眠い中永理の身体を揺らすのは、お城じみたオベリスクブルー女子寮の池であった。いや、湖と言った方がいいのだろうか。とにかく水面の上に揺られている。
事の発単は丸藤翔という亮の弟が、本人曰く告白を受けて女子寮の前で待っていたらしい。しかしそれを女子二人が覗きと思い、捕まえられた。そして永理は「何か面白そうだから付いて行くぜ!」というややこしくさせてやろうという思惑全開で、眠りたがっている身体に鞭打って付いてきたのだ。
付いてきたのだが……
「やはり、三徹は堪えるものがあるな」
「そりゃそうだろ」
船の上には十代と永理。そしてそれと対するように浮かぶ船には、金髪ボインの姉さんと名高き天上院明日香、黒アッシマーが変形したような頭をしている浜口ももえ、チョコレートのような色をしたモリのような頭の枕田ジュンコの三人。それと某魔王のように簀巻きにされている丸藤翔の姿があった。女子三人娘はどちらも、見えるんじゃねというぐらい短いスカートを履いている。思わずブスがそれを履いている姿を想像してしまい、若干気分がブルーになってしまう。
気分転換ついでに、取りあえず永理はPDAの写真撮影機能を用いて、翔の簀巻きを撮っておく。簀巻きにされている人間なんて、そうそう見る機会は無い。むしろ見る機会がかなりあってもそれはそれで嫌なのだが、たまにであればこういうのは笑って見れるのだ。
「うう……僕は無実っす、無実なんすよ」
「そういや翔、借りてたAV返すな」
「ちょっ、なんでそれ今言うっすか!?」
三人娘の翔に向けている敵意ある視線がきつくなった。ついでに永理も睨まれた。まあ当然である、がその程度の被害は必要経費だと割り切っている。
永理は面白そうな事があれば、自分の評判を落としてでも突っ込んでいく性癖だ。自らの欠点だと自覚はしているものの、直そうと言う意欲は全く持って無い。自分の欠点を好いており、受け入れているからだ。
「『盗撮JK撮り倒し! 貴女の聖水いただくよ』はかなり良かったぞ、ノーモザイクだったしな。手に入れるのに苦労したろ」
「いや、したっすけど! でも今言うなっす!! なんすか、嫌がらせに来たんすか!?」
「うん」
「うわいい返事」
物凄いいい笑顔で永理は頷く。更に女子諸君の視線はきつくなった。最低なものを見るような眼だ。実際永理も覗きをしたという翔も最低な扱いを受けるのはある意味必然。翔のそれは本人曰く免罪との事だが。
永理としては、それが嘘か真かはどうでもいい。重要なのは、面白いかどうか。所詮人生一度きり、なれば楽しんだ者の勝ち。永理の座右の銘である。
明日香は溜息を吐く。このあんまりなやり取りに呆れたのだろう。十代は苦笑している。
「こちとら免罪で捕まって簀巻きにされて椅子にされたんすよ、普通そんな人間弄るっすか?」
「……椅子にされた? 誰に?」
「誰って……」
翔は視線を三人娘に向ける。すると翔を突き刺すような視線が一つ増えた。発生源は永理である。
「なんで!?」
「椅子にされただと……こんなピチピチギャルに? ……ピチピチギャルの柔らかなお桃様を、三つも背中で受けられただと……!?」
明日香は永理に養豚場のブタを見るような眼を向けるが、それも永理を興奮させる材料の一つとしかならない。そもそも今日の永理は少しばかりおかしいのだ。深夜テンションというべきか、それとも徹夜テンションというべきか。とにかく人はどうしようもないほどの眠気に襲われた時、暴走するのだ。色々と。
意味不明な事をしでかしたり、笑ったり。全然タイプでないブスに欲情して襲ったりと……とにかく得する事が無い。しかし楽しいのが深夜テンションである。
「翔! なんといううらやま……けしからんのだ! 代われ、俺と代われこの野郎!」
