少佐、という階級がよく似合いそうな白い服の上に白いコートを羽織った永理を前と向かい合うのは、覇王という名称が似合いそうな黒い鎧に身を包んだ十代。二・三期ほど先取りしている恰好だ。
二人は互いに、デュエルディスクを構えている。二次創作において原作主人公とオリ主がデュエルするのは半ば通過儀礼なのだが、二十七話目にしてやっとというのは中々無いだろう。しかもお互いに、現実に使っているデッキとは違うのだ。
永理は何処ぞの戦争狂のような笑みを浮かべながら、十代は苦笑いしながらカードを五枚引く。
「まさか、お前との初デュエルがこれになるとは……」
「フハハハハハ、人生何が起こるか解らんものだな!」
十代の呆れた様子の言葉に、妙にハイテンションで答える永理。何故妙にテンションが高いのか、それはどういう訳か永理の中で「ラスボスはハイテンションに、そりゃあもうメタルウルフに」という割と間違った認識があるからだ。まあある意味間違ってもいないだろう、アメリカのB級映画の世界での話だろうが。
「「デュエル!」」
永理のデッキは未知数、十中八九この世界に来た影響でデッキは変わっているだろう。十代の中でワクワクと同時に、一抹の不安を覚える。何かやらかすのが永理なのだ。
「俺の先功、ドロー!
俺はモンスターをセット! 更にカードを三枚セットしてターンエンド!」
堅実な出だし。普段の奇行からは考えられないが、永理はデュエルにおいて、先手は取りあえずおとなしいのだ。先手は。
勿論、それらは何かをやらかす前準備である。どうせ永理の事だから、想像だにしないようなデッキなのは明白だ。十代とて、伊達に友人をやっていないのでそれくらいは解る。
「俺のターン、ドロー!
魔法カード、E-エマージェンシーコールを発動! デッキからE・HEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキから、フェザーマンを手札に加える!
更に召喚僧サモンプリーストを召喚!」
白い髭を弄りながら、ニタニタと意地の悪そうな笑みを浮かべる白髪の爺が現れる。
「効果発動! 手札から超融合を墓地へ捨て、デッキからレベル4のモンスター一体を特殊召喚する! エアーマンを特殊召喚! エアーマンの召喚・特殊召喚成功時、デッキからHEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキからE・HEROバーストレディを手札に加える!」
青い鎧に身を纏った青い肌の、妙に尖ったヘルメットを被ったヒーロー。背中には巨大なファンを付けた羽が付いている。
超融合、どういう訳か覇王を選んだ際に変化したデッキの中に入っていたカードの一枚だ。とはいえ、効果は覇王のデッキと全くもって関係ないのだが、だというのにどういう訳か抜けず、苦肉の策としてサモンプリーストを導入したのだ。
ちなみに色々と先取りしているが、これは仮想世界なので何の問題も無い。
「ダーク・フュージョンを発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合! E-HEROインフェルノ・ウィングを融合召喚!」
十代の場に現れたのは、丸っきりフレイム・ウィングマンと反対のモンスター。カラスのように真っ黒な羽、何処となくボディペイントを思わせる赤いタイツ、両手の上に指とはまた別にある鍵爪。腰にあるスカートめいたマント。黒紅葉な頭だが、何より女性なのだ。そう、女性なのだ。
「バトルだ! インフェルノ・ウィングで伏せモンスターを攻撃! インフェルノ・ブラスト!」
「甘いぞ十代! 永続罠、人海戦術を二枚発動!」
永理は罠カードを発動したが、インフェルノ・ウィングはそれに意をも課さず手から出した蒼い炎で、永理の伏せモンスターを破壊する。永理の伏せていたモンスターは弾圧される民、布の服に身を纏った奴隷が、断末魔を上げながら燃え炭となっていく。
「インフェルノ・ウィングは貫通効果を持つ。更に、戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、攻撃力か守備力、どちらか高い数値分のダメージを相手ライフに与える! 弾圧される民は守備力2000、ダメージ2000ポイントを受けてもらう! ヘルバック・ファイア!」
インフェルノ・ウィングが天高く飛び、両手を大きく開く。すると永理の眼の前から津波のように、蒼い炎が現れ永理を飲み込む。
効果だけを見れば明らかに、フレイム・ウィングマンの上位互換である。だが専用の融合魔法に、E-HEROのサポートカードであるスカイスクレイパーを共有出来ないのは少々痛いデメリットだ。
「エアーマンで直接攻撃!」
エアーマンの羽から恐ろしい切れ味の竜巻が現れる。
「リバースカードオープン、リミット・リバース! 墓地から攻撃力1000以下のモンスター一体を攻撃表示で蘇生させる!
