ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
てれれって ぷるるっぷ たららった てってー♪
渓流で夜を過ごした翌朝。
俺は迎えに来たギルドの馬車の笛の音で目を覚ました。
「おいイトラ、朝だぞ」
「うにゅ~、あと5時間……」
「もう迎えが来てるんだからそういう訳にもいかんだろう。
いい加減起きろ!」
「やぁ~ぁ~っ!」
珍しくおねむのイトラは起きようとはせず、代わりに俺にしっかりとしがみ付いて離れなくなってしまった。
たまに見せるこの子どもっぽさが堪らないのだがイトラに知られたら絶対に利用されるから気をつけねばいかんな。
もしかしたらもう知られているのかもしれないが……
で、仕方がないので結局俺がイトラを担いでいくこととなり、エリア4の小屋に宿泊?するにあたって出していたベッドを片づける。
昨夜襲ってきたジンオウガの首なし死体は剥ぎ取りが面倒という理由でそのまま引きずりながらベースキャンプへと歩きはじめる。
ベースキャンプには昨夜から別行動をしていたサラとディオシキ、それとロッドがすでに到着しており、持ち込んだ道具の片付け作業をしていた。
「やぁハターン兄さん。
女性というのは凄いもんだね。
僕は一晩で女性に対する幻想を打ち砕かれましたよ……」
なぜか青い顔のロッドが荷物の片付けの手を止めること無くそう言った。
もしかしてロッドのやつはイケメンだし二人に食われちまったのかもしれないな。
「やっぱサラとディオシキの二人が迷惑掛けちまったか。
とりあえずこの二人だけが女じゃないしお前にもいつかはきっといい事があるさ」
いやまぁ、根拠はないし気休めかもしれないがなんとなく言いたくなっちまうのさ。
ちなみに荷物の片付けというのもロッド一人でやっているだけでサラは俺の持ち込んだ食糧を食い荒らし、ディオシキは俺の持ち込んだ本を読みふけっている。
そしてロッドが片づけてくれている荷物というのも全部俺の荷物だったりする。
いやね、俺も自分の荷物が多すぎるかな?とは思ったんだけどやっぱ狩り場用の本や狩り場用の調理器具はこのために所持してるんだから使いたくなるんだよ。
「あー、あとは俺がやるからロッドもゆっくりしてくれ。
なんか本当に色々とすまんな。
あの二人は自分のことがが大好き人間だから自分以外は興味を持ったやつ以外どうでもいいと考えてるんだが興味を持ったら持ったで迷惑をかける困ったちゃんだからな」
「いえ、おかげで僕も新しいメロディーを思いついたので今回の採取ツアーの目的は達せられましたし構いませんよ」
やっぱこいつは相当のお人好しでもあるな。
母さんの弟子とは思えないほどまっすぐに育ったもんだ。
「お、ハターンじゃん!
どうしたんだよその首なし死体は?
食うのか?ジンオウガを食うのか?」
「ぎゃはは。
首ちょんぱでバーラバラってやつだねぃ♪」
「お前らも少しはロッドを見習え!
いっつも誰かに迷惑ばかり掛けやがって」
その後も俺をからかうことに心血を注いでるんじゃないか、と言うほどのサラとディオシキの仲良しコンビによるちょっかいを受けながらも片付け作業を終えることが出来たのは俺がこの二人に慣れてしまったからだろう。慣れとは恐ろしいものだ。
それでも悪戯だけでなくジンオウガの死体の解体を手伝ってくれたあたり多少は弟子としての自覚もあるのかもな。
そうだよな?興味本位とかではなく師匠を敬ってのことだよな?
