月影永理の暴走   作:黄衛門

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第23話 四天王ボスラッシュ!!

 デュエルモンスターズオンライン、アンデットワールドに存在する生気を吸う骨の塔内部。

 真っ暗闇の広い空間、無駄に大きなディナーテーブルに座る三人の影。床に敷き詰められた照明に照らされ、まるでペンデュラム召喚を行う際の謎空間のような部屋。アンデット族モンスターの内部だというのに妙に機械チックなのは、何処ぞの奇跡の一本松のようにサイボーグ手術……というか、完璧に改造に近いものを施してしまった為だ。

 

「……絶望はどうした?」

 

「がっこうぐらし! を視聴中だ。あの野郎、日常系アニメと言ってみたらすぐ食いつきやがったよ」

 

 黒いコートに身を包んだ長髪の男、丸藤亮の問いに、白いコートを羽織り、ワイシャツに黒いネクタイを付けた細身の青年──永理が、眼鏡を光らせながら答える。この恰好は課金で手に入るコスチュームだ。

 今居ない一人も含め、彼らはダメ人間である。そして同時に、デュエリストとしてかなりの実力者でもあるのだ。馬鹿に限って実力が高いのは、この世界では常識である。勿論それ以外にも居る事には居るが、実力者を圧得たらやはり、やはりどうしても変人が大多数を占めてしまうのだ。

 

「うわ、酷いですね」

 

 緑髪の顔にかかるほど長い髪の男が、くつくつと笑いながら言う。

 

「なに、ニトロプラスとだけ教えてあげたんだ。慈悲はあるさ」

 

 それに対し男がもう一度笑い始めた。

 ほんわかした感じだが、永理と亮はこの二人と出会った時明らかに『普通ではない』と感じ取った。世界を容易に変える力を、直感で感じ取った。が、それはまた別として趣味が合ったので、こうしてふざけ合っているのだ。

 

「酷い人だ貴方方は……どいつもこいつも引きずり込んで、オタ道に向かって進撃させる気だ」

 

「俺は道を示しただけだ。その道を進むと決めたのは、道に魅了されたのは君達だ」

 

 そう、彼は道を示しただけである。無数に……それこそ、デュエルモンスターズのカードより多い選択肢の中から選んだのは、彼らだ。世界は全て選択によって出来上がる。誰がどのように動こうと、並べられたレールから外れる事は出来ない。

 それがこの世の理、それがこの世の真理。彼らがオタになってしまったのも、また当然の事である。

 

「……」

 

 突然光が円状に現れ、げんなりとした様子で、カラフルな髪色をした女性が現れる。とはいえこの世界は所詮ゲームの世界、ネカマというのも普通にあるのでこの世界の性別をうのみにしてはいけない。

 ふらふらと、まるで風邪でも引いたかのように椅子に座り、ぐったりと机に突っ伏す。

 

「……これが絶望か」

 

「随分と調子悪そうですね、絶望さん」

 

「ナイトゴー=サン、今現在私の心はボロボロだ。きんモザと同じゆるふわ系かと思っていたら……」

 

 緑髪の青年、ナイトゴー。名前からわかる通り、このゲームでのハンドルネームである。デュエル中はまるでオーメル仲介人のように嫌味ったらしい敬語が特徴的な青年だ。

 カラフルな髪色の女性? のハンドルネームは絶望、胸は平均である。何かと絶望し、絶望と口にする絶望野郎である。デュエルの腕は中々のものだが、時折テンションが可笑しくなってフィールド魔法と合体したがるのが欠点だろうか。

 とにかく、絶望の心はズタボロ。涙目で永理を睨み付けるも、永理はニタニタと意地の悪い笑みを浮かべているだけ。

 

「生まれ変わっても、恨み晴らすからな!」

 

「ああ、構わんよ。それまで生きていたらな」

 

