ハターン・モンスータの狩りと愛の日々 作:ヨイヤサ・リングマスター
イトラの両親の死体と壊れた馬車を道の脇に埋めて、イトラを背負って歩き出す。
まっすぐに街道を進むとそこには見慣れた景色が広がる。
なるほど、ここはトイダーヴァの街の近くだったのか。
「さぁて、過去の俺自身に会わないようにしながら誰か信用できる奴に預けるとなったら……やっぱマルにでも預けるとするか」
あんな奴でも一応ギルドマスターだし、どういう経緯で一時的とはいえサラの弟子になったのかは分からんがきっと上手くやってくれるだろう。
ギルドの入り口の戸を開けて酒臭い店内に入る。
店にいる客はの食事を中断することなく俺を見てくるが、その視線の中には俺がトイダーヴァの第一位のハターンだと気づいたものはいないようだ。
単純に砂漠の暴君ディアブロス亜種の防具を身に纏う俺に羨望の眼差しを向けてくるのが数人。
あとはすぐに食事に戻っていった。
昼間だから人が少ないというのもあるのだろうが、この街のハンターのレベルは他の街や村よりも格段に高いので大半のハンターはディアブロス亜種くらい狩れる連中ばかりだからな。
おかげですぐに俺に対する注目は収まった。
あまり目立つのはマズイ。
「あらあらぁ~、いらっしゃ~い♪
トイダーヴァの街は初めてぇ~?」
カウンターの奥で突っ伏したまま起き上がることもなく話しかけてくるギルドマスターのマル。
その気だるそうな対応からして俺以外の客に対しても客らしい扱いをする気は皆無のようだ。
「あぁ、旅のハンターなんだがここへ来る途中、新種のモンスターに襲われていた馬車を助けたんだが生き残りがいたのでギルドに預けようと思ってね」
もちろん声は変えている。
マルは意外と鋭いところもあるので声から俺がハターン・モンスータだとばれたら問題になるしな。
「そうなのぉ~、あ、この子ねぇ~。
可愛い寝顔ねぇ~♪
ほっぺもぷにぷにだぁ~♪」
イトラのほっぺっぺでぷにぷに遊んでいる姿は子どもっぽくさえある年齢不詳の女マル。
と言うか羨ましい!
「両親はすでに死んでいてその死体を見てしまったことでパニック症状を起こしたからネムリ草で寝かしつけたんだ。
あと一時間もすれば起きると思うから頼んだよ」
「はいはぁ~い♪
ちゃ~んとサラちゃんに預けるわねぇ~、ハターン君♪」
な! ばれてる!?
それにサラに預けるだと……
もしかしてマルには未来の自分(異時間同位体)と同期する能力でもあるってのか!?
「ちなみに他の人にはぁ~、黙っておいてあげるからぁ~、未来に帰ったらちゃんと説明しなさいよぉ~♪」
そう言うと再び眠りについたマル。
まぁこいつは謎が多いし今更一つや二つ変わったところが見つかっても別におかしくはないだろう。
イトラはマルの隣で暇をしていた受付嬢により店の奥へと案内された。
これであとは俺が心配することはないだろうな。
……さて、イトラを預けたことだし、他に過去だから出来ることって何かあっただろうか?
ギルドを出た後適当に歩きながら過去の自分に会わないように気をつけていると自然と俺の脚が向いたのは『ハターン農場』だった。
「これは……面白いことを思いついたぞ」
ワリサ達農場ネコ軍団と勝負してみることにしたのだ。
あいつら俺が考える以上に厳しい修行を自らに課しているからかなり強くなってそうだしどれ位の強さなのか気になるしな。
「おーい、ここのネコども出て来ーい!
ちょっと俺と喧嘩しねーかー?」
先ほどマルに変装を見破られたことも踏まえて骨格とホルモンバランスを意図的に操作して声はもちろん、性別までも変え、体臭までも変えてある。
これでさすがのワリサ達にもばれることはないだろう。
ちなみに防具はキリンシリーズに変えてある。女の体の時はいつもこれなのは俺だからだと言っておこうか。
おっと、そうこうしている内にさっそく出てきたみたいだ。
「おうおうおう、ここが天下の大ハンター、ハターン・モンスータご主人の農場だとしってのことかにゃ?
