月影永理の暴走   作:黄衛門

13 / 59
第13話 怖い奴は消してしまえばいい(前編)

 十代はデュエルフィールドに立ち、一抹の不安を感じていた。まるで見世物のように集められた、大量の生徒が席を埋めている。赤、黄色、青。その色は様々だが、それぞれ色分けされている。十代が今待っているのは対戦相手と、今回のタッグデュエルの相方である丸藤翔。

 永理と亮がやったタッグデュエルと、ほぼルールは同じ

 パートナーのモンスターを生け贄や壁にしたり、墓地のカードを利用することができる(ただし、利用される側のプレイヤーの許可が必要となる)。

 ライトニング・ボルテックス等のフィールド全体に影響のあるカードは双方に適用される。

 お互い最初のターンは攻撃出来ない。

 順番は1→2→3→4→1。

 相談や手札の見せ合いは出来ない(マイク等を使えば可能、要するにバレなきゃ反則ではない)。

 という点までは同じだが、今回はライフを共有する。つまりどちらかがへまをすれば、一気にライフは削られるという事だ。

 あとついでに、前回説明を忘れていたが墓地は共通とする。

 なぜこうなったか、何故制裁タッグデュエルをする事となったか。その説明は少々長引く。

 一昨日、朝になってから帰り少々遅めの睡眠を取っていたところ、突然論理委員会なる怪しい団体が押し掛け、とんとん拍子に話が進み、何処からか廃寮に立ち入った事をリークされ、それの責任により本来は退学らしいが、そこはデュエルアカデミア。退学を掛けた制裁デュエルをする事となり、今に至る。負ければ退学、勝てば無罪放免。デュエルアカデミア創立者である海馬瀬戸曰く『強い者はある程度の不正も許される』との事だ。社長も社長で青眼を色々と不法な方法で手に入れていたので、そういった信念があるのも納得がいく。永理だけ一人でやるらしい。

 別に十代は制裁タッグデュエル事態に不満を持っていない。校則で禁止されている廃寮の侵入をし、更に荒らしたという疑いを掛けられた(荒らしたという点は主に永理と亮ではあるが)。これ自体には同意がいく、その場にいたのだから責任は取らねばなるまい。それ自体は問題ではない。翔が来ないのも、覚悟を決めているからだ、と思う。

 問題なのは、一昨日の夕方、突然翔を亮と永理が連れ去った事にある。半ば拉致に近い形でオベリスクブルーの寮に連れ込まれ、何かされたらしい。万丈目が「やかましくて寝られないから今日はこっちで寝る」とオシリスレッドの部屋に来た時に聞いた話だ。

 その話を聞き、不安が芽生えるのは当然の理である。何せ学園一の大馬鹿野郎に加え実力があり成績のいい馬鹿と名高い亮のタッグによるナニカ、翔の無事を祈るばかりだ。

 

「おっす十代、待たせたな」

 

「永理、一体翔に何をしてたんだ?」

 

「そいつぁ始まってからのお楽しみだ」

 

 出来ていないウィンクをし、強引に質問を終わらせる。翔は常に俯いており、表情は読み取れない。前より酷くなっているのでは? と不安になるくらいだが、永理が自信満々に言うのだから大丈夫なのだろう。永理の頭の上でグレート・モスがぷひっと十代を安心させるように鳴いた。

 デュエルフィールドの上に立つも、翔は顔を上げない。しかし一応無事だったことに安どのため息をする。しかし十代には不安がある。ろくにデッキも調整せず、どのようなカードにジナシーがあるかも解らない。果たして勝てるのか。とはいえ、もうこうなったらやるしかないのだ。腹を括るしかないのだ。

 

「……なあ翔、大丈夫か?」

 

「……大丈夫ッスよ、僕は」

 

 何処か変わった雰囲気で翔は答える。十代は何かを言おうとしたが、突如流れる中国風に音楽にる出入り口から飛び出してきたのは、橙と緑の中華風の服を身にまとったハゲ二人。さながらカンフー映画のようにバク転しながら現れ、デュエルフィールドへと降り立ち、手を十代達の方に向けぴたりと止まった。

 

「我ら迷宮兄弟」

 

「伝説のデュエリスト、武藤遊戯と城之内克也を苦しめた者なり!」

 