俺は墓地の弾圧される民を蘇生! そして死ね!」
「……何か心が痛むが、許しは請わん恨めよ。エアーマン、弾圧される民を攻撃しろ」
またしても現れた弾圧される民は、蛮勇にも手に武器を持って立ち向かう。しかしエアーマンの羽から現れた竜巻によって全身が引き裂かれ、血飛沫を上げ宙を舞う。竜巻が消えると数秒ほど遅れて、どさっと上から弾圧される民だった死体が、まるでブロック肉を作るベルトコンベアに巻き込まれたかのように肉と血に染まったボロ布に姿を変え振ってきた。
「カードをセットし、ターンエンドだ」
「エンドフェイズ時、人海戦術の効果発動! 自分場のレベル2以下のモンスターが破壊され墓地へ送られた時、デッキから破壊された数だけレベル2以下の通常モンスターを特殊召喚する! しかも効果は重複する! 俺はデッキから弾圧される民二体と、千眼の邪教神、バットを守備表示で特殊召喚!」
永理の場に、レベル1の通常モンスターだが一気に四体もモンスターが揃った。
相変わらず鞭で叩かれている弾圧される民。キウイに大量の眼と紫色の布を被せた手足、ウォーリーの服のような尖がった帽子に青いマントを付けた変な物体。扇子のような羽を付けた、背部に付けるスラスターのような何かが現れる。
シンクロ召喚が現れてから低レベルモンスターにも注目が集まるようになってきたが、だとしてもやはり通常モンスターは相変わらずなのだ。だというのに、何故態々そんなデッキを使うのか。十代には見当が付かないが、永理は元々グレート・モスとかいうロマン以外何のメリットも無いデッキを使っている事を思い出し考えるのをやめた。
「俺のターン、ドロー!
魔法カード、馬の骨の対価を発動! 場の通常モンスター一体を生け贄に捧げ、カードを二枚ドローする! 弾圧される民、俺の為に死ね!」
弾圧される民の姿が、まるで植物の生長を早送りで見ているように肉が削げ、眼球から水気が無くなり、皮膚も収縮していく。数秒後には物言わぬ骨と化した。
「そしてもう一枚! そしてもう一体! 民は俺の為に死ね!
魔法カード、機械複製術を発動! デッキからバット二体を特殊召喚!」
二個の弾圧される民だった骨から、羽に何かコクピットを付けただけのような物体が骨を蹴散らしながら飛び出す。これで永理の場に、モンスターの数が戻った。
守備力こそ弾圧される民より下ではあるが、その分インフェルノ・ウィングの効果で恐ろしいダメージを受けるデメリットを意識せずに済む。
ここら辺りで、十代は何となく永理のデッキがどんなのかに検討が付いた。通常モンスターが複数組み込まれ、更にドローカードが豊富という所から、エクゾディア。もしくは下剋上の首飾りを使ってのロービート。大体その辺だと、誰もが思うだろう。
「魔法カード、おろかな埋葬を発動! デッキから絶望神アンチホープを墓地へ送る!」
だというのに、名前からしてそのどちらでもないカードの名前を聞き、訳が解らなくなった。
「場のレベル1モンスター四体を墓地へ送る事で、手札・墓地からこのカードを特殊召喚する! ラスボスらしく、パーッと行くぜ! 絶望神アンチホープ!」
それはとても大きく、そして恐ろしかった。十代は一度だけ、ブラウン管テレビの画面越しにではあるが神の姿を見た事がある。オベリスクの巨神兵──それと姿を合わせてしまうが、だが全身からにじみ出る希望への恨みが、それを否定する。
真っ黒な身体は人型のようで、鎧のように肩の部分が尖っている。胸当ての下にはブラックパールが埋め込まれており、腕を覆う服はボロ布めいている。脚の鎧は丸く、通気性を保つ為皿部分辺りに穴が空いている。何より特徴的なのが、太陽のように大きな、背負っている丸い物体だろう。黒く、そして太陽のように剣が突き出ている。
「攻撃力……5000だと!?」
「しょっちゅうそれ超えているお前が驚くんじゃない! まあいい、バトルだ! インフェルノ・ウィングに攻撃!
