月影永理の暴走   作:黄衛門

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第31話 好きに組み、好きに負ける。それが、俺達のやり方だったな

 デュエルアカデミアのとある森を抜けた先の海崖、柵も無い割と危ない場所で海風に当てられている男が一人。ラーイエローの制服を着た、一応イケメン設定なのだが割と影が薄い事に定評のある三沢大地が、何をする訳でも無くぼんやりと佇んでいた。

 彼は今、途轍もなく迷走している。理由はただ一つ、彼の信念と欲望が対立しあっているからだ。

 デュエルディスクにセットされたデッキを優しく撫でる。冥界の宝札軸最上級過多エクゾディアという、何を血迷ったのか解らんが兎に角ヤバい系のデッキ。万が一ロックされた際の対策として入れた、割と理に適っているがどうしてその発想になったのか解らないデッキ。強者は割とロマン派なのだ。

 

「……どうするべきか」

 

 学園対抗デュエル戦が開催されるのは一週間後、これまでのデッキでは通用しないだろう。それに、その座を懸けて戦うであろうデュエリスト──遊城十代のデッキを思い出す。

 融合召喚とシンクロ召喚を巧みに使い分けるデュエルタクティクス、最後まであきらめない性格、ボード・手札の環境把握。学校の成績からは考えられない実力を誇る。

 ただ融合をメタるだけでは駄目、だが融合とシンクロのメタデッキを作ろうにも、三沢はロックデッキを作った事が無い。誰もテストプレイに付き合ってくれないからだ。

 ただでさえそんな状況だというのに、自分の中でもう一人の自分が戦っている。こんな状態では、まともなデッキは到底組めそうにもない。

 

「はあ……」

 

 三沢はここに来て、今日何度目か解らない溜息をつく。一瞬神楽坂に頼ろうとかとも思ったが、最近は永理に影響されてありったけのロマンを詰め込んだデュエリストのデッキをコピーしている。未だに永理のグレート・モス軸ジャベリンビートル初期カードデッキに勝るとも劣らないデッキは作れないでいるらしいが、もう既に伝説のデュエリスト、武藤遊戯デッキの中身を独自に改良し、プロの世界でも通用するデッキに組み替えている。

 割と本気で勝ちそうにも無いし、地雷デッキに合わせて調整したら自分のデッキも変態になってしまう。

 そんな悩んでいる三沢の後ろにある茂みが、がさりと動いた。

 

「どうした三沢大地、浮かない顔して」

 

「君は……月影永理、くん。君こそどうしたんだ、こんな夜更けに」

 

 今は午前一時、寮の消灯時間はとっくに過ぎている時間帯だ。普段からそんな時間まで起きてゲームをするのが永理の中で普通になっているが、それでも深夜に出歩くというのは滅多に無い。強いて言うならずっと前に行った廃寮探索くらいだろう。

 

「深夜の散歩だ。……最近運動不足らしくってさ、この前体脂肪率計ってみたら肥満って出てね」

 

 あははとから笑いする永理、その眼は何処か遠くに向いていた。

 肥満というのは、見た目で決まるものではない。永理のように外見は骨のように細くても、内臓とかに脂肪が付いていたりするのだ。それを解消する為に今日から始めたのが、深夜徘徊である。熱帯気候であるデュエルアカデミアも、夜になればある程度は涼しくなる。散歩するにはもってこいな気温になるのだ。

 年より臭いと言うなかれ、永理の死にやすさはある意味語り草となっており、アカデミア七不思議のひとつに加えられそうになっているくらいなのだ。

 

「で、お前は何をしているんだ。優等生がこんな時間に、逢引か?」

 

「妙に古臭い言い方だな……いや、ちょっと悩んでいてね」

 

「ほう、悩みか」

 

 永理は時折、年齢に似つかわしくない大人っぽさを見せる。実際に永理は転生者で、転生前は五十三歳という結構なおっさんで、しかも死因がテクノブレイクというどうしようもない奴なのだが、兎に角その雰囲気はまだ高校生である三沢にとっては、悩みを打ち明けやすかった。

 

