丁度十代が亡霊とデュエルしている頃、永理は月を見上げていた。
夕飯を食堂で済ませ、腹ごなしに適当に散歩をしていた。毎日やっているどころか十日に一回レベルの趣味。デュエルアカデミアは虫が多いのが難点だが、景色はかなり綺麗だった。
滝壺には蛍が飛び交い、洞窟にはヒカリゴケによる幻想的な光景を見られるのだ。
しかし、永理は月を見ていた。真ん丸満月、綺麗な満月だ。空気が澄んで、人口の光が少ないアカデミアだからか星々も見える。
永理は月を見ていた。そう、枯れ井戸の中で。まさかインドア派な永理が、散歩して踏み外して穴に落ちたなんて誰も思うまい。
「助けてつかぁさい……」
辺りに自然など無く、敷き詰められた岩と石のみ。ロープも無く、梯子も無く、ついでに万丈目が全部持って行ったせいでカードも無い。あるのは原型を留めないほどふやけ、もはや液状化した元カードと二枚のカードだけだ。
ライナとダルクは置いて行かれたようで、背中に突き刺すような殺意を感じている。が、永理のデッキに眠る(デュエルでも一度も出た事が無い)邪神のおかげでこちらに影響を及ぼす事は無い。
無いからといって気分が良い物ではない。というかぶっちゃけ、すぐに出たい。壁には永理の服と同じ血がこびり付いている。一度死んでしまったのだ。おお、死んでしまうとは情けない。死霊伯爵がそう言った瞬間殴ったが精霊は非実体化しているので拳は壁に当たり、拳を砕く結果に終わってしまった。
だが、永理に井戸を上る力が、自重を持ち上げる力がある訳が無い。永理は自分の体重の半分程度の体重の子供さえも持ち上げる事が出来ないのだ。非力万歳、性別さえ違ければヒロインになれる程の非力だ。
まあ実際は骸骨か餓死した浮浪者のような感じなのだが。
『助けを呼ぼうにも、こんな夜更けじゃ誰も来ませんよねぇ……あっ、ウノ』
『ふん、足元注意だ。また死んでしまうとはな。ドローフォー』
「お前ら二人でウノして楽しい?」
『全く楽しくありませんよ?』
『楽しい訳が無かろうが。ただの暇つぶしよ』
サイコ・ショッカーと死霊伯爵、ついでに永理と一緒に月を見ているグレート・モスが居るだけ、退屈で殺される事は無いだろう。
だがそれ以外で死んでしまう可能性は高い。いや今日も既に
問題は、永理のサウスパーク的不死能力が餓死でも通用するかどうか、である。まあ試すのも嫌なので、それまでに見つけてもらいたいのだが。
グレート・モスが慰めるように前足でポンポンと永理の頭を叩く。唯一の癒しが虫というのは、一体どういう事なのだろうか。
『……取りあえず、横穴行ってみたらどうです? 少なくとも、
「でもさ、暗いじゃん! 俺のデスポーンその場蘇生なの! いしのなかにいたらそのままいしのなかにいる状態になるの!!」
サイコ・ショッカーがその言葉を聞いた瞬間、眼をキラリと光らせた。
比喩ではなく、マジで。懐中電灯のライトのように、洞窟の中を眼鏡が照らす。
仲間にして良かった、と心から思う永理。敵が仲間になった瞬間無能になったり弱くなったりはよくある事だが、まさか役に立つとは。それもこんな状況で。
『どうだ、これで明るくなったろう?』
「それやめい……まあ、サンキュな。よし、行くか!」
頬をパチンと叩き、謎の横穴に足を踏み入れる。
壁や天井には苔が生えており、永理の足元をデカいドブネズミがちゅちゅちゅと走る。
永理はもう帰りたくなった。元々帰れないから、この洞窟を進む羽目になってしまったのだが。それでもとにかく帰りたくなった。もう半分くらい涙目だ。
恐る恐る、壁に触れないように横穴を進んでいく。何も出ませんように、そう祈りながらしばらく進んでいると、大きな広間に出た。
アカデミアの最新デュエルフィールド(何がどう最新かは不明)くらいの広さのある広間。天井もかなり高く、錆び付いた蛍光灯が付いている。