 額に迷とマジックで書かれた橙色の服を身にまとった男と、額に宮とマジックで書かれた緑色の服を身にまとった男。迷宮兄弟。彼らが登場した瞬間、会場が湧いた。校長先生である鮫島に至っては、サインを貰おうと色紙を持つ始末。隣でクロノス教諭が恥ずかしいからやめなさいと必死に制している。

 

「さあ、我らと戦うのは貴殿らか」

 

「その力、存分に見せてもらおうぞ!」

 

「あっ、ああ! 行くぞ、翔!」

 

 翔は俯いたまま、十代の言葉に答えずデュエルディスクを起動させる。流石に迷宮兄弟もそれには少々困惑したが、これは仕事。プライベートであれば労わりの言葉を掛けるが、仕事においてそれは敵に塩を送るようなもの。相手を倒す時は常に全力なのだ。

 

「「「デュエル!」」」

 

 迷宮兄弟と十代が宣言し、翔は無言でカードを五枚引く。先功は翔、譲って貰ったのだ。流石にこのくらいは、プロVSアマチュアのハンデとして当然である。

 翔は無言でカードを引き、モンスターとカードを一枚セットする。

 

「ターンエンドッス」

 

 迷宮兄弟兄の方が、若干戸惑いながらカードを引く。

 

「ドロー!

 ……可哀想とは思うが、容赦しない! 永続魔法、冥界の宝札を発動! このカードは、自分が二体以上の生贄召喚に成功した時、カードを二枚ドローする! 更に魔法カード、フォトン・サンクチュアリを発動! 場にフォトントークンを二体特殊召喚する!」

 

 迷宮兄弟兄の場に現れる、二つの球体。緑色の、土星のような輪っかがくるくると回転している。攻撃力2000、そこそこ高いが攻撃は不可能だ。

 

「フォトントークン二体を生け贄に捧げ、雷魔神-サンガを召喚! 冥界の宝札の効果で、カードを二枚ドロー!」

 

 背中に電電太鼓を持った、ジオングのようなモンスターが現れる。両腕は太いが二頭筋に当たる部分が棒のように細い。赤いプロテクトを付けており、額には雷の文字。

 効果は非常に厄介ではあるが、一度しか使えない。で、あれば勝機はいくらでもある。

 

「カードを一枚セットし、ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!

 魔法カード、おろかな埋葬を発動! デッキからダークシー・レスキューを墓地へ送る! 更にジャンク・シンクロンを召喚! 効果によって、ダークシー・レスキューを特殊召喚!」

 

 十代の場にオレンジ色の帽子を被った機械臭い戦士が、白いマフラーを棚引かせ現れる。その隣には地上には不釣り合いな救命ボートに乗った、黒いクー・スラックス・クランのような奴二人と三名の死体が現れる。

 

「更に魔法カード、機械複製術を発動! 攻撃力500以下の機械族モンスターを対象に、同名モンスターをデッキから特殊召喚する! 来い、ダークシー・レスキュー!」

 

 更に現れる死体を乗せた救命ボート。隣り合うダークシー・レスキュー同士は拳をぶつけあう。アメリカ式友情の証だ。

 

「ダークシー・レスキュー二体にジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンは尻辺りにある紐を引っ張ると、光の輪と化す。その中をダークシー・レスキュー二体が潜り抜け光の柱を化す。

 

「知識に貪欲なるサイバー魔術師よ、無限の知性を我が財産に示せ! シンクロ召喚!」

 

 光の中から、白いマントを翻し現れる一人の魔術師。裏は赤く表は白いマントを棚引かせ、現れる未来の魔術師。白と黒の服はぴっちりとしており、さながら何処かの名のある宗教の牧師のようだ。白い帽子の下で、水色のサングラスが光り輝く。

 

「TGハイパー・ライブラリアン! ダークシー・レスキューがシンクロ召喚に使われたことによって、カードを二枚ドロー! カードをセットし、永続魔法補給部隊を発動! ターンエンドだ!」

 

 攻撃力2400のモンスターを即座に召喚したと言うのに、手札の枚数は三枚。十代のデッキは手札消費が激しいので、工夫すればかなりの枚数ドロー出来るライブラリアンを組み込んだのだ。とはいえ少々爆発力に劣るのが欠点か。

 今やシンクロ召喚は当たり前のように浸透している。流石にかなりのレア扱いではあるのだが、学園内において十代のドロー運を疑う者はもはや存在しない。故に少々、会場が湧く程度だ。

 

「私のターン、ドロー!