アンチホープの背中に付いている剣がまるで黒ひげのように飛び出し、インフェルノ・ウィングに降り注ぐ。二本がインフェルノ・ウィングの羽を突き刺し、地面に固定。そして三本で身体が串刺しにされ、蒼い血を吹き出す。
絶望神アンチホープの効果は、出す難易度と釣り合ってるかと尋ねられたら首を傾げるがその性能はかなり高い。少なくとも、グレート・モスなんぞよりよっぽど。勿論、倒す事は容易だ。だが永理のデッキは、レベル1を素早く展開する事に長けている。倒しても、また出されるのが落ちだろう。
だが、攻略法が無い訳ではないのだ。
「モンスターをセットし、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!
魔法カード、強欲で謙虚な壺を発動! デッキトップから三枚を捲り、その中の一枚を手札に加え、残りはシャッフルする! 俺のデッキトップは精神操作、E・HEROプリズマー、メタモルポット! 俺は精神操作を手札に加える! モンスターをセットし、カードをセット! ターンエンドだ!」
キーカードは来た、後は次のターンを凌ぐだけ。十代は頭の中で自分を奮い立たせる。永理のデッキはいつも度肝を抜く、先の読めないデッキで挑んでくる。だが、大抵のデッキは一つのロマン特化。付け入る隙は幾らかはある。攻略法がある難敵というのは、相手にしていてとてもワクワクしてくるものだ。
「防戦一方か、俺のターン!
バトルだ! アンチホープで伏せモンスターを攻撃!」
アンチホープの背中から剣が一本飛び出し、十代の伏せモンスターを破壊する。十代が伏せていたカードは、イリュージョン・フュージョニスト。魔法カード融合に書いてある、ドラゴンと混ざり合う悪魔の姿。大した抵抗も無く、しめやかに爆裂四散。
「カードを一枚セットし、ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!
見せてやるぜ、最強の融合って奴をな! ジャンク・シンクロンを召喚! 効果で墓地のイリュージョン・フュージョニストを蘇生! レベル2のイリュージョン・フュージョニストに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
生命司りし神秘の竜よ、今こそ聖壁となって我を守りたまえ! シンクロ召喚! 転生竜サンサーラ!」
輪と星から溢れ出た光の塔から現れたのは、冥界と現世を繋ぎとめる黒い炎に身を包み、胸にアンクの模様を付けた、黒い竜が現れる。顔はなんか鬼のように棘が生えている。竜中部分は、まるで生命の鼓動かのように赤く光っていて、とても神秘的だ。
転生竜サンサーラ、効果は中々のものだが十代によっては、シンクロの過程こそが大切なのだ。
「シンクロ素材としてイリュージョ・フュージョニストが墓地へ送られた事により、デッキから融合またはフュージョンと名の付いたカード一枚を手札に加える! 俺はデッキから、ダーク・フュージョンを手札に加える!
そして魔法カード、精神操作を発動! 相手モンスターのコントロールを得る! 俺はアンチホープのコントロールを得る!」
神のくせして精神を操作されてしまい、ふらふらと十代の場に行くアンチホープ。所詮、神なんぞ名前だけなのだ。デュエルモンスターズというものは。
精神操作は相手モンスターのコントロールを得るが、生け贄に使う事も攻撃に使う事も出来ない。シンクロ召喚の登場でようやく日の目を浴びたカードである。
だが、何もシンクロ召喚に使う事だけがこのカードの存在意義ではない。特に、HEROデッキに関して言えば。
「魔法カード、ダーク・フュージョンを発動! 場のアンチホープと、手札の融合呪印生物―闇を融合! E-HEROダーク・ガイアを融合召喚!」
アンチホープと、まるで脳味噌のようにも見えるぐちゃぐちゃの物体が混ざり合い、白い石製の鎧に身を包んだ、悪魔の羽を生やしたヒーローが現れる。両手は鍵爪のように鋭く、細長くも銛のように鋭い尻尾。どちらで貫かれてもとても痛そうだ。
「ダーク・ガイアの攻撃力は6000。E-HEROヘル・ゲイナーを召喚し、効果発動!」
装甲の下から筋肉が覗く、悪魔のようなトゲトゲとした兜と鎧に身を包み、ぼろいマントを翻した悪魔が現れたかと思うと、すぐに消えた。
「ヘル・ゲイナーは自身を除外する事で、場の悪魔族モンスター一体の攻撃回数を一回増やす。バトルだ! ダーク・ガイアで伏せモンスターを攻撃! ダーク・カタストロフ! 更にダーク・ガイアの効果発動!」
