月影永理の暴走   作:黄衛門

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第49話 ぶっ生き返す

 デュエルを終えた明日香は小走りで十代の所に走り寄ると、「ん」と一言だけ言い頭を突き出した。十代は静かに、明日香の頭を撫でる。それに嫉妬してかツァンも、十代の左手を掴み、自分で頭の上に乗せる。

 

「頑張ったな、明日香。……あとツァン、何してんの?」

 

「へっ!? なっ、なんでもないし! べっ別に、してほしかったとか羨ましいとかそういうのじゃ……」

 

「ならその手どけたら? というか、自分からしてたわよね?」

 

 明日香がニヤニヤと笑いながらツァンに言うと、ボンという効果音でも出てきそうなくらい一瞬で顔を赤くする。しかし十代の手を放す様子はない。

 もはやツンの要素ゼロである。デレ百パーセントだ。

 

「十代、もっと褒めてもいいのよ?」

 

「ずっ、ズル――じゃなくて、えっと、片手空いてたら寂しいでしょ? だから仕方なく、仕方なくよ!」

 

「はいはい」

 

 なんともまあハーレムものライトノベル的アモトスフィアを放っている十代グループとは対照的に、永理達非モテグループは嫉妬の炎で(三沢以外)燃えさかっていた。

 

「ああリア充がイチャイチャしてたら、全て壊したくなるな……友人でも」

 

「むしろ友人だからこそだと思うっすよ、おのれリア充」

 

 血が出るくらい唇をか噛みしめ、血の涙を流す永理と翔。友人でも――翔の言うように友人だからこそ、こういうのを恨んでしまうのだろう。妬んでしまうのだろう。

 しかし同じ非モテグループである(二人とは違って昔は評価が高かった)三沢はその様を鼻で笑い、呆れたように言う。

 

「ふん、あいつ等が結婚して子供産んだらハイエースすればいいだけの話だろうが」

 

 翔と永理はそっと、三沢から距離を取った。しかし三沢はそれにも意に介さない。彼は常に、自分の信念を曲げない男となったのだ。悪い方向で。

 永理とてモテないグループに入っているものの、普通にモテたい側の人間だ。三沢のように色々と悟って、悪い方向に突き抜ける程落ちぶれてはいない。それに実行に移そうにも力負けるだろうし。

 まあ、三沢をこうしたのも永理だが。

 

「さて、残るは俺と十代という訳だが……いつまで続くんだ、この地獄は」

 

「地獄て、俺も腕が痛くなってきたんだけどな……」

 

 ハハハ、と乾いた笑いを出す十代。撫でられてご満悦な二人の美女。永理の嫉妬の炎が激しく燃える。めらめらと、まるでガソリンをぶちこまれたように。

 今すぐぶち壊したい衝動に駆られるが、永理は我慢する。今のこの場は祭り状態、その中で空気を壊すような事はしない。永理は目立ちたがり屋で、エンターティナーなのだ。

 つまり、この恨み辛み逆恨みはデュエルで晴らす、という訳だ。まあ実力を見せつけてあわよくばモテるチャンス来ないかという打算もあるが、それは確実に無いだろう。永理がモテるとしたらそれは夢か空想世界かぐらいだ。

 

「そろそろそいつを解放してやってくれないか? 観客達を焦らすのも重要だが、あまりに過ぎると飽きられてしまうからな」

 

「へっ? あっ、ああごめん……頑張ってね、十代」

 

「十代、私の勝利に続くよう勝ちなさいよ!」

 

 二人に背中を押され、十代が出てくる。永理もにやりと悪役スマイルを浮かべ、場に躍り出た。

 

「さて、やりますか」

 

「ああ、待たせて悪かったな永理」

 

「いいさ、おかげで――テメェを思う存分ぶっ倒せるってもんだ!」

 

 永理がにやりと笑い指を鳴らすと、観客達から大きな歓声が、闘争を求める声が上がる。

 十代はその言葉に対し、デュエル開始の宣言で答えた。

 

「「デュエル!!」」

 

 デュエリストに、戦士に言葉は必要ない。語る事があれば、気に入らなければただ、カードという剣で語り合い、ぶつかり合うのみ。

 

「先攻は俺が貰う、ドロー!

 モンスターをセットし、カードを二枚セット! ターンエンド!」

 

 永理の定石的パターンだ。初手セット、永理が初手でモンスターを攻撃表示で召喚する事は全く無い。十代も、それは既に知っている。

 だからこそ、十分に十全に警戒をする。伏せモンスターにも、伏せカードにも。

 まあ、だからといってする事は変わらないが。とはいえ何かが起きた時に狼狽えないよう覚悟は出来た。

 

「俺のターン、ドロー!