そして、そんな広間中央で、堂々と座る一人の男。
「やっと来やがったか。随分と待たせやがって、本当に強い──月影、か?」
「……なーにやってんだ、お前さん」
白く長い髪、綺麗に整ったイケメンフェイス。三角眼。そしてそれらを引き立てつつも一部の人間に多大なダメージを与えそうな、黒い服。
いつぞや永理とデュエルした、伝説のデュエリストの友人、まあ実際は敵だったバクラだ。
もっとも、その服もかなり汚れ、顔には髭が生えているが。
「アヌビス持ってきて、ついでにオレは森で待ち伏せしようとしたらこの井戸に……」
「バカジャネーノ?」
「お前も落ちてるかじゃねーか馬鹿」
「誰が馬鹿だ誰が、俺は頭脳知数が高いんだ」
「本当に頭いい人は頭脳知数が高いんだとか言わねーからな!?」
何ともしょうもない争いをする二人、永理の後ろで死霊伯爵とサイコ・ショッカーが呆れの溜息を洩らす。
不毛だ、不毛すぎる争いだ。どちらが勝っても負けても、虚しいだけ。
ぐぬぬといがみ合う二人を仲裁したのは、永理の頭からふわふわと飛んで電気のスイッチを入れたグレート・モスだった。パチリ、とアリーナを明かりが照らす。
「電気通ってたんだな……」
「てっきり既に切れているものかと思っていたぜ」
ポカーン、と天井を見る二人。明かりが現れた事でアリーナの周りを見る事が出来るようになった。
壁には布らしきものと、それにぶら下がる骨の死体。岩肌の方にも布を敷いただけだったような残骸の上に転がる、いくつもの骨。たき火の残骸を囲む骨、バラバラに砕け散った骨など、実に様々だ。
永理とバクラはそれを一瞥してから、さてと顔を見合わせこれからの事を考える。
「……所でよ、お前ロープとか梯子は無いのか?」
「俺がそんなの常備してると思うか?」
「……だよなぁ」
お互いに頭を悩ませる。どう脱出すべきか、なんて全くこれっぽっちも検討が付かない。
一応バクラは、前世で盗賊だったという設定──じゃなかった、記憶がある。だがその時も、常に逃げ道を入念に下調べし、道具も仕込ませていた。
というより、こんなふっかい井戸に落ちるなんて事無かった。
「まあいい、取りあえずデュエルだ」
「お前速攻サレンダーするつもりだろ!? 負けたら不思議な力で出られるんだろ!?」
「チッ、ばれてーら」
忘れられがちというか殆ど忘れられていただろうが、永理は一応原作知識持ちである。バクラが既に消滅し、この場に居るのはそれの残留思念だろうという予想は付いていた。
故に何らかの不思議パワーで、負ければ脱出出来るのだろうと予想したのだ。というか、そうでなければ脈絡なくデュエルだとか言ったりしない。
たくらみが外れたバクラはなんとな外に出ようと思考を探る。
じーっと、じーっと永理の頭を、グレート・モスを見る。緑色のモスラみたいな、正直言ってマスコットにはなりはしないくせしてこの作品では何故かマスコットになっているあれ。
そしてバクラは、ふと思いついた。
「……待てよ。グレート・モスの糸で出られるんじゃね!?」
「あー駄目だ、もうおねむモードだ」
「起こせよ」
「事故るぞ?」
永理の頭でうとうと舟をこぐグレート・モス。もし無理矢理起こして糸で脱出しようとしたとしても、絶対途中で力尽きるだろう。
永理に攻撃は通用しないが、だからといって痛くないという訳では無い。ぶっちゃけめっちゃ痛いのだ。
「……そうだ! デュエルで激しい光とか出せば、助けが来るんじゃね?」
「なるほど頭いい!」
ギャバーン! と起動音を出しデュエルディスクを展開させるバクラと永理、思いついたら即実行がデュエリストの鉄則である。
こうして、全く持って緊張感の無いセブンスターズとの戦いがスタートした。
「「デュエル!」」
互いにカードを五枚引く。
先に動いたのはバクラだ。
「オレ様の先功、ドロー!
魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動! 手札のモンスターカード一枚を墓地へ捨て、手札・デッキからレベル1のモンスター一体を特殊召喚する! インフェルノイド・ベルゼブルを墓地に捨て、デッキからインフェルノイド・デカトロンを特殊召喚!」
『アーキーハーバーラー!!』
頭とヒレのような部分にライトをつけた、トカゲの顔の様な、戦闘機めいた悪魔が現れる。インフェルノイド、聞いた事のあるような無いようななモンスターだ。
永理の身内は黒蠍とかラヴァゴビートとか訳の分からんデッキばかり使っていたので、ぶっちゃけ流行とかに疎かったのだ。
「インフェルノイド・デカトロンは召喚・特殊召喚に成功した際、デッキからインフェルノイドと名の付くモンスターを墓地へ送る事で、そのモンスターのレベルだけこのカードのレベルを上げ、墓地へ送ったモンスターの名と効果を得る! オレ様はデッキからインフェルノイド・ルキフグスを墓地へ送り、レベルを3つ上げインフェルノイド・ルキフグスの名と効果を得る!
更に手札のインフェルノイド・ベルゼブルを除外し、インフェルノイド・アスタロスを特殊召喚!」
次に現れたのは、まるで石仕掛けのゴーレムのような姿をした、二足歩行のドラゴン。地獄の石のような身体に、薄い何らかの鉱物で作られただろう翼。胴体は不自然なくらい細い。
石のような骨格の下には、変色した筋肉の様な肌。不気味だ。
「オレ様は二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚、ラヴァルバル・チェイン!」
海洋生物っぽい、黒い鱗と白い肌が特徴的な海竜が、腕と腰にプレートを付けた状態で現れる。
炎が酸素を奪いそうだが、ソリットビジョンなので実害は無い。たまに怪我したりとかするけど、無いったら無いのだ。
「チェインの効果発動! オーバーレイネットワークを一つ使い、デッキからカード一枚を墓地へ送るか、カードをデッキトップに置く! 俺はデッキからインフェルノイド・ネヘモスを墓地へと送る!」
チェインの片方の炎の羽の勢いが、少し弱まった。
と同時に口から二足歩行する機械仕掛けっぽい龍の骸が、どろりと落ちて消えた。
「更にクリバンデッドを召喚!」
頭に黄色いスカーフを巻いた、毛の黒いクリボーが現れる。左眼には眼帯、手足が緑色で狂暴に尖っていた。
「カードをセットし、クリバンデッドの効果発動! このカードを召喚したターンのエンドフェイズにこいつを生け贄に捧げる事で、デッキからカードを五枚めくり、その中から魔法・罠カードを一枚だけ手札に入れ、残りを墓地に捨てる!」
クリバンデッドの姿が消え、永理の前に、バクラのデッキの五枚のカードが映し出される。
名推理、煉獄の消華、煉獄の死徒、インフェルノイド・ベルフェゴル、奇跡の発掘の五枚。墓地肥しに手札補充、そしてさらっと見た感じ煉獄と名の付くカードの効果の強力さに思わず歯噛みする。何だ墓地から効果発動って、インチキ効果もいい加減にしろと叫びたくなる。
「俺は名推理を手札に加え、残りを墓地へ! ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!
魔法カード、手札抹殺を発動! 互いに手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする!」
永理は五枚、バクラは二枚カードを墓地へ捨て、ドローした。
手札が程よくモンスターで埋まっていた永理と、若干苦い顔になるバクラ。随分と対照的な反応だ。
「俺は魔法カード、闇の誘惑を発動! カードを二枚ドローし、手札の闇属性モンスタ-、混沌の黒魔術師を除外! 更にもう一枚闇の誘惑発動! 二枚ドローし、手札からネクロフェイスを除外! 更にネクロフェイスが除外された事により、互いにデッキトップからカードを五枚除外する!
そして! 俺はモンスターをセットし、カードを二枚セット! ターンエンドだ!」
合計四枚もドローしたというのに、結局目立った動きもせず永理はターンを終了した。
初手であれば堅実な動きと評価も出来ただろうが、ニターン目でそれをやるのは少々遅すぎる。
「オレ様のターン、ドロー!