 絶望からの恨み言を適当に流し、永理はテーブルを叩く。するとテーブルの一部分が回転し、昔懐かしの上に猫が乗れそうなパソコンが現れる。

 電源を入れ、数十秒ほど待つとパソコンが起動。もんむすくえすとの壁紙が表示されるが、すぐに永理はカメラ型アイコンをダブルクリック。外の監視カメラから様子を見る。

 何か変な兜を被った完全装甲な人と、黒い制服に身を包んだ見慣れた顔の男。万丈目というのは解ったが、その隣に居る鎧の奴の正体は解らない。

 そして何より気になるのが、まんま金剛の恰好で背中にKONGOHを背負った奴と、『興』という感じのバケツを被り手にハサミ、ふんどし一丁で無駄にムキムキな男。ぶっちゃけ永理としても関わりたくない存在だ。

 だが、永理は口角をニヤリとあげる。変な恰好をしている変な人というのは、総じて実力が高い。どういう原理が働いているのかはわからないが、とにかく高いのである。そして何より、久しぶりの挑戦者だ。

 

「……挑戦者が来た」

 

 永理のその一言で、場の雰囲気が一気に変わる。

 彼らはふざけ合う馬鹿な名も知らぬ友人同士ではあるが、唯一初対面から共通しているものがある。それは、強者が好きというものだ。十代と万丈目、その実力は永理もよく知っており、そして意外とデュエルをした事が無い。二章に入るまで主人公が原作主人公がデュエルした事が無いというのもどうかと思うが、結果的にそうなったのだから致し方あるまい。そしてそれは、万丈目にもまるっきり当てはまる。

 残る二人は恰好こそ変ではあるが、そういう奴は強いのだ。自然と期待を持つ事が出来る。

 

「やっと来ましたか……次の挑戦者が」

 

 久しぶりの対戦相手に、隠し切れない獰猛な笑みを浮かべながらナイトゴーが言う。

 

「歓迎しよう、盛大にな」

 

 絶望は顔色を取り戻し、くつくつと笑う。

 がっこうぐらし! で受けたダメージを八つ当たりで発散する気満々である。

 

「サイバーダーク流の切れ味……とくと試させてもらおう」

 

 亮は新たに手に入れたデッキを試したくてうずうずしているようだ。

 永理は足を組み、パチンと一つ指を鳴らす。すると三人はそれを合図に、下の階へと降りていく。

 彼らの持つライフは、買い物やらで消費され尽くしており8000程度。果たして相手のライフはどれほどのものか。口角を上げながら、永理は不可視のアイテムボックスから黒いデュエルディスクを取り出し、装備した。

 

 

 所変わって、席を吸う骨の塔の外側。紫色の濃い霧で天辺が見えない、生物の骨だけで構成された白い塔。

 血の池、飛び交う人魂を見て四人の表情は何処かやつれていた。歩くたびに足元に落ちている骨が砕け、骨粉が舞う。

 正直言って、帰りたい。任務とかもうリタイアして、前渡金だけ受け取ったので滅茶苦茶帰りたいのが、十代と万丈目の心からの思いであった。ちなみに万丈目は、スカイスクレイパー(ネオサイタマ)を抜けた辺りでおジャマ・イエローの被り物を脱いでいる。一応デスポーンした際に使うのでまだ所持している状態だが、出来ればもう被りたくない。何故か妙におっさん臭いのだ。

 別に二人とも、アンデット族が苦手という訳ではない。ただ、五感まで完璧に創り上げたこの世界──そんな技術で再現されたアンデットワールドとなると、当然付いてくるのは臭いである。

 腐った臭いというのは、どうしても人の気持ちをブルーにする。それはもう生理的に組み込まれているもので、一部の変態を除いてそれらは出来れば感じ取りたくないものなのだ。

 

「ううっ、変態共め……ここまで再現するか」

 

 ジャックが人間でいう鼻に当たる箇所を手で押さえながら、そうぼやく。マスクに消臭効果は組み込まれていないようだ。

 

「では、早く乗り込みまショウ。オープンセサミ!」

 