「代われんなら代わってやるっすよ畜生! 僕は椅子にされるような趣味は持って無いんすよ!!」
「ここに翔から借りた『顔面便器シリーズ』があります」
「もう僕のライフはボドボドダッ!!」
「ん゛ん゛っ! もう、いいかしら?」
明日香がコメディ染みたやり取りを無理矢理終わらせる。そろそろ本題に入りたいのだ。永理と翔の性癖暴露合戦を聞く為に十代を呼んだ訳ではないのだ。
実際永理は横から入って来たおジャマ虫なのである。一応実力者であり学園で知らぬ者は居ない丸藤亮の友人という永理には興味があったが、それでも今日は呼んでいないのである。
「翔君を返してほしければ、十代か永理君……どちらかが私とデュエルしなさい。勝てれば返してあげるわ」
「十代、がんばれ」
「お前何しに来たの?」
「翔弄り」
永理は即答する。実際それ以外の目的は無いし、その為に態々身体に鞭打ったのだ。永理は馬鹿なのだ、それもどうしようもないくらい。
そして永理は今日、デュエルディスクもデッキも持ち合わせていない。デュエルアカデミア敷地内ではあるが、別にフリーの時間まで絶対にデュエルしろという校則は無いからだ。
最も、永理ももう一つ。ちゃんと翔奪還に付いてきた目的がある。それは十代のデュエルを見て、どんなデッキかを見極める事だ。最も、それもサブ目的である翔弄りの前には霞むのだが。
「……ねえ、永理君は何しに来たの?」
「さっき言ったではないか、暇なるぞ。故におちょくりに来たのぞ」
若干口調が変になっているが、徹夜テンションのせいである。全部そのせいである。ぶっちゃけて言うと滅茶苦
茶眠いのだが、深夜テンションが寝るのを拒むのだ。馬鹿である。
「まあ、とにかくやろうぜ。これで勝てば翔は解放してくれんだよな?」
「ええ、約束するわ」
「頑張れ明日香サマー」
「……なんであんたが明日香様を応援するのよ」
ジュンコが何処か呆れた口調で永理に言った。深夜テンションと翔の嫉妬で何処か暴走しているのだ。
永理は友情よりも面白さを取る人間だ。人間としては最低だが、そんな自分が好きなのだ。どうしようもないが、こればかりはしょうがない。永理だからという言葉で納得してもらうほかない。
明日香と十代、互いにデュエルディスクを起動させ、カードを五枚デッキから引く。
「「デュエル!!」」
「先功は俺だ、ドロー!」
先功は十代、勢いよくカードを引く。十代は真ん中に位置するカードを手に取る。
「俺は魔法カード、融合を発動! 手札のE・HEROフェザーマンとE・HEROバーストレディを融合し、E・HEROフレイム・ウィングマンを融合召喚!」
十代の場に白い羽の生えた緑色のムキムキヒーローと、髪の長いボディペイントっぽい女のヒーローが混ざり合い、左肩に白い羽を生やし、右腕にドラゴンの顔を持ったムキムキマッチョマンのヒーローが現れる。ぶっちゃけ敵として出て来てもあんまり違和感無いのは言わないお約束。
「一ターン目から融合しても、攻撃は出来ないわよ」
「一ターン目なら、罠にかけられる心配も無いぜ。カードガンナーを守備表示で召喚、更に魔法カードを発動。機械複製術。このカードは攻撃力500以下の機械族モンスターを対象に発動する。同名モンスターをデッキから二体、特殊召喚する! デッキからカードガンナーを二体特殊召喚、更に二体のカードガンナーの効果を発動!」
キャラピュラ部分が青色で、上の身体部分が赤いおもちゃのような物が現れる。
しかし見た目で騙されてはいけない。永理の元居た世界では準制限になった事があるほど強力なカードなのだ。
「デッキトップからカードを三枚まで墓地へ送り、送った枚数×500ポイント攻撃力をアップする!
