月影永理の暴走   作:黄衛門

46 / 59
第46話 ブラマジガール危機一髪

 文化祭、それはリア充が笑い非リアが嘆く、学校行事の一つである。文化祭の様子は、学校によって様々だ。

 全く生徒と関係ない人も招き入れ、まるで祭りのように馬鹿騒ぎする場所もあれば、保護者で親のみ入る事が出来るという閉鎖的で自己完結型な学校もあれば、全くやらない学校もあるだろう。

 さて、デュエルアカデミアの学園祭がどのようなものか。オベリスクブルーは喫茶店を、ラーイエローは縁日を。そしてオシリスレッドは──

 

「コスプレデュエルか……あいつら、やらかさないだろうな」

 

 そう、コスプレデュエルである。決してコスプレイメクラではない、何せ女の子が居ないのだから。

 以外とラーイエローやオベリスクブルーの生徒も集まった、オシリスレッド寮前の野外デュエルフィールド。

 青いタイツの上に黄色い装甲を付け、背中にアンテナめいたものを付けたヒーロー。スパークマンのコスプレをしながら、十代はあいつらに注意を向ける。

 コスプレは基本隼人が製作したものを使われているのだが、永理組だけは独自に作っていたのだ。

 そう、永理組が、である。

 馬鹿と変態と屑しか居ない、永理組である。永理は微妙な特技だけは凄まじいのは、十代も知っての通り。故にその不安を抱くのもまた、当然というもの。

 隣でジャンク・シンクロンのコスプレをしている翔は、何処となく暑そうにマフラーを緩めた。ぶかぶかなオレンジ帽子の自重で眼鏡がずれる。

 

「まあ、大丈夫じゃないっすか? 流石に永理君達も、それほどハジけたりは……」

 

「いいや、あいつらは常に予想の右斜め上をいく奴らだ」

 

 翔の楽観的な言葉に、十代の隣で赤いマントをはためかせた、黒い鎧を身にまとった万丈目が釘を刺す。

 ちなみに万丈目のコスプレはダーク・クルセイダーだ。安全とかの為に当然剣は無い。まあ、隼人の技術があれば剣も作れたのだが、その加工で出る大量の発泡スチロールのカスの後処理を考えて、大徳寺からストップが入ったのだ。

 そして、ついにその時が来た。男共の着替え部屋となっている永理の部屋から最初に出てきたのは丸藤亮。当然、恰好は普通ではない。

 紫色のボディスーツの上から、右胸に大きく『07』と描かれたプレートを付けた、色々とツギハギ装甲とプレートの留め金の付けた気味の悪い物体。口には鉄のプレートをメンポのように付けており、更に特殊メイクで脳味噌が丸見えだ。

 

「小さいころ、人造人間7号のこのカードは直接攻撃できる。の意味がわからなくていきなり腹部をぶん殴って来た翔太くんを俺は絶対に許さない」

 

「何言ってんすか兄さん……」

 

 キリッ、といった感じの表情でそう言い切った亮。既にそこにはカイザー亮としての姿は無く、ネタにひた走る、永理に染まってしまった変態デュエリスト丸藤亮の姿しか無かった。

 その亮を押しのけ現れたのは、三沢大地。縁日の方はどうしたんだ、という疑問は三沢の姿でかき消されてしまうインパクトだ。

 下は黒革のズボン、上はマントのみ。そしてマスクを被っているという、変態兵装。当然上半身はマント以外裸。

 しかも何故か細かく腰を動かしている。

 そしてその後ろから現れたのは、矢の刺さった鉄製の鎧を着た男。両手に段ボール製の日本刀を持っている。

 

「……永理、なにその恰好」

 

「不死武士」

 

「もっとマシなのあっただろ……」

 

 思わず十代の口から出たのは、最もな言葉だ。というのも、十代は初見「いっきか、いっきのコスプレか」と思ったほど。まあカードを知る者が見れば見る程凄い再現されているのだが、それを知らなければ某漫画の部長がコスプレしたいっきが真っ先に思い浮かぶだろう。

 いや、普通の人は知らない漫画の話なのだが。

 

「んだとコルァー! 不死武士さん馬鹿にすんのか貴様!? 戦士族シンクロで超役に立つんだとテメェ!!」

 