どうせあんたも俺らのご主人に欲情しただけの変態なんだろうにゃ。
てめぇ、喰い殺されたいのかにゃん?」
ワリサの奴、俺だと気づいてないようだな。
だがワリサの眼をごまかせてもマルや未来で俺の弟子となった後のイトラが相手ならどんなに変装しても俺に気づくんだろうな。
まっ、とりあえず今はワリサ達とのバトルを楽しむとしよう。
「なぁに、派手な喧嘩がしてみたかったからさ。
全員まとめてかかってこいやぁー!」
「ご主人の文句は俺に言えにゃー!」
ワリサのこの一言で待機していた他のネコ達もそれぞれに武器を構える。
こいつらかなり厳しい修行を自らに課しているようだし俺の強者としての本能がこいつらと勝負してみたいという気持ちを抑えられないんだよな。
「ニャー!」
一番最初に動いたのはカリピャーだった。
得意の大剣ストームルーラーを肩に担ぎ飛びかかると同時に叩きつけてきた。
「おっと」
だがそれを紙一重で避け、その小さな身体に拳を叩き込む。
だがだが、それこそがカリピャーの狙いだったようで俺が殴る隙を突いてサアズが燃え盛るワイヤーを展開する。
「この包囲網、抜けられるもんなら抜けてみるみゃ!」
「では言葉通り抜けさせてもらおう」
「みゃ!?」
ワイヤーは完全に俺の逃げ道を塞いでいたが所詮はワイヤーなので僅かにあった隙間に自分の体を小さく折りたたみながら飛びあがり、その小さな隙間から逃れたのだった。
そして空中で体勢を立て直すと
「みゃ~」
サアズも倒した。
「にゃっはー!
この俺を忘れてもらっちゃ困るんだよにゃ~」
ワリサは俺がこれまでに見たこともない剣を手に飛びかかってきた。
「これはご主人の前では決して見せたことのにゃい俺のトッテオキ。
天才刀工が作った刀、『剛剣マンジカブラ』にゃ!
色々な特殊能力を合成してるからこいつを喰らって安心して地獄に落ちるにゃー!」
その剣は単純に斬りつけてきたかに見せて、正面と左右斜め前方の三方向を同時に斬りつけ、俺は回避をすることは出来たもののキリン装備の腰布の尻尾部分をちぎり飛ばした。
「ノォォォォー!
俺のキリンシリーズになんてことしてくれるんだぁー!」
「知ったことかにゃ。
ご主人のためにゃら俺は鬼にも悪魔にもにゃれるんだにゃ」
いや、せめてどっちかは仏になってほしいぜ。
「とりあえず反省しろやー!」
並みのハンターでは止めることも出来ないほどの高速で振り回されていたワリサの剣を指二本で止める。
「にゃに!?」
「俺にこの程度の事ができないとでも思ってたのか?」
そうしてワリサも殴り、気絶させた。
戦闘描写が短いのはそういう仕様だからだ。
こうして農場の三天王のワリサ、カリピャー、サアズが俺に倒されたことで周りのネコ達には動揺が走り、烏合の衆と化していた。
「やばいにゃ~、あの三人がやられたんじゃボク達には勝てないにゃ~」
「こ、こうなったら全員で同時に飛びかかるかにゃ!?」
「いや、それじゃ無駄な犠牲が出るだけにゃ」
こいつらワリサに頼りっぱなしだったんだな。
未来ではかなり鍛えていたのにこの程度だなんて、こりゃ未来に帰ったら俺が直々に鍛えてやらないとな。
「それじゃこれで帰るわ。
ハターンによろしく言っとけよー」
こうして農場をあとにするのだった。
ん? そういや農場のネコ達がハードトレーニングをしていたのは農場に現れた不審者に負けたからじゃなかったっけ?
てことはこうして過去に来た俺がこいつらを倒しちまったからあの修行を始めたのだろうか……
もちろんハターンは最強ですから性別変化くらい楽勝です。
今回はワリサ達とにゃんにゃんしたかったから出しました♪
とりあえず書いてて楽しめたけど読んで楽しいかは別ですし書く楽しさと読む楽しさの両立をしっかりとしなければ。