ダーク・ガイアが天高く飛び、力を込める。するとそれに答えるかのように巨大な隕石が次々と、伏せモンスターに降り注ぐ。しかもどういう訳か、まるで磁石に引き寄せられるかのように永理の伏せていたモンスター──プチモスがリバースし、攻撃体制を取ってしまう。
「なっ!?」
「ダーク・ガイアの攻撃宣言時、全てのモンスターは攻撃表示となる。例え小虫一匹でも容赦はせん、焼き尽くせ!」
蛮勇にも攻撃体制を取っていたプチモスは、当然当たり前のように隕石の下敷きになり、ぷちりと潰れてしまう。だが、それでもなお隕石は降りやまない。
「トドメだ、ダーク・ガイアで直接攻撃!」
「とっ、罠カード発動! 体力増強剤スーパーZ! 2000以上のダメージを受ける際、ライフを4000回復する!」
「仕留め損ねたか、ターンエンド!」
「エンドフェイズ、デッキから骨ネズミ二体を特殊召喚!」
背中部分が腐り落ちたかのように骨が覗いている赤茶色いネズミが、二匹現れる。
首の皮一枚、本当に一枚だけだが耐え凌ぐ事が出来た。ギリギリ、本当にギリギリだ。しかし、永理がこの攻撃を耐えたとしても、他はそうはいかない。例えば、骨の塔等は。
あの攻撃による衝撃で壁に、床にも亀裂が入り、骨の塔が崩れていく。まず最初に崩れ落ちたのは、壁だ。骨の塔周辺を飛び交っていた青白い人魂や、深海魚の鮫のように張り裂けた口が特徴的な死霊ゾーマ、両目が黒く窪んでいる沈黙の邪悪霊が飛び交う様子が見られる。その瞬間デュエルディスクから音声が流れる。
『デュエルフィールド変更、アンデットワールド』
無機質な音声が流れると同時に、床が崩れ落ちた。先ほどまで平行して飛んでいた死霊たちが、上へと昇って行く。否、彼らが落ちて行ってるのだ。落下していく中でも、デュエルは中断されない。そして、数十秒ほどで地面に付く筈なのだが、一向に地面へとたどり着く気配は無い。
「なっ、何だこれ!?」
十代の赤いマントが物凄い勢いではためく。永理の場合は肩にかけていただけのコートが、既に何処か遠くへと飛んで行っていた。
「ラスボス戦って雰囲気出てきたな、いいねえ面白くなってきた! ドロー!
魔法カード、トライワイトゾーンを発動! 墓地からレベル2以下の通常モンスター三体を蘇生させる! 来い、バットスリー!」
三体のバッドが蘇ると同時に、その身体に錆が浮かび上がる。機械にとって錆びるのは、死と同意味なのだ。
「更に魔法カード、弱肉一色を発動! こいつは場にレベル2以下の通常モンスターが五体居る時にのみ発動が可能! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、レベル2以下の通常モンスター以外を全て破壊する!」
骨ネズミ二匹がバットにぶら下がると同時に、突然空中で爆発が巻き起こる。すると十代の場から、カードが全て消え去った。当然、永理の伏せていた罠カードも、全て。
そして十代は舌打ちし、永理はしてやったりな様子で手札を全て墓地へと送る。
しかし、十代もやられっぱなしではない。手段の為に出した目的のモンスターが、ここにきて役に立ったのだ。
「転生竜サンサーラの効果発動! 相手の効果によってこのカードが墓地に送られた場合、または相手との戦闘で墓地へ送られた場合、自分または相手の墓地からモンスター一体を蘇生させる! 俺は墓地から、弾圧される民を守備表示で召喚!」
十代の場に、肉壁となる民がぼろい布を見に纏って現れる。見た感じではとても守備力2000もあるとは思えない。
「それがどうした! バットスリーと骨ネズミを墓地へ送り、墓地からアンチホープを蘇生!」
バットが三機と、骨ネズミが光りと化し消え去り、代わりにまたしてもアンチホープが蘇る。ちなみにバットにぶら下がっていたもう一匹の骨ネズミは尻もちをついた。空中なのに。
「バトルだ! アンチホープで民を処刑せよ!」
アンチホープの背中から放たれた剣は、民の身体を次々と貫いていく。身体を真っ二つにされる者、腕だけが斬り落とされる者、足だけが斬り落とされる者、目の前で寝食を共にした仲間を無残にも殺される者。誰もがさして抵抗も出来ずに、無残にも死んでいく。
「これでターンエンドだ!」
今、場を制しているのは確実に永理だ。アンチホープの召喚条件の難しさというデメリットを、弱肉一色による低火力のデメリットをカバー出来るようにしている。永理は、プレイングセンスに関しては、学園内でも飛びぬけているのだ。ただその発想が異次元というだけで。
「俺のターン、ドロー!