チェインの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキからカードを一枚墓地へ送る! オレ様はデッキから、インフェルノイド・リリスを墓地へ送る!」
今度はどこぞのメロンみたく、チェインの口から吐き出される、ウナギの様に長い、機械っぽい見た目の龍。ピカピカと点滅するのだろう顔のLEDライトめいた飾りも力なく点滅し、トビウオのような羽も心なしかしなだれている。
そして消えた。何だアレ、と誰もが見て思う事だろう。実際永理はそう思った。
「墓地のインフェルノイド・デカトロンとインフェルノイド・アスタロス、インフェルノイド・ヴァエルを除外し、墓地からインフェルノイド・リリスを特殊召喚!」
さっきチェインの口から出た、巨大な蛇の様な形をした龍が覇気を取り戻す。機械に覆われた、細長い身体。ウスバカゲロウのような羽。顔に付いた紫色のLEDライトが毒々しく光り輝く。くすんだ青銅のような色に浮かぶ頭の上部と腹に付けられた紫色のプレート。
とても名のある怪物なのだろう。事実デカくて怖い。
しかし井戸の中なので少しばかり狭そうで、非難の声のようにキュルルと鳴いた。
「インフェルノイド・リリスの特殊召喚に成功した時、煉獄と名の付くカード以外の魔法・罠を全て破壊する!」
「残念だったな! 罠カード発動、強欲な瓶と闇次元の解放! 闇次元の解放の効果でネクロフェイスを特殊召喚し、強欲な瓶でカードを一枚ドロー! そして闇次元の解放が破壊された事により、再びネクロフェイスが除外され、互いにデッキトップからカードを五枚除外する!」
闇色の風が吹き荒れると同時に、永理の場に赤ん坊の頭からうねうねと寄生虫めいた触手が出たモンスターが現れたかと思うと、すぐに闇の渦の中から現れた手にアイアンクローされながら、ネクロフェイスは姿を消した。
バクラは利用された事に対し舌打ちを洩らすが、破壊してなかったら混沌の黒魔術師を召喚されていた危険性を考えればこれが最善だったと自分に言い聞かせた。
デッキの枚数は、少々心もとなくなってしまったが。
「バトルだ! ラヴァルバル・チェインで伏せモンスターを攻撃!」
「ふっふっふ、伏せていたのはメタモルポットだ!」
チェインが一度空中高くまで飛び、そこから水鉄砲のように勢いよく垂直に、リバースしたメタモルポットへと向かう。すると壺の中から筋肉もりもりマッチョマンの褐色変態が現れ、何故かそれをアッパーカットで制す。
殴った手が痛かったのか、何処からかタオルが投げ渡され、メタモルポットは姿を消した。
「互いにカードを全部捨てて五枚ドローだ!」
「いや今の何だ」
「知るかバカ、そんな事よりデュエルだ!」
何か納得出来ないけどデュエリストとして言われたらそれで納得せねばならない言葉をかけられ、渋々デュエルを勧めるバクラ。
なんか効果処理とか色々と納得出来ない事に定評のあるのが、永理なのだ。こんな特別じゃなくてヒロインが欲しかったとは、永理の談。
「インフェルノイド・リリスで攻撃!」
ウナギの様な巨体をくねらせ、永理に槍のように突撃するリリス。しかしそれも目前で、突然現れた謎の丸いバリアによって防がれてしまう。
若干涙目でバクラの場へと戻るリリス。蜷局を巻いて、威嚇のようにシャーッと鳴く。
「墓地からネクロ・ガードナーを除外し、攻撃を無効にした!」
「チッ、カードを二枚セットしてターンエンドだ!」
このターンで仕留めきれなかった事に、バクラは舌打ちする。
永理の墓地も除外場も、十分に肥やしてしまった。しかも永理のデッキとバクラのデッキは、正直言って相性はあまり良くない。
というより永理のデッキ構築自体がバクラとは愛称が悪いのだ。何をしてくるか解らないのだから。
「俺のターン、ドロー!