 私はフィールド魔法、伝説の都アトランティスを発動!」

 

 場が海中に変わる。上から照らす太陽の光、泳ぐ熱帯魚。遠くには巨大な柱が見える。その昔人が住んでいたのを示すかのような煉瓦造りの建物がいくつも見られる。四人が今立っているのは、遠くに見える巨大な塔へ向かう為の階段の前。さながら決闘場のようになっているが、それを見る都の住人は居ない。

 

「水属性モンスターのレベルを一つ下げるフィールド魔法……まさか!?」

 

「その通りだ。私は魔法カード、デビルズ・サンクチュアリを発動! 場にデビルメタルトークン一体を特殊召喚する!」

 

 迷宮兄弟弟の場に、全身が水銀で出来たスライムが現れる。メタリックな金属色をし、うねうねと液体金属のように海の中を漂う。しかし決して海水に溶けず、異様性を示しているようだ。

 

「そして私は、デビルメタルトークンを生け贄に水魔神-スーガを召喚!」

 

 さながらクレーンのアームのような姿で現れる、水色の魔神。下半身部分を担当している為、アームのような物は足で場にドシン、と大きな振動を齎す。デコの部分に水の文字が記されており、口はまるっきりちん……部分だ。

 元々の攻撃力は2500ではあるが、アトランティスの効果によって200ポイントアップし攻撃力は2700となる。その攻撃力は最上級モンスタークラスであり、そうそう超える事は無いだろう。

 

「カードを二枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 互いにたった一ターンで最上級モンスターを出す。その手腕、確かなものだ。十代も十代で、初手からシンクロ召喚。しかし翔はモンスターを伏せただけ。「あーあー、翔が足引っ張ってるよ」「ありゃもう駄目だな」と野次が飛ぶ。

 十代は心配で翔の方を見やる。その後ろで永理が、不敵な笑みを浮かべた。

 

「僕のターン、ドロー。

 ……リバースカードオープン、重力操作。表側表示で存在する場のモンスターの表示形式を変更するッス」

 

 突然上空から重圧がかかり、ハイパー・ライブラリアンは手に持っている書物風タブレットを操作し、目の前に回転する防御壁を展開する。対してライガは渋く腕を組むだけ、スーガに至っては何も変わっていない。

 これで場に存在するモンスターの表示形式が、全て守備表示となった。しかし、それでも守備力は存分に高く、更に効果によって攻撃した瞬間攻撃力は0となる。

 たとえ古代の機械巨人だろうと、青眼の白龍だろうと戦闘では破壊出来ない。

 

「モンスターリバース、ドリルロイドッス。手札を一枚捨てて装備魔法、閃光の双剣-トライスをドリルロイドに装備するッス。このカードの装備時、攻撃力が500ポイントダウンするッス」

 

 翔の場にあるリバースカードから現れたのは、両手にドリルを持ち鼻にもドリルを付けた、モグラを催したマスコットチックにディフォルメされた機械だった。その両手のドリルに、さながらヘリコプターの羽のように黄金鳥の羽を催した剣が取り付けられる。

 

「チューナーモンスター、ブラック・ボンバーを召喚するッス。効果で墓地から、ステルスロイドを特殊召喚するッス」

 

 新たに現れたのは、漫画チックな悪役顔の爆弾だ。黒い爆弾の側には、赤い眼を付けたブーメラン型の飛行機が音速を超えて現れる。真っ黒な機体、ステルス機。赤い眼を光らせ、敵をロックオンする。ロイドの中では異質と言えるぐらいそれは、戦争的なフォルムをしている。

 

「レベル4のステルスロイドにレベル3のブラック・ボンバーをチューニングッス」

 

 ブラック・ボンバーは自らを爆発させ、白い光の輪を作りだす。その中に音速で飛び込むステルスロイド。回転し飛行機雲の輪を作る。

 その輪がやがて一筋の線となり、その瞬間輪がいきなり縮まりステルスロイドの中に入っていく。するとステルスロイドの身体が七つの光と化し、太い光となる。

 

