自書女主話Dark   作:最下

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比企谷八幡に未来を与える

 

 

 

心地よい疲労感と脱力感、眠気に身を任せていると、カーテンの隙間から朝日が降り注いでくる。体は睡眠をまだ欲しているけど起きなくてはいけない。料理にゴミ出し、何より汗と体に付着したドロドロを洗い流して置きたい

 

 

「八幡さん、起きて」

「んん、何……?」

 

 

八幡さんに声を掛けてから今の自分が裸に赤い斑点が付いたシーツという恰好に気付く。まあ、八幡さんも似た様な恰好だから必要以上に気にする必要は無いだろう

 

 

「朝だよ。早く起きないと小町さんに見られちゃ……」

「どした?」

「…………小町は二度寝するので気にしないでください」

 

 

危惧した事が危惧した瞬間に起きた。うん……、小町さんが気を使ってくれたと思うよ。とにかく小町さんに気付かれてしまった以上、少しのんびりしても構わないよね

 

 

「うん、もう少しゆっくりしようか」

「……あいよ」

 

 

シーツを挟んで八幡さんの胸に顔をうずめる。八幡さんも一度行為まで及んだからか落ち着いた様子で私の体を抱き寄せる。もう一々慌てる君は見れないのかな、それはそれで寂しいね

 

 

「ねぇ、私達はもう付き合っていると言えるかな?」

「そうだな……、問題ない、と思う」

「そっか、じゃあ今度君の両親に息子さんをくださいと言おうかな?」

「気が早いし、それは俺のセリフだから」

「ふふ、嬉しくてね」

「……俺も嬉しいよ」

 

 

肌寒さを感じたのでくるまっていたシーツを剥いで直接八幡さんの体に肌を重ねる。寒い部屋なだけにそれだけですぐ体が暖かくなるのが分かる。これも心地いいね……

 

 

「あ、ここ凄く熱が籠ってるよ?」

「うっせ、当たり前だろ」

「まったく君は嬉しい事いってくれるね」

 

 

八幡さんの一部が膨張している事に平静を装って指摘する。まあ八幡さんの事だから気付いてそうだけどね。これから大事な話をしようと思っているからもしヤルとしても後でね

 

 

「八幡さん」

「どうした?」

「君は奉仕部をどうするのかな……?」

「ッ!」

 

 

密着状態だから八幡さんの心拍数が向上した事が容易に分かる。これから大事な事は君が奉仕部をどうするかだよ。もう由比ヶ浜先輩は居ない、雪ノ下先輩とは昨日関係に少しばかり傷が付いてしまったらしい。間違いなく私のせいだけどね

 

 

「……俺は、退部しようかと思っている」

「でもあそこは」

「一辺が消えた三角形は崩れるだけだろ」

「そっか……、わかったよ」

 

 

君は『本物』と『奉仕部』を諦める、という選択をするんだね。私は君の意見を尊重するよ、例え皆が間違っていると言っても君の側で君の考えの正しさを皆に認めさせてみせるよ

 

 

「さ、シャワー浴びに行こうかな、着替え貸してね」

「そこのタンスのてきとーに持ってけ」

「うん、ありがとう」

「まっすぐ歩いてくれ、怖いから」

 

 

そうは言われても力は入らないし初めての痛みが今来てるしで少し難しいかな。うん一人で行くのは難しいよ

 

 

「八幡さん。一緒に行こうよ」

「風呂狭いからヤダ」

「む、これだと私も行けないよ」

「あっ、あー。そういう事か、わかった」

 

 

察してくれた様で素早く準備をしてくれる八幡さん、私も脱ぎ捨てられて皺がついたYシャツを羽織る。手を貸してもらおうか、それとも抱き上げて貰おうか。これから浴室に行くまでを考えるだけでも楽しい

 

 

「よし、立てるか?」

「手を貸してほしいかな」

「ほれ」

「ととっ」

「こっちの方が手っ取り早いな」

「わっ、わわ」

 

 

