月影永理の暴走   作:黄衛門

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第35話 でゅえるぐらし!

 最近、学校が嫌いだ。

 好きで入ったのにそう言うと贅沢だって言われそう。

 でも考えてみてほしい。毎日毎日同じ授業、既に知っている知識の復習。

 保健室は基本オベリスクブルーの生徒がサボるのに使っている。

 音楽室。無い

 放送室。アニソンなんか流れずうすら寒い恋愛もののJ-POPばかり。今日もスピーカーから愛やら切ないやらうすら寒い台詞ばかりが流れてくる。

 何でも気に入らない事ばかりで、まるで独裁国みたい。こんな変な建物、ほかにない。

 中でも俺が気に入らないのは……。

 

「なんで俺はモテない」

 

「そりゃ当然だ、鏡見ろ鏡」

 

 いつも授業を行う教室、昼休みの時間。永理はいつものメンバーと一緒に昼食を取っていた。

 十代は買いだめしたドローパン三つ、翔も同じくドローパン。万丈目は惣菜パン、三沢は魚肉ソーセージパン。その五人の後ろでは明日香が取り巻きと一緒に昼食を食べている。神楽坂はカードを買いに行っている。

 

「当然って何だ当然って、俺顔は悪くないと自負してるぞ?」

 

「太ったらマシになるんじゃね?」

 

 永理の顔は、形は悪くない。悪くは無いが、痩せこけた肌に窪んだ頬。まるでゾンビだ。

 

「つか永理君、体重いくつぐらいなんすか……」

 

「四十ちょい」

 

 永理の身長は標準的な男子高校生くらいある。しかしその場合の平均体重は約六十、平均には二十くらい体重が足りてない。明らかに痩せすぎだ。

 しかし、永理の食生活は拒食症というほどではない。確かに平均男性に比べれば食べる量こそ少ないが、カロリー量だけならかなりのものだ。

 

「ちゃんと食ってるのか?」

 

 三沢が心配そうに尋ねるが、永理は何故か高笑いしながらそれに答える。

 

「ふははは、太らないのだよ俺ちゃんは」

 

 後ろから鋭く痛い視線が突き刺さるが、永理はそういうのを全く気にしない。そんなんだからモテないのだ。

 ばくり、と亮から横流ししてもらったローストビーフサンドイッチを平らげる。ちなみにパンとローストビーフの間にチーズを挟み込んでいるし、しかもバターもどっぺりと塗りたくっているので、カロリーはかなり高い。

 

「昼食はちょっと待って……ああっ、遅かったにゃ」

 

 後ろの通路から若干息を切らして、十代達に声をかける。先ほど授業を終えた直後で職員室に戻ったばかりだというのに、急いで戻ってきたようだ。

 外見だけなら優しい感じの先生なのだが、その実態はラブライバーだ。どうでもいい情報だが。

 

「ん、どうしたんですか大徳寺先生。慌てて戻ってきて」

 

「永理君、私と一緒に校長室に来てほしいのですにゃ」

 

「えっ、俺?」

 

「また何かやらかしたか」

 

「ご愁傷様」

 

「あっ、十代君と万丈目君もだにゃ」

 

 大徳寺の言葉に万丈目はタイミングで目を見開き、十代は天を仰ぐ。万丈目は真面目に授業を受けているので心当たりが無く、十代は心当たりがあり過ぎて解らないという有様だ。

 十代は永理の面倒見が良いとレッド寮では専ら評判だが、それは学生間でのみの話。授業は健康優良不良少年な十代なのだ。流石に保健室の先生を孕ませたりはしていないが。

 

「あと、明日香くんと……三沢くんも来てほしいですにゃ」

 

「……大徳寺先生、なんで俺の名前の時だけ少し間があったんですか?」

 

「ノーコメントでお願いしますにゃ」

 

 じとーっといった感じの眼で睨み付ける三沢から、大徳寺は目線を逸らす。

 決して、問題児は覚えやすいとか、三沢の空気が薄いとかそういうのではない。決して。だってキャラ立ってる筈だし。

 

 

 寮もバラバラな五人は大徳寺の後を付いて行く。ちなみに十代と翔はドローパンなので食べ歩きしているが、明日香は普通の弁当だったのでそれがお預けされた事に少し不満を抱き、そして移動している途中で食べている二人に若干の妬みを持っていた。