 そしてそんな永理の後ろで三沢は腰を振り続け、そろそろイラッと来たのか万丈目の飛び蹴りが三沢の顔面にクリーンヒット。慣性の法則にしたがい扉に思い切り背中を打ち付け、鼻から血を吹き出ししめやかに気絶した。

 

「なんてこった! 三沢が死んじまった!」

 

「この人でなし!」

 

 十代と永理のケニーコンボ。普段は永理が三沢の立場になっているので、こういう状況は実際珍しい。まあ普段から負傷しまくっている永理がケロッとすぐに復活する方がおかしいのだが。そこに深くツッコむ者は居ない。遊戯王にはよくある事なのだ。

 ちなみに三沢はデュエリストパワーによって、頭から血を流したりしているがケロッと復活した。

 

「フハハハハハハハ!!」

 

 突如、オシリスレッドの屋根からどこぞの聖帝ばりの高笑いが鳴り響き、地上の生徒の視線が一気にそこへと集まる。

 その声を上げた、高笑いを上げた主は何処からか持ってきた白いマントと黒い革のズボンというのは三沢と同じだが、そこにさらに追加で鬼の様な仮面を被っている。当然顔は見えないが、その声だけで一部の生徒は察しがついているようだ。

 ちなみに三沢のコスプレはアクア・マドールで、亮のコスプレもそれをアレンジした感じのだ。

 

「とうっ!」

 

 そして屋根から無駄に華麗に一回転し、しめやかに地面へと着地。衝撃をしゃがむ事で殺し、そして足を延ばすと同時に仮面を取る。

 そこには甘いマスクの男、天上院吹雪の顔があった。途端に女子生徒から黄色い歓声が上がる。

 

「……ふぅっ、やっぱり注目の的に居るのは落ち着くね」

 

 バサッ! と無駄にマントを翻し呟く吹雪。妙に演技臭い動きだ。

 天上院吹雪。元々はダークネスであった彼は十代とのデュエルで大きなダメージを受けていたのだが、今日やっと完治し、目立つ地求めイスカンダルへという訳でも無いが、取りあえず目立つ為にオシリスレッド主催、コスプレデュエル大会へとやって来たのだ。

 

「フッ、復活早々その調子であれば、完全復活の日も近いな」

 

「やあ亮、凄い恰好だね……いや、僕も人の事言えないんだけどさ」

 

 はっはっはっと笑い合いながら互いに肩を組む馬鹿二人。誰が呼んだかこの二人、デュエルアカデミアの最強コンビである。

 今となってはその中に永理も加わり、その暴走具合はブレーキの切れた暴走機関車のようになっていく事だろう。

 

「取りあえず永理、他の衣装は無いのか?」

 

「しょうがないにゃあ、いいよ」

 

「やめろ気色悪い」

 

「キャストオフッ!」

 

 軽いボケとツッコミをしてから永理は勢いよく鎧を脱ぐ。するとその中から現れたのは、大きく前の空いた白衣。とはいえ肉付きの悪い骨めいた永理の事だ、天才科学者のように見えたとしても頭文字にマッドが付き、クケケとか笑っていそうな科学者っぽい。

 

「コザッキー……?」

 

「どうだ、幸子でどうだ?」

 

「だからなんでお前はそう……そう解りにくい方へ突っ走るんだよ!?」 

 

 どこぞの動物を集めるゲームに出てくる狂った科学者のような台詞を吐く永理。当然そのネタに対応出来る者は少ない。というか、殆ど居ないだろう。

 だがそれが永理の知った事か。彼は常に彼なのだ。誰も彼を止める事も、抑える事も出来はしない。力づくで抑え込むのなら小学生でさえも可能ではあるが。

 

「なんだ、これも不満か。我が儘な奴め。……レイが居たら戦闘機のコスプレをさせるのだがな」

 

「なんで戦闘……いや、言わなくていい。言うな」

 

「その昔R-TYPEという横スクロールシューティングゲームがあってだな」

 

「ヤメロォ!」

 

 はっはっはっはっと、ツッコみ倒す十代に高笑いで返す永理。彼にとってノリ以上に重要なものは無く、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 しかし、そんな馬鹿五人組を蹴散らすように、周りのギャラリーがざわめきだした。

 その声の発信源は、女子更衣室前。そして人込みをまるでモーゼの奇跡めいて割って歩いてきたのは、ピンク色のボブショートがとても似合う少女と、すらっとまるでモデルのような金髪の少女。ツァン・ディレと天上院明日香。どちらの胸も豊満であった。