最初は手をとるがそれでもふらつく。急に視界が変わったと思ったら八幡さんにお姫様だっこをされていた。……確かに君に掴まって歩くよりずっと早いかも。昨日といい、抱き上げられることが最近多いね。君との距離が縮まっているのが感じられて嬉しいよ

 

 

「着替え持て、シーツ抑えてくれ」

「よいしょ、こうかな」

「ああ、じゃいくぞ」

 

 

小町さんが寝ているならシーツを体に羽織っていれば問題無いだろうという事で一枚のシーツに二人で入る、変に大きく動かなければ中が見えることはないかな

 

 

「……今の時間は」

「知らん。何かしたいことあんのか?」

「今日は学校に行こうかな。君達も大分落ち着いたしね」

「俺は」

「ああ、待って。君は小町さん次第だよ」

「……わかった」

 

 

まあ、日が差し込んで少し時間が経ったぐらいだから7時位かな?ゆっくり準備しても2限目の途中ぐらいから入れそうだね。とにかく学校に用があるし由比ヶ浜先輩殺害事件の進展も気になる、それに関しては手を色々回したから大丈夫だと思うけどね

 

 

「…………」

「ん、大丈夫だよ。勝手に居なくなったりしないからね」

「……何のことだ」

「独り言だよ、ふふ」

 

 

そ、独り言だね、決して君の腕に込められた感情に話しかけた訳じゃないよ。八幡さんは私の事を大事にしてくれている、今じゃ小町さんと並んでもおかしくないかな。由比ヶ浜先輩が亡くなったせいで奉仕部は消滅、本物を諦めた君の心には私と小町さんしか残っていない、つまり君はもう他者を受け入れられない

 

 

「そろそろ風呂な、少しは歩けるよな?」

「うん、手ぐらいは貸してね」

「へぇへぇ、お姫様のいうとーり」

 