 

「そういや三沢、放課後は空いてるか?」

 

「プリズマイリヤを観るくらいしか予定は無いが、珍しいな」

 

 永理と三沢は、あの時以外はそれほど話もしない、友達の友達といった感じの仲だ。話しかけたり話しかけられたりとか、学校内であればする事はあるものの、プライベートな時間で会う事は、神楽坂の部屋に泊まりに行った時くらいしかない。

 

「ちと不思議なカードを手に入れてな、そいつが曲者で」

 

「使い方を習いたいと。本当に珍しいな、君なら独自に使いこなすとばかり思っていたが」

 

 永理の言いたい事とは少し違うが、許可は取れたので問題ない。三つのカード、全てが英語で書かれていたので永理には強いか弱いかも判断出来ないカード。いつの間にか、近くにあったカード。

 正直言って不気味な事この上ないので井戸にでも捨てたいのだが、あの井戸にはあの二体のアベック精霊が居る。

 それに、不気味に思うと同時に何だか妙な親近感が湧くのだ。それが更に不気味さに拍車をかけているのだが、不思議と捨てようとは思えない。

 

「ん、永理か」

 

「オベリスクブルーは、もう駄目かも知れませんーノ……」

 

 校長室の扉の前で頭を押さえて嘆くのは、永理の身長を長くして金髪おかっぱ頭にしたような感じの教師。クロノス実技最高性帰任者。その後ろで優雅にステーキを食べているのは、丸藤亮。最近の異名は皇帝(カイザー)ではなく馬鹿皇帝(バカイザー)にだんだんと塗り替えられてきている。主にネット掲示板で。

 

「ん? 貴方方も校長に呼ばれたのデスーカ? カブーム、共通点は無いように見えますーがマルゲリータ」

 

 大徳寺に連れられた五人を見て、クロノスが顔を上げ、何故呼ばれたのかを考え始める。その後ろで亮はステーキを一口大に切り、食べる。

 

「取りあえず入れば解る事です。という訳で開けてくださいクロノス教諭」

 

「はいはい、解ったノーネ……」

 

 何かを諦めたように深く溜息をつき、クロノスは三回ノックする。すると中から返事が返って来たので、校長室の扉を開き、中に入る。

 残る七人も、クロノスの後について入る。亮は既にステーキを食べ終えていた。

 校長室は、一人の部屋にしては無駄なほど広い。壁には大量のトロフィーが飾られている。何故かサバゲー大会やミニ四駆の優勝商品まで飾られているが。

 そんな部屋の中央、大きな窓を背に座っている、亀のような頭のおじさん。クロノスはその人に頭を下げる。亮は客人用のテーブルに、食べ終えたステーキの皿を置いた。

 

「お昼を中断させてしまい、申し訳ありません。何分、緊急事態になりましたので」

 

「緊急事態、ですか?」

 

 三沢がオウム返しのように尋ねると、校長は一つ頷いてから、口を開いた。

 緊急事態となれば、普通は教員が対応する筈だ。だというのに生徒まで集められたという事は、何かあるのだろう。重苦しい空気に十代は、思わず息を飲んだ。

 

「このデュエルアカデミアには、とある三枚のカードが封印されているのです」

 

「……三枚?」

 

 永理が真っ先に思い浮かべたのは、昨日見つけた三枚のカードと、あの夢の世界。あの三幻神の壁画を飾られていた場所は、地下深く。

 ひょっとしてあそこは過去のアカデミアではなかったのか、という考察が芽生えたが、永理は馬鹿なのですぐに考えるのを止める。これ以上考えたら脳内がオーバーヒートするからだ。

 

「そのカードの名は、三幻魔。三幻神に匹敵する力を持つが、世界に混沌と破滅を導くカードです。それの封印が解き放たれ、使用された暁には」

 

「地は裂け、海は枯れ、あらゆる生命体が絶滅という世紀末になるんですね解ります」

 

「……強ち間違いではありません」

 

 亮の茶々に呆れたように溜息を吐く校長、亮はシリアスな雰囲気がどうも苦手なのだ。

 しかし、どうも三沢はそれを受け入れる事が出来ない。あまりにも非現実的すぎるからだ。ちなみに永理はすんなりと受け入れた。

 