「俺の本来のデッキが解らないんだ……このデッキじゃ対抗戦には通用しない。でもいざデッキを組もうとすると、どうしても手が止まってしまう。なあ永理、俺はどうすればいいと思う?」

 

「……デュエルモンスターズにおいて、一番重要なのは『自由』だと俺は思う」

 

「自由……」

 

 三沢大地は口の中でその言葉を転がす。自由──誰にも拘束されず、 誰にも支配されず、己の本能に、好きに組むという事。

 それは自分自身に今、一番足りないもののように感じ取れた。デュエルモンスターズは自由の象徴、発想は自由で良い。事実三沢の目の前に居る男は、自由にデッキを組み勝ち星を稼いできた。

 

「まず第一にやりたいコンボ、活かしたいカードを決める。デッキを組むのはそれからだ。好きに組み、好きにデュエルする。それが俺達、デュエリストだ」

 

「……そうだな、お前の言う通りだ」

 

 難しい事を考えていたしかめっ面から、表情を緩めた顔になる三沢大地。永理はくつくつと腕を組みながら笑いかける。

 デュエルモンスターズは、今でこそテーマカードが多く出回っている。デッキを丸々コピーする者も多くなってきている。だが、永理は前世で、デュエルモンスターズを、テーマカードが出る前からやっていた男なのだ。ただのデュエリストとして、お世辞にも強いとは言えないカード群で好きに組み、そして負ける。所謂マイオナという部類の人間だったが、決して負ける事を良しとせず、何度もデッキを見直し、食いついてきた。八咫ロック相手でもメタを張り、数こそ少ないが下した経験がある。

 そして、ここで終われば永理はかっこいい主人公で終わるのだが、最後に落ちるのがこの作品。

 

「所で三沢や、此処は一体何処なのだ?」

 

「……夢遊病?」

 

 かっこいい事を言ったというのに、最後の最後で台無しになる。それが月影永理である。

 

 

 そんなこんながどこぞの森で行われた一週間後、最新設備とかいう割に野外でやるのとあんまり変わらない最新デュエルフィールドの上には、遊城十代と三沢大地が、それぞれ向かい合うように立っている。

 休みの日だというのに、会場を埋め尽くさんとばかりにギャラリーがこぞって集まっている。学園代表が決まるのを、誰もが括目したいのだ。

 

「三沢とデュエルか……どんなデッキを使うのか、楽しみだ。ワクワクしてきたぜ」

 

「ふっ、ふふふふふふっ。見せてやろう、遊城十代! 俺の! 魂の場所を!」

 

 そして、この台詞で十代は何となく三沢のデッキ内容を悟った。あれはろくでもないものだ、シリアスな筈のデュエルをまるでファルスのようにする奴だ、と。そしてそこに永理が関わってくるだろうと予想するのは自然の理。

 

「「デュエル!」」

 

 しかし、今はそんな事を考える余裕は無い。たとえ喜劇だとしても、十代は主役を掴み取る。ならば取るべき選択肢は、最初からクライマックス以外他にない。

 

「俺の先功、ドロー!

 魔法カード、ヒーローアライブを発動! 場にモンスターが存在しない場合、ライフを半分払い、デッキからレベル4以下のE・HERO一体を特殊召喚する! 俺はデッキからE・HEROエアーマンを特殊召喚!

 更にエアーマンの効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキからE・HEROスパークマンを手札に加える!」

 

 十代の場に現れるのは、背中に大きなファンを付けた青いヒーロー。デッキサーチと魔法・罠の除去どちらかと一枚でこなすナイスなカードなのだが、魔法・罠除去はあまり使われない悲しいカードである。

 

「更に手札のA・ジェネクス・バードマンの効果発動! 表側表示のモンスター一体を手札に戻し、このカードを特殊召喚する!

 そしてエアーマンを召喚し、効果でプリズマーを手札に加える!」

 

 エアーマンの姿が消え機械仕掛けのオウムが鷹の構えをしながら現れ、そして隣にまたエアーマンが現れる。エアーマンの効果を使いまわす理想的な動きだ。

 

「レベル4のエアーマンに、レベル3のバードマンをチューニング!