俺の場のカードガンナーの数は三体、デッキから九枚のカードを墓地へ送る!」
「一ターン目は攻撃出来ませんのに効果を使うなんて、いったい何を考えて……?」
ももえが疑問を口にする。この世界では、墓地肥しの概念があまり浸透していないのだ。ただ単純に、殴って勝つ者が多い。とはいえカードガンナーは、破壊されてもたかが一枚しかドロー出来ない。手札はライフ1000ポイントより重要とはいうが、一枚のアドバンテージではあまり良いとは言えない。もう少しドローギミックを工夫しなければ、融合デッキには少し不向きと言えるだろう。
「カードをセットし、ターンエンドだ」
「……何を狙っているのか知らないけれども、策も全部突破し突き進むまで! ドロー!
儀式魔法、機械天使の儀式を発動! 手札のレベル8モンスター、光神機-轟龍を生け贄に──降臨せよ、サイバー・エンジェル-荼吉尼-!!」
明日香の場に、四つの腕を持った青肌の女性が現れる。下半身はタイツっぽい。上二つの手には山賊の使いそうなサーベル、その下の手には棍が握られている。
レベル8の天使族の儀式モンスター、その能力は儀式モンスター故やはり強力だ。初期に出てきた奴らは例外なのだ。
「サイバー・エンジェル-荼吉尼-は特殊召喚成功時、相手モンスター一体を破壊する。相手が選ぶというデメリットはあるけどね」
「その必要は無いぜ、罠カード発動! 激流葬! 場のモンスター全部を破壊だ!」
場に巨大な水塊が、上から激しく降り注ぐ。綺麗に全てを洗い流すように、これでもかというぐらいに。さながら滝だ。空中から溢れ出る、巨大な滝。それは全てを飲み込み、全てを破壊する水の悪魔。
「カードガンナーが破壊された時、デッキからカードを一枚ドロー出来る。そして俺の場には三体のカードガンナーが居た、よってカードを三枚ドロー!」
「フェバリットカードを囮に罠にかけるとは……でも、まだまだよ! 魔法カード死者蘇生! 墓地から光神機‐轟龍を攻撃表示で特殊召喚!」
明日香の場に、それはそれは美しい龍が現れる。胴体は円状でありその中は光り輝き、純白の羽を広げ雄叫びを上げる。白き龍、天より舞い降りた天使の使い。
儀式の利点は、手札からの生け贄だ。故にこのように、儀式に使ったモンスターを墓地より蘇生させるのは少し腕の立つデュエリストであれば当然の行動である。
攻撃力2900、この攻撃を受けてはただでは済まない。だというのに十代の顔には、笑みが浮かんでいた。
「その顔、いつまで持つかしら? 光神機‐轟龍で十代にダイレクトアタック!」
白き天使の龍は、十代を焼き尽くさんと口から白い光線を吐き出す。それはあらゆるものを浄化し、聖なる炎で焼き尽くす。事実空間が、その熱によって蜃気楼のように歪む。
しかし、その光線が十代に当たる直前、円形状のバリアによって阻まれた。
「墓地からネクロ・ガードナーを除外し、攻撃を無効にする!」
「そんなモンスターを墓地に送っていたのね、悪運の強い……カードを一枚セットし、ターンエンドよ!」
「俺のターン、ドロー! へへっ、中々やるな!
でも面白くなってくるのはここからだぜ、魔法カード発動! 融合回収! 融合と融合に使用したモンスターを手札に戻す! 俺はバーストレディを手札に戻すぜ!