 バン! と強く骨製の扉を開ける。敵地だというのに警戒心ゼロだが、ここはゲームの世界。例え罠があったとしても、詰めデュエルとかそういうのばかりだ。

 扉を入ってまず目に飛び込んできたのは、見るからに近未来的な光景だった。

 真っ白なタイルの床、無駄にピカピカ赤く青く点滅するランプが仕込まれている液状コンクリート色の壁。天井にはランプがむき出しで、まるで筑紫のように生え出て部屋を照らす。

 何というか、まんま間違った古臭いSFの世界に放り込まれた気分だ。というより、外との景色の差に、一同唖然とする。

 そんなよく解らない部屋に立っていたのは、黒いコートを羽織った、緑色の長い髪の男。彼の後ろに、上へと続くエレベーターがある。この世界はゲームの世界、万が一の災害も起きないので非常口は作られていない。

 

「ようこそ、骨の塔へ。私は四天王が一人、ナイトゴー」

 

 くつくつと笑いながら、ナイトゴーは自己紹介を簡潔に終えデュエルディスクを起動させる。

 

「さあ、私の相手は誰かな? 負けはしませんよ、事故らない限りは」

 

「……私が行きまショウ」

 

 デュエルディスクを起動させ、金剛が前に出る。十代と万丈目は止めようとするも、ジャックがそれを手で制す。十代と万丈目は少し迷うも、金剛を置いてエレベーターの方へと走った。

 ジャックは金剛の顔を見る。金剛は頷き、ジャックも頷き返してから、エレベーターへと向かった。

 

「私はライフ8000で挑みます。そちらは?」

 

「……私も同じ、8000デース。来なさい!」

 

 そんな会話を最後にエレベーターは閉じ、上の階へと昇って行く。

 天井に埋め込まれたランプに照らされ、少々広めのエレベーターの中で十代と万丈目は心配そうな顔をしている。

 

「奴は強い、実力はこの俺が保証する」

 

「……そうか、そうだな。それに、別に負けても、殆ど何もないようなものだし」

 

 そう、この世界でたまに賞金を賭けた大会が開かれたりもするが、別に闇のゲームとか、何か大切な物を取り戻す為とかそういうのは全く無い。

 ただ単に学園の友達を、少しばかり懲らしめに行くだけだ。死んでも精々デスポーンされるくらいだ。

 

「……一つだけ、聞かせてくれ。君達は何故、このゲームを始めた?」

 

 突然のジャックの問い。妙にシリアスな雰囲気だが、ジャックの恰好のせいで全然シリアスになれない。その問いに答えたのは、十代だった。

 

「ゲームをやり込みすぎてて、最近外へ出ない友達が、この世界で四天王ってのをしてるらしいんだ。まあ、説得の為かな」

 

 ここで『報酬の為』と答えても利益は無いだろう。で、あれば納得できるだけの嘘をついておくのが得策と十代は即座に考え、それを口にした。それに、強ち間違いでもない。実際に冬休みの間、永理の顔を見たのは飯時だけだ。ジャックはそれに対し納得したのか頷く。

 丁度それと同時にチン、と軽い音が鳴り、エレベーターが止まる。扉を開けると、そこは一階より近未来的な部屋となっている場所に付いた。

 中心部分に存在する、敵を睨み付ける赤い眼を付けた丸っこい壁模様。四機八門のミサイルポッドが赤い眼の下部分に付けられている。部屋の中心部分には卵状のコアと、まるでリンカーン大統領像が座っている椅子のような機械。壁も床も、まるでエネルギー路のような六角形のデコボコした何かに、天井、床、壁に取り付けられており、見るからに歩きにくそうだ。

 その中心部分に立つのは、カラフルな髪の女性。白いぴっちりとしたパイロットスーツ、肩幅が妙に広い。だがそれより目を引くのは、卵状のコアに下半身を埋めている事だろう。

 

「骨の塔へようこそ。

 これがフォルテシモだ

 私はついにこいつと一体になった

 もう誰にも私を止めることはできない

 死ね」

 