 俺は魔法カード、ヒーローアライブを発動! ライフを半分払い、デッキからE・HEROと名の付くレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚する! 俺はデッキから、エアーマンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 背中にファンを付けたヒーローが、砂煙を上げて十代の場に現れる。ファンによって巻き上げられた土はエアーマンの周りに渦巻き、上手い事格好良い感じに土を散らせた。

 

「エアーマンの効果で、デッキからHEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキから、スパークマンを手札に! そしてフィールド魔法発動、チキンレース!」

 

 突然エレクトリカルなパレードに流れそうな音楽が鳴り、白い手袋を付けた黒い鼠がステッキを持ちながら踊り出す。

 ああチキンレースってそういう――というか、これ大丈夫なのだろうか。十代は不安げである。一方永理は音楽に合わせてネズミーマウスマーチを歌っていた。

 著作権とかいうな生々しい。

 

「ライフを1000払い、効果発動! カードを一枚ドローする!」

 

 あっという間に、十代のライフは1000となる。だが、これで永理はチキンレースの効果を無くさなければ、十代にダメージを与える事は出来ない。

 チキンレースはライフが少ない側の受けるダメージを0にする効果を持っている。つまり永理は、ライフを999以下にするか、このカードを破壊しなければ勝てなくなったという事だ。

 だが十代は、一気に決められるその瞬間まで攻撃はしてこないだろう。故に、永理が取れるのは魔法を破壊するカードを引けるように祈る事しか無いのだ。

 

「クリバンデットを召喚!」

 

 左目に眼帯を付け、頭に黄色いバンダナを巻いた黒い毛の球体が、三角眼を光らせながら現れる。

 グレムリンのように鋭い爪の生えた手足や吸血鬼のような牙といった特徴がどうも女性受けしないのか、女子の反応はそこそこだ。

 

「バトルだ! クリバンデットで伏せモンスターを攻撃!」

 

 クリバンデットは弾かれたピンボールのように素早く駆けると、伏せられていたモンスターが表になり、それと同時に女子から黄色い歓声が上がった。

 永理が伏せていたのは、青いマントを羽織り、緑色の鎧を身に纏った金髪のエルフ。それが剣を払い、クリバンデットの爪を弾いたのだ。

 

「エルフの剣士とか……お前、このシンクロ融合の時代に」

 

「使っていて楽しいデッキでないと、デュエルをする意味は無いのでな」

 

 永理がにやりと笑う。十代を驚かせてしてやったり、といった表情だ。

 永理はよく笑う、と十代は思う。永理はとにかく笑う、それも人を驚かせた時は特に、だ。そしてそういう顔をしている時は、大抵想定の右斜め上を行くのが永理だ。

 十代にはそれが楽しみで、そして少しばかり不安で仕方が無い。きっと、本当の本気で悪ふざけをしてくる筈だ。永理とはそういう奴だ。

 

「エアーマンで攻撃!」

 

 エアーマンのファンから出た竜巻がエルフの剣士をずたずたに引き裂く。左右からふき荒らされる風圧によってエルフの剣士の腕が、足が吹き飛び、肉が飛び散る。

 風が止むと、ずたずたに引き裂かれた鎧だったものが、肉の塊がどしゃりと落ちた。

 無駄にグロい死に方である。

 

「カードを二枚セットして、エンドフェイズにクリバンデットの効果発動! このカードを生け贄に捧げ、デッキトップからカードを五枚めくり、その中から魔法・罠カード一枚を手札に加え、残りを墓地に送る!」

 

 デッキトップのカードはクレイマン、チューニング・サポーター、融合、ブレイクスルー・スキル、ギャラクシー・サイクロンの五枚。

 中々良いカードというレベルではないが、十代は気にせずプレイを進める。

 

「俺は融合を手札に加え、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 死んでいる暇は無いぞ、さあ仕事だエルフの剣士! 罠カード、正統なる血族!」

 

 地面を割って蘇ったエルフの剣士はその力をアピールするように剣をぶんぶん振るうが、永理は悪い笑みを浮かべながらカードを発動させる。

 そして、それを見た瞬間エルフの剣士の顔が青ざめた。

 

「魔法カード、馬の骨の対価! 通常モンスターを生け贄に捧げ、カードを二枚ドロー!」

 

