ハターン・モンスータの狩りと愛の日々   作:ヨイヤサ・リングマスター

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の~んびり行こうよこの道を

 ベースキャンプのベッドに横になってからしばらくすると気絶したイトラの着替えを済ませたサラがイトラを担いで俺の隣のベッドに横になる。

 

 

「なぁ、ハターン。

 もしかしてイトラのこの目の光を最初から見抜いていたのか?」

 

 

 俺はサラに背中を向けたまま黙って話を聞く。

 

 

「あたしもこれまでハターンほどじゃなくとも多くのモンスターを狩ってきたのに、それまでに体験したどの恐怖よりもイトラの眼は恐かったよ」

 

 

 サラは心底イトラに恐怖したのだろう。

 

 俺にはわからないがあの眼力は確かに10歳の少女とは思えない異常なものだったしな。

 

 

「……イトラは両親を殺されたために身よりがなく、僅かに残った財産も悪人に奪われたからお前が拾わなければそのまま死んでいたか、人買いにでも売り飛ばされていたかもしれないからな。

 それが幼いイトラにはトラウマになってるんだろうな。

 目の前で血のつながった肉親が死ぬ様を見て、残った財産を奪う悪人を見て、そんじょそこらの人間よりもよほど死と悪になれてしまったからあんなに俺に依存するようになったのだろうな。

 そしてその黒い感情を抑え込もうとしてあんなに気弱になったんだろうがそのタガは俺がはずしてやったからこれからゆっくり教育していくつもりだ。

 イトラは本質的にはあんな性格でありながらもまだ10歳の可愛らしい女の子なんだから俺達大人がしっかりと見ていてやればこれからいくらでも変われるさ」

 

 

 俺が師匠であるうちはあいつに道を踏み外させるつもりはないし、自分で自分を律することができるようになるまでは手元に置いてやる。

 

 なんせ俺はあいつの師匠だからな。

 

 

 俺がそんな事を考えているといつのまにかサラがベッドから起き上がり俺の前に回り込んできていた。

 

 

「やっぱハターンは口では文句言っても弟子思いのいい奴だよな♪」

 

 

 二カッと子どもっぽく笑うサラ。

 

 それは俺を馬鹿にした笑いではなく俺の元弟子としての経験に基づいた信頼からなのだろう。

 

 俺は目を逸らし、再び目を閉じて寝ようと思ったがそこで迎えの馬車は到着したようだ。

 

 思ったよりも速かったな。

 

 

 

「サラ、迎えが来たぞ。

 荷物はまとめ終わってるのか」

 

 

「あ!しまった。

 荷物は散らかしたままだった」

 

 

 まったく最後まで締まらないアホ弟子め。

 

 結局は俺も荷物をまとめるのを手伝ってやり俺達三人は馬車に乗って街へと帰る。

 

 実質イトラが狩りに使った時間は50分だったかな。

 

 俺やサラは文字通り一瞬で片付けるからまだまだハンターとしての技術はまだまだ未熟なのだがな。

 

 

「あ、師匠おはようございます」

 

 

 気絶していたイトラは目を覚ました。

 

 

「ああ、おはよう。

 迎えの馬車が来てるから街に帰るぞ。

 それと着替えは結局サラにやらせたからな」

 

 

「……今はそれでいいよ。

 でもいつかは師匠を振り向かせてあげるから。

 私は恩だけでなく本当に師匠に惚れちゃったんだから責任とってもらうからね」

 

 

 やれやれ、本当に手のかかる弟子だな。

 

 だが、いつかはイトラならば……俺がこれまでいくら弟子を育てても成し遂げることの出来なかった弟子による師匠超えを出来るかも知れないな。

 

 俺はこれまでけっこうな数の弟子を育ててきたが、今まで一度も俺以上に育った弟子はいないのだ。

 

 

「お前は俺以上のハンターになる素質がある。

 これからも鍛えてやるからしっかりついてこいよ」

 

 