 死亡フラグビンビンな台詞を、十代達に投げかけてくる。しかもどういう訳か、妙にドヤ顔だ。

 次はジャックが、デュエルディスクを起動させる。

 

「先に行け。友達が待っている……あれ?」

 

 ジャックが振り向くと既にそこの十代達の姿は無く、彼らはエレベーターの方へと走って行っていた。

 エレベーターに乗り込んだ二人を見て、なんか言葉に言い表せない妙な感覚を感じながらも、取りあえずカードを五枚引く。

 十代達がサムズアップし扉が閉まると同時に、ジャックは一枚のカードに手をかけた。

 

「なんだこれ」

 

 エレベーターの中、十代は思う。何だこれ、と。どういう訳か半裸のバケツ頭被ったおっさんと、まんま金剛が自分の為にデュエルをする。言い得て妙な話だ、言葉にするだけでもう訳が解らなくなる。

 このカオスな空間を作り錯乱させるのが永理の狙いだとしたら、それは予想以上の効果を上げただろう。そう思えるくらい、十代の頭は混乱していた。

 そもそも最初から、恰好からしておかしいのだ。赤いマント、トゲトゲした兜、黒い鎧。つい好奇心の赴くままに覇王を選んでしまった結果がこれである。

 様々なものがたった一時間足らずで起き、頭の中をぐりぐりと鉄の棒でかき混ぜられたように、情報の処理が追いつかない。

 チン、と音が鳴る。もう永理と亮しか残っていないが、果たしてどんな格好をしているのか。少しばかり気になるが、それと同じくらい恐怖心もある。言い知れぬ恐怖、混乱、人のペースを乱すのにこれ以上に最適なものは無い。

 扉がゆっくりと開く。

 

「久しぶりだな」

 

「丸藤……亮!」

 

 黒いコートに身を包んだカイザー。ズボンもベルトも黒く、白いラインが入っている。時代を少々先取りしているような気がしないでもない恰好。

 カイザーは不敵に笑いながら、デュエルディスクを起動させる。

 

「十代、お前は先に行け。俺はこいつと──ケリを付ける」

 

「貴様らにロリタズマ計画の邪魔はさせん」

 

 もうなんか計画の名前からしてろくでもないオーラがプンプン漂っているが、顔だけは無駄にシリアスだ。

 しかし、ツッコミを入れるのも野暮という雰囲気が漂っているので、十代はもごもごとツッコミを入れられずにいる。

 

「機械娘成就の為に! 行くぞ!」

 

「カイザー亮……大げさな伝説も、今日終わりだ!」

 

 万丈目がカードを五枚引き、カイザーも不敵に笑う。それが、エレベーター内で見た二人の最後だった。

 決して長くないエレベーターの中で、十代は考える。

 エレベーターが上がっていく。残る相手はただ一人、これまで戦った事の無い相手。ここに来るまでの間にいくつかのNPCと対戦し、試運転は十分に兼ねた。既にデッキの基本操作は、大体掴んだ。

 しかし、相手はあの永理。グレート・モスとかいうふざけたデッキでコピーとはいえサイバー流のデッキを撃ち破った永理である。付け焼刃で、はたして通用するのか。

 チン、と鳴った所でネガティブな考えを全て振り払う。何でもやってみなければ、何も解らない。それを十代は、誰よりも知っている筈だ。自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと開く扉を睨み付ける。

 

「骨の塔へようこそ。

 歓迎しよう、盛大にな!」

 

 そこは、真っ黒な空間だった。床に敷き詰められた蛍光灯以外は全て黒で支配されており、窓というものが存在しない。

 そんな空間の中、黒い革製の椅子に足を組んで座りながら、十代にそう言ったのは永理だ。

 

「……連れ戻しに来た。二万円の為に、勝たせてもらうぜ!」

 

「よかろう、やってみろ。この永理に対して!」

 

 今ここに、世界一しょうも無い負けられない戦いが、幕を切って落とされた。




 短くてー、巻きで行ってー、キャラも崩壊ー。解りにくかったりしたらすんません。あと短くてすんません
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