 

~~~

 

 

「比企谷、本当に辞めるのか……?」

「はい、彼女ができたんで、先生の依頼の孤独体質は改善できたでしょ」

 

 

日は変わらずその日の放課後。あれからシャワーを浴びてからは普通の朝を過ごした、食事中小町さんが居づらそうにしていたのは多分気のせいじゃ無いだろうね。それで小町さんも元気そうなので今日は登校、勉強をした。そして今は職員室の外で聞き耳を澄ましている

 

 

「それはそうだが、いいのか?君は奉仕部を大事にしていただろう」

「もう、あそこにいる理由は無いです」

 

 

必死に聞き出そうとしている平塚先生に取り付く島もない八幡さん。本物は手に入らない、孤独体質も私がいるから改善した。本当に八幡さんが奉仕部に縛られる理由は無くなったみたいだね、他に八幡さんを縛ろうとするのは平塚先生ぐらいかな、それも雪ノ下先輩の執着心にも依るけどね

 

 

「そうか……、一つだけ聞かせてくれ」

「なんですか?答えられないのは答えませんよ」

「もし答えなかったら名前だけでも奉仕部に残すからな」

「…………」

 

 

やっぱり平塚先生が障害になるみたいだね、私としては別に名前が残るぐらいどうでもいいけど八幡さんは奉仕部との関係を完全にデリートしたいのかな。つまり最終的には他の誰にも目を向けず私だけを見てくれるという事だね、嬉しいよ大好きだよ八幡さん

 

 

「比企谷、それで納得しているのか?」

「……ええ」

 

 

こればかりは私一人では理解できないかな。「それ」とは何を指すに依るからね、今の話だと「奉仕部を去ることに納得しているか」か「雪ノ下先輩と他人になるかを納得しているか」と言ったところかな。だとしたらどっちも不要だよ、君には私がいるからね

 

 

「もう行っていい、困った事があったら何時でも相談しろ、いいな?」

「うす……」

 

 

やけに男らしい言葉を吐いて八幡さんを解放する。八幡さんは平塚先生にも興味を無くしたみたいだね、興味があったら前の様に年齢や婚期をいじって殴られているというのに。ま、他の女に目を向ける必要は無いからそれで正しいよ

 

 

「……いたのか」

「うん、あの事件の進展を平塚先生に聞こうと思って来たら、ね」

「それなら俺が聞いた。今日は帰ろうぜ」

「わかったよ」

 

 

やれ、最初から聞けてたと思ってたけど八幡さんの本題からだったみたいだね、八幡さんが教えてくれるというなら何の問題も無いよ。私がやったことがもしバレたら八幡さんはどんな眼をするかな、怒り?哀しみ?それは別の時に拝見したいね

 

 

「……結論から言うと犯人は捕まっていないし予測も出来ていない」

「難航してるのかな」

「ああ、警察も公開してない情報もあるだろうけどな」

「……そうだね」

 

 

思ったより情報が少ない、私が水曜日に聞けた情報の方がまだ豊富だった、平塚先生が伏せたのか八幡さんが敢えて言わなかったのか。とにかく今日授業を受けた時は1年に大きな変化はなかった、いや流石に一色さんは疲弊してたかな

 

 

「ここだけの話、俺八千代雪ノ下一色川崎は犯人では無いと思われているらしい」

「不思議だね、刑事の勘ってやつかな?」

「お前たちの月曜日の会話を録音したのが出て来たってよ」

「……雪ノ下先輩か一色さん辺りかな」

「良く分かったな、雪ノ下だ」

 

 

それにしてもわからない。雪ノ下先輩が録音しているのは構わない、きっと目立つ人だから何かと対策が必要とそういうのかな。でもあの会話で何がわかるのかな、精々私が場所を提供しただけだし、……そうか、場所かな。あそこに待機するのを選んだのは由比ヶ浜先輩だから一時的だろうけど私達には目を向けられていないとかかな、ありえないね

 

 

「そう、君が疑われることが無くてよかったよ」

「あんがとよ、お前が疑われ無くてよかった」

「ありがとね」

 

 

事件の進展については自分で調べた方が早そうだね、でもしばらくは八幡さんの側に居られることが確定したようなもの、嬉しいな、嬉しいね。もう君は奉仕部や平塚先生にも縛られずに私の側に居てくれる、私も君の側に居る

 

 

「これからずっと一緒に居られるといいね、八幡さん」

「ああ、……勝手に居なくなるなよ、八千代」

「もちろん。あの世の果てでも一緒にいるよ」

「愛されてて光栄だ」

 

 

空は私達2人の新しい始まりを応援しているとは言えない曇り空。でも空が神が人が認めなくても私は君と一緒にいる。君をどこにも行かせない。その為なら如何なる手でも行うよ

 

さて今度こそ、新しい始まり、最後の最後まで君と共に歩もう

 

 

自書女主話Dark ~END~

 

 

 




後書き

Dark本編終了です、既読ありがとうございます。解り難い部分が有りそうですので軽く解説します。まあ解釈は何通りもあるのが楽しいので一興と思いください。


まず八千代。まず「ヤンデレ(病)」ではなく「ヤミデレ(闇)」と言えます。より効率的で手段を択ばないその姿は悪魔と呼ばれてもおかしくないでしょう。


八千代の作戦は以下の通りです

由比ヶ浜殺害……八幡小町雪ノ下に精神的ダメージ。及びその他ライバルを封じ込める
献身的介護……比企谷家の信頼を得る。八千代がいるのが当たり前になる様に
散歩……食材確保。健康面の確認。次の作戦のためのポイント稼ぎ
雪ノ下煽り……雪ノ下の評価を落とし八千代の評価を上げる。評価の確認
このあと滅茶苦茶……八幡の誠実さを狙った作戦。より強固な守りへ
END……ハッピーエンド(笑)です


この後は八千代が楽しくやります。一色あたりが寄ってくるけど精神的に叩き潰したり材木座を飼い慣らしたり戸塚に嫌われたり……、いつか書くかもわかりませんね。とにかくもう一度ここまで読んで下さりありがとうございます
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