「はい師匠!」

 

 

 その光景を静かに見ていたサラは熱い会話に感涙を流し、一人で盛り上がっていた。

 

 感動屋だからな、こいつ。

 

 

「もしもーし、迎えに来ましたけどお手伝いしましょうか?」

 

 

 ベースキャンプに入ってきた迎えの馬車の御者は荷物が散乱する惨状(ほとんどサラの荷物)を見て手伝いを申し出る。

 

 

「ああ、助かる。

 しかしすまないな。

 俺の元弟子は片付けが苦手なうえに狩り場に要らない物をたくさん持ってくる習性があるのでな」

 

 

「おいハターン!

 お前だって狩り場に似つかわしくないような調理器具や調味料を持ってきてるじゃないか!」

 

 

「俺は狩り場であっても旨いもの喰わないとやる気が出ないからだ。

 それにそれを言うならパジャマや抱き枕みたいなものを持ってくるお前の方がおかしいぞ!

 そのファンシーなぬいぐるみも持ち込み過ぎだ」

 

 

 サラはぬいぐるみと一緒じゃないと眠れないという習性もあるのだ。

 

 家でするなら構わないのだが狩り場にまで持ち込むもんだから以前注意した事があるんだがまだやめてなかったのか。

 

 

「うふふふふふ♪

 本当にサラさんは駄目ね。

 私はハターン師匠を超えるハンターになるからそんなに子どもっぽい事はしないよ」

 

 

 そう言いながらも子どもっぽく俺にしがみついてくるイトラ。

 

 こうして見ると少し前の愛らしいイトラの方がいい気もしてくるが成長したと思えば悪くない……のか?

 

 

 それから荷物を片づけて俺達はギルドへと帰っていくこととなった。

 

 ちなみに俺の調理器具と調味料は全部で40㎏程度しかないのだが、御者は驚いていたようだ。

 

 俺の持ち込む調理器具の量程度に驚くなんて新人のようだな。

 

 

「で、イトラは何でそこまで俺にひっついてくるんだ?」

 

 

 ガタゴト揺れる馬車の荷台で、イトラは先ほどよりも積極的に俺にくっついてくる。

 

 サラもノリで俺にくっついてくるものだから俺は二人に両腕を抑えられている状況なわけだ。

 

 

「おい、いい加減に離れろ。

 暑苦しいぞ」

 

 

 だが、サラもイトラも終始笑顔で、俺の腕を離そうとしない。

 

 

「はっきり言うけど私はサラさんに命を救われて、そのあとハターン師匠には心を救われたわけね。

 だから愛してるの。

 恋してるの。

 惚れてるの。

 私のいまの気持ちわかる?」

 

 

「ちなみにあたしはノリでくっついているだけだ。

 あたしは背が高いのがコンプレックスだったんだけどハターンはあたしよりも背が高いから一緒にいると心が安らぐんだ♪」

 

 

「俺は二人に対して特別な感情を抱いたりはしない。

 元弟子と現弟子であり、それ以上でも以下でもない。

 あんまり聞きわけがないと馬車から引きずり下ろすぞ」

 

 

 正直うっとうしい、しかし無理やり話そうとすると二人とも泣きそうになるし(サラはいい年して何やってんだか)、それが気になってどうしても強くは出れないのだ。

 

 というか二人ともえらく仲良くなったな。

 

 サラは先ほどの覚醒イトラに恐怖していたことをすっかり忘れてしまったのだろう。

 

 根本的には似た者同士みたいだし。

 

 

「イトラ、覚えとくんだぞ。

 ハターンはたとえ嘘泣きだとわかっていても女の涙には弱いからな♪」

 

 

「ええ、その辺はもう理解したわ。

 私はハターン師匠とは将来を誓い合う予定なんだから♪」

 

 

 やれやれ、ここで言い返せないのが俺の弱さなんだろうな。

 

 こうして馬車はトイダーヴァの街に向けてゆっくりと進んでいった。

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