ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
「で、この子誰?
ハターンさんにとってどんな関係の子?」
何やら冷めた目で見るチカにイトラは俺の後ろに隠れて出てこない。
「この子は俺の元弟子の弟子だ。
気が弱いんだからあんまり睨むなよな」
いまだに俺の後ろで震えるイトラ。
ここで助けてあげるのは師匠の仕事なんだろうが、その肝心の師匠は店の中の物をいじって遊んでいるのでこちらの様子に気づいた様子はない。
まったくあのバカ弟子め。
「……わかりました。
職人としてハターンさんの依頼を引き受けましょう」
「いや、別にトン爺さんでもいいし、嫌なら断っても構わないぞ」
俺としては嫌々仕事を引き受けてもらっても困るから言ったのだがチカの眼に宿る不思議な光はいったいなんなんだろうな。
「ワシはチカにやってもらいたいからハターン坊やもできればチカに依頼を出してくれ」
「申し訳ありませんハターンさん。
どうかこの私に仕事を受けさせてください」
そこまで言うならやらせてみるかな。
イトラもこういう人種に慣れる練習と思えば悪くないし。
「それじゃあ任せるよ。
俺が昔使ってた防具をこの娘イトラに合わせて作り直してやってくれ」
こうしてチカとトン爺さん。それにイトラはさっきまでチカが寝ていた部屋に入って行った。
この部屋工房だったのか。
イトラside
うぅ、なんかこの女の人怖いよぉ。
ハターンさんは顔は恐いけどとっても優しい人なのにこの人は笑顔なのに恐い。
「おい、チカ。
ハターン坊やから渡された防具なんだがこいつは『暗銀』の鎧じゃのう」
暗銀ってなんだろう?
「へー、駆け出しの頃からそんな防具を使ってたなんてさすがはハターンさんだね。
でもそれを女の子用にするとなるとずいぶんといじることになりそうだよ。
でもお爺ちゃんは手を出さないでね。
これは私の受けた仕事なんだから」
「構わんよ。
じゃあ採寸なども必要じゃろうし、ワシは部屋の外で待っておるから終わったら呼んでくれ」
あ、お爺さん出ていかないで、私をこの人と二人きりにしないで。
だけどお爺さんは出て行ってしまった。
気まずい沈黙。チカさんは冷気を感じそうな冷たい目でずっと見てくる。
「……君はハターンさんをどう思ってるの?」
サイズを測りながらチカさんが聞いてくる。
「その……とっても優しい人だと思います。
いつもぶすっとしてますけどとっても私の事を心配してくれてますし」
どうしたんだろう?
チカさんは急に震えだしたけど寒いのかな?
「そう……
さて、採寸は終わったわ、あと一時間もあれば終わるからあなたも部屋の外に出てもいいわよ」
やっぱりこの人怖い。
早くハターンさんとサラ師匠の側にいよう。
部屋を出るときチカさんは恐ろしい声で笑っていたけど私は振り向かなかった。
チカside
まったくあのチビジャリがぁ!
あの!最強の名をほしいままに生ける伝説ハターンさんにここまで世話焼いてもらうなんて何様なの!?
それにサラとか言ったかしら、あの背の高いハンターの女も元弟子だかなんだか知らないけどなれなれしいのよ!
いつかぶちっ殺してやろうかしら!!
……ふぅ、私ったら頭に血が上ってたわね。
『仕事はきっちり片付けるのがプロというもの』。
と、ハターンさん本人に非公式のファンクラブで作られてる『ハターン様名言集』の中にも書いてあったし、私もプロとしての仕事は果たさなくちゃね。
こうしてまじめに仕事をしていれば私の腕を見込んでハターンさんが何度も来てくれるようになるでしょうし♪
……お爺ちゃんは邪魔ね。
そろそろお迎えが来ないかしら。
来ないならこちらから呼んであげてもいいんだけどね。
うふふふふふふふふふふふふふ♪
ハターンside
トン爺さんが出てきたあとしばらくしてイトラが部屋を出てきた。
勢いよく飛び出てくるもんだから転んでしまったのでここでもサラに代わって俺が起こしてあげた。
「ここは物がゴチャゴチャして危ないから走ったりするなよ。
それにしてももう採寸は終わったのか、これなら今日中に武具も完成して狩りに行けるかもしれないな」
「で、でも私はハンターとしての知識は何もないですし、無理ですよぉ」
涙目のイトラを見ていると多少心が痛むがこれも俺流の修行方法なのだ。
極限状況だと人間は何かが吹っ切れるからな。
サラの場合は何も考えずに直感だけで動くハンターだから俺の修行は必要なかったみたいだが。
「泣くな。
ハンターなら強くなるんだ。
俺が絶対に守ってやるから心配すんなって」
俺はイトラを抱き上げその背中をさすってやると落ち着いてきたのか目をとろんとさせながら俺を見つめる。
「なんじゃその子はまだ狩りに出たことがないのか。
ならばワシが武器を強化してやろうか?」
「それはいい考えだなトン爺さん。
この子の武器は初心者用のしょぼい武器だからさ。
せっかくだし爺さんお馴染みのありえないくらいの強化をしてくれよ」
そう言うと俺は一緒に持ってきていたイトラのライトボウガンを渡す。
初心者用の『猟筒』だ。
「うむ、確かに。
ではチカが武器を完成させるのと合わせて強化を終えて見せよう」
そうしてトン爺さんは自分の部屋へと向かっていった。