ハターン・モンスータの狩りと愛の日々   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 そりゃまぁ、思い出の組織を潰すとなれば何かしら思うところもあるわけですよ。
 そして悪の組織をつぶしたらすぐに救われる人が出るわけでもないと言うことで。





第六章:この子にしてこの親あり編
胸に残るは苦さ


 スーパーウカムルバスも討伐し、『キリン娘愛好会』の現会長であったアクトもそのスーパーウカムルバスに食われてしまった時点で組織はそのまま壊滅した。

 

 その後の処理についてもギルドナイト千人長のルナの活躍により俺が会長をしていた時からの古参のメンバー達も本部の建物の奥に監禁されているところを発見され、彼らがいいように動けばレタリーボアの村もゆっくりだが確実に良い方向に向かうだろうがこれほどの騒動を起こした『キリン娘愛好会』は解散するしかなさそうだな。

 

 

「……ハタっちはこれで良かったのかい?

 かつての思い出の組織を自らの手で潰してしまって」

 

 

「これで良かったのさ。

 俺は初代会長としてこの組織に神の国への引導を渡したにすぎない。

 それにここまで腐っていたのなら別に俺がつぶさなくとも誰かが潰していたさ」

 

 

 確かに残念に思うところはある。

 

 もっと上手くできなかったか?

 

 他にやり方があったんじゃないか?と。

 

 俺がこれから率先して動けばかつてのように『キリン娘愛好会』を復興させることができるんじゃないか、と。

 

 

「寡黙で渋くてカッコイイ俺としちゃあ恥ずかしい過去でもあるが、それでも大切な組織が瓦解していくのを見るのは辛いものだな……」

 

 

 はっ、自分で潰しておいてこんなんじゃあ、弟子に示しがつかないよな。

 

 

「師匠、私は師匠のためならいつでもキリン装備を着ますから元気だしてください」

 

 

「あたしもハターンのためだけにキリン装備を作ったんだから見たいときはいつでも言ってくれよな」

 

 

 イトラとサラは俺の心を読んだのだろう、どこか普段は見せない優しげな表情を浮かべている。

 

 ははっ、俺らしくもねぇ。

 

 

「すまない。

 だがこれで過去にケジメをつけることが出来たし後の事はルナが上手くやってくれるだろう。

 さっさとトイダーヴァの街に帰るとするか」

 

 

 そうさ、俺にはこの可愛い弟子たちと自分の帰るべき家があるのだ。

 

 これからも似たようなことがあるかもしれないがその時に考えればいい。

 

 今回のことも俺の人生における思い出の一つに過ぎんのだからな。

 

 

 で、そんなこんなでトイダーヴァの街に帰ってきた。

 

 

「では『キリン娘愛好会』を潰し、奴隷商売を行う悪徳商人たちの撲滅を祝ってかんぱーい!」

 

 

「「「かんぱーい♪」」」

 

 

 ディオシキ以外はミルクという締まらない宴だが、料理の方は店で一番の物を出してもらった。

 

 

 その様子を見ていたマルが近づいてきて、開口一番に

 

「おかえりぃ~。

 そう言えばぁ~、ハターン君にぃ~、お客さんが来ているわよぉ~♪」

 

 

「ん?客?

 また弟子の誰かが訪ねてきたのか?

 でもサラとディオシキ以外で俺に会いたいなんて酔狂な奴なんていたっけか?」

 

 

 月刊『狩りに生きる』の取材は先日済ませたばかりだし……

 

 それとも王立古生物書士隊あたりから教鞭をとるように催促でも来たのか?