 突如空中に現れた巨大な骨がエルフの剣士を押しつぶしたかと思うと、ぱかっと骨が真っ二つに割れ、そこから何故かボディビルダーが筋肉を強調させるようなポーズを取った強欲な壺(首から下は超ムッキムキ)の、象牙で造られた像が現れ、すぐに消えた。

 

「……いやなんだそれ!?」

 

「さあな知らん。モンスターをセットしてターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 まあ、永理のカードに関してはツッコんでいても仕方ないよな……エアーマンを手札に戻し、手札からA・ジェネクス・バードマンを特殊召喚! そしてエアーマンを通常召喚! 効果でデッキからプリズマーを手札に加える!」

 

 機械で出来た緑色のオウムが、鷹のポーズをしながら現れる。その隣でエアーマンも、同じようなポーズで再度召喚された。

 これは十代の十八番。エアーマンの効果を二回使用し、なおかつ強力なシンクロモンスターを召喚する。単純ながらに呆れる程有効な戦術だ。

 

「レベル4のエアーマンに、レベル3バードマンをチューニング!

  暗黒の時代より蘇りし爆撃の王よ、我が呼びかけに答え世界を蹂躙せよ! シンクロ召喚! 飛べ、ダーク・ダイブ・ボンバー!」

 

 茶色い装甲に身を纏った人型爆撃機が現れる。

 十代のデッキの切り込み役、普段は自信を生け贄にしての特攻ばかりだが、当然アタッカーとしても使われる。

 

「バトル! ダーク・ダイブ・ボンバーで伏せモンスターを攻撃!」

 

 伏せられていたカードは、またしてもエルフの剣士だった。防御態勢を取っていたもののプロペラの勢いには勝てず、鎧諸共ミンチにされてしまう。

 ぐちゃぐちゃの挽肉になったエルフの剣士だったものはびちゃっ、と地面に落ち、まるで最初から何も無かったかのように消えた。

 

「ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!

 俺は死者蘇生を発動! 墓地のエルフの剣士を蘇生させる!」

 

 「もう殺して」とでも言いたげなくらい虚ろな眼でダーク・ダイブ・ボンバーを見つめながら、エルフの剣士が土塊の中から現れる。そのあまりにも悲しみと憎しみの籠った眼差しに、流石の十代もびくついた。

 まだ三回しか死んでいないが、既に満身創痍な様子だ。どうも同名カードの疲労度は同じ精霊に蓄積されるらしい。

 

「まだ楽はさせないぜエルフの剣士! 馬の骨の対価! エルフを墓地に二枚ドロー!」

 

 今度はエルフの剣士の背後に突然現れた、緑色の肌をした筋肉もりもりマッチョマンの強欲な壺がエルフの剣士をチョークスリーパーで締め上げ、気を失いさせてから姿を消した。

 

「十代、エレクトリカルパレードを利用させてもらうぜ! 1000ライフを払い、カードを一枚ドロー! そして手札抹殺を発動! 互いに手札を捨てて捨てた枚数分ドローする! 俺は手札五枚を捨てて五枚ドロー!」

 

「俺は五枚捨てて五枚ドローだ! そして手札のE・HEROシャドー・ミストが墓地へ送られた事により、デッキからレベル4以下のE・HEROと名の付くモンスター一体を手札に加える! 俺はデッキからクレイマンを手札に!」

 

 十代に墓地アドバンテージと手札一枚の増強を与えてしまったという形になってしまったが、融合を捨てさせられたというのはかなり大きい。

 融合デッキにおいて融合という魔法カードは、何よりも重要なキーカードである。これが無ければ何も始まらず、何も出来ない。例えるなら漫才や落語におけるマイクだ。

 ……まあ、十代のデッキは他の融合デッキとは違い、シンクロも組み込んだかなりカオスなデッキであるのだが。

 

「魔法カード、黙する死者を発動! 墓地からエルフの剣士を守備表示で特殊召喚!」

 

 自分の首筋に切っ先を向け、今にも自害しそうな感じのエルフの剣士が現れる。

 

「更に速攻魔法、地獄の暴走召喚! 攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時、デッキ・手札・墓地から同名モンスターを可能な限り特殊召喚する! 俺はデッキから一体と、墓地から一体のエルフの剣士を特殊召喚!」

 

 絶望に染まりきった表情で、新たにエルフの剣士が二体現れる。墓地から特殊召喚されたのはまた帰ってきてしまったかという絶望感に染まりきっており、デッキから現れたのはブラック企業に就職してしまった新卒のような絶望感的表情である。

