ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
母の策略によりモンスターだらけとなってしまったトイダーヴァの街を守り、傷ついたイトラのためにも負けるわけにはいかない男の戦いがいま始まろうとしていた。
「てめぇら、抱きしめてやる!
地獄の、果てまで!」
ここが町ということもあり、俺は普段使っている武器を全て倉庫にしまっていたので防具の方もいつものブロミウスシリーズでも何でもないただの『週刊キリン娘』の読プレで手に入れたキリンTシャツと安物のジーンズのみという状況だ。
普通のハンターなら武器も防具もない状況でG級のモンスター、その中でもとくに強い部類のモンスター達に大勢で囲まれては手も足も出ずに殺されるだろうが俺はそんな雑魚ハンターとは違う。
武具に頼っているようでは第一位の座は名乗れないからな。
「こっから先は地獄行きだぜェ!」
手近にいたティガレックスの頭に組みつき、頭蓋骨を締め付けて砕く。
名づけて超時空旋風締めだ。
並みのハンターではモンスターに触れることができるほど近づいて恐怖に震えない者はいないだろうから俺くらいにしかできない技だろうけどな。
そしてそれを繰り返し、次々とモンスターを仕留めていく。
素手でも単純に強く、恐怖を感じない体質の俺はバインドボイスを食らっても恐怖で体が硬直することもないので隙は一切ない。
あっさりと、簡単に、まるでショーのように華麗にモンスター達を仕留めていく。
「グガァァァァァー……」
断末魔とともに倒れて動かなくなるモンスター達。
それを聞いていると段々と自分の中の殺意が目覚めそうになるがそれを必死に抑える。
「(まじぃな。
ここで俺が本気を出したら背中のイトラのことを気にかけてやることが出来なくなってしまう)」
背中で必死に俺にしがみつき、それでいてこの戦いから目を逸らさないイトラを見ていると自分がこいつの師匠だということを改めて認識させられる。
「(負けるつもりは端っからないが、せっかく弟子が見ているのだからこいつの前では『最強』でなくちゃならないよな)」
そうしてモンスターの死体の山を築きながら一向に減らないモンスターの大軍に向かっていく。
すると突然聞き慣れた音がその場に響いた。
「はぁい♪
なぜか偶然モンスターたちが街中に逃げだして大変そうなハターンちゃんのためにママが助っ人に来てあげたわよ♪」
突然現れたうえに、この状況でもあくまで自分には責任がないと言い張る母に俺は息子として何と言えばいいのだろうか。
「流石流石、流石はママの息子だわ♪
でもその流石のハターンちゃんでもイトラちゃんを背負った状態で武器も防具も無しだなんてちょっと大変でしょ?
だから偶然通りかかったママが手伝ってあげるって言ってるんだからもっと嬉しそうな顔したらどうなの?」
「……悪いな母さん。
今更そんな下手な芝居に付き合ってるつもりはない。
確かにこの数が相手ではいくら俺でも面倒だから手を貸してくれるのはありがたい。
だがどうしてまだ経験や体力面で未熟なイトラにこんな無茶をさせたんだ!?
おかげでイトラが怪我しちまったじゃねえか!」
一応イトラの怪我も診てみたが大した事はないようだし、どうせ母さんの事だから面白そうだから、というのが一番の理由なんだろうな。
「もう、ハターンちゃんったらつまらないわね。
まぁいいわ、教えてあげる」
そこで母さんは溜めを、本当に長い溜めを作りゆっくりと語り出す。
具体的には現在進行形で襲ってくるモンスターをさらに10頭ばかり殴って絞めて殺すくらいの時間だ。
「結論から言いますと最初に言ったようにハターンちゃんにはそろそろ結婚してほしいの。
だから聞いてると思うけどイトラちゃんを危険な目に合わせてそこを救ったハターンちゃんに命の危険を恋によるドキドキに錯覚させようと思ったんだけどイトラちゃんが私の予想よりも弱かったからこんな状況になっただけで私は何も悪くないわよ。
あと面白そうだったから♪」
いけしゃあしゃあと言ってのける母さんは見ていてやはり自分の母なのだと気づかされるものがあるな。
もちろん俺はここまで狂ってはいないつもりだぞ。
……たぶん……きっと。
「とりあえず手を貸してもらうぞ母さん。
いや、『頂点』のリュカ・モンスータ」
ふふふ、何だかんだで俺もこれだけの数のモンスターを一度に殺しまくり暴れまくることができるのを非常識ながら楽しいと思っているのだからな。
「始めましょうか我が息子。
『最強』のハターン・モンスータ♪」
こうなってしまっては仕方ないし母さんは反省も後悔も無く、それどころか何も感じることなく、ただ本能のままに行動した結果を喜んでいるだけなんだからこっちも楽しまなければ損だろう。
「「さぁ、狩りのはじまりだ(よ)」」