 

 そんな事を考えてるとマルは勝手にその客を連れてきていた。

 

 相変わらず俺の意見を聞くつもりもないような素早い行動だがそれはいいとしよう。

 

 いや、どうでもよくなった。

 

 その客は俺のもっとも会いたくない人物でもあったのだから。

 

 

 いやもうホントに、本当にその人物とはサラよりもディオシキよりも付き合いが長くその二人に加えてイトラまでいるこの状況で会いたくない人だった。

 

 

「はぁ~い♪

 ハターンちゃん、あなたの愛しのママですよ~♪

 元気にしてた~?」

 

 

 俺の母にしてハンターとしての師匠、リュカ・モンスータ。

 

 47歳でありながら今なお現役。

 

 『頂点』の異名を持つ文字通り女性ハンターとしての頂点に位置する俺の師匠の一人だ。

 

 もう一人は俺の父だな。

 

 

「もうハターンちゃんったら手紙すら全然よこさないし、新しく弟子の女の子をとったって聞いてたけどもっと詳しく小まめに手紙を寄こしなさいよ。

 それと、そっちにいるのはディオシキちゃんとサラちゃんね。

 はぁい二人とも久し振りぃ~!」

 

 

「おい、こんな所でそんな大声出すなよ母さん。

 恥ずかしいじゃねえか」

 

 

 食事時でもあるため店内にはハンター以外にも多くの客で賑わっており、母さんのでかい声にほとんどの客が振り向いてくる。

 

 だが騒ぎの中心にいるのが俺だと気づくと興味を失くしたように自分たちの食事に戻っていく。

 

 おい、なんとか言えよ!俺がかわいそうな奴みたいじゃねえか!

 

 

 相も変わらず以前会った時通りに元気な母さんはそんな喧噪お構いなしで俺の膝の上のイトラを見つけると、その手を取った。

 

 

「君がハターンちゃんの新しい弟子のイトラちゃんね。

 はじめましてハターンちゃんのママよ。

 ところで君はうちのハターンちゃんのこと好き?」

 

 

「はい大好きです!

 いえ、むしろ愛してますし、さらに関係を発展させたいと思っていますお義母様!」

 

 

 母さんは俺の弟子に会うとまずは必ず挨拶から始まり、いつまでも結婚しない俺と結婚させようと考えるハタ迷惑な母さんなのだ。

 

 

 そしてやはりイトラはそういう挨拶になるのか。

 

 母さんは本気にしちまうから困るんだけど……

 

 

「まぁまぁ、もうハターンちゃんったらこんなに可愛い子に慕われてるんだったらさっさと結婚してママに孫の顔を見せたらどうなの?」

 

 

 口調は軽いがその言葉には子どものような笑顔に似合わない力強さがあった。

 

 どうやら本気で言っているらしい。

 

 

「さて、ハターンちゃん。

 ママがここに来たのには当然ながらちゃんとした理由があります」

 

 

「そりゃそうだろう。

 イトラに会うためだけに来たとは思えないし、母さんに限らず俺に会いに来る俺の知り合いは必ず厄介事を持ってくるからな」

 

 

「まぁイトラちゃんに会うためだけという理由は本当なんだけどね。

 で、用件なんだけどそれは他でもなくそろそろあなたにも結婚してもらって孫の顔を見せてもらいたいと言うことよ。

 幸いにもこのイトラちゃんはハターンちゃんのことを本気で愛してるみたいじゃない」

 

 

 そう、母さんは前回来た時はサラと、前々回に来た時はディオシキと俺を結婚させようとしやがったのだ。

 

 ちなみに二人とも俺のことを好いてはいるから子どもを産むのは構わないが結婚は考えてないというので母さんは諦めたんだったが、イトラは本気で俺との結婚を狙っているからな。

 

 ヤベ、これって俺詰んだ?

 

 

「し・し・ょ・う♪

 こうなったらもう二人の関係を進展させましょうよ♪

 お義母様も認めてるんならこのまま式場にゴーですよぅ♪」

 

 

 頭の中はすでに俺とのバラ色新婚ライフで染まってるんだろうな。

 

 やれやれ、これもまた宿命ってやつかねぇ……

 

 俺はこの状況を打破すべく、これまでの経験と知識を総動員して対策を練るのだった。




 悪の組織を潰したらそれに関連していた一般の組織も大きな影響を受けたりなんやかんやあるんでしょうが、権謀術数のやり取りは書くのも面倒ですし軽~い笑える話にするには不要なので悪の組織は潰してハイ終わり、にしちゃいました。

 あとに残った面倒な作業は全てギルドナイト任せで、ハターン達はこの件にはもう関わることもなく平穏に暮らしていくのです。そのためだけにギルドナイトを出したわけですし。
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