 地獄の暴走召喚は使用者自身は攻撃力1500以下のモンスターしか特殊召喚出来ないが、相手が特殊召喚する際は攻撃力の上限がない。

 最も今十代の場にいるモンスターはシンクロモンスターであるダーク・ダイブ・ボンバーのみ。融合・儀式・シンクロ・エクシーズモンスターはデッキから特殊召喚出来ないのだ。

 

「更に魔法カード、デルタ・アタッカーを発動! 場に同名通常モンスターが三体存在する時に発動! このターン、三体の通常モンスターは直接攻撃出来る!」

 

「永理、忘れてないか? 確かに、今の俺のライフは少ない。でもな、チキンレースがある限り、俺にダメージは与えられないぜ!」

 

 そう、十代の場にはチキンレースが存在している。ライフが少ない場合、全てのダメージを無効にするという、厄介な効果を持ったカード。

 確かにエルフの剣士二体どころか一体でも十分なくらい、十代のライフは少ない。だが同時に、永理のライフより少ないのだ。チキンレースがある限り、永理に勝ち目はない。

 

「ならば簡単だ。少々主人公臭い台詞だが――このドローに全てを賭ける! だから犠牲になれ、エルフの剣士!」

 

 永理が発動した魔法カードは、馬の骨の対価。二度目の正直、二度目の諦め。守備表示となっていたエルフの剣士は自らの運命を悟り、せめて楽にと首筋に自らの剣を宛がう。

 しかしどういう訳か剣の切っ先からにょきりと強欲な壺が顔を現し、そしてくるりとエルフの剣士の後ろに飛び現れると、今度は腰に逞しい腕を回し、思い切りバックドロップ! エルフの剣士の頭を、地面に勢いよく叩き付けた!

 

「……なんか見ていて可哀想になってくるな。というか永理、もしかしてそのデッキって……」

 

「そう、ぶっ倒しても! ぶっ倒しても! ぶっ倒しても! ぶっ生き返すデッキ! その名も! 終わりのないエルフの剣士(ゴールド・エルフペリエンス・レクイエム)!!」

 

 実質エルフの剣士を戦闘破壊したのは一回だけであるが、密に、密に。

 そしてこんなデッキのくせに、割と戦えているというのがまた永理の憎いところだ。エクシーズモンスターが導入されたら、かなり強くなるだろう。認めたくはないが。

 

「二枚ドロー! ……ふっ、ふはははは! 女神のキスを感じちゃいます! サイクロン発動! チキンレースを破壊しろ!」

 

 喧しく鳴っていたエレクトリカルパレードに突然雑音が混じったかと思うと、名状しがたい断末魔を挙げながら音楽がかき消える。

 

「バトルフェイズ! さあ行けエルフの剣士!」

 

 永理の合図と同時に二体のエルフの剣士は走り、ダーク・ダイブ・ボンバーの機銃やらミサイルやらを避け、切り裂きながら通り過ぎ、十代の右半身と左半身を袈裟に斬る。本来であればここに上から唐竹割りするエルフの剣士もいるのだが、そのエルフは骨製強欲な壺の犠牲になったのだ。

 普段からその実力を出せと言いたくなるくらいの活躍だが、すぐに慌てて二体のエルフの剣士は永理の場へと戻る。どうも既に、バトルを終えた時にデルタ・アタッカーの効力は消え去ったらしい。

 

「どうだ十代、俺の勝ちだ!」

 

 永理がガッツポーズをし、十代に勝ったと声高に断言する。

 だが、ソリットヴィジョンは未だ消えない。既に勝敗は決したのに。決した、筈なのに。

 だが、十代は未だ立っていた。いや、闇のデュエルとかではないので立っているのは当然なのだが。

 

「十代! お前は死んだ――」

 

「筈か? 生憎だったな、英雄ってのはしぶといんだぜ。永続罠、女神の加護を発動させていた。こいつはライフを3000回復させる罠カードだ。……まぁ破壊されたら一巻の終わりなんだけど」

 

 永理は歯噛みした。十代のライフは、たとえ3000ぽっち回復されたとしてもたった1200。あっという間に削りきれる程度のライフだ。対して永理のライフは未だ無傷の4000。しかし、十代の手札は六枚とある。

 これがそこらのモブであれば永理はこのまま勝利への道を突き進めただろうが、相手はあの十代だ。驚異のドロー運で融合とシンクロの調和という無茶苦茶なデッキを回す、遊城十代だ。必ずどちらかのカードが来るのは、コーラを飲んだらゲップが出るくらい明らかだ。