「死ぬのだけは、死んでもごめんッス。だから僕の敵を、怖い奴を刺して潰してぶち殺せ! シンクロ召喚!」

 

 光をシャベルでかき消し、左手のドライバーを回転させ現れる黄色の、機械仕掛けの竜。四つの羽は赤く光り、メンチのような足の起動を確かめるように動かすときーきー音が鳴る。尻尾は太く、まるで一つのワイヤーのよう。つぶらに見える瞳は非生物特有の冷たい赤い光だけを発し、長い鉄製の首をすくめ敵を見据える。

 

「機械竜パワーツール!」

 

 翔のシンクロ召喚に、会場がどよめいた。翔の運はあまり良くなく、それは月一の実技テストで誰もが知る事実だ。ドロー運というのは、それに作用するようにパック運にも現れる。殆どの生徒はチューナーしか当たらないというのはザラにあるし、ごく稀にだがチューナーだけが当たらずシンクロだけが当たるという者も僅かではあるが存在する。

 そんなオシリスレッドの生徒がシンクロモンスターを使ったのだ、そのどよめきもまた当然と言えるだろう。

 

「ハイパー・ライブラリアンの効果発動! シンクロ召喚を行うたびに、カードを一枚ドローする!」

 

「バトルッス、ドリルロイドで雷魔神-サンガを攻撃ッス」

 

「しかし、表側表示で存在するこのカードを攻撃したモンスターの攻撃力は0となる!」

 

 サンガは攻撃力を下げる作用があるのであろう雷をドリルロイドにぶつける。が、ドリルロイドは全く意に返す事無くサンガの身体に自らの鼻先に付いているドリルで貫いた。

 地獄から響いているのではと錯覚するくらい低い断末魔が響き渡り、雷の文字が砕かれる。

 容易く破壊された事に対し、唖然とする迷宮兄弟。翔は淡々と、事務的に効果を口にする。

 

「ドリルロイドが守備表示モンスターと戦闘を行った場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊するッス。そして閃光の双剣-トライスは500攻撃力を下げる代わりに、二回攻撃出来るようにする効果があるッス。行くッス、ドリルロイド!」

 

 スーガは右足を上げ踏み潰そうとするも、そのまま足裏からドリルによって砕かれる。大きな穴を開けられ、二・三歩たたらを踏んで後ろに下がる。しかし右足を地面につけた瞬間、そこから崩れ砂煙を巻き上げる。

 抵抗虚しく、スーガが破壊された。翔は引き裂いたような笑みを浮かべながら、機械の竜に命ずる。

 

「更に、パワーツールで直接攻撃ッス!」

 

「永続罠リビングデッドの呼び声! 墓地より雷魔神-サンガを蘇生させる!」

 

 地面から腕を出し、自重を持ち上げ現れるサンガ。肩に付いた土を払い、敵に向き直る。機械竜は一旦攻撃を取りやめ、翔の判断を仰ぐ。

 

「攻撃は取りやめるッス。カードを一枚セットし、ターンエンドッス」

 

 翔は内心舌打ちをしながら、カードを伏せる。リビングデッドの呼び声。死者蘇生の罠版のようなものだが、破壊された際その効果で蘇生させたモンスターも破壊してしまうというデメリットを秘めたカードだ。しかし、サイコ・ショッカーに使うか呼び声を使った後に王宮のお触れを使う事によって、そのデメリットを無効にする事が可能。

 対処法は死者蘇生以上にあるが、とはいえ厄介なカードというのに変わりは無い。

 

「私のターン、ドロー!

 手札を一枚捨てTHEトリッキーを召喚!」

 

 迷宮兄弟兄の場に現れる、黒子のようにクエスチョンマークを付けた布で顔を隠した、白黒ピエロが現れる。

 まるで悪魔のように突き出てはいるが、先端は丸い何かでカバーされている耳。薄紫色の手袋、肩には青いマントを留めるガラス製の丸い留め具。左脚は黒く、右脚は白い。そして右脚にだけ、ひし形のひざ当てが付けられている。

 そんなピエロが気取ったようにお辞儀をする。とはいえ出番はこれだけだ。

 