俺は魔法カード、終わりの始まりを発動! 闇属性が七体以上いる場合、そのうち五体を除外し、カードを三枚ドローする! 墓地の終末の騎士、人造人間サイコ・ショッカー、死霊伯爵、ダーク・ネクロフィア、夢魔の亡霊を除外し、カードを三枚ドロー!
更に手札を一枚捨て、装備魔法D・D・Rを発動! 除外されているモンスター一体を特殊召喚する! 俺は混沌の黒魔術師を特殊召喚!」
青い肌の魔術師をした、鎧ともとれる真っ黒な魔法着を着て現れる。無駄に杖を振り回し、ノリノリに決めポーズ。
ダルクからパクッ……迷惑料として勝手に頂戴して以来、色々と有効活用させてもらっているのがこのカード。段々永理に染まってきているのはご愛嬌。
「混沌の黒魔術師の効果発動! 召喚・特殊召喚した際、墓地の魔法カード一枚を手札に加える! 俺は闇の誘惑を手札に加え、そして発動! カードを二枚ドローし、手札のツインヘッド・ケルベロスを除外!
そして紅蓮魔獣ダ・イーザを召喚!」
くるくる回していた杖を地面に叩き付ける混沌の黒魔術師。するとそこからピシリと地割れが置き、その中から飛び出してくるUFO状の真っ赤な物体。
それは空中で可変変形し、紫色の羽に真っ赤な外部骨格を付けた悪魔が現れる。何故かババーン、という効果音付きで。
「ダ・イーザ……チッ、面倒なカードを出しやがるぜ」
「面倒? もはやこれは、全てを焼き尽くす暴力よ! 除外されている俺のカードは全部で十八枚! よって攻撃力は、7200! サイバー・エンドだって殴り殺してみせらあ!」
ダ・イーザは、自分の除外されているカードのみという限定こそあるものの、カードの種類は問われない。つまりそれだけ、攻撃力を上げやすいという事に他ならないのだ。
というかセルフでかなりデッキデスしているが大丈夫なのかこいつ、とバクラは他人事のように思う。自分のデッキも正直結構薄くなってきているのだが、それは棚に上げる。
問題は、あの化け物モンスターをどう処理するか、だ。
「バトル! ダ・イーザでラヴァルヴァル・チェインを攻撃!」
「やっぱりか! 罠カード、月の書を発動! ダ・イーザを裏側守備表示にする!」
突然ダ・イーザも頭上から降って来た、青い表紙に三日月模様が描かれた本。ドスッ、と鈍い音を立ててダ・イーザを落とした。
そしてその本が開くと、その中から月光が降り注ぐ。まるでそれに怯えるように、ダ・イーザは裏側守備表示となった。
『一七〇〇万ゼノのブルーツ波を怯える習性があるようですね』
「んな訳あるかい。混沌の黒魔術師でチェインを攻撃!」
死霊伯爵のボケにツッコみを入れてから、永理は攻撃を命じる。
永理もたまにはツッコみ役になる事も無くは無いのだ。すぐにボケになってしまう性分だ。
しかし混沌の黒魔術師が何故か二人に分かれ、白と黒を混ぜ合わせてマーブルスクリュー的な魔法を手から出したのに触れない辺り、ツッコみ役になる事は出来ないだろう。
というかお前ら魔術師なんだから杖使え、とバクラは思ったそうな。
「カードを一枚セットでターンエンドだ」
「オレ様のターン、ドロー!
魔法カード、ダーク・バーストを発動! 墓地のクリバンデッドを手札に戻し、召喚! ラヴァルバル・チェインを守備表示に変更し、エンドフェイズ。クリバンデッドを生け贄に捧げ、デッキからカードを五枚めくる!」
再び永理の眼の前に、五枚のカードが現れる。
ネクロ・ガードナー、マスマティシャン、インフェルノイド・ベルフェゴル、ブレイクスルー・スキル、煉獄の虚無の五枚。ブレイクスルー・スキルは、不味い。永理は冷や汗を流した。
「オレ様は煉獄の虚無を手札に加え、残りを墓地へと落とす!
ターンエンドだ!」
更新が遅れてしまったのは全て、インフェルノイドの名状しがたき形状のせいなんだ。