手札がこのカードのみの場合、こいつを特殊召喚出来る! 来いっ、E・HEROバブルマン!」
十代の場に、水色のヘルメットを被り白いマントを付けたヒーローが現れる。背中には貯水タンク、右腕から水を噴射するのだろう。全身青いプロテクターで、丸みを帯びた肩を見て永理は「アクアビットマンっぽい」とふと思った。
「バブルマンの召喚・反転召喚・特殊召喚成功時、自分に手札が無く、自分場にこのカード以外のカードが存在しない場合、カードを二枚ドロー出来る! 更に、貪欲な壺を発動! 墓地のエアーマン、バーストレディ、フェザーマン、E-HEROインフェルノ・ウィング、そして転生竜サンサーラをデッキに戻し、カードを二枚ドロー!
魔法カード、E-エマージェンシーコールを発動! デッキからE・HEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキから、E・HEROエアーマンを手札に加え、召喚! 効果発動!
デッキからHEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキから、E・HEROフェザーマンを手札に加える! 更にE・HEROを手札に戻し、手札のA・ジェネクス・バードマンを特殊召喚する!」
十代の場に背中に巨大なファンを二つ付けたヒーローが現れたかと思うと、すぐにバウンズされ荒ぶる鷹のポーズをしたメカメカしいオウムが現れる。身体の装甲は緑色で、どこぞの戦闘服のような形。顔は黒く、足にも十分な装甲。羽は飛ぶというより滑空する為だろう、羽部分の下にはジェットパックがある。
「魔法カード、天使の施しを発動! カードを三枚ドローし、二枚捨てる! 更に死者蘇生を発動し、墓地からチューニング・サポーターを蘇生させる! 更に魔法カード、機械複製術を発動! 攻撃力500以下の機械族モンスター二体をデッキから特殊召喚する!」
十代の場に、中華鍋を被った黄色いちっちゃなモンスターが現れる。
「チューニング・サポーターはシンクロ素材に使う場合、レベルを2として扱う事が出来る! 俺はレベル2となったチューニングサポーター二体とレベル1のチューニング・サポーターにレベル3のA・ジェネクス・バードマンをチューニング!
心にどデカい拳を持ち、優しい心を持った戦士よ! 今ここで、俺に力を貸してくれ! シンクロ召喚! ギガンティック・ファイター!」
まるで骨のように白い鎧に身を纏った、馬鹿みたいに大きな戦士が現れる。腕も脚も身体も、何もかもがとにかく分厚く太い装甲。腕にはパワーアシストをする特殊な青い装置が組み込まれている。肩にはそれをサポートするジェネレーターだろうか。顔は装甲の上にサングラスをかけていて解らないが、とにかく全てが太いの一言に尽きる。
「チューニング・サポーターがシンクロ素材として使われた事により、カードを三枚ドロー! ダーク・フュージョンを発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合し、E-HEROインフェルノ・ウィングを融合召喚!」
またしても現れたインフェルノ・ウィング、その顔は何処か疲れた様子だ。とはいえ、それもこれで終わり。最後の見せ場だ、とパチンと自分の頬を叩きやる気注入。そろそろ十代も、遠くから眺める景色に飽きてきた所だ。
「なっ、まさか……そんな筈っ!!」
「バトル! インフェルノ・ウィングで骨ネズミを攻撃! インフェルノ・ブラスト!」
インフェルノ・ウィングが最後の見せ場とばかりに空中を蹴り、空を飛ぶ。そして両手を合わせ、蒼い炎の残光を描きながら、骨ネズミへと槍のように一気に突っ込む。
骨ネズミの身体は元々腐っていたからかバラバラに砕け散ると同時に、蒼い炎によってその身体を焼き尽くされてしまう。そして永理の近くでニヤリと笑うと、その残炎を永理にそのままぶつけた。