「墓地に捨てたレベル・スティーラーの効果発動! 場のレベル4以上のレベルを持ったモンスターのレベルを一つ下げ、場に特殊召喚する!」

 

 トリッキーが手をポン、と叩き、ゆっくりと開く。するとブローチぐらいの大きさはあるだろう背中に星模様を付けた赤いテントウムシが現れる。

 これで場に生け贄が二体揃った。

 

「THEトリッキーとレベル・スティーラーを生け贄に風魔神-ヒューガを召喚! 冥界の宝札の効果で二枚ドロー!」

 

 全体的に丸い、ロケットパンチでも出来るんじゃないかというぐらい太い腕を付けた緑色の物体が現れる。永理が後ろで「ゾックだゾック」と戯言を抜かすが、十代はそれをスルー。

 蛙のように飛び出た眼、そして鋭い爪。明るい茶色の肩当がまた武器らしさを醸し出しているが、これでもれっきとした魔法使い族である。

 

「更に死者蘇生を発動! 弟の墓地に眠る水魔神-スーガを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 またしても現れるスーガ、サンガが両足を持ち上げ墓地より引っ張りあげられる。これで場に、三体の魔神が揃った。揃えたという事は即ち、そういう事だ。

 

「場の雷・風・水を生け贄に捧げる事で、手札のこのカードは特殊召喚する事が出来る! 出でよ、ゲート・ガーディアン!」

 

 スーガの上にヒューガが、両手を縦にして重なる。ブッピガンというとある世代に聞きなれた音が鳴る。そしてその上から、爪が刺さるようにサンガが重なる。これまたブッピガンと聞きなれた音が鳴る。

 ゲート・ガーディアン。原作では三回までのステータスを下げる事による破壊耐性、ゲームでは儀式によって現れるモンスター、そしてバンダイ版のカードでは三ターンの間すべてのモンスターの攻撃力を0にする効果を持っていた。しかし、OCG版では、今現在の環境で現れたのは、永理の使う究極完全態・グレート・モスと同じく、召喚条件のみで攻撃力だけが取り柄のモンスター。出しやすさで言えばグレート・モスよりは上だが、やはり出しにくいロマンカードである。

 ちなみにこのカードの創造主であるペガサス・J・クロウフォード曰く「もう少しかっこよくできた」らしい。

 とはいえやはり、攻撃力3750。三体分の攻撃力の半分ではあるがその火力は魅力的だ。とてもとても、魅力的だ。

 

「罠カード、奈落の落とし穴を発動! 召喚・特殊召喚された攻撃力1500以上のモンスターを破壊し、除外する!」

 

「甘い! カウンター罠、盗賊の七つ道具を発動! ライフを1000払い、罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

 十代の発動した奈落を、迷宮兄弟弟がカバーする。奈落の落とし穴、割と強いのだが決まる事は稀だ。この世界の住人のドロー運はすさまじく、必ず奈落は発動前に破壊されるか無効にされるか、だ。

 

「速攻魔法、サイクロンを発動! 水色の少年の、右側のカードを破壊!」

 

「……罠カードは炸裂装甲ッス。チェーン発動も出来ないので、破壊されるッス」

 

 サイクロンが翔の足元に直撃した瞬間、爆発が起こる。炸裂装甲が起爆したのだ。攻撃宣言をしていたらやられていた、それを処理できた事に対し安堵する迷宮兄弟兄。

 まだ不安要素こそ残っているが、攻めあぐねていては相手に反撃のチャンスを与えるだけ。そしてここで狙うべきは、反撃のチャンスを掴みとる効果を持つハイパー・ライブラリアン。狙う対象は決まった。

 

「ゲート・ガーディアンでハイパー・ライブラリアンを攻撃!」

 

「罠カード、和睦の使者を発動! このターン俺のモンスターは破壊されず、戦闘ダメージも受けない!」

 

 ゲート・ガーディアンの下半身部分を担当している奴が口から水を拭き、それを中間部分が口から吹き出した風によって速度を上げさせ、一番上の奴が電電太鼓を叩き水に雷を纏わせる。

 しかしその攻撃も、ハイパー・ライブラリアンの後ろから現れた人達によって、どう作用したのかは不明だが無効化された。

 

「……チッ、カードをセットし、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 凄いぜ、そんなモンスターを召喚するなんて! 凄いもんを見せてもらった礼に、俺も本気でやらせてもらうぜ! 手札から沼地の魔神王を捨て、デッキから融合を手札に加える! 更にデブリ・ドラゴンを召喚! このカードの召喚成功時、墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター、沼地の魔神王を守備表示で特殊召喚!