そして俺はさっき戻した魔法カード、融合を発動! 手札のスパークマンと、クレイマンを融合! E・HEROサンダー・ジャイアントを融合召喚!」
フレイム・ウィングマンの次に現れたのは、卵状の胴体を持った上半身はムキムキのヒーロー。下半身はかなり細く、アンバランスだ。
全体的に黄色を基調としており、真ん中のコアに当たる部分はパチパチと稲妻が弾けあっている。
怒涛の連続融合、しかし十代の狙いは不明。まるで意図的に墓地にHEROを溜めているようだ。
「E・HEROエアーマンを召喚し、効果発動! このカードの召喚成功時、このカードを除くHEROと名の付くモンスターの数だけ、場の魔法・罠カードを破壊する事が出来る! サイクロンシュート!」
背中に巨大扇風機を付けた筋肉モリモリマッチョマンの男が現れる。エアーマン、主にデッキからHEROを引っ張ってくるのが仕事なモンスター。自身も引っ張ってこれるので、ガジェットのような動きが出来た。故に制限カードとなってしまった1枚だ。
なお漫画の方に出てきたのは、攻撃力を半分にする事で直接攻撃が可能という少しばかり微妙な効果であった。OCG化によって異様な強化を受けたのだ。正直HEROを引っ張ってくるか魔法・罠を破壊するかのどちらかで十分だったのではと思った者は少なくないだろう。
エアーマンは背中のファンをフル回転させ、明日香の伏せているカードを破壊する。
「ぐっ、炸裂装甲が……でも、その二体では私の轟龍は破壊出来ないわ!」
「ヒーローには戦う舞台ってのがあるんだぜ! 手札からキャプテン・ゴールドを捨て、デッキから摩天楼‐スカイクレイパーを手札に加え、そして発動!」
十代がフィールド魔法を発動させると、突然周りから何処となくのっぺりとしたビルが生えてくる。今居る場所は街の中心にある大きな湖となっているようだ。場所によってフィールドの形を変える、海馬コーポレーションのいきな計らいがここに垣間見える。
「スカイクレイパー……クロノス教諭の古代の機械巨人を破壊したカード。まさか引いてくるとはね!」
「サンダー・ジャイアントで光神機‐轟龍を攻撃、ボルテック・サンダー!」
サンダー・ジャイアントはビルの上から大きくジャンプし、空中で勢いよく回転し始める。その回転による摩擦が身体に電気を溜め、次第にそれは大きな雷の塊となる。重力の力に従い、轟龍へと勢いよく落下。バチバチとスパークの弾ける水柱を立て、そこらに轟龍の残骸を飛び散らせる。特撮において「誰が怪人とか怪獣の後処理するんだ」とは言ってはいけない。お約束なのだ。
「更に、エアーマンで直接攻撃! エアーシュート!」
決して攻撃力20のチップではない。背中のファンを回転させ、その竜巻で攻撃する。明日香のただでさえ短いスカートがめくれるかと思ったが、何か不思議な力によってそれは遮られた。残念。
「明日香様!」
ももえから心配の声が上がる。既に明日香のライフは2300も削られており、残りはたったの1700、レッド・ドラゴンの直接攻撃によって丁度削られるレッドラインである。
しかし、明日香の顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。逆境に立たされてこそ、燃え上がるタイプのようだ。
「俺はこれでターンエンド!」
「ふふっ、追い詰められているというのに……不思議と心が疼くわ。貴方という強者との戦い、私はそれを望んでいたのかも。ドロー!
十代、見せてあげる。サイバー・エンジェルの力を!」
「ああ、来い!」
永理は思わず、燃え上がっている二人を眩しいものを見るように目を細めてしまう。あまりにも彼らは、彼女らは輝いていたからだ。もはや翔の事なぞどうてもいいとばかりに、闘争の炎で真っ赤に。
強いデュエリスト同士は惹かれ合うものなのだろう。それはある意味、自然の道理なのかもしれない。あの遊戯王、武藤遊戯の周りには強いデュエリストが自然と集まって来たという。つまりこれも、そういう運命なのだ。
「魔法カード、発動! 命削りの宝札! 手札が五枚になるようカードをドローし、五ターン後に手札を全て捨てる! サイバー・プチ・エンジェルを召喚!」
明日香の場に、ちっちゃい機械仕掛けの天使が現れる。丸っこい、天使の輪っかと羽の生えた天使。ピンク色でカービィのようにも、見えなくもない。
「サイバー・プチ・エンジェルの召喚成功時、デッキから機械天使の儀式を手札に加える!