 暗黒の時代より蘇りし爆撃の王よ、我が呼びかけに答え世界を蹂躙せよ! シンクロ召喚! ダーク・ダイブ・ボンバー!」

 

 茶色い装甲に身を纏った爆撃機が現れ、さながらトランスフォーマーのように人型に変形する。ジェットエンジンからの熱で陽炎が現れ、相手側の視界を揺らして動かす。

 

「カードをセットし、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 モンスターをセットし、カード二枚をセット! ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 十代はここで、どうも言い知れぬ違和感を感じた。三沢のあのデッキには、永理と対するような言い知れぬプレッシャーが溢れ出ているのだ。

 そう、訳の分からない、言い知れぬプレッシャー。さながら超兄貴のポスターを見た時のような、あのプレッシャー。しかし、だからといってやる事は変わりない。十代はただ突き進む事しか頭にない。それが完璧に封じられたら、さぱっと死ぬ。それが十代の生き様である。

 

「ダーク・ダイブ・ボンバーの効果発動! 場のモンスター一体を生け贄に捧げ、そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを与える! 俺はダーク・ダイブ・ボンバーを生け贄に捧げ、1400ポイントダメージを与える! 爆撃特攻!」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバーは身体を折りたたみ爆撃機と化し、三沢に勢いよく突っ込んでいく。1400、決して小さくないダメージ。だというのに三沢の口元には笑みが浮かんでいる。

 

「罠カード発動、ピケルの魔法陣! このターン受ける効果ダメージを全て0にする!」

 

 何となく、十代にとって聞きたくない名前の罠カードが発動されたのを感じ取った。発動されて厄介という訳では無く、友達として見たくない所を見てしまった的なあれである。

 だがきっと気のせいだ、効果の関係でデッキに入れただけだと思い直し、プレイを続ける。

 

「……プリズマーを召喚!」

 

 全身が結晶石で出来たヒーロー、カピラリア七光線を出しそうである。効果はHEROデッキ以外にでも十分通用する、というか主にそれ以外のデッキで使われるカードだ。

 

「効果発動! エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せ、デッキからその素材を墓地へ送り、このカードはそのカードの名を得る! 俺はデッキのプラズマヴァイスマンを見せ、デッキからエッジマンを墓地へ送り、その名を得る!

 更に魔法カード、融合を発動! 場のエッジマンと化したプリズマーと手札のスパークマンを融合し、プラズマヴァイスマンを融合召喚!」

 

 バチバチと全身をスパークさせながら現れる、黄色い巨人。青のスーツの上に黄色のプロテクターを身に纏っている。両腕はまるで金槌のように太く、指は短い。

 貫通効果と疑似サンダー・ブレイクを内臓したモンスター。エクストラデッキを圧迫しまくる構成だが、今現在一般にはシンクロは出回っていない。なのでルールとかそういうのは前々から使われているもので、つまりエクストラデッキに上限は無いのだ。

 

「バトルだ! プラズマヴァイスマンで伏せモンスターを攻撃!」

 

 プラズマヴァイスマンの右肩に埋め込まれていたブースターが展開し、一気に加速を付けて伏せモンスターを殴り飛ばす。シンフォギアで前見たぞ、と永理はそれを見ていて思ったが、さしてこの展開とは関係ないので割愛しておこう。

 その殺人的加速で殴り飛ばされたモンスターは、見習い魔術師。青い布製の服に身を包み、さながらフライドポテトめいた髪の毛が妙に印象に残るモンスター。杖で防御していたものの衝撃に耐えきれず、あえなく爆裂四散した。

 

「プラズマヴァイスマンには貫通効果がある!」

 

「この程度、想定の範囲内だ! 見習い魔術師の効果発動! デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター一体を裏側守備表示で特殊召喚する! 俺はデッキから、白魔導士ピケルを特殊召喚!」

 

 モンスターは裏側表示でセットされるので、カードの裏面だけがモンスターゾーンに現れる。だがその名前、明らかにアレである。

 もうこの時点で十代は、大体察した。三沢もあの仲間に入ってしまったのだと。一応十代自身も同じ部類に入っているのだが、それでも友として歓迎すべきか否かは流石に迷う。

 