 レベル3の沼地の魔神王に、レベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング!」

 

 十代のお決まりのコンボによって、細長い竜と藻をかき集めて人型にしたような奴が光の柱となる。

 沼地デブリ、このコンボは実際強力だ。グングニールも、氷結界の竜の中で一番の最弱と言われてはいるが、出せれば強いのだ。そこそこ。

 

「氷結界に封じられし暴力の龍よ、その力で我が敵を氷像に代え力を示せ! シンクロ召喚! 氷結界の竜グングニール!」

 

 どういう原理か光の柱を凍らせ、それを砕き中から氷の竜が姿を現す。雄叫び一つと同時に、周囲の空気が凍り、気温を下げる。

 隣のハイパー・ライブラリアンは少し寒そうに身震いした。やはりあの衣装、耐寒性はあまり無いようだ。

 

「ハイパー・ライブラリアンの効果で一枚ドロー! グングニールの効果発動! 手札を二枚まで捨てる事で、捨てた枚数分相手のカードを破壊する!

 手札を二枚捨て、ゲート・ガーディアンと兄の伏せてあるカードを破壊する!」

 

「甘いな、手札からエフェクト・ヴェーラーを捨てグングニールの効果を無効にする!」

 

 グングニールが冷気によって相手の伏せカードを破壊しようとするも、その効果を振るう事は出来ない。それに対ししょぼん、と羽を下げる姿は何処か愛嬌がある。

 

「……カードをセットし、ターンエンド!」

 

 タッグデュエルでは自分のモンスターで、味方モンスターを守ることが出来る。つまり、どちらかに高攻撃力モンスターがいれば直接攻撃する事は不可能なのだ。

 

「私のターン、ドロー!

 魔法カード、死者蘇生を発動! 兄の墓地よりヒューガを特殊召喚! 更にギガ・ガガギゴを召喚!」

 

 凶悪的で攻撃的なトゲトゲとしたアーマーを身に着けた、緑色の爬虫類が現れる。爪を振り上げ、大きな方向を上げやる気十分。ギガ・ガガギゴ、エリアに振られたショックで自暴自棄となり、コザッキーに防錆加工された鎧を身に着けられ、肉体改造を施された結果力の代償として正義の心を捨ててしまったという裏ストーリーのあるモンスターだ。

 暗黒界一強い鮭であるジェノサイドキングサーモンより50高い攻撃力、そしてレベル5。アトランティスデッキであればメインアタッカーとして最適なモンスターだ。

 しかし、出番はこれだけである。

 

「速攻魔法、ディメンション・マジックを発動! 場のギガ・ガガギゴを生け贄に捧げ、手札から魔法使い族一体を特殊召喚する!」

 

 えっ、とでも言いたげな表情で振り返るギガ・ガガギゴ。正義の心を失ってしまっただけで、一応理性はあるのだ。

 そして突然、ギガ・ガガギゴの背後から少々形のおかしい棺桶が生え、開く。その空間から鎖は飛び出し、ギガ・ガガギゴの手足に絡みつく。ギガ・ガガギゴは手足を大きく振り回し激しく抵抗するも、抵抗虚しく棺桶の中へと引きずり込まれた。

 ぎぎぎと音を立て蓋が閉まり、更にその上から山賊が持っている剣のような物が空中に現れ、棺桶を突き刺す。中から悲鳴が上がり、血飛沫が舞う。

 しばらくすると、流れ出る血の色が赤から青へと変わり、闇の魔力だろうか。溢れ出んばかりの魔力によって棺桶の蓋が開かれ、場の闇の煙を一段と濃くする。

 そして、その闇の煙を黒い杖で振り払い現れたのは、この作品で二度目の登場となる、真っ黒な服を着た肌色の悪い魔術師だった。

 

「混沌の黒魔術師! 効果によって墓地の魔法カード、死者蘇生を手札に加える! 更にディメンション・マジックの効果でハイパー・ライブラリアンを破壊する!」

 