 

「カードをセットしてターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー! ……悪いな永理、このデュエル俺の勝ちだ」

 

「はっ、言ってろ十代。幾らお前のドローだとしても、この状況をそっくり丸ごとひっくり返して大逆転勝利なんてのは出来っこねーよ」

 

「そうでもないぜ? プリズマーを召喚し、効果発動! エクストラデッキのシャイニング・フレア・ウィングマンを相手に見せ、デッキから融合素材であるスパークマンを墓地へ送る!」

 

 十代の場に現れた、全身が水晶で出来た人型のプリズム体が現れ、心霊写真のようにスパークマンの姿をその身に写す。

 プリズマー、E・HEROである意味最も強く、最も汎用性のあるカード。そのおかげで価値はかなり高まっており、正直言って下手をすれば真紅眼に並びかねない程。

 そして何より、十代のエースモンスターの攻撃力増加に繋がってしまうというのが、今は一番厄介だ。

 

「魔法カード、融合を発動! 手札の沼地の魔神王と、場のスパークマンの名を持ったプリズマーを融合! 来い、シャイニング・フレア・ウィングマン!」

 

 プリズマーの身体を巨大な藻が包み込み、締め上げ、ぐちゃぐちゃ肉の混じり合う音を響き渡らせる。そして徐々にその形を、人型からアメコミヒーローのような等身へと変えていく。

 まず太い両足が出来た。鶏のように指が三つに分かれている足は腰にかけてまで、白い鎧を身に纏っている。変形し現れた上半身は、肩だけが異様に大きな鎧で被われている。

 そして潰したツチノコのような形の武器の付いた右腕と普通に鎧で腕を被われている左腕が生え、最後にメタリック製の鉄の羽根が生える。

 十代の切り札、現時点での切り札の一つだ。

 

「攻撃力5300……やり過ぎだな、十代」

 

「手札抹殺でE・HERO二体くらい墓地へ送られているから、攻撃力5900だぞ」

 

 十代の言葉を証明するように、シャイニング・フレア・ウィングマンの羽根がより一層恐ろしいくらいに輝きを増す。そしてそれを見たエルフの剣士二人の顔が青ざめた。

 ツァンも明日香も、もはや十代を応援してはいなかった。というより、エルフの剣士に同情していた。何度も墓地へ送られ殺されて、そして無慈悲に殺される。これは避けられようのない運命ではあるものの、だからといって同情せずにいられるだろうか。一度視聴済みの状態で火垂るの墓の節子を見るような気分を、二人は抱いていた。

 三沢と翔は何も言わず、何も語らず、自然と、無自覚のうちに敬礼をしていた。何故かローマ式の敬礼だったが。

 そしてそんな状況の中で、永理は笑っていた。多分エルフの剣士の死に様を見たいだけなのだろう。こいつは生まれついての外道である。

 

「来い、さあ来いよ遊城十代! あの男のように、何度も死んだケニー・マコーミックのように! あの8ドットの世界の、無謀なる冒険者のように。あのスペランカーのように! エルフの剣士の身体を、燃やし尽くして見せろ!」

 

「お前がなれる旦那はJ・ガイルの方だろ! 言われなくてもやってやるぜ、バトルだ!

 シャイニング・フレア・ウィングマンで、エルフの剣士を攻撃! ライトニング・デストロイ!」

 

 シャイニング・フレア・ウィングマンが空中高く飛び上がり、一気に急降下。それと同時に巻き起こる空気摩擦と、右腕のパーツから出るリンが反応を起こし、シャイニイング・フレア・ウィングマンを白い炎が包み込む!

 そして、そのまま隕石が、白く輝く隕石が落ちてくる! 右側のエルフの剣士は青ざめ、絶望のあまり剣を落とした。

 しかし、永理は笑っている。敗北を楽しむ笑いではない、まだ打つ手はあるという笑いだ。

 

「リバースカードオープン! 罠カード発動、ジャスティブレイク! 通常モンスターへ対する攻撃宣言時発動! 表側攻撃表示の通常モンスター以外のモンスター全てを破壊する!」

 

 左側のエルフの剣士が剣を逆手に持ち替え、ずっしりと腰を落とし、エネルギーを刃に集中する。バチバチと稲光を発する刃は、凄まじいエネルギーを秘めていると実感させられる。