「そのカードの封印を解くには、七つの鍵が必要となります。

 そして、そんなカードを解き放とうと暗躍する者達が居るのです。彼らの名は、セブンスターズ。奴らから、この鍵を守ってもらいたい」

 

 そう言い校長が取り出したのは、深緑色のケース。そのケースの中に、件の鍵が眠っているのだろう。

 

「まさかとは思いますが、デュエルで守れとか言いませんよね?」

 

「ええ、その通り。デュエルです」

 

 三沢が何やら呆れたように溜息を吐く。今でこそ性癖優先でデッキを組んでいる三沢だが、その実は論理的思考の持ち主なのだ。そんな危険な鍵というのなら最初から金庫に納めておくか、もしくは手っ取り早く破壊してしまった方が確実である。

 

「でしたら、金庫に入れるとか破壊してしまうとか、奴らの手の届かない場所にやるのが一番なのでは?」

 

「いえ、それは出来ません。言い伝えによりますと、十年に一度封印を解き、再度かけ直さねば三幻魔は野に解き放たれ、世界を暗雲が包み込むといいます。そして、今年が丁度十年目」

 

「……そうですか」

 

 何ともご都合主義全開な設定だが、そう伝えられているだけなので、真偽の程は定かではない。しかし、怪しいからと言って放っておく事もまた不可能。もしそれが本当であれば、世界は破滅しマッドマックスめいた光景に様変わりするからだ。

 

「しかし、破滅に導くとなれば、そのセブンスターズとやらは何故その鍵を?」

 

 亮がふと、疑問に思った事を尋ねる。

 確かに、世界を破滅に導くと言い伝えられているだけなら、誰も狙わない筈だ。校長の話を聞く限りでは、三幻魔は要するに核のようにヤバい代物という事になる。

 と、なればどのような悪人であろうと、マッドマックスや北斗の拳に憧れたちょっと痛い奴以外は狙わない筈だ。

 

「……何でも、三幻魔の所有者となった者は、一つの願いを叶える事が出来るとか」

 

「つまりドラゴンボールという訳か、亮!」

 

「ああ、これはゲットするしかないな。ロリタズマ計画実現の為に!」

 

 永理の言葉に口角を上げ、くだらない計画を夢想し不敵に笑う亮。それを明日香は冷たい眼で見ていた。

 しかし、そこに混ざる一人の生徒。

 

「俺も一枚かませてもらおう」

 

 永理の影響でロリオタとなってしまった三沢大地である。彼もまた、永理や亮と同じロリコンだったのだ。

 校長とクロノスは同時に呆れたように溜息を洩らし、十代は乾いた笑いを出す。もうなんか、シリアスな雰囲気なんてものはどぶ川に捨てられてしまったような感じだ。

 

「……あなた方に、セブンスターズと戦う覚悟があるのなら、どうかこの鍵──七精門の鍵を、受け取ってほしい」

 

 校長はそんな馬鹿なやり取りを軽くスルーし、ケースを開く。そこには七つに分けられたパズルのようなものが、蒼色のスペースの中に収められていた。

 

「断る、態々学園の為にゲームの時間を割きたくない」

 

 まず亮が断った。その理由は教師からすればすごくくだらない理由だが、少なくとも亮にとってはそれが断る理由の全てとなる。

 それに、仮に受け取ったとしても成績がアップするとは思えない。

 

「面倒だしな」

 

 次に断ったのは、基本デュエル馬鹿である筈の遊城十代だ。十代も、ほぼ亮と同じ理由だ。

 

「私は弱いので、パスしますにゃ~」

 

 大徳寺は自らの弱さを自覚しているので断った。彼の専門は錬金術、デュエルの方には自信を持てないのだ。それに公には出さないが、ラブライブで色々と忙しいのだ。

 

「積みゲーやらが残ってるので」

 

 これは永理、彼はアカデミアに来る前大量のゲームをブックオフで格安で購入している。その数何と二十本、その消費に追われて忙しいのだ。

 

「ゲームやアニメに時間を注ぐんでパス」

 

 最後のは三沢大地。永理によって引きずり込まれた結果、ロリキャラが出てくるゲームやアニメを、これまでの時間を取り戻すように消化するのに忙しいのだ。ちなみに今見ているのは機動戦士ZZガンダムである。

 校長は、まさか四人に断られるとは思っていなかったので、ぽかんと放心する。まあそうだろう、まさか四人も断るとは誰も思うまい。

 唯一受け取ったのはクロノスと万丈目、そして明日香だけだ。

 