 攻撃力2800の、戦闘破壊したモンスターを除外する効果を秘めた、最強の魔術師。更に墓地の魔法カードまで回収出来る効果も秘めている。勿論、かなりのレアカードだ。

 ハイパー・ライブラリアンの後ろから棺桶が生え、両手両足を鎖で縛られ、中に引きずり込まれる。タブレットが地面に落ち、ひび割れる。棺桶の蓋が閉じ、数多のナイフが棺桶を突き刺す。断末魔と同時に、血が噴き出す。どう見ても全年齢向けではない。

 戦闘破壊しダメージを与えるだけならグングニールの方を選んだだろう。しかし、残しておいて厄介なのはハイパー・ライブラリアンの方だ。ドローを大量に出来るという事は、即ち希望を呼び寄せる格率が増えるという事に他ならない。

 

「死者蘇生を発動! 我が兄の墓地よりサンガを攻撃表示で特殊召喚! 更に混沌の黒魔術師を生け贄に、アドバンスドローを発動! レベル8以上のモンスターを生け贄に捧げる事で、カードを二枚ドローする! 混沌の黒魔術師は場から墓地へは行かず、除外される! そして手札を一枚コストに装備魔法、D・D・Rを発動! 除外されているモンスターを特殊召喚させ、このカードを装備する! 再び来い、混沌の黒魔術師! 効果によって墓地の死者蘇生を手札に加える! 死者蘇生を発動! 墓地のスーガを特殊召喚!」

 

 混沌の黒魔術師がいったん消え、そしてまた現れる。若干肩で息をしている風に見える。行ったり来たりはそれはもう辛いのだろう。過労死しそうだ。

 そしてまたしても現れるスーガ、これで場に三体の魔神が揃った事になる。またか、と十代は身構える。

 

「バトル! 混沌の黒魔術師でグングニールを攻撃!」

 

 混沌の黒魔術師が杖から黒い稲妻を出す。グングニールもそれに対抗するように冷気の光線を吐き出す。白と黒がぶつかり合う。しかし、ややグングニールが不利か。徐々に押され始めている。

 まるで白い冷気を侵食するように、黒い稲妻が押し始める。グングニールは思わず押され、じりじりと後ろへと押し出されていく。

 ニヤリ、と笑みを浮かべ、混沌の黒魔術師は更に出力を増加させる。すると突然の火力に対応出来ず、グングニールの身体を黒い稲妻が突き刺す。グングニールは雄叫びを上げ、ハンマーで氷を砕いたように身体を爆散させてしまう。

 

「更に、三魔神で直接攻撃だ!」

 

 スーガが吐き出した水を風によって出力を上げ、更にサンガが電電太鼓を叩きそれに雷を纏わせようとするが、しかしその前にパワーツールが現れ、自らのドライバーを避雷針とし、自らの身体に感電させる。するとエラーメッセージが喧しく鳴り響き、ぷすぷすと黒い煙を関節部から吹き出す。

 

「チッ、だが4900の戦闘ダメージを受けてもらう!」

 

 加速の付いた水の槍が十代の身体を貫く。思わず腕を交差させ、防御姿勢を取ってしまう。勿論ソリットビジョンで闇のデュエルでもないので痛みは無いと解っているのだが、それでも生物的本能が動いてしまうのだ。

 

「カードを一枚セットし、三魔神を生け贄に捧げ、ゲート・ガーディアンを特殊召喚! ターンエンド!」

 

 迷宮兄弟弟が出したのは、二体目のゲート・ガーディアン。攻撃力約4000、やはり凶悪だ。

 十代達のライフは3100、初期ライフから見ればまだまだと感じるが、タッグデュエルにおいては圧倒的に足りない数値。二体のゲート・ガーディアンのうち、どちらかの攻撃が通ればその時点で勝負は決まってしまう。

 次は翔のターン、翔は最初と全く変わらず、半ば機械的にカードを引いた。




 はい、途中の二話をすっ飛ばして迷宮兄弟とのタッグデュエルです。一番苦労したのが、不死式ゲート・ガーディアンデッキなのです。兄は宝札型で、弟はアトランティス軸特殊召喚魔法使いデッキです。ぶっちゃけ強くないです、主軸を普通のに変えた方が絶対強いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。