「……ターンエンドだ!」

 

「エンドフェイズに罠カードを発動する、停戦協定! 場のモンスター全てをリバースし、更に効果モンスターの数×500ポイントダメージを相手に与える! 効果モンスターは全てで二体、よって十代、1000ポイントダメージだ!」

 

 ヒゲモジャの白髪のおっさんが羽ペンを勢いよく十代に投擲。絶対攻撃方法違うだろ、というツッコミも入れられず、十代のライフを大きく削った。

 十代はただでさえヒーローアライブを使ってライフが半分になっていたのだ。そこに更に1000ポイントの追撃、割とヤバいが十代のデッキは「削られる前に削る」というどこぞのガチタンめいた思想の元作られている。なのでライフ回復ギミックは、あるにはあるがとても少ない。

 そして、ライフが削られると同時に、もわもわとした羊めいた帽子を被った、ピンク髪の幼女が魔法のローブを着て姿を現す。と、同時に一部のギャラリーから歓声の声が上がる。永理なんかはグッとガッツポーズだ。

 

「そして俺のターン、ドロー!

 スタンバイフェイズ、ピケルたんの効果で俺の場のモンスターの数×400ポイントライフを回復する!」

 

 発言が色々と危険になってきているが、とにかくピケルは杖を一生懸命に振り光を灯す。回復量は微々たるものだが、ピケルの頑張っている姿を見るだけで十分なのだろう。なので十代は「にほいが……幼女のかほりが……」という三沢の呟きは聞かなかった事にした。

 というよりこの学園はロリコンが多すぎた、いい加減にしろよデュエルアカデミア。と十代は二割くらい本気でアカデミアに入った事を後悔し始めていた。

 

「十代、お前じゃ俺は倒せん。ピケルたんへのこの気持ち、まさしく愛だ! 魔法カード、大嵐を発動! 場の魔法・罠を全て破壊する!」

 

 吹き荒れる風に十代は思わず顔を覆う。というより、三沢の背後に悪魔が見えたのでビビったと言った方が正しいだろうか。永理の顔をして、パンパンに膨らませたバッグから巻いたポスターがはみ出し、手には紙袋をいくつもぶら下げた姿が。

 

「更に永続魔法、一族の結束を発動! そして装備魔法、王女の試練をピケルたんに装備!」

 

 装備魔法を使った所で格段変わった所は無いが、強いて言うのであれば「ふんす」という感じにやる気になった所だろう。

 

「可愛い子には苦労をかけよ、苦労する幼女は可愛い! ピケルたんを攻撃表示にし、バトル! ピケルたんでプラズマヴァイスマンを攻撃!」

 

 ピケルが杖をぶん、と振るうと、鋭い刃物が飛び出てくる。そしてそれを逆手に持ち、外見からは想像も出来ないような俊敏な動きでプラズマヴァイスマンの懐に潜り込む。プラズマヴァイスマンも迎撃しようとスパークで牽制しようとするも、それを上回る動きで素早く心臓部分を突き刺した。

 突然の行動に、思わず会場内が静まり返る。というかギャップがあり過ぎてニューロンがスパークしそうだ。

 だが、その静寂もノリノリな三沢の声によってかき消される。

 

「王女の試練の効果発動! レベル5以上のモンスターを戦闘で破壊したターン、ピケルたんとこのカードを生け贄に捧げる事で、デッキから魔法の国の王女―ピケルを特殊召喚する!」

 

 ピケルの身体が光り輝き、背が伸びる。そして光が消えると、そこには可愛い系あざとい女の子が居た。羊めいた帽子は丸く収まっており、服も追加で布かけみたいなのが現れている。そして杖も、先ほどの仕込み杖のような物ではなく、何となくセーラームーンにでも出てきそうだと連想させるような、三日月めいた形の奴に青く丸い宝石の付いた、見るからに高そうな奴と化している。

 

「フィールド魔法を発動!