「……クロノス教諭」

 

 クロノスは悲しそうな眼を校長に向け、何も言わず首を横に振る。アカデミアの実力者を集めたらその殆どが断るとは、普通誰も思わないだろう。

 

「仕方ありません。セブンスターズが襲来するまでの間、授業は免除しましょう。成績は保障します」

 

「サイバー流後継者になったからには、挑戦者を拒む訳にはいかないな」

 

 亮がニヒルに笑みを浮かべながら鍵を手に取る。まるで、その言葉を待ってたと言わんばかりに。

 

「強い奴らとデュエル出来るなんて、ワクワクしてくるぜ」

 

 十代は好戦的な笑みを浮かべ、まだ見ぬ強敵とのデュエルにワクワクを感じながら鍵を取った。

 

「目立つのは嫌いじゃない、楽しませてもらうぞセブンスターズ」

 

 永理はくつくつと不敵な笑みを浮かべ、鍵を手に取る。

 

「俺の理論が合っていると証明するには、これしか無いか」

 

 三沢は自らの理論を立証する為に、鍵を手に取った。

 出席の免除をちらつかせた瞬間にあまりにも華麗な掌返し。これには校長も苦笑い。現金な奴らめ、と万丈目は四人に悪態を付く。

 動機こそ不純だが、掌を返し鍵を受け取った者達の実力は確かなものだ。サイバー流後継者、オシリスレッドの天才肌、オシリスレッドのダークホース、そしてラーイエロー学年主席。味方からすれば普段の行動を知っている分頼りないが、敵からすればかなり恐ろしい。

 今日何度目か解らない溜息を校長は吐くのだった。

 

 

 初めて部屋を訪れた永理には解らないが、前の三沢を知る者が居たら驚くくらい三沢の部屋は様変わりしていた。

 壁一面に張られたイリヤのポスター、天井には雷が手を広げて、まるで慰めてくれるようなイラストが描かれている。

 PCの周辺には大量のロリ系Rの付くゲームが積み重なっており、テレビ周辺にも同じようなアニメが健全不健全問わず収納されている。本棚にも概ね同じような感じだ。

 流石に永理もここに足を踏み入れるのは少し躊躇う。何が彼を変えてしまったんだ……と永理は心の中で嘆くが、事の発単は永理なので自業自得、因果応報である。

 

「ははは、散らかっていてすまない。適当なところにでも座ってくれ」

 

 ハーピーの添い寝シーツを踏まないようにベッドに腰掛けながら、三沢がとても素敵な笑顔でそういう。永理は取りあえずPCのある場所の椅子を、床に敷いてあるひなのイラストが描かれた絨毯を踏まないように気を付けて三沢の近くに持ってきて、そこに座る。PCの近くにあったごみ箱に、大量の丸めたティッシュと消臭剤が置いてあった事は瞬時に忘れる事にした。

 

「それで、利用方法の解らないカードってのは何だ?」

 

「……」

 

「永理? どうかしたのか?」

 

 唖然としている永理に心配そうに尋ねる三沢。紳士的だ、だがロリコンであるので全て台無しになっている。

 永理は思い出したように慌ててデッキから三枚のカードを取り出し、三沢に見せる。三沢はそのカードを見た瞬間、眉をしかめた。

 

「見た事のないカードだが、何処となく不気味さを感じるな……」

 

「そうか?」

 

 永理は何故か、謎のカードに妙な安心感を感じるのだが、三沢は違うようだ。まあ永理からしてみれば、その不気味さより部屋の不気味さの方が上なのだが。

 永理と亮は所謂、ロリもイケるというタイプの人間だ。『も』と付いているという事はつまり、ロリ以外でもイケるという事だ。だが、三沢の部屋はそうではない。明らかに、ロリ『だけ』を強調しているように感じる。流石に永理もドン引きなのだが、アカデミアで一番カードに詳しそうなのは三沢だけなので、頼らざる得ないという状況だ。

 

「しかし英語のカードか……永理、英語圏に行った事は?」

 

「中学の頃、一度だけ親に連れられてハワイに行ったが……その時に買ったのは菓子類だけだぞ?」

 