 ジャスティブレイク、表示形式に問わずモンスターを破壊出来るという点においては聖バリすら凌ぐ優秀なカードだ。通常モンスターを軸にするデッキならば、取りあえず一枚は刺しておきたいカードと言えるだろう。

 

「フハハハ十代、お前の負けだ!」

 

「勝利を確信した瞬間、既にそいつは敗北している……って言葉を知っているか、永理?」

 

 そう言い十代が発動させたカードは、トラップ・スタン。罠カードの効果を全て無効にする、最強の罠カードメタ。

 銀色の紙が舞ってきたかと思うと、エルフの剣士の剣に宿っていたエネルギーが、まるで炎に放り込んだ氷のように消え去ってしまう。

 それと同時にエルフの剣士に、炎を纏ったシャイニング・フレア・ウィングマンが無慈悲に貫く。

 

『ゲバアアアアアアアッッ!!』

 

 おぞましい断末魔を上げながら、炎に焼かれるエルフの剣士。

 鎧はドロドロに溶け肉と混じり合い、人の形すら保てず、まるでスライムのように溶けていく。血も骨も関係なく、醜く惨たらしく。

 

「ばっ、馬鹿な……俺の、俺の夢見た、ブラマジガールの触手プレイが……パペット・プラントを使った触手プレイの夢が、こんなところで!」

 

「潰えて当然の夢だなおい」

 

 永理の言葉に、十代が思わずツッコみを入れた。そしてシャイニング・フレア・ウィングマンの効果で永理のライフが尽きると、ソリットヴィジョンが消える。

 ふう、と一息つく十代。そんな十代に駆け寄る、三つの影。

 そのうちの一つが、ツァンと明日香を追い越して十代に向かって飛びつき、抱きついた。

 

「ありがとうございます! 十代さん!」

 

「ちょっ、あっあんた何やってるのよ!! ボクの十代に羨ま――馴れ馴れしいよ!」

 

「ちょっと、十代は私のよ! 離れなさいよ、何所の誰だか知らないけど!!」

 

 十代の腰に抱きつくブラマジガールに、それを引きはがそうとするツァン。そしてちゃっかり十代の右腕に腕を絡ませる明日香。

 十代はどうすれば良いか分からず視線を右往左往し、視線で永理に助けを求める。

 永理の答えは、親指でぐっと首を切るジェスチャー。まあ、そうなるな。

 

「ちょっ、永理助けてくれ!」

 

「はーなーれーてーよー!!」

 

「いーやーでーすー! 十代さんは私のマスターになるんだから!」

 

「何言ってるのよこの子、十代のおっ、お嫁さんは私なんだから」

 

「ボクだよ!」

 

 しっちゃかめっちゃかの修羅場、ブラマジガールが胸を押しつけツァンが引きはがそうとし、明日香がちゃっかり告白紛いの言葉を呟く。

 そして翔は、愛しのブラマジガールが十代に惚れているというのに絶望し、静かに涙を流した。

 

「……ドンマイ、翔」

 

 三沢がぽんと肩を叩き、慰めの言葉を投げかける。

 ギャラリー共は四人の修羅場を肴にジュースや売店で買った焼きそばやらを食べている。

 ツァンがブラマジガールを引きはがすのを諦め左側の腕に胸を押しつける形で腕を組むと同時に、レッド寮の食堂から信じられないものが出てきた。

 

「……あの、大徳寺、先生……?」

 

「いや、違うんですにゃ。ツァンさん、違うんですにゃ」

 

 そこにいたのは、見るもおぞましい格好をした大徳寺であった。青い猫耳に青を基調としたセーラー服。腕にも腰にも白いふりふりのあれがある。

 月光蒼猫、という女性モンスターがある。元のイラストはとても可愛らしいのだが、それを御年三十後半になる男がやったらどうなるか。

 

「先生はやりたくないって言ったのに、ジャンケンに負けたばっかりに……どうして先生だけこんな目に……」

 

 さめざめと泣く大徳寺先生。当然だ、馬鹿でノリと勢いだけの永理ならともかく、ラブライバーであるという以外はごく普通の三十路後半である大徳寺がこんな格好……そりゃ泣きたくもなるというものだ。

 それを証明するように、誰も大徳寺と目を合わせようとしない。会わせられない。

 次の日からちょっとみんなの反応が優しくなったそうな。




 文化祭の時、出し物でこっくりさんの動画撮ったことがあります。
 で暇だったので一人でこっくりさん降臨させようとしたら、こっくりさんから降臨拒否されました。

 あっ、そういやTwitter始めました。本編に関係無い質問とかはそっちに4946。
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