と、同時に地面へとたどり着き、十代は難なく着地。対して永理はインフェルノ・ウィングに近距離からぶつけられた炎によって身体を吹っ飛ばされ、骨の塔の残骸に激突した。
「ほう、四天王を倒したか……しかし、俺は先程までエレベーターの中に居た筈なのだが」
「どうやら、骨の塔が崩れ去ると同時にワープするシステムだったようネ。巻き込まれなくてよかったデース」
ジャックと金剛が、相変わらずそんな会話をする。十代が着地したすぐ近く、扉のあった場所の前で、三人が集まっていた。その中に十代も入り込む。
「勝ったのか、十代」
「ああ、本来のデッキじゃなかったけどな……」
万丈目の問いに、十代は何処となく残念そうに、しかし同時に嬉しそうに万丈目に伝える。万丈目は何も言わず頷くと、木に激突した永理の方に目を見やる。
仮想世界で死んでなければいいのだが、と万丈目と十代の二人は心配するものの、ゲームの世界で人が死ぬなんて事はファンタジーやメルヘンじゃないのだからある訳が無いのだ。しかしぴくりとも動かないのはどういう訳か。
「よくぞ四天王を倒した……四人の勇者よ。だが、光ある所に闇はある。正義ある所に悪はある。我らは決して消えず、永久に不滅。永久の平和なんぞ云々かんぬん」
「最後らへん適当だなおい!?」
永理が死に際のラスボスっぽいサムシングの台詞を割と適当に吐きながら、身体の下から徐々に消えていく。ただデスポーンしているだけだというのに、どういう訳か死に際のライバルっぽい表情だ。
そして永理の姿が消え、最後に腕に付けていたデュエルディスクが地面に落ち、一瞬遅れてデュエルディスクも消える。何故こんな無駄に凝ったシーンなのだろうか、と十代は一抹の疑問を抱いた。
「んじゃ、俺達はもう帰りますんで」
「お疲れ様っしたー」
万丈目と十代は、このゲームの先輩である二人に頭を下げてから、ログアウトする。モンスターを生け贄にした時特有の黄色い光に包まれ、完全に姿を消す。
残ったのは、バケツ頭の筋肉もりもりマッチョマンの変態と、似非外人風な金剛だけ。ゲームの最後というのは、いつも達成感と同じくらい虚しさが残るものだ。
しばしの静寂、生暖かい風が二人の顔を撫でる。
「……どうだった、あの四人」
その静寂を打ち消すように、ジャックが口を開く。金剛はそれに頷き、とても満足げな笑みを浮かべていた。その笑みは例えるなら、子供が新しい玩具を買ってもらった時特有のもの。
「かなり満足いく結果デース、あの四人であれば……二種類の、まだ世界に出ていないカードでも使いこなせるでショウ」
「当然だ、そうでなくては困る。態々鮫島に頼んだ意味が無くなってしまうからな」
デュエルアカデミアというのは、プロデュエリスト養成高校である。だが、同時並行しているくらい重要な役職の人材を育てるのも、デュエルアカデミアの仕事だ。
それこそ、テスター──カードの性能、出しやすさ、そして危険性を、その身を危険に晒して試す役職。それを育てるという目的もあるのだ。
ただのカードゲームに大袈裟な、と誰もが思うだろう。だが、実際は違う。相応しくない者が使った場合使用者に罰を与える神のカード。敗者の魂を封じ込めるオレイカルコスの結界。対戦相手に直接ダメージを与え、使用者の身体をも蝕むサイバー・ダーク……これら以外にも、まだまだある。それらの安全性を確立、もしくは封印を見極める為にも、テスターは必要となってくるのだ。
そして、二人はあの四人──遊城十代、万丈目準、丸藤亮、そして月影永理にその素養があると眼を付けた。
「協力、感謝しマース。──海馬ボーイ」
「ふぅん、新たな青眼の進化の為協力しただけだ。約束を違えるなよ、ペガサス」
二人は不敵に笑いながら(一名はバケツ頭のせいで表情は見えないが)、アンデットワールドを後にする。既に役目は果たした、これ以上ここに居る意味も無い。慣れた手つきで、二人は同時にログアウトした。
はい、これで第二章終わりです。
ちなみに落下した理由ですが、特に意味はありません。強いて言うなら、「何かラスボス戦っぽいじゃん」ですね