ふぅ、そんなことないか……戯言だよな。
イトラはスヤスヤと熟睡しているので起こすわけにもいかず、迎えに来ていた馬車に寝かせたまま乗せて起こさないように馬車を発進させ、トイダーヴァの街に帰ることには成功した。
そう帰ることには、だ。
街では街の厄介事が俺達を待ち構えていたのだ。
「では渓流採取ツアーの成功を祝って」
「「「「かんぱーい♪」」」」
今回はロッドも含めた5人でのお祝いだがその5人目のロッドは大人しい性格なのでいつも以上に盛り上がることもなく宴は静々と進んでいった。
それでもサラとディオシキのテンションの高さは半端ないんだけどな。
イトラもすっかり眼が覚めていつもの定位置、俺の膝の上でご満悦だし。
だが、ここで邪魔者が登場。
「そのお祝い、是非とも俺様も混ぜてもらえないかな?」
と言って、勝手に席に座り、勝手に食事に参加してきた男がいたのだ。
大泥棒マック・スティッドだった。
「死ね」
イトラは最速で黒化し、ナイフを投げつけるがそれを上半身の動きのみで上手く回避した。
「おっと、イトラちゃんは今日もとてつもなく可愛いじゃないか。
だが俺様は気配を限りなくゼロにしているからそっちの二人には見えていないみたいだね」
見ればサラとディオシキはマックの存在に気づくこと無く食事を続けていた。
こんな目の前にいてもこの二人に気づかせないだけの隠密スキルを持っているとは敵ながら天晴れだな。
「でも僕には見えてるよ。
はじめまして、この街の第四位のハンター、ロッド・キツサです、と僕はキメ顔でそう言った」
「これはこれはご丁寧に。
俺様は大泥棒のマック・スティドです」
ロッドには見えていたらしく大泥棒に興味があるのかのんびりと握手をする二人。
この二人は意外と相性がいいのかもしれないな。
だが二人が握手をした瞬間何やら不思議な音が店内に響き、周りの客達が騒ぎ始めた。
「おい、あれ大泥棒のマック・スティッドじゃね?」
「こないだ俺のお宝を盗んで行った奴だ!」
「私もあいつに色々と盗まれてるわ」
他のハンターたちの視線が一斉にマックに向けられる。
「な、なぜだ!?
俺様の隠密スキル、もとい存在感の無さは完璧だったはずなのに!」
「そりゃたぶんこのロッドの異常なまでの不幸属性がお前に伝染したんじゃないのか?
こいつの師匠である俺の母さん位しかこの異常なまでの不幸を無効化出来なかったんだし」
ロッドにしてみてもただの挨拶のつもりだったのだろうが騒ぎは広まり、すでにギルドナイトが俺達の周りに集まっていた。
「まぁ、年貢の納め時だな。
イトラ、今のうちに眼力使ってみろ。
今度はマックにも効果があるはずだ」
「はい師匠。
イトラビィィィーム♪」
と可愛らしい技名?とは裏腹にギュイィィィィーンという音が聞こえそうなイトラの眼力によりマックはあっけなく気絶。
ギルドナイト達に御用となったわけだ。
去り際に意識を取り戻したマックは必ず戻ってくるぞぉー!っとアホっぽく叫んでいたがイトラにその気がない以上俺はイトラを渡すつもりなんてない!
「うぅ~ん、メロディーが閃いたぞ!
『心が光の矢を放つよ』って感じかな♪」
ロッドはまた新しいメロディが浮かんだようで先ほどの出来事などすっかり忘れ、弓であり、楽器でもある『竜頭琴』を矢を射つことで演奏し、その矢が連行されているマックのに刺さったりもしていたが本人は気づいていないようなので俺はグッジョブとだけ言ってやった。
『再び現る』とか言っといていきなり退場のマックには同情するがそういうキャラだし問題ないな。
弓使いが出してみたいというノリで出したロッドですが、私は弓があまり好きではなのでまともな戦闘描写を書くのも面倒だし戦闘させなくてもいいんじゃないかと思い、ロッドの出番は極端に少なくなってしまいました。
黄忠とか元気な爺さんキャラがモデルならもう少し出番も出せたかもしれないんですけど、そもそも弓が好きではないというのでは活躍の場は望めませんよね。