 ここが、俺の魂の場所だ! 魔法族の里!」

 

 三沢がデュエルディスクのフィールド魔法ゾーンにカードを置くと、途端に床からにょきにょきと、妙に捻じ曲がった木が生え揃う。そしてまばらではあるが、卵状の形をした家が、数こそ少ないが木々の間に建っていく。空中にはオーブめいたものが漂っており、空を見上げれば黄金立方体の回転する何かが見える。

 十代はこのフィールド魔法の発動に、思わず舌打ちを溢す。魔法使い族の里、自分場に魔法使い族が居なければ自分は魔法カードを使えないが、代わりに魔法使い族さえいれば相手の魔法を半ば一方的に封じ込めることが出来る。要するに簡単に言うと、魔法使い族が居なければ魔法カードを発動出来ないのだ。

 

「ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 ……モンスターをセットし、カードを二枚セット! ターンエンド!」

 

「防戦一方か、ドロー!

 スタンバイフェイズ、ピケルの効果でライフを800回復!」

 

 杖を光らせ、三沢のライフを回復させる。攻撃力2800の、毎ターン自動回復の能力を持ったモンスター。出すまでは少々──というか、実用性を考えたらかなり面倒だが、出されたら割と厄介である。

 

「黒魔導士クランを召喚!」

 

 次に現れた三沢の嫁は、黒いウサギの帽子を被りゴスロリ帳の黒い服に身を包んだつるぺた幼女。手にはピンク色の鞭だが、強化されている影響か馬用の鞭である。あれは物凄く痛いと某声優さんが言っていた。

 

「ふははははは! 幼女こそが正義! 成長した女の子はもっと正義! バトルだ! 黒魔導士クランたんで攻撃!」

 

 クランはビシッ! という感じに馬用の鞭を、十代の伏せモンスターに叩き付ける。するとモンスターがリバースし、黒い機械仕掛けの、青く光るアクセントが入った犬がスクラップにされる。何処となく恍惚そうな表情を浮かべていたように見えるが、それは気のせいである。

 ここで三沢は、苦虫を噛み潰したような顔になる。面倒なモンスターを戦闘で破壊してしまったからだ。

 

「フレンドッグの効果発動! 墓地のE・HEROと名の付くモンスターと融合を手札に加える! 俺は墓地の融合と、エアーマンを手札に! 更に罠カード、ヒーロー・シグナルを発動! 自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下のE・HEROと名の付くモンスター一体を特殊召喚出来る! デッキから来いっ、E・HEROスパークマン!」

 

 青タイツに黄色いプロテクターを付けたヒーローが現れ、すぐさま腕を交差させ防御態勢に移る。しかし、守備力はたったの1400。魔法の国の女王―ピケルの攻撃力は今現在2800、耐え切る事は不可能である。

 

「チッ、だが貴様の場に何体モンスターが存在しようと! 最後は俺の愛が勝つ! ピケル様、お願いします!」

 

 ピケルが杖を振りかざすと、スパークマンの頭上から隕石が降り注ぐ。しかし、突如スパークマンの腕に現れた勾玉状の、眼が描かれた盾によって防がれてしまう。

 

「なっ、何が起こった!?」

 

「罠カード、D2シールドを発動し、スパークマンの守備力を倍にした! スパークマンの守備力は1400、倍になれば守備力2800! 魔法の国の王女-ピケルの攻撃力と同じだ!」

 

「やるな十代! ターンエンドだ!」

 

 三沢は獰猛な笑みを浮かべ、十代を褒め称える。十代もそれに対しニヒルに返すが、内心は割と焦っていた。スパークマンを特殊召喚したのはいいが、倍にしてもピケルの攻撃を防ぎきれるか、と。ギリギリ足りたので何とか助かったが、あわよくばライフも削ってやるという魂胆は失敗に終わってしまった。

 

「俺のターン、ドロー!