 ツァンの恰好は、所々ドクロの模様が施されたバスガイドだ。手提げバッグにもドクロ模様がある。ただし、それはコスプレ元であるバスガイドに比べて胸が豊満である。日本に来たせいでデスの文字が付いたあのバスガイドの格好だ。

 明日香の恰好は、もはや水着である。黒の水着めいた、露出度の高い恰好。白いニーソックスと腕に付いた白い羽。ハーピィ・ダンサーというモンスターの恰好。どちらの衣装も、青少年の何かが危ない!

 その二人は真っ直ぐ十代の方へと駆け寄って来た。

 

「どっ、どう? 似合っているかしら……」

 

「べっ、別にあんたの為に着た訳じゃないけど……どっ、どう? 変じゃない?」

 

「おっ、おう……二人とも、とても似合っているよ」

 

 十代のこの一言で、二人は雌の顔となる。

 十代が視線だけで永理に助けを求めると、サムズアップされ、そしてすぐに間反対の方を向けられた。裏切り者め地獄で詫びろ、とでも言いたげだ。

 勿論、二人の恰好は永理にとってもとても目福である。しかし、その好意がたった一人に向けられていると言うのは、とてもヤンナルネといった感じなのだ。

 想像してみてほしい。公共の場でディープキスとかやらかす腐れアベックを。駅で「キスマーク付けて~♥」とかいう頭の中にサッカリンでも詰まってるんじゃないかと思うような事を言う女を。死ねばいいのだそんな奴。

 つまり、今の十代の状況はそんな感じであり、永理にとっては台無しにさせるに足る十分な理由となるのだ。男の嫉妬は見苦しいが、永理の生き様は元々見苦しいので問題ない。

 

「死ね……死に腐れ遊城十代ッ……!!」

 

「アニキの裏切り者……くたばれ、くたばれッ!!」

 

「お前ら酷いな!? というか助けてくれよ!!」

 

 永理と翔は同時に首を掻っ切るように指をスライドさせる。助けは出さない、何故なら永理は恨みを買いたくないし、何よりあんな桃源郷を見せつけられているだけでもめっちゃイラつくのだから。

 

「そういや三沢、最近ブームが来ているあのゲームやった?」

 

「ああ、あれか。とても良いシナリオだ……グロ肉可愛いよグロ肉」

 

「それ最近じゃないっすよね」

 

 ああ、哀れ十代が助けを求めれそうな仲間は、エロゲ雑談に花を咲かせている。

 では万丈目はどうだ。あいつはルックス良いし、モテてるからきっと助けてくれるだろう。淡い希望を抱き万丈目の方を見ると、眼が合った。両腕にはヘル・エンプレス・デーモンとヘル・ブランブルが、さながら恋人の様に腕に絡みついている。

 相手も助けを求めていたようで、お互いどうしようもない。

 では吹雪はというと、亮と一緒に話に花を咲かせていた。遠巻きに眺める女子が腐った眼を向けているが、二人は何処吹く風だ。

 

「しっかし、てっきり死んだものかと思っていたぞ。何せ崖から落ちたんだからな」

 

「ふふふ。残念だったね、トリックだよ」

 

 旧友との再会を邪魔する訳にはいかない。つまり、この状況は十代一人で乗り越えなければならないのだ。確かに、二人から胸を押し付けられていると言うのは、男として嬉しくない訳では無い。というより、嬉しくない訳が無い。

 しかし、この体制は非常に不味い。十代とて男の子、やはりあれがあれしてしまうのだ。今は必死に抑えているが、いつ発酵してもおかしくない。そのまま寮に連れ込んで窯の中に突っ込め? 十代はゴムなんてものは持って無いチェリーボーイだ、そんなの無理。生とか怖いし。

 

「なーにキョロキョロしてんのよ、十代」

 

「デュエルする相手でも探しているの? フフッ、十代は本当デュエル馬鹿なんだから」

 

「えっ。あっ、ああそうだ。うん」

 

