ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
スーランside
現在地、雪山山頂。
「さて、サラとはスタート地点が別れちまったし、こっちはこっちのティガレックスの討伐でもするさねぇ」
と、考えていたらなんとティガレックスは背後にいましたとさ。
「グォォォォー!」
「うわぁ!」
慌てて距離を取ったけどあと少し回避が遅れてたら首と胴体が泣き別れするところだったさ。
「しかしでかい……
サラのことだから下のティガレックスなんて数分で片付けるだろうし私も数分でこいつを狩らなきゃいけないさねぇ」
ティガレックスは私との距離が開いたために突進を開始したので今回のために強化した愛用の槍と盾を構えティガレックスに突進する。
だが……
私はその突進勝負に負けてしまった……
そして木の葉のように吹き飛ばされた私は運悪く露出した岩肌にしこたま体を打ちつけてしまったのさ。
「ま……ずいさねぇ。
なんだってば私はこうも運が悪いんだろうねぇ」
思い返せばこれまで何が楽しくてハンターをやって来たんだろうね。
生まれつき何でも出来る才能があったけど『ある程度』から上には伸びない器用貧乏な体質を改善するために命のやり取りが多いハンターという職業なら多少は成長も見込めるかと思ったらハンターとしての成長は止まっちまったし。
やっとこさランスによるブルファンゴとの突進勝負に勝てるまでに成長したと思ったらティガレックスには通用しなかったし。
「私の人生ってのはなんだったのかねぇ」
ティガレックスは私が生きていることに気づいているため追撃を仕掛けようと再び突進を開始してきた。
「結局は天才のサラに私は勝てないのか……」
自分と違ってハンターとしての才能だけを持って生まれたような私のライバルサラ・ムーイ。
彼女を勝手にライバルにしたのも私とサラ以外で上位以上にまで成長した同期がいなかったけだけたという単純な理由だけど……
サラは私よりも早くG級まであっさりと駆け上がり私がG級に辿り着いた時にはトイダーヴァの第二位という遥か先へと進んで行ってしまったのだけれども……
それでも彼女に私の実力を認めさせたかったさねぇ……
「おーいスーラン無事かー?」
あぁ、とうとう幻聴が聞こえるまでになってしまったか……
いくらサラでも下のティガレックスを倒してからこんなに早く山頂までのぼてくるなんてできるはずないさね。
「うりゃ!」
だけど確かに聞こえるサラの掛声が響いたと思ったら突然辺りに眩しすぎる閃光が私の視界を潰す。
「グギャァァァァー!」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁ~!」
ちなみに上の悲鳴が私で下の悲鳴がティガレックス。
「おっすスーラン。
もしかして眼をやられちまったのか?
ったくティガレックス相手にそんなピンポイントで攻撃受けるなんて災難だな」
「あんたの閃光玉でこうなったのさ!
というかあんたもう下のティガレックス狩ったっての!?」
「おう、もちろん太刀を抜くまでもなく頭蓋を粉砕して地面に縫い付けてきてやったぜ!」
なんて豪快な……
でもそれでこそ私のライバル。
「どうせスーランのことだからティガレックス相手に突進勝負して負けたんだろ?
あとはあたしに任せてゆっくり寝てろよ」
そういうとサラは動けない私に回復薬グレートをどばどば掛けたあと背中の太刀に手を掛けた。
「さぁて、宴もたけなわ、お祭り騒ぎにらんちき騒ぎ。
このティガレックスは下で倒したティガレックスよりもでかいしあたしも本気を出してやるぜ!
うたえい! 『鬼哭斬破刀・真打』!!」
その瞬間初めて見るサラの太刀は雪山の吹雪をものともしないくらいに輝いていた。
サラside
これまでに狩ってきたモンスターの数はいちいち覚えちゃいねーけどこの太刀を抜かせるほどの大物は数えるほどしか狩ってないからな。
久し振りに楽しませてもらうぜ!
「さて、では鞘に戻すか」
「戻すんかい!?」
うおぅ、スーランの奴突然ツッコミ入れてきたな。
怪我は大丈夫なのか?
「あ、あんた!
いま何でその太刀抜いたのよ!?
もしかしてその太刀は儀式用ってやつ!?」
「何を言ってるんだスーラン?
確かに剣は使うと欠けたり傷ついたりするからお祈りにしか使わない奴もいるらしいけど、あたしの場合は居合い斬りをするから鞘に戻しただけだよ」
そういやスーランの前でこの太刀を使うのは初めてだったな。
もしかしてあたしのことを拳使いとでも思ってたのか?
ま、いっか。
「ゆらーりぃ……」
技の溜めに入りながら閃光玉で目を潰され、のたうちまわるティガレックスを正面に捉える。
「……ゆぅらぁりぃ……」
ちょっと隙が大きい技だけどこいつほどの大物が相手なら大技じゃねーとカッコわりーしな。
「さて、では決めさせてもらうぜ!
食らいやがれー!」
居合い切り炸裂。
その剣速は凄まじく、実際に切られ続けているティガレックスには鍔鳴りの音が聞こえるだけなんだろうけどな。
だがそんな眼の前で実際に技を食らっていることにすら気づいていないティガレックスの困惑など無視して鋭い斬撃を連続で叩き込む。
こんなこともあろうかと、鞘の中に下で殴り殺したティガレックスの血を入れることで鞘走りの速度を飛躍的に上げ、さらに腕の関節を意図的に外すことで人間の骨格ではありえないような角度からの斬撃までも可能としているあたしの斬撃。
それは避けることなど決して不可能な完璧なまでの斬撃。
「ひぎゃぁぁぁぁー!」
そして最後、斬撃のあとには巻き起こった風がトドメを刺す。
シュババババババババババ
「完了、不備なし」
最後の一撃を繰り出したあと鞘に戻さなかった愛刀の血を振り払い、立ったまま死んだティガレックスを前にゆっくりと太刀を背中の鞘に戻す。
そして最後の鍔鳴りの音が雪山に木魂する。
チィィィーン
それが合図となり、ティガレックスの死体はバラバラと崩れ落ちた。
あの長い太刀を居合いなんてできるとは思えませんがそこに突っ込むのは今更ですし仕方がないでしょう。太刀によっては鯉口に切り込みが入っていて抜けやすくなってますけど。
サラは基本的に拳使いで、たまに居合いを使うというスタイルのハンターです。
この設定を思いついて考えてみると居合い切りキャラはけっこう多いので何を元にするかでけっこう悩みました。
これが対人戦なら、鍔は受けるためのもの、つまり防御をするための弱さの証、みたいなセリフは入れても良かったかな。