 E・HEROエアーマンを召喚! 召喚成功時、このカード以外の場に表側表示で存在するHEROと名の付いたモンスターの数だけ、場の魔法・罠を破壊する! 魔法族の里を破壊しろ! エア・サイクロン!」

 

 エアーマンの背中に付けているファンが回転し、魔法族の里を破壊する。風が吹き荒れ、木々は倒れ、その下に建ててあった家は押し潰される。非情にヒーローと思えない攻撃方法だが、気にしたら負けである。

 

「ぐっ、俺の魂の場所が……しかし! まだこちらの場には高攻撃力の嫁達が居る! それに、仮にその攻撃力を超えたとしても! 貴様が人でなしでなければ! 彼女らを攻撃する事は不可能だ!」

 

「ウンソダネー、貪欲な壺を発動! 墓地のプラズマヴァイスマン、スパークマン、プリズマー、ダーク・ダイブ・ボンバーをデッキに戻し、カードを二枚ドロー!

 更に魔法カード、融合を発動! 手札の沼地の魔神王と、スパークマンを融合! E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマンを融合召喚!」

 

 白いメタリックな翼を広げ、久々の出番に感激するのか拳を強く握りしめるシャイニング・フレア・ウィングマン。だが残念ながら、場は十分に整っているとは言い難い。

 墓地のE・HEROはたったの一体。相手は初期ライフからたったの200しか削れていない。それに加え相手には同じ攻撃力を持ったモンスター一体と、それには劣るものの攻撃力2000という、見逃したらめちゃんこ面倒な事になるが、そのまま放置も後で後悔する事になりそうという決定的英断を迫られる場面。

 だからこそ燃えるものだ、と十代は場を確認しながら思う。

 

「墓地から魔法カード発動! ギャラクシー・サイクロン!」

 

「何っ、墓地から魔法だと!?」

 

「こいつは墓地のこのカード自身を除外する事で、相手場の表側表示となっている魔法・罠カードを破壊する!

 俺は一族の結束を破壊!」

 

 惑星の様なものと白い渦が三沢の場に現れ、一族の結束を飲み込んでいく。結束が無くなった事により、ピケル達の攻撃力もダウンした。そしてそれの意味は、十代はやる時はやる男だという事を意味している。

 つまり、ピケル達は戦闘で破壊されるという事。

 

「バトルだ! シャイニング・フレア・ウィングマンで、魔法の国の王女―ピケルを攻撃! シャイニング・シュート!」

 

「悪魔! 鬼!」

 

 一切躊躇いなく十代はシャイニング・フレア・ウィングマンに命じ、シャイニング・フレア・ウィングマンもすぐさま手から炎を出してピケルを焼いた。燃えやすい材質で出来ていたのか、すぐに全身に火が回り、火を消そうと地面を転げまわる。それをただ、見る事しか出来ない三沢大地。その顔は悲痛に満ち溢れていた。なお、一部の変態はその姿を見て悶え、そして周りからドン引きされていた。

 

「効果で攻撃力分のダメージだ! そして、許しは乞わん恨めよ。エアーマン!」

 

 エアーマンも頷き、ファンでクランにありったけの風を打ち付ける。

 風は凄まじい切れ味を誇っていたのか、そしてどういう原理か気の回しか、器用にクランの衣服だけを引き裂く。咄嗟にクランはそれを隠そうとするも、その羞恥に満ち溢れた表情が更にそそる。観客席から「エアーマングッジョブ! フレア・ウィングマンは死ね!」という野次が飛び、シャイニング・フレア・ウィングマンは膝をつきがっくりとする。

 三沢のライフは、これによって0となり、ソリットビジョンは消える。三沢は何か燃え尽きたように膝をつく。十代はそれに駆け寄ろうとするも、何と声をかけていいのか解らない。

 

「俺の……俺の、ピケルたんが。クランたんはともかくとして、ピケルたんが……」

 

「あー……三沢、その……なんか、ごめん」

 

 十代は一切悪くないが、取りあえず謝っておく。結局三沢は神楽坂に担がれ、デュエルフィールドを後にした。

 そんな訳で学園代表は、遊城十代となった。なったが、この微妙な空気をどうにかしてくれ。そう切に願う十代であった。




 たまにはリョナもいいよね、と思い見てみると後悔する。それがリョナ。あれで抜く奴はマジ異常者だと思うのですよはい。こんなの書いてる奴が言うな? ハッハッハッ、ご尤もで
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