そして発動、機械天使の儀式! 手札のマンジュ・ゴッドと場のサイバー・プチ・エンジェルを生け贄に、サイバー・エンジェル-韋駄天-を儀式召喚!」
荼吉尼の色をピンクにし、腕を二本にした女性が現れる。まだこっちの方が人間っぽいので、永理としてはこちらの方が好みだ。どうでもいい話ではあるが。
「サイバー・エンジェル-韋駄天-は特殊召喚成功時、墓地から魔法カードを手札に加える。私は死者蘇生を手札に加える!
更に魔法カード、儀式の準備を発動! デッキからレベル7以下の儀式モンスター一体を手札に加え、その後自分の墓地の儀式魔法カード一枚を選んで手札に加える事ができる。私はデッキからレベル6のサイバー・エンジェル-韋駄天-、墓地の機械天使の儀式を手札に加える!
魔法カード、死者蘇生を発動! 墓地よりサイバー・エンジェル-荼吉尼-を特殊召喚! 効果によってサンダー・ジャイアントを破壊!
儀式魔法、機械天使の儀式を発動! 場のサイバー・エンジェル-韋駄天-を生け贄に、サイバー・エンジェル-韋駄天-を儀式召喚! 韋駄天の特殊召喚成功時、墓地から死者蘇生を手札へ!
魔法カード死者蘇生発動、墓地より光神機‐轟龍を特殊召喚!」
見事、としか言いようがない。あっという間に、場に二体の儀式モンスターと一体の最上級モンスター。対して十代の場には、たった攻撃力1800のエアーマン一体のみ。この総攻撃を受けては、十代のライフはひとたまりも無いだろう。
更に命削りの宝札のせいで、二枚の手札が残っている。この布陣を突破したとしても、罠を仕掛けられる可能性はかなり高い。隙の無いプレイングだ。
「バトル! 光神機‐轟龍でエアーマンを攻撃!」
光の束を口から吐き出し、エアーマンは抵抗する間もなくきれいさっぱり消え去ってしまった。
しかし、まだ終わりではない。残念な事にまだ、二体の攻撃が残っている。これをまともに通せば、十代の負けは確実だろう。
「サイバー・エンジェル-荼吉尼-で直接攻撃!」
「墓地のネクロ・ガードナーを除外し、攻撃を無効にする!」
荼吉尼の腕二つから振り下ろされる袈裟斬りは、これまた楕円状のバリアによって阻まれる。残っているのは攻撃力1600の韋駄天のみ。これならまだ、まだ挽回する事が出来るだろう。
「なら、韋駄天で攻撃!」
韋駄天は十代の前で腰をかがめ、勢いよく腰を入れた右ストレートをぶっ放す。ソリットビジョンとは解っていても怖いので、思わず両腕でガードの動作をしてしまう。
永理はその後ろで「女って怖い」と呑気に呟いていた。
「カードを二枚セットし、ターンエンドよ」
「俺のターン、ドロー!