 最も、永理は一言も英語を話していなかったが。基本ガイドか親任せ、永理は英語が苦手すぎてもう嫌いになってる節があるくらいだ。

 そんな場所の言葉で書かれているカードなんて買う筈が無い。

 

「そうか、なら効果が解らないという事でいいんだな?」

 

「まあ、そうなるな」

 

 三沢の言うように、永理は英語が読めない。なので使う事は無いだろうと思っていたのだが……セブンスターズという強敵と戦えば授業が免除される、この餌に釣られてしまった。もしこれらが強力なカードであれば、それに活かす事が出来るかもしれない。

 永理は汚く、現金な人間なのだ。

 

「まず、この黒い球体の奴。名前は恐らく、アバターだ」

 

「アバターってーと、あの映画の奴か? 青い肌の」

 

 永理が真っ先に思い浮かぶのは、CGが凄い外国の映画である。

 やはり違うと、三沢は首を振った。

 

「アバターってのは確か、神の化身って意味だ。

 で、効果の方なんだが……正直インチキ臭い。戦闘で破壊する事はまず不可能だ」

 

「戦闘破壊に耐性がある、という事か?」

 

 永理が真っ先に思い浮かんだのは、マシュマロンとF・G・Dだ。戦闘破壊耐性を持つモンスターは大抵攻撃力の低い壁モンスターか、召喚条件が難しく出せたとしても馬鹿のように高い攻撃力のせいでまず戦闘破壊されないモンスター。そのどちらかしか思い浮かばない。

 しかし、三沢は首を横に振る。

 

「そんな生易しいものじゃない。こいつの効果は、場で一番高い攻撃力のモンスターの攻撃力+1となる。つまり戦闘破壊はおろか、貫通ダメージを与える事も出来ないっておいう事だ」

 

 それは、デュエルモンスターズの戦闘を否定するような効果だ。キメラティック・オーバー・ドラゴンのような高火力モンスターの攻撃力でも、オベリスクの巨神兵が二体のモンスターを生け贄に捧げ無限の攻撃力を得たとしても、それを平気で1上回る。単純ながらに、強力すぎる効果。

 

「この巨人の名は、ドレッド・ルート。方も、戦闘破壊は難しそうだな。こいつ以外のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするようだ」

 

「半分って、マジかよ」

 

 悍ましい巨人の描かれたカードには唯一、攻撃力が割り振られている。攻撃力4000、更にこいつ以外のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするという事は、戦闘破壊するには最低でも8000の攻撃力が必要という事になる。

 あまりにも馬鹿げた能力だ。

 

「この竜みたいなのは、イレイザー・二枚に比べたら見劣りするが、普通のカードに比べればやはり強力だ。相手場のカードの数×1000ポイントを攻撃力とする効果と、墓地へ送られた際場のカード全てを墓地へ送るっていう効果だな。……消しゴムじゃないよな、流石に」

 

 つまりは最終戦争を内臓したモンスターという事になる。確かに、上で挙げた二枚のカードに比べれば効果は見劣りするかもしれない。だが、相手が三枚カードを出しただけで3000、四枚出せば4000となるのは、やはり見劣りこそすれど強力だ。

 カードの枚数に関してはおジャマトリオやナイトメア・デーモンズで何とかなる。それにいざとなれば、墓地へと送ればいいだけの話。

 

「永理、こんなカード何処で手に入れたんだ?」

 

「朝起きたら落ちてた、って言ったら信じるか?」

 

「……信じるしかないだろう、あんな話を聞かされた直後じゃ」

 

 校長の話は三沢の世界観を一変させた。世界が亡ぶ、しかもカードで、だ。三沢からしてみれば、あまりにも非現実的すぎる話。しかし、話していた校長の眼は真剣そのもの。しかも守りきれば授業免除まで言い渡してくれたのだ。

 こうとなれば校長は本気だと、本気で言ってるのだと、三沢でも理解した。するしかなかった。

 それに比べれば、まだ朝起きたらカードが落ちていたという方が自然に感じてしまうのは、感覚がマヒしてしまっているからだろう。

 

「……取りあえず今言える事は、今の永理のデッキじゃちょっとキツそうだな」

 

「最上級モンスターは確かにキツいな……仕方ない」

 

 永理は明日、DPでカードパックを適当に買おうと心に決めたのだった。




 主人公のデッキをタッグフォースで、三邪神入れて作ってみた結果、一度も出せた事がありません
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