞いた瞬間、大和から表情の一切が消えた。

 

 

 

「ああ、計画を教えてくれまでして誘ってくれたのは嬉しいが、やっぱりテメェら気に食わねぇわ」

 

 

 

テオドラが俯いていた顔を上げると同時に、アーウェルンクスの顔から笑みが消える。

 

「……理由を教えてもらっていいかな? それとも、最初から計画を聞き出すための演技だったのかい?」

 

「いや、テメェらが本気で世界を救おうとしてるのはよく分かった。むしろ世界中から後ろ指さされてんのに、一文の得にもならないことをしてるテメェらは、ただのお人好しだと思ってる」

 

「……ならば、何故」

 

「まあ、個人的な理由で恐縮なんだが——」

 

 

 

——青山家に仇なす者を殺せ。五木大和。

 

 

 

「別に、誰かが幸せになるのが許せないとか、そんなんじゃねぇよ」

 

 

 

——お前の力は、殺すためだけのものだ。

 

 

 

「ただな、勝手に人の幸せだの、生き方だのを決めつけるヤツが——」

 

 

 

——お前はそのためだけに、これまで修行をしてきたのだ。

 

 

 

「——俺は大ッキライなんだよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。