……まずは、こう行こう。魔法カード、大嵐! 場の魔法・罠カードを全て破壊だ!」
「カウンター罠、魔宮の賄賂を発動! 魔法・罠カードの発動を無効にし、相手はカードを一枚ドローする!」
「なら速攻魔法、サイクロンを発動! もう一つの伏せカードを破壊だ!」
結果的に十代は、大嵐を発動させたようなものだ。サイクロンによって割られたカード、明日香は思わず苦い顔をする。伏せていたカードは聖バリ、攻撃反応型の罠だ。
攻撃反応型は除去力もあり発動出来れば大変強力だが、このように攻撃宣言される前に破壊されてしまうと途端に無力となるのが欠点だ。
「更に魔法カード、ミラクルフュージョンを発動! 自分のフィールド・墓地から、E・HEROと名の付く融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター一体をエクストラデッキから融合召喚する! 俺は墓地の沼地の魔神王と、スパークマンを除外し、E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマンを融合召喚!」
十代の場に神々しい光が差し込み、白い両羽を広げながらヒーローが降臨する。腕にはよく解らないものを付けているが、多分あれが攻撃増幅装置とかそういうのなのだろう。と永理は一人妄想したりしていた。ちなみに永理が使ったらブレードとなる。
「シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃力は、墓地のE・HEROの数×300ポイントアップする!
俺の墓地にはクレイマン、バーストレディ、フェザーマン、フレア・ウィングマン、エアーマン、サンダー・ジャイアント、ネクロダークマン、エッジマンの八体。攻撃力は2400ポイントアップし、4900となる!」
「4900、青眼の究極竜すら超える攻撃力……!」
「そんな、明日香様!」
ジュンコが心配の声をあげる。それはそうだろう、攻撃力4900の直接攻撃を喰らえば、ライフなんて一発で消し飛ぶ。しかも光属性故オネストにも対応し、融合モンスターなので決闘融合‐バトル・フュージョン‐にも対応している。サイバー・エンドにこそサポートの数は劣るものの、その火力は凄まじいものだ。
「……私の、負けか。楽しかったわ、十代」
「ああ、俺もだ。バトル! シャイニング・フレア・ウィングマンでサイバー・エンジェル-荼吉尼-を攻撃! シャイニング・シュート!!」
シャイニング・フレア・ウィングマンは空高く急上昇し、いったん空中で止まる。そして右手の丸いよく解らない装備品から白い炎を出し、荼吉尼へと急降下する。まるで神の雷のような白き炎、その炎は荼吉尼を燃やし尽くしても貪欲なのか、明日香にまで飛び火する。
ライフはこれにより0、明日香の負けで勝負は決まった。ソリットビジョンは消え、デュエルディスクも邪魔にならないようコンパクトになる。
「ふん、今回明日香様に勝ったのは偶然よ偶然! 今度は負けないんだからね!」
「ああ、俺は何度でも受けて立つぜ! まっ、次も勝たせてもらうけどな!」
船を寄せ、翔の受け渡しをしながら言葉を交わし合うジュンコと十代。ジュンコは自分が直接戦っていないのに、どういう訳か再戦を勝手に取り付けられている。それに対し明日香は少しばかり苦笑する。
十代は翔の縄をほどいてやると、「何かに目覚めそうだったっす」と不吉な言葉を、凝った肩を回しながら言う。
「ふふっ、次は負けないわ……そうだ、永理君。次は貴方……が……」
明日香は永理の方を見やる。しかし永理は、既に規則正しい寝息を立て夢の世界へと旅立っていた。
3徹の後なのだ。十代は苦笑しながらボートを岸へと寄せ、永理をおぶさる。
「んじゃ、俺達は帰るわ。行くぞ、翔」
「……なんつーか、アニキは永理君のアニキっぽいっすね。本当」
永理をおんぶしながら歩く十代に、そんな言葉を投げかける翔。そんな三人の後ろ姿を見ながら、ももえは思わず湧いた疑問を口に出す。
「……結局、あの殿方は何の為に付いてきたんでしょう?」
その疑問に、女二人は何も答えられずにいた。だって解らないんだもの。
AVのタイトルは創作です。実在するAVとは何の関係もありません。本当です、本当に本当です。別に作者の欲望とか見たいジャンルとかそういう訳ではありません。本当です、本当ですからね。これマジで。どちらかというと二次元の方が好きだもん