 ジト眼で上目遣いに見つめてくるツァンと、まるで姉の様に優しく笑う明日香。ツァンはそれで納得が言ったようだが、それでも何か腑に落ちないのか、腕に入れる力を強めた。

 ツァンのメロンパンが更に押し付けられ、十代のナンがイースト菌に刺激され発酵を促される。それに負けじと明日香も、腕の力を強くする。両腕に押し付けられるパン、十代は生地を膨らませまいと必死に耐える。脳内で人型の気持ち悪いイルカの物凄い激しい半副横跳びで満たし、必死に理性を保つ。

 ここで、ここで手を出しては駄目だ。二人はきっと、シルヴィ的なあれなのだ。あれ? なら手を出してもいいんじゃね? 十代は混乱しているのか、何故か二人を某エロゲのヒロインと同一視した。

 ツァンの首には、アヌビスに付けられたのであろう、繋ぎ止めたような傷跡が残っている。明日香にも、割と目立つ傷が痛々しく残っていた。

 ああ、なんて事だ。十代の十代がコンタクト融合をしたがってしまう!

 

「……十代? 辛そうだけど、どうしたの?」

 

「うっ、いっ、いや、なんでもない。なんでも」

 

 十代は鈍感主人公系ではない。二人が自分に好意を向けていると解りきっている。しかし、だからこそ選択出来ないのだ。二股なんて出来ないし、同時に付き合うというのは絶対にバッドエンドが待っている。永理から貸してもらったゲームがそうだったから、そうに決まっている。

 「死んじゃえ」の言葉と共に頸動脈を切られたり、二人を孕ませて何やかんやあって刺されたり、どっちかがビルから落ちてきたり、どっちかの腹を切られて残った方が「中に誰も居ませんよ」とか言ったりする未来が幻視出来た。

 それだけは、何としてでも避けなければならない。十代はまだ死にたくないのだ。バッドエンドなんて嫌なのだ。

 

「ああいう純粋な娘を彼女に欲しいよね……」

 

「儀式でもするか?」

 

「やめるっす、きっと召喚できてもグロ肉にしか見えないっすよ!!」

 

「グロ肉! グロ肉じゃないか!!」

 

 何やら暴走する馬鹿三人。ここで十代は妙案を思いついた。

 二人を何とか納得させ離れさせる妙案。終わったらまた磁石めいてくっ付きそうだし、きっとあの馬鹿三人は本気でかかってくるだろうが、もはやこれしかない。

 

「あっ、ブラマジガールのコスプレっすねあれ。ちと無音カメラで撮ってくるっす」

 

「うし、んじゃ俺は触手デッキで虐めておこう……フィーヒヒ! むらかみてるあき!!」

 

「永理、俺も手を貸そう」

 

 キリッ、といった感じの、無駄に男らしい表情で、誰かは解らないがとても似合っている、青い尖がった帽子に肩が大きく空いた青い服を着た少女。肩やスカートにはピンクのフリフリがあり、特に下の方はそれだけなので凄まじい露出度の娘へと向かって行く馬鹿三人。

 流石にこれは止めなければならない。止めなければ、来年からのコスプレデュエルが無くなってしまう恐れもある。

 それに、丁度いい口実が出来た。

 

「ディレ、明日香。あいつら止めるの手伝ってくれ」

 

「ええ、いいわよ」

 

「……なら、勝ったらツァンって呼んでよ!」

 

 何故かジト目で睨みつけながら言われ、十代は「どういう意味だろう……?」と首を傾げた。その鈍い様子に二人して溜め息をつかれ、そして馬鹿三人組の二人から嫉妬の眼差しを直で受ける。

 そして、十代と二人のヒロインは、ブラマジガールを守るように、馬鹿三人の前に立ちふさがる。馬鹿三人も、無駄に土煙を巻き起こして立ち止った。

 どこからか回転草(西部劇でよく見るあれ)が転がってきて、さらに強い風が永理の白衣を揺らす。

 

「ルールは団体戦、先に二勝した方の勝ちでどうだ?」

 

「ああ、それで構わないぜ」

 

 何故かトントン拍子に話が進んでいる外れ、まるで仲間外れにされたような疎外感を受けながらブラマジガールの女は一人、ぽつりと呟いた。

 

「あれ、私、のけ者にされてる……?」

 

 でもまあ恥ずかしい目に合わずに済んで良かったよね、うん! と必死に自分に言い聞かせるブラマジガールの女であった。




 デレマスの幸子を見てリンダキューブのサチコネタ